新刊より旧刊が強い時代に、本はどう育てるのか?
最初の相談は、物語思考を「使いたくなる状態」にするにはどんな仕掛けが必要か、というものでした。AIのご神託は「読者が自ら体験し、実践し、学び合う場を用意することが最短ルート」と答えます。
つまり、コミュニティを作れ、ということですね。箕輪さんもこれには同意します。
なんかメモの魔力ってずっとロングセラーになってるんですけど、それやっぱ前田さんが頑張ってメモ魔塾っていう謎のメモを取り続ける集団を各地方にやって、そのコミュニティが動いてると。
ここから箕輪さんは、今の時代ならではの逆転現象を語ります。新刊より旧刊のほうが「新しい」というのです。
あの今の時代って新刊が新刊じゃなくて旧刊の方が新刊だったりするんですよ。
その本を買った時にナウで感想をつぶやいてる人とか動いてるコミュニティがあると、体験がそのままできるから新しいんですよ。
逆に、動いているコミュニティがない新刊は、面白いと言っても誰も連動してくれず、何も起きない。だからビジネス書ランキングでも、旧刊でずっと重版する本が強いという状況になっているそうです。
瞬間的に数万部売れる新刊よりも、ファンがついて育っていく本のほうが望まれている。物語思考も、箕輪さんのメモの魔力も、そうやって育て続けるタイプの本だと話します。
物語思考とか、僕で言ったらメモの魔力とか、ああいうファンがつくようなものは育て続けるっていうのが大事だし、コミュニティって本とかないと作りようがなかったりするんで。
けんすうさんも「なんかやろうかな」と乗り気で、YouTubeでオンラインに集まってみんなで物語思考をやってみるのもいいかもしれない、とアイデアを膨らませていました。
孫悟空とサイタマ、一発勝負ならどっちが強い?
2つ目の相談は「ドラゴンボールの孫悟空とワンパンマンのサイタマ、どっちが強いですか?」というもの。AIの答えは「サイタマの方が強い」でした。
けんすうさんは、孫悟空を最強だと思っている人は多いけれど、と前置きしつつ、サイヤ人の強さの本質を説明します。
サイヤ人って成長に限度がないのが強いんですよ。
ピンチだとか、死を経験するとより強くなるってとこが強いから、一発勝負だったら絶対サイタマが勝つよね。
つまり孫悟空の強さは「成長し続けること」にあるので、成長の余地を与えない一撃で決まる勝負なら、サイタマに軍配が上がるということですね。
ここでけんすうさんは、ワンパンマンという作品そのものの構造に話を移します。サイタマが絶対に勝ってしまうからこそ、いかにサイタマを出さないかが物語のカギになっている、というのです。
どんな強いやつがいても一撃っていうので全部ひっくり返すっていう構造なんですけど、これやり続けるとどんどんインフレして、もっと強いやつを出し続けて。
だんだんそのインフレが早すぎると物語がすぐ終わっちゃうので、もう限界まで出さないっていう。
箕輪さんはこれを「大喜利」に例えます。強い敵を丁寧に積み上げておいて、それでも一発で倒す。出さなければ出さないほど「振り」が効いてくる、という理解にたどり着きました。
だから出さなければ出さないほど振りが効いてるってこと。
箕輪さんは理想の展開として、ドラゴンボールで魔人ブウが登場し、ベジータや悟空がボロボロになり、みんな死んでいるようなクライマックスに、いきなりサイタマが「ちょっとお邪魔します」と一発で倒したら最高だ、と盛り上がります。けんすうさんも「振りが効いてれば効いてるほど面白い」と応じました。
「振りの長さ」が面白さを決める、という共通構造
けんすうさんは、この「強い振りからの一撃」という構造が、ワンパンマン以外の作品にも共通していると指摘します。例に挙げたのは「即死チート」という作品です。
死ねって思ったら相手が殺せるっていう能力を持った人のやつなんですけど、同じ構造なんですよ。
とんでもなく強い敵を1巻分ほどかけて描いておいて、でも「死ね」と思うだけで死んでしまう。それでも面白いのは、やはり振りが長いからだ、というわけです。
箕輪さんは、こうした斬新なアイデアは最初こそ話題になるけれど、それを続けられるかは別問題だ、と冷静に見ています。最初にその構造を作ったこと自体に価値がある、という見方です。
さらにけんすうさんは、ワンパンマンが下手なワンピースより海外で人気があるかもしれない、と話します。理由は「超強いやつが一撃で倒す」というわかりやすさです。
そして話は、ワンパンマンの原作者・ONEさんが今描いている「バーサス」という別作品へ。ワンパンマンの仕組みを、より持続的にしようとした作品ではないか、とけんすうさんは推測します。
(バーサスは)多分ワンパンマンの仕組みをもっと持続的にしようと思ったんじゃないかなと勝手に思ってるんですけど。
バーサスは、強すぎる魔族に対抗するため他の世界を召喚したところ、13個ほどの世界が一気に一つになってしまう物語です。それぞれの世界を滅ぼしかけている超強い天敵たちを、お互いに戦わせて潰し合わせるという構造だといいます。
この超強い天敵たちをお互いに戦わせて潰し合うっていう。だから最強生物誰が強いかみたいな。
超強い魔物が超強い宇宙人とぶつかったらどっちが勝つのか。それをずっと見続ける感覚で、けんすうさんは「すっげえ面白い」とおすすめしていました。
インプットとアウトプット、優先すべきはどっち?
