番組を始めた2人の共通点
番組は、元ラジオ局員でポッドキャストプロデューサーの2人による自己紹介から始まります。
イマイズミは、十代の頃にラジオ番組『スクールオブロック』に人生を救われ、ラジオ業界に恩返ししたいと思ったことがきっかけだと話します。
もう名前を言ってしまうと『スクールオブロック』というラジオ番組に人生を救われまして、そこからラジオ業界に恩返ししたい、向こう側になりたいっていうので、ラジオ局に10年かけて就職したんです
ただ、ストレートでは入れず、放送作家やWEBディレクターを経て、28歳頃にラジオ局へ中途入社したと振り返ります。
一方のトシミツは新卒でラジオ局に入り、その後独立。音声コンテンツの仕事に携わって11年目になると話します。
話しているうちに、2人が音声業界に入った時期がほぼ同じ「同期」だと判明します。長く一緒に仕事をしてきた間柄でも、意外と知らないことがあったようです。
共通点はそれだけではありません。2人ともフリーのポッドキャストプロデューサーで、さらにキャリア支援の仕事にも携わっているという珍しい重なりがあります。
番組の立ち上げ方と「設計が9割」
この番組は、まだタイトルすら決まっていない状態でスタートしています。2人は、クライアントの番組では念入りにコンセプトシートを作るのに、自分たちの番組では雑にハンドリングしていると笑います。
そこから、普段の番組の立ち上げ方の話へ移ります。イマイズミは、まず番組の目的整理から始めると説明します。
目的整理の段階で、ポッドキャストに向いていないと判断すれば、他の手段をすすめることもあると話します。たとえば、一気にリーチを広げたい場合や即時性を求める場合です。
明らかにリーチを広げたいっていう時とかですかね。このサービスを多くの人に知っていただきたいんですみたいな入り口だとちょっと違うかなみたいな
設計が固まると、アートワークやタイトル、台本に加え、50本ほどのエピソード案まで作り込むといいます。週1配信でおよそ1年分の見通しが立ち、ネタ切れの心配を減らせるためです。
ただし、その通りに進むことはないと2人は口を揃えます。むしろ予定調和になっているほうが、良くないコンディションかもしれないと話します。
むしろそれ通りに進んでる場合はかなり予定調和になっちゃってるんで、良くないコンディションかもしれないですね
トシミツも、やっているうちに「これを話したい」「この角度で取り上げたい」という発見が出てくると同意します。想定ルート通りに進まないところこそ、ポッドキャストの面白さだと2人は捉えています。
委ねすぎる不安と、台本をどこまで書くか
トシミツは、ラジオの現場との違いに触れます。ラジオは裏方がハンドリングして企画を進める一方、ポッドキャストではクリエイティブをクライアントや話し手に委ねる場面が多いといいます。
委ねすぎてんじゃねえかってたまに不安になることがあるんですよ。そこまでお金までいただいているのに、クリエイティブまで委ねていいのかっていう
イマイズミも、手を抜いていると思われないか心配になることがあると共感します。この不安は、台本をどこまで書くかという問題にもつながっていきます。
ざっくり作ったほうがいい、というのは裏方の共通認識です。しかし、台本をかっちり作るのが受注側の仕事ではないか、と思われている懸念もあると2人は話します。
イマイズミの対処法は、最初はきちんと作った台本を渡し、そこから相手のやりやすい形へ調整していくことです。話しすぎてしまう人には、箇条書きだけにするなど、やりながら変えていきます。
あくまでもこれは私が作る番組でよく使ってる雛形ですけど、みたいな
雛形を作って渡し、相手のやりやすさに合わせて調整していく
シートで決め込まず、打ち合わせでざっくばらんに決めることが多い
台本のタイムは必要か、そして「制限のなさ」
台本の話は、タイム表記の是非へと展開します。トシミツは、ポッドキャストの台本にタイムが本当に必要なのか、と長年疑問に思っていたと話します。
イマイズミは、想定尺の目安として書いておくものの、実際にはそこまで見られていないだろうと答えます。
トシミツは、時間を意識させると話がこぼれにくくなり、深い話が聞けなくなるかもしれないと指摘します。台本に情報を増やすほど、話し手に制限が加わるという視点です。
制限を極力排除していくっていうのがポッドキャストのいいところであり、ラジオと差別化できるポイントなのかなとか思っているところです
ここから、2人はラジオとポッドキャストの違いを「制限がどれだけあるか」という軸で整理していきます。
トシミツは、地上波の放送枠、喋る尺、配信日時のいずれからも外れられるのがポッドキャストだと話します。毎週でなく隔週や月1でも成立し、その枠組みのなさがコンテンツの中身まで変えていくといいます。
放送枠・尺・配信日時という制限があり、企画としての枠組みが強い
枠組みから外れられ、会話感が強い。制限のなさが中身にも影響する
