善悪の前に、まず論理を知りたい
今年の2月頃から半年くらい、中東情勢の悪化がすごく深刻化しました。
ホルムズ海峡の危機があって、一旦落ち着いたかなと思いきや、また戦闘が再開したり。状況はどんどん変わっています。
そのなかで、今回はイスラエルの話を考えてみようと思うんです。
これは私の政治的立場がどうっていう話ではありません。今回のイランへの攻撃は、アメリカを含めて、大部分がイスラエルの判断の影響が大きいんだと思うんですよね。
だから、なぜイスラエルがそういう攻撃に向かっていったのか、彼らがどう考えているのかを知ること自体が、それはそれで大事なんじゃないかなと。
もちろん批判的に見ることも必要です。ただ、一旦その論理を飲み込んだ上で、じゃあどう考えるか、という順番なのかなと思っています。
関係は、時代でころころ変わる
まず知っておきたいのが、イスラエルとイランの関係って、時代によって全然違うということです。
イランは1950年代くらいまでは親米の政権があったりしたんですよね。それが1979年にホメイニ師が指導者になってイラン革命が起きて、反米国家になっていきました。
同じ頃にイラン・イラク戦争もありました。イラン側にもイラク側にも、ものすごい犠牲者が出ています。
その時アメリカはイラクを支援していたのに、湾岸戦争ではイラクがクウェートに侵攻して、最終的にイラク戦争ではフセイン政権を完全に転覆させるところまでやっている。
イスラエルも、時にはイランと協力するところがあったりします。
つまり、今一番の脅威になる国が台頭してきたら、普段はライバルの相手でも支援して抑え込もうとする。喫緊の脅威のほうを優先する訳ですね。
どことどこがどういう関係なのか、すごく流動的なんだなと改めて思います。
「自分たちの力しか信用できない」という発想
ここで、私がいちばん語りたいイスラエルの行動原理の話に入ります。
バイデン政権の前の国務長官の方がインタビューで答えているんですが、ネタニヤフさんはトランプさんの前のオバマさんやバイデンさんに対しても、イランへの全面的な攻撃を提案していたらしいんですよ。
ただ、オバマさんもバイデンさんもそれを断った。でも今回、トランプさんはそれを支持しているということなんですよね。
なぜイスラエルはそこまで強硬なのか。背景には、ユダヤ人への深刻な迫害の歴史があります。
ホロコーストのような虐殺があり、それ以前にもロシアでの ポグロム19〜20世紀にロシアなどで起きたユダヤ人への集団的な迫害・虐殺 のような迫害があった。そういう経緯のなかで、摩擦を生みながらイスラエルという国家が建国されました。
そういう経緯で生み出された国だからこそ、何が何でも守らなければいけないという意志が極めて強いんだと思うんです。
だから、身近な脅威がより大きな脅威になる前に、部分的に攻撃したり介入して止める。これがイスラエルの国家的な考え方なんじゃないかなと。
イスラエルは事実上の核兵器保有国とも言われています。
日本人の感覚だと、核兵器は抑止力であって使うものではない、と捉える人も多いですよね。でもイスラエルは、国家存亡の危機になれば、やむを得ない場合は使いかねないくらいの捉え方だと思うんです。
結局この行動原理は、常に自分の国が脅威にさらされていて、世界は実際には守ってくれない、という考え方に行き着きます。
自分たちの力しか信用できない。そのなかで、トランプ政権が融和的な今しかない、というのがイスラエルの考え方なんだと思います。
もちろん、それで巻き込まれる人たちがいます。その論理をそのまま肯定するかは、また別の話ですけどね。
陰謀論には、一歩引いて向き合いたい
もうひとつ、アメリカ側の背景も触れておきます。
トランプ政権の保守派のなかで、福音派と呼ばれる宗教団体の影響が大きいと言われています。ローマカトリックよりもかなり保守的と言われる立場の人たちですね。
この福音派に、親イスラエル派の人が多いと言われていて、それがトランプ政権の大きな支持母体になっているんです。
ここで言っておいた方がいいなと思うことがあります。ユダヤ人をめぐっては、裏から世界を牛耳っているみたいな陰謀論がすごくたくさんあるんですよね。
一部に金融で大きな富を築いた人がいて、有力政治家に資金提供して政府を操っている、という話です。
でも、こういう極端な考え方には一歩引いて向き合う必要があると思います。歴代のアメリカ政権が、イスラエルの立場をそのまま受け入れて判断してきたわけではないので。
トランプさんは歴代でもだいぶ親イスラエル派ですが、だからといって裏から操っている、はさすがに言い過ぎかなと。
アメリカにもいろんな団体があって、一団体だけで全てをコントロールできるわけじゃないですからね。
日本人として、どこに立つか
もちろん、パレスチナの論理も、イランの論理もそれぞれあります。イランのアメリカへの憎悪、パレスチナの人のイスラエルへの憎悪。
いろんな論理があるなかで、なるべく中立的に考えたい。でも、ここは譲れないという線もあると思うんですよね。
たとえばハマスという組織は、基本的にテロリストだという認識が、先進国のなかで概ね共有されています。テロ攻撃をしてきた経緯もあるので、それは非難されてしかるべきだと思うんです。
一方で、イスラエルもガザの一般の民間の人たちに多くの犠牲者を出しています。それはそれとして、人権問題として非難されるべきところがあります。
大事なのは、パレスチナのなかに平和的で民主的な政権が樹立されることと、イスラエルとパレスチナが共存できる状態にすること。どちらかがどちらかの存在を認めない状況にしてはならない、というのが日本政府の考え方なのかなと思います。
ヨーロッパやイギリス、フランスはもうパレスチナを国家承認する立場になっていますが、日本はまだ承認していません。承認する方向ではあるけれど、どのタイミングでするかがすごく難しい判断なんですよね。
まとめ
正直、日本人としてどう立つかは、私にもまだきれいな答えが出せていません。ただ、一つの海峡が封鎖されるだけでこれだけ経済に影響が出るのはオイルショック以来で、50年以上経っても中東で何かあれば経済が揺れる構造は変わっていないんだなと感じます。まずはそれぞれの論理を知ることから、一緒に考えていけたらと思っています。
- 今回の攻撃はイスラエルの判断の影響が大きく、まずその論理を知ることが理解の出発点になる
- イスラエルの行動原理は「自分たちの力しか信用できない」という強い危機感にある
- ユダヤ人をめぐる陰謀論には、一歩引いて向き合う必要がある
- ハマスのテロもガザの犠牲も両方が問題で、共存できる状態を目指すことが大切
