同じ名前なのに「別の作品」とはどういうことか
今回取り上げるのは、ゲランのルール ブルー オーデパルファンです。番組は8月28日に全国発売されたばかりのフローラルアンバーの新作として紹介しています。
名前を聞くと、1912年作を現代向けに作り直したものかと思いがちです。しかしパーソナリティは、そこが違うと切り出します。
ルール ブルーっていう名前なら、1912年作を現代向けに作り直した香りなんでしょうか。
そこが違うんです。1912年作の再現ではなく、同じ名前を持つ独立した作品です。
題材は、昼と夜の境目に空が深い青へ染まる「青の時」です。現代の材料で、別の青い空を表しているといいます。
なぜ同じ名前まで使って、2026年に別の作品を作ったのか。その答えは、新しく開発した素材の話まで聞くと見えてくると、パーソナリティは先の展開を示します。
冷たいオゾンからバニラへ、香りが動く順番
この香りは冷たいオゾニックな印象で始まります。ただし最後まで冷たく軽いままではなく、肌によっては冷たさが長く残ることもあると補足されます。
香りの始まりであるトップでは、オゾニックアコードが空気を軽く広げます。オゾニックとは何かという問いに、パーソナリティはこう答えます。
雨の匂いそのものじゃなくて、風が通って空間が開くような透明で軽い香りです。
ゲランのCEOガブリエル・サン・ジニ氏は取材の中で、キャスカロンという素材が海や塩気、オゾンをわずかに感じさせると説明しています。海の香水というほどではなく、空気に少し塩気が混じる程度の印象です。
香りの中心であるミドルでは、この作品専用のアイリスチンクチャーとアイリスバターが主役になります。チンクチャーは明るく透き通った印象で、2つの素材が重なるとベルベットのように柔らかなアイリスになると紹介されます。
そして土台であるラストでは、バニラが温かな甘さで全体を包みます。冷たいまま終わるのかという問いに対し、パーソナリティはそうではないと答えます。
深い青から淡く光る青へ移っていくような流れです。ただ、変化する速さは肌によって違います。
冷たい空気の中でアイリスがだんだん柔らかくなり、そこで香りの温度が変わる。この温度の移り変わりが、作品の見どころとして語られます。
トップ
オゾニックアコードが空気を軽く広げる
ミドル
専用のアイリスチンクチャーとアイリスバターで柔らかく
ラスト
バニラが温かな甘さで全体を包む
1912年作や近い香水との違いはどこにあるか
似た香水と比べると、2026年作の特徴が分かりやすくなります。まず引き合いに出されるのが、1912年のルール ブルーです。アイリスとバニラは共通するものの、香りの組み立ては大きく違うといいます。
1912年作は、アニスやベルガモットにカーネーション、ネロリ、ベンゾイン、トンカなどが重なる、粉っぽく温かなアンバーです。作り手はジャック・ゲランでした。
次に挙がるのがゲランのボ스カ バニラ フォルテです。発売直後にバニラと少し塩気のある空気を連想した人がいたといい、バニラと塩気の空気という点で近さがあります。
ただし、ボスカ バニラ フォルテはベルガモット、イモーテル、漂流木とバニラが中心です。2026年作はアイリスが主役という点で軸が異なります。
もう一つ、イリス パリダ エクストレ シックスも比較に挙がります。こちらはアイリスバター、アーモンド、ムスクに焦点を絞った香りで、2026年作のようなオゾンの冷たさはありません。
アニス、カーネーション、トンカなどが重なる粉っぽく温かなアンバー
オゾンの冷たさから専用アイリス、バニラへ移るフローラルアンバー
2つのルール ブルーは並んで販売される
2026年作は、1912年作の処方を変えたものではなく、初めから別の作品として作られています。では新作の登場で、旧作は販売を終えるのでしょうか。
じゃあ新作が出たことで、1912年作は販売を終えるんでしょうか。
1912年作を置き換えるのではなく、2つのルール ブルーを並べて販売するとのことです。
どちらか一つだけを本物と決める必要はない、という整理です。歴史的な作品を知りたいなら1912年作、現代の独立した作りを知りたいなら2026年作という選び方が示されます。
だからこそ、名前だけを見て、新作が旧作の代わりだと思わないことが大切だと語られます。