3つ目の相談は「ついインプットばかりしてしまいます。人生を通してアウトプットとインプット、どちらを優先すべきでしょうか」というもの。AIの答えは「アウトプット」でした。
けんすうさんも同意です。インプットしてからアウトプットする、と思っている人が多いけれど、順番はむしろ逆だと考えています。
アウトプットがあるからインプットするっていう方がいいんじゃないかなと思ってますが。
一方で箕輪さんは、そもそもインプットとアウトプットに境目がない、という立場を取ります。
インプット、アウトプットって境目がないですね。逆に言うと。
箕輪さんは、質問を募集すると「インプット方法を教えてください」とよく聞かれるそうです。でも、その言葉自体がピンとこないと言います。
ついインプットばかりしてしまいますとか言うじゃん。その言葉が意味がわかんない。
もうインプットし続けてるから、インプットともいう名前もつけたくない。ずっとインプットしてるもん。
ここでけんすうさんが、対談相手の本やYouTubeを見るような「アウトプットのためのインプット」は頭に入りやすいのでは、と切り込みます。箕輪さんも、目的があるインプットはスポンジのように入る、と認めます。
ただ箕輪さんが本当に言いたいのは、その「量」でした。インプットとアウトプットを鬼のように繰り返している、その量こそが自分の異常性だと語ります。
多分ね、この量が大事で、どんだけインプットとアウトプットを鬼のように繰り返してるか。
けんすうさんは、大事なのは流れる量であって、インプットかアウトプットかはどちらでもいい、と受け止めます。箕輪さんも、両方を同時にやっているから、あまり意識しないと応じました。
インプットしてから出すのではなく、アウトプットがあるからインプットする。順番を逆にすべき
そもそも両者に境目はなく、鬼のように繰り返す「量」が本質。永遠に回り続けている状態
けんすうさんは、英語を学ぶなら本を読み続けるより、人と喋りながら相手の言葉をインプットして返すほうがいい、という例で締めくくります。高速でインプットとアウトプットを回すイメージですね。
村上隆が「謎の若者集団」を研究する理由
ここから話は、箕輪さんがなぜ「なんでこんなの見てるの?」というものまで見るのか、というインプットの中身に移ります。きっかけは、人間エネルギーを解説する占い師のようなおばちゃんのYouTubeを見つけて見入ってしまった、という話でした。
そして箕輪さんは、村上隆さんの「ゴールBの研究」というYouTubeを、年間の映像作品ベスト3に必ず入る面白さだと紹介します。ゴールBは、箕輪さんが本を出したコーチング会社の前身の名前でもあります。
(ゴールBは)はっきり言って村上隆さんレベルの人が注目するようなことではないわけですよ。
熱狂して限界突破を目指す若者が集まり、コーチングを始め、リーダーが辞めたり分裂したり会社名が変わったりする。一般の人にはどうでもいいようなその動きを、村上隆さんはずっと観察していたといいます。
勝手に人物相関図とか作って。会ったこともないのに、ゴールBの人に。
村上さんはその相関図の答え合わせのために、当事者であるゴールBのメンバーを集めて「あなたがここで裏切って昔の社長を追い出したんでしょ」といった推理をぶつけ、最終的にはリーダーの彫刻まで作ってしまう。メンバーは「どんな話なんすか」と笑っていたそうです。
箕輪さんは、村上さんが本当のトレンドではなく「時代のバグ」や「ノイズ的なもの」に注目していると解釈します。それを抽象化して作品にすることで、現代の日本を世界にプレゼンテーションしているのだ、と。
こういう本当のトレンドじゃなくて、なんかよくわかんない若者のYouTubeのノリとか、そういうのが好きなの。
箕輪さん自身も、自分のインプットはほとんどそういうものだと言います。完璧なトレンドより、ノイズのようなものにこそ普遍的な現代の何かがある、と感じているからです。
「生のインプット」だけが価値を生む理由
けんすうさんは、この感覚に共感します。カジサックさんやヒカルさんのような、一番うまくやっている綺麗なパターンではなく、まだうまくいっていない若者のほうにこそ、時代が凝縮されているのではないか、というのです。
(人気者は)一番うまくやってる一番綺麗なパターンだから。
箕輪さんは、村上隆さんがなぜゴールBに注目したかをさらに掘り下げます。コロナ禍でみんなが外に出られずYouTubeに向かった時、朝5時に起きて冷たいシャワーを浴びるようなルーティンを掲げ、コーチングをする若者が続々と現れた。それは現代の新宗教のようなものだ、と見立てます。
要は現代社会におけるなんか新宗教、自己啓発であり、宗教であり、スピリチュアルである。
そうした若者たちが、もともと鬱だったところからコーチングで人生が変わったと語る。それを村上さんは過去の何かと接続させながら、現代日本の若者を作品に落とし込んでいく、というのが箕輪さんの読み解きです。