オープニングの定型文は必要か
台本なしで話を進めてきた2人ですが、オープニングの「型」についても議論します。この回も、それぞれの自己紹介という定型文から始まりました。
トシミツは最近、オープニングのキメの文言はもはやなくてもいいと考える派だと話します。ただし、コンセプトがしっかりした番組ではきちんと説明したほうがいいと補足します。
雑談の延長線上に気づきになるとか学びになるみたいなコンテンツの場合は、別にぬるっと始まっちゃってもいいんじゃないかなとか思いますけどね
話しながら、トシミツは新たな気づきを口にします。定型文が、収録の勢いをつける助走の役割を果たしているかもしれない、というものです。
最初のエンジンのかかりづらさみたいなのあると思うから、一番最初の定型文でパッと声出してもらうっていうところの大事さはもしかしたらあるのかなっていうふうに、今言いながらすごく思いました
イマイズミは、この構造を漫才の「つかみ」になぞらえます。最初に決まった口上を言うことで、話し手と聞き手のリズムを作ってから本題に入るのではないか、という見立てです。
表に出なかった2人が番組を始めた理由
話題は、そもそもなぜこの番組を始めたのかという核心に移ります。きっかけは、2人が参加した「JAPAN PODCAST AWARDS」の会場で受けた刺激でした。
トシミツは、11年目を迎える中で、日々の仕事で考えていることを何かしら残しておかないといけないと感じていたと語ります。
現場がどういうふうなことを考えて毎日仕事をしているのかっていうのを、もっと広く知ってもらわないといけないなというふうに思うんですね
ビジネスの上のレイヤーで考えている人たちと足並みを揃えないと、いいものは生まれない。そのヒントとして、自分の考えを言葉にして残したいという思いです。
一方のイマイズミの動機は、ポッドキャストがもっと盛り上がってほしいという思いでした。アワードで、賞にかける人たちの姿を初めて見たことが大きかったといいます。
あの賞にかけてる人たちを初めて見て、こういうポッドキャストの楽しみ方もあるんだみたいな。初めて賞レースに参加した芸人さんの感覚になった
そして、ポッドキャストを楽しむ人が増えることが、自身の人生の目標である「ラジオへの恩返し」につながると直感したと話します。近い思いを抱くトシミツが隣にいたことから、軽い調子で声をかけたのが始まりでした。
ビデオポッドキャストに思うこと
最後の話題は、近年注目されるビデオポッドキャストです。トシミツは、脚光を浴びること自体は業界にとって良いことだと前置きします。
その上で、ラジオ文脈の人間としての戸惑いを口にします。映像がつくことで、視覚的なクリエイティブ勝負にポッドキャストが取り込まれていいのか、という葛藤です。
ビジュアルのクリエイティブ勝負になっていく、その文脈にポッドキャストが取り込まれていいんだろうかっていうところは思ってるところなんですね
実務面での課題も挙げます。映像があると、やるべきことも、それにふさわしい人材も増える。しかし、ビデオポッドキャストができる人が全然いないのが現状だといいます。
イマイズミは参考例として、動画畑からポッドキャストに移り、ビデオポッドキャストの考え方をnoteにまとめている人物の話を聞いてみたいと挙げます。
一方でイマイズミ自身は、ビデオポッドキャストの映像はあまり見ないと明かします。アルゴリズムやプラットフォームの優遇、若い世代がYouTubeで聴く事情から必要性は感じつつも、自分の視聴実感とはズレがあるといいます。
本当にビデオポッドキャストって見られてるのかなっていうのが自分の感覚なので、今はそれほどビデオポッドキャストってやるべきなのかなってあんま思わないんですよね
2人とも、ショート動画やXで流れてくることはあっても本体を見る機会は少ないと共感します。音声畑出身ならではの聴き方が表れている場面です。
ただし、この見立ても現場での気づき次第で変わるかもしれないと2人は言い添えます。来週には違うことを言っているかもしれない、という揺らぎも含めて楽しんでほしいと話します。
まとめ
初回は、番組タイトルすら未定というラフな出発点から、元ラジオ局員の2人がポッドキャスト制作のリアルを語り合う内容になりました。「制限のなさ」を軸に、ラジオとの違いや現場の悩みが率直に共有されています。
- 2人は元ラジオ局員で、フリーのポッドキャストプロデューサー兼キャリア支援という共通点を持つ
- イマイズミは「設計が9割」と考える一方、トシミツは打ち合わせでざっくり決めるスタイル
- 台本のタイム表記や制限をどこまで加えるかは、話の深さと引き換えになる悩みどころ
- 番組を始めたきっかけはJAPAN PODCAST AWARDSでの刺激と、ラジオへの恩返しという思い
- ビデオポッドキャストには可能性と葛藤の両方があり、2人の見立ても現場の気づきで変わりうる