受け継いだハート型ボトルに込めた「2026年の青」
ボトルも、1912年作の形をそのまま色違いにしただけではありません。逆さになったハートの形は受け継ぎつつ、新作向けに作り直しているといいます。
本体は青のグラデーションで、香水名は金色、首元には青いリングがあります。空が少しずつ深い青へ変わっていくところを、色で見せているという設計です。
ボトルはリフィルに対応しています。日本では30ミリリットルと50ミリリットルの本体、それに200ミリリットルのリフィルが展開されると紹介されます。初めて選ぶなら30ミリリットル、使い続けるならリフィルも候補になります。
デルフィーヌ・ジェルクが「反対の温度」で狙ったもの
調香を手がけたデルフィーヌ・ジェルクが得意とするのは、反対のものの組み合わせです。この香りでは、外へ広がる冷たいオゾンと、人の体温を思わせる温かなアイリスやバニラの組み合わせに表れています。
反対の温度をぶつけると鋭い香りになりそうですが、狙いはそこではないといいます。
鋭さを残すためではないんです。最初に冷たさがあるからこそ、後から出てくる柔らかさが分かりやすくなります。
彼女はアイリスやムスク、バニラ、アーモンドやミルクを思わせる香りを好むとされています。温かな素材だけでまとめず、最初に冷たい空気を加えた判断が、この作品らしい張りのある印象を作ったと解説されます。
デルフィーヌ・ジェルクは2014年にゲランへ加わり、2021年にはフランス芸術文化勲章シュバリエも受賞しています。ゲランの香り作りを率いる立場でもあり、長い歴史に新しい答えを加えた人物として位置づけられます。
「青の時」は一日に二度あり、専用アイリスが答えになる
題材の「青の時」は、夕方だけに現れる青ではありません。太陽が地平線の下から空を青く照らす時間で、夕方だけでなく夜明け前にも現れます。
つまり、夕方の暖かさと朝の澄んだ空気、その両方がこの作品の青につながっています。
そして、この作品のために専用のアイリスチンクチャーが開発されました。サン・ジニ氏は、この素材を使うのは世界初の試みだと説明しています。
序盤で示された「なぜ2026年に別の作品を作ったのか」という疑問は、ここで新素材につながります。現代の新しい素材で青の時の空気を作る。その具体的な答えが専用のアイリスだったというわけです。
どこで、どの季節に使うか。少量から試したい理由
濃く香る分、職場や交通機関では強く感じないか、という心配も語られます。発売直後の海外レビューには、会議室で周りの人が香りに気づいたという体験談があるといいます。
そのため、職場や交通機関では少量が安心です。透明感のある香りだからといって、軽い香りだと判断しない方がよいと注意が添えられます。
季節なら春や初秋が候補です。気温が切り替わる朝や夕方だと、香りの温度差を感じやすいといいます。服は白や淡いグレー、深い青も合わせやすく、薄手のシャツや柔らかな布が似合うと紹介されます。
日本の真夏で使いやすいかについては、8月28日に発売されたばかりのため感想がまだ十分になく、バニラの甘さが残るので真夏の昼は控えて春や初秋の朝夕が合いそうだと話されます。
持続については、肌で8時間から10時間、服では翌々日まで香りが残ったという例もあり、かなり長く香る香水だといいます。
選ぶなら少量から始めて、オゾン、アイリス、バニラのどれが自分の肌で長く残るのかを数時間後まで確かめたい一本です。旧作の粉っぽさを基準にせず、2026年の別作品として判断することも大切だとまとめられます。
まとめ
ルール ブルー オーデパルファンは、同じ名前と「青の時」という題材を受け継ぎながら、1912年作とは別に作られた2026年の独立作品です。冷たいオゾンから専用のアイリス、温かなバニラへと移る温度の変化と、しっかり残る持続が特徴として語られました。
- 冷たいオゾニックアコードから2つのアイリス素材を経て、温かなバニラへ変わる
- デルフィーヌ・ジェルクが手がけた2026年の別作品で、1912年作と並んで販売される
- 香りはしっかり残るため、職場や交通機関では少量が安心
- 一日に二度現れる「青の時」と、世界初とされる専用アイリスが2026年作を覚える手がかり
- 春や初秋の朝夕に、少量から自分の肌での残り方を確かめたい一本

