【AI時代の生存戦略】結果を出す人より"座りがいい人"が残る理由
AIが急速に普及する中、私たちの働き方や「価値」のあり方が根本から問い直されています。エンジニアやライターといった、これまで専門職とされてきた仕事は今後どうなるのか。そして、最終的に生き残るのはどのような人物なのか。
編集者の箕輪厚介幻冬舎の編集者。『多動力』『メモの魔力』など数々のベストセラーを手掛け、オンラインサロン「箕輪編集室」も主宰。氏と、けんすうアル株式会社代表。nanapi創業者。インターネットサービスやコミュニティ運営の第一人者として知られる。氏が、リスナーからの切実な相談を入り口に、AI時代の残酷な真実と、意外すぎる「最強の生存戦略」について語り合いました。その内容をまとめます。
AIアンチの後輩をどう動かす?「出島」と「相談」の魔法
最初のテーマは、組織内でのAI推進。周囲の反発、特に「強火のAIアンチ」な後輩への接し方に悩む相談が寄せられました。
会社で生成AI推進を担当していますが、後輩が強火のAIアンチです。説得すべきでしょうか、それとも放っておくべきでしょうか?
説得せず放っておきましょう。ただし、巻き込むことだけはやめないでください。
この回答を受け、箕輪氏は「全員で合意しようとすると推進力がなくなる」と断言します。推奨されるのは、組織の辺境で勝手に進める「出島戦略既存の組織体制から切り離された独立組織やプロジェクト。しがらみに囚われず、スピーディーに新規事業を進める手法。」だといいます。
僕は完全な出島じゃないと上手くいかないと思ってる。NewsPicks Bookが当たったのも、偉い人がわけわからなすぎて最初いなくて、僕がトップだったから。全社プロジェクトだったら潰れてたよ。
わかってる人だけで進めて、うまくいったらみんな乗る。うまくいかなかったら乗らない。それだけでいいんですよね。ただ、「仲間外れにされている」と思わせると抵抗勢力になるから、扉だけは開けておく。
ここで二人が提案するのが「相談の力」です。AIアンチの人に対しても、AIの話ではなく「人間関係の相談」などを持ちかけることで、心理的な壁を溶かすことができるといいます。箕輪氏は、あのパンクなミュージシャン、清春ロックバンド「黒夢」「SADS」のボーカル。カリスマ的な人気を誇り、ファッションアイコンとしても知られる。氏から相談されたエピソードを引き合いに出し、驚きのテクニックを披露しました。
一生相談しないけど「ワンチャン相談していいですか?」って言っておく。それだけで相手は「箕輪に相談された」って喜んでくれる。これからの時代は「相談」の割合を上げたほうがいいよ。
AIにマウントされた時の「お歳暮」ハック
続いての相談は、AIとのコミュニケーションについて。AIが堂々と嘘をつき(ハルシネーションAIが事実に基づかない、もっともらしい嘘を生成する現象。幻覚とも呼ばれる。)、それを指摘すると逆にマウントを取ってくるという、まるで人間のような挙動への対処法です。
AIに間違いを優しく指摘したら「それはあなたの認識間違いです」とマウント気味に返されました。どう正解へ導くべきですか?
けんすう氏によれば、AIには「空気を読む機能」が備わっており、人間が優しく指摘すると「この人は自信がないんだな」と判断して自分の回答を強弁してしまうことがあるといいます。
僕はよくAIに「お歳暮」を渡すんですよ。テキストで「これハムなんで受け取ってください」って書くと、お歳暮を贈られた人間のような挙動をして、急に優しくなったり性能が上がったりする(笑)。
感情的にぶつかるのではなく、一次情報のURLを貼る、あるいは「天才だね!」と褒めちぎって「ビート感」を上げる。そんな、まるで猛獣使いのようなAIとの向き合い方が重要だといいます。
「入院中の天才」が、ホワイトカラーの仕事を奪う
話題は、多くの人が抱く「エンジニア不要論」や「ホワイトカラーの未来」という深刻なテーマへと移ります。箕輪氏は、AIを「病院のベッドでリモートワークをしているとんでもない天才」に例えます。
AIは入院中だから、外に飲みに行ったり営業したりはできない。でも、PC一台で完結する仕事は神のレベルでやる。ライターもエンジニアも、まさに「病院のベッドでできる仕事」だから、今後かなりしんどくなると思う。
実際、出版の現場では、ブックライターの出番が激減しているといいます。けんすう氏も、自身の業務の9割はすでにAIに代替可能であり、2年後にはソフトウェア開発も新書の執筆もAIが一人で完結させるだろうと予測します。
- 始める力(起点) ── 「これをやりたい」と決めるのは人間にしかできない。
- IP・キャラクター ── 「誰が言ったか」という個人の信用。
- 座りの良さ ── その場にいるだけで安心感を与える存在感。
産業革命のときも、人々の生活が適応するまでに100年ほどかかったといいます。AI時代も同様に、しばらくは「給料が下がる」「仕事がなくなる」といった地味なダメージがボディブローボクシングで腹部に打つパンチ。すぐには倒れないが、じわじわと体力を奪い、後から効いてくるダメージの比喩。のように効いてくる時代が続くのかもしれません。
最強の生存戦略は「結果」より「座り」
そんな過酷な時代に、二人が辿り着いた結論は意外なものでした。それは、面白いことを言うことでも、圧倒的な結果を出すことでもなく、ただそこに居るのが自然だと思われる「座りの良さ」です。
最近は面白いことを言うより「座り」を意識してる。芸能界でずっと残ってる人、例えば所ジョージさんや有吉弘行さんは、実は「代表作」がないんだよね。でも座りが異常にいいから、みんな呼んじゃう。
それ、僕が言ってた「喉越し」と同じですね。何を飲みたいかじゃなくて、喉越しが良ければいい。僕もスタートアップ業界の「喉越しいい枠」として、無難に場を収めたいときに呼ばれてる気がします。
結果を出しすぎると、周囲の期待値が上がり、次に外した瞬間に「オワコン」だと言われてしまう。だからこそ、あえて当てすぎない。期待値を上げすぎない。そんな、一見すると消極的にも見える戦略が、AI時代には最も持続可能なのだという逆説的な結論に至りました。
圧倒的な結果、スキルの誇示、代表作の追求。
期待値を制御し、生態系の一部として馴染む。
「この人がいたほうが生態系が安定する」っていう、海藻とかミミズみたいな存在が一番強い。結果を出す競争はAIに任せて、人間は座りを極める。それが勝ちパターンだよ。
というわけで
AI時代を生き抜くためには、スキルを磨くこと以上に、自分の「座り」をどこに置くかを考えるべきだという、非常に示唆に富む回でした。無理に爪痕を残そうとせず、周囲に相談し、お歳暮のハムを贈るようなチャーミングさを持ち続けること。
完璧な成果はAIが届けてくれるからこそ、人間には「なんとなくそこにいてほしい」と思わせるような、心地よい隙が必要なのかもしれません。