予備校で流れていた「友達経由の情報」
僕がずっと違和感を持っているのは、いい情報ほど口コミや人づてでしか出回らず、メディアやネットには出てこない、ということです。
原体験は高校時代に通っていた予備校です。「あの先生めっちゃいいよ」「あの教え方いいよ」「あそこの教室空いてるから潜れるらしい」といった話が、友達の間ですごく流通していました。
僕はその予備校に友達がめちゃくちゃいたので、そういう情報を手に入れて、こっそり授業に潜ったりしていたんです。
それで成績がぐんぐん上がりました。逆に情報を持っていない人は、適当に先生を選んで、教え方が良くなくて成績が上がらない、ということが起きていたんです。
これを見て、友達が多い人や人気者だけが情報を独占していてフェアじゃないな、と思いました。
翌年、浪人して別の予備校に行ったときは、まだ友達ができる前で、そういう情報が全然ありませんでした。良くないよねと思って、大学受験生向けのコミュニティサイトのようなものを作ったんです。
先生の評判から去年の模試の話まで、いろんな情報が集まるようになって、1日5000件ぐらい投稿がありました。完全に体感ですが、予備校に通っている人の半分ぐらいは知っている、くらいのインパクトがあったと思います。
地方にいる人や友達が少ない人でも、ある程度受験の情報が手に入るようになった。これがすごくいいなと思って、インターネットにのめり込んだ訳です。
いい先生を引き当てるだけで、偏差値は30から70になる
もったいない、と強く思った体験もあります。
現役の頃は日本史が全然ダメで、偏差値は多分30ぐらいでした。それで浪人のときは、日本史のいい先生がいるところに行こうと、『早稲田予備校』に通ったんです。
そこにいた石黒先生が、とにかく教えるのが上手かった。入試問題の分析をデータ化していて、「教科書では太字だけど、これは10年間で1回しか出ていないよ」といったことまで教えてくれるんです。それでいて話が超うまくて、論理的につなげて説明してくれる。
その先生に変わって、1回目の模試で多分70ぐらいまで行きました。古文でも、神がかって面白い授業を受けて、40ぐらいから70になるような経験をしています。
自分が勉強しているかどうかではなく、いい先生を引き当てるだけで偏差値は70まで行くし、そうでないと30になる。その差のでかさに衝撃を受けました。ショックだったに近いです。
しかも、そういう先生の授業は東京の都心に住んでいないと受けられません。地方からいい大学に行く難易度は上がるし、都心に住んでいてお金がある人は超有利、というのはすごくフェアじゃないと感じました。
(僕自身は予備校に年間12万円しか払っていないので、裕福だったから通えた、というわけではないんですが。)
だから、そういう先生の授業は、お金を払う必要があってもネットで全員が受けられるべきだと思ったんです。
ハウツーを集めても、ネットのいい情報はあまり増えなかった
その後いろんなサイトを作るときも、この体験がベースになっていました。
2009年ぐらいにはハウツーメディアをやっていました。主婦のノウハウはみんなめちゃくちゃ持っているのに、ネットを探しても全然ない。釣りの始め方を調べても、いい記事が全然ない。そんな状況だったんです。
たとえば『カルピス』のレシピは、会社としては何百も持っているのにネットにはなかったので、全部くださいとお願いして載せさせてもらったりしました。『気象庁』に取材して用語の意味を載せたり、ベンチャーキャピタルが実際何をしているのかを聞いてまとめたりもしました。
人づてなら聞ける情報を、つながりがない人や持たざる人にも届ける。それが一番テンションが上がることでした。
SNSやブログが発達すれば、そういう情報はどんどん増えると思っていました。でも結論、あまり増えなかった感覚があります。
いまだに、飲み会で手に入る情報のほうが、ネットより100倍、1000倍ぐらい貴重で重要だったりします。そして、それはマジでネットに出てこないんです。
企業の発信も、有名な社長が喋ったとしても、広報の人が「これは言わないでください」「これは消してください」とコントロールしています。直接社長に聞く話と比べると、めっちゃ一部しか出てこない。すごく不公平だなと思っています。
ポッドキャストなら、いい情報が外に出やすくなるかもしれない
だからネット上にもっと情報が出てきてほしい。いま、ポッドキャスト向けのサービス『Pody』を作っているのも、そのためです。ポッドキャストでいい情報を話すと、記事や画像になって拡散しやすくなる仕組みです。
ポッドキャストに期待しているのは、長く話せて、長く聞いてもらえること。それに、文章を書くよりずっと敷居が低いことです。
僕もいま5分喋るのは全然楽ですが、これを記事にしろと言われたら1時間とかかかってしまいます。しかも炎上しづらいんです。
『コテンラジオ』は、いままで本の中にしかなかったようないい情報を、日本のネットメディア史上初めてと言っていいぐらいちゃんと外に出したと思っています。
誤解のないように書いておくと、いまのメディア企業の方々がダメだとは全然思っていません。むしろ貴重な情報を出してくれている優秀なプレイヤーです。ただ、リソースに限りがあるんですよね。
すごく狭い話や、ニーズの少ない話はできない。パッと見せるために「全人類読んだ方がいい」のような刺激の強い表現にも寄りやすい。『X』だと特にそうなりがちです。
ブログは、みんな書けないし読まないということが証明されてしまいました。だから、そういう話を拾える場として、いまのところポッドキャストが一番いいだろうなと思っています。
個人が1時間喋るだけで超貴重な情報になって、聞く人は20人でも、記事で拡散したら200人が読んでくれる。そういうものが膨大に増えれば、情報においてフェアな社会が来るんじゃないかと思っています。
じゃあ皆さん、健やかな土日をお過ごしください。ありがとうございました。
まとめ
いい情報ほど口コミや人づてでしか流れず、つながりのない人には届かない。その不公平さを予備校で痛感したことが、僕がネットに関わり続け、いまポッドキャストに力を入れている理由です。
- 予備校では、友達経由の情報やいい先生を引き当てるかどうかで成績が大きく変わった
- ハウツーを集めたりSNSが広がったりしても、飲み会レベルの貴重な情報はネットにあまり出てこない
- メディア企業はリソースに限りがあり、狭い話やニーズの少ない話を扱いにくい
- 敷居が低く長く話せるポッドキャストを記事化して広げれば、情報の格差を縮められると考えている