けんすうさんは、この話を身近な例で言い換えます。ファッション雑誌を読むのではなく、それを読んでいそうな街中の人の服装を見たほうがトレンドがわかる、という比喩です。
ファッション雑誌読むのではなくて、それを読んでそうな街中の人の服装を見た方がトレンドがわかるみたいな。
箕輪さんは、この比喩が核心を突いていると言います。ファッション雑誌の情報は、編集者がすでに手を加えた「アウトプット済み」のものだからです。
ファッション雑誌見ても、それ編集者が作ってる情報で生ではないから、ファッション雑誌の情報をインプットとして入れても、もう人がアウトプットしたものなんだよね。
すでに誰かが解釈したものをインプットするのは、二次創作・三次創作の消費者、いわば「養分」だと箕輪さんは言い切ります。一方、まだ誰にも解釈されていない街の人の傾向は「生インプット」です。
その生インプットを何らかの形でアウトプットすれば、自分が初めてそれを解釈した人間になるから、そこに価値が生まれる。これが箕輪さんの結論でした。
箕輪が「現象」に飛び込む理由と、けんすうが物語思考に込めたもの
箕輪さんは、自分が「直木マン」として都市伝説の番組に出ることも、同じ発想だと明かします。都市伝説キャラになりたいのではなく、都市伝説がABEMAで放送されて大きく受けているという現象そのものを研究したい、というのです。
都市伝説がアベマでやっちゃうっていう、ちょっと異常性とそれがすごく受けてしまってるっていう、この現代の状況を、に入りたいんですよ。その現象を知りたい。
自分がキャラになりながら、なぜそこに視聴が集まるのかをメタな視点で観察している。ガーシーさんの件も同じで、なぜそれが受けるのかを一緒にやることで確かめたい、と箕輪さんは語ります。
だから箕輪さんは、自分をビジネス書編集者だと勘違いした人が「キーエンスで本を書きたい」と持ちかけてきても、興味がないといいます。石丸さんの本もコーチングの本も、本人やテーマそのものより「石丸現象」「若者がコーチングに助けを求める現象」に興味があるからです。
すべては時代考察が好き、というところに行き着きます。人間エネルギーの話も、箕輪さんにとっては時代考察の一種なのです。
ここで話は反転し、箕輪さんがけんすうさんに「では、なぜ物語思考を書きたかったのか」と問いかけます。一冊目にテーマを指定したわけではなく、けんすうさん自身が書きたいと思ったテーマだからです。
けんすうさんは、なぜ物語思考を書きたいと思ったのか。人を物語の力で思考させたいのか。
箕輪 さんからの質問
けんすうさんの答えは「人間はみんな平等に無価値だ、という考えを広めたいに近い」というものでした。みんな自分を大事な人間だと思うから、恐怖で動けなくなる。でも物語のキャラのように少し遠くから自分を見れば、最適な動きがわかる、という発想です。
箕輪さんは、これはけんすうさんが「インターネット人間」だからこそ出てくる考え方だと解釈します。一人ひとりの才能や性格に関係なく、引いて見れば全員がアルゴリズムで動くボットのようなものだ、という感覚です。
むしろそのアルゴリズムをハックして生きたいように生きちゃえばいいんじゃないのっていうこと。
けんすうさんも、100人の村で誰か一人が外に出て勇者になるなら、俯瞰すればその一人になったほうが得だと言いたいのかもしれない、と自分の動機を言語化していきます。
もう俯瞰してみると誰か一人行くから行った方が得じゃんみたいなのを言いたいとこなのかもしれないですね。
箕輪さんは、けんすうさんはあったかそうに見えて、実はフラットで俯瞰的だ、とまとめます。この人が悪いとか性格が良くないとかではなく、状況がそう設定されていただけだという見方ですね。二人はそろって「いい話だった」と締めくくりました。
まとめ
今回のご神託ラジオは、本のロングセラー、漫画の構造、インプット論と話題が飛びながらも、「すでに解釈されたものではなく、生の現象を観察する」という一本の軸が通っていました。二人がそれぞれのやり方で世界を眺めている様子が見えてくる回です。
- 動いているコミュニティがある旧刊は「体験できるから新しい」。本はファンとともに育て続けることに価値がある
- ワンパンマンや即死チートに共通するのは「強い振りからの一撃」。振りが長いほど面白いが、それを続けるのは難しい
- 箕輪さんにとってインプットとアウトプットは境目がなく、鬼のように繰り返す「量」こそが本質
- すでに編集・解釈された情報は「養分」、まだ誰も解釈していない生の現象を最初にアウトプットすることに価値が生まれる
- 箕輪さんは一貫して「現象」を観察し、けんすうさんは「みんな平等に無価値」という俯瞰の視点を物語思考に込めている





