クライアントからの鋭い質問
今回のテーマは、あるクライアントから寄せられた質問がきっかけです。エピソード配信の約2ヶ月前にもらったもので、原文は次のようなものでした。
Claude Codeって敏田さん的にはどんな認識ですか? WordPressを手放すほどの破壊力はありますか?
敏田さんはまず、こうした「WordPressなくなる論」を公の場ではあまり発信してこなかったと前置きします。理由は、受け取り手の役に立つ発信ならよいものの、なくなる論はタイトルで人を引きつけるための、いわば「矢印が自分に向いた発信」になりがちだからです。
アテンションのためにこういうことを発信することは基本的にないですよ、というスタンスは先にお話ししたいなと思って。
とはいえ、WordPressの専門家として一意見を聞きたいと思う人は実際にいるはず。だからこそ今回は、あおるためではなく、聞かれたことに正直に答えるかたちで共有したいと語ります。
そもそもClaude Codeとは何か
まず前提として、Claude CodeAnthropic社が開発した、ターミナル(コマンドライン)上で直接ファイル操作やコード生成ができるエンジニア向けのAIツール。とは何かを整理します。AIを使うツールには、ChatGPT、Gemini、Claude、Gensparkなどがあります。これらは多くの人がブラウザやインストール型のアプリとして使っています。
一方でClaude Codeの「Code」が意味するのは、ブラウザやアプリではなく、エンジニアがコードを書くために使うエディター(テキストエディター)の中で使うタイプのAIだということです。こうした形式をCLIコマンドラインインターフェース。文字コマンドで操作する仕組み。ブラウザのようなグラフィカルな画面ではなく、ターミナル上で動く。版と呼びます。
ChatGPTやGeminiなどをブラウザやアプリで使う一般的な形。多くの人が使っている。
Claude Code、Codex、Gemini CLIなど。エディター内でテキストファイルやコードを直接扱える。
ChatGPTには同様の位置づけでCodex、GeminiにはGemini CLIがあります。今回の質問は、このエディター版としてのClaude Codeを想定したものです。
CLI版で何ができるのか。エディターの中なのでテキストファイルを直接扱えます。たとえば「こういうプログラムを作りたいから書いて」と指示すれば、ファイルを作ってくれます。既存の大きなプログラムファイルを読ませて「これは何をしているプログラム?」と聞けば、内容を読み込んで教えてくれます。
一般のWeb担当者は使いこなせるのか
今回質問してきたクライアントは、デザイナーでもライターでもない非エンジニアだったため、Claude CodeとWordPressの関連に気づいたこと自体、敏田さんは「情報感度が高い」と驚いたと言います。実際、この2つはかなり遠いもの同士です。
敏田さんが実際にした回答は次のようなものでした。
どのくらい先の話をするかで変わりますが、Claude Codeはあくまで制作ツールです。会社のWeb担当者が使いこなせなければ結局は外注になるので、そのコストを考えるとWordPressはまだ息が長いのではないか、と思っています。
とはいえ、サイトにブログがいらないケースや、ブログ記事をClaude CodeでHTMLとして作ることもできるので、一部のリテラシーが高い人たちはそちらに移行しようとしているようです。
また、Claude Codeは値上げしようとしているので、Adobeのような金額になったとき、利用者層がどうなるかも気になります。
この回答は数ヶ月前のものですが、今も大きくは変わらないと敏田さんは言います。ただし「AIが使えなくなったとき」という部分は、今冷静に見ると極端だったと補足します。仮にClaude Codeが値上げして使いにくくなっても、価格は平均化していく傾向があり、ChatGPTのCodexやGemini CLIなど代替のCLI版を使えるからです。
CMSを使わないサイト運用の現実味
質問の意図には、隠れた論点があると敏田さんは指摘します。回答の中の「ブログ記事をClaude CodeでHTMLで作れる」という部分は、実際に一部で起きていることだからです。
通常のWordPressの仕組みでは、記事を投稿するとデータベースに登録され、閲覧者がURLにアクセスすると、対応するデータをデータベースから取り出してページを生成し表示します。
これに対し、Claude Codeを使えば、デザインの雛形となるHTMLに文章を入れる形で、記事を一枚一枚直接HTMLファイルとして作れます。ブログ一覧(アーカイブ)ページも自動生成させ、検索に引っかかるようにする指示までできれば、実はWordPressは要らなくなる、というわけです。
AIがとにかくファイルを作って全部管理してくれる、その上でGitHubに更新をかけたタイミングでサーバーに自動で置く、ということが実はもうできるんですよ。普通に。
具体的には、GitHubコードやファイルのバージョン管理ができるサービス。無料でも利用でき、変更履歴を管理できる。にファイルを更新すると、GitHub Actionsコードの変更を検知して、サーバーへのアップロードなどの作業を自動化する仕組み。という自動化の仕組みで「更新があったらサーバーにファイルを置く」といった処理を走らせられます。WordPressのようにデータベースを介さず、HTML単体でブログをどんどん公開する方法が存在するのです。
「CMSやセキュリティのアップデートが面倒だから、全部HTML化しよう」という発想で、すでにこの運用をしている人もいる可能性がある、と敏田さんは見ています。これがWordPress不要論の一因になっているわけです。
さらに一段進んだ動きとして、WordPress以外のCMSを、AIに最適化した形で使うという可能性もあります。AIに特化したCMSが登場すれば、同じようなことがより簡単にできるようになり、その分WordPressが使われるパイが減る可能性もゼロではない、という見立てです。
WordPressを裏方に回すヘッドレス化
ここで出てくるキーワードが「ヘッドレス化」です。WordPressを表に出すのではなく、裏方に回してデータの倉庫としてだけ使い、表側はHTMLで表示させる仕組みのことです。
敏田さんはこの5月から、まさにこの発想を活かしたサービスを始めています。Astro表示速度が速い静的サイト(HTMLサイト)を構築するための最新のフロントエンド技術。という技術を使い、WordPressからデータだけを取り出してHTML化し、サーバーに上げることで、表側をHTMLファイルだけで表示できるようにするものです。
WordPressにドメインを紐付け、表側も裏側もWordPressが担当。データベースから都度ページを生成して表示する。
WordPressは記事データを持つ裏方(倉庫)に専念。表側はAstroでHTML化し、HTMLファイルだけで表示される。
この仕組みの大きなメリットはセキュリティです。前回のエピソード(Ep.28)で「WordPressを使わない方がいい人」の話をしたように、WordPressにはハッキングされてしまうリスクがあります。ヘッドレス化すれば、余計な攻撃を受けにくくなります。
既存の記事という資産を残したまま移行できるため、いきなりWordPressがなくなるとは考えにくい、というのが敏田さんの見立てです。ただし、ヘッドレスCMSが台頭してくる可能性はあります。「わざわざWordPressじゃなくてもよくない?」「もっとシンプルに記事データを管理するものがあればよくない?」という世界は出てくるかもしれない、というわけです。
結論:役割のグラデーションは変化する
タイトルに沿って結論をまとめると、現時点でClaude CodeがWordPressを完全に駆逐する、つまりなくなることは考えにくい、というのが敏田さんの答えです。
WordPressは「データを管理する部分」「表示する部分」「管理する部分」が分かれており、記事データを管理して出すCMSとして長い歴史があります。ひとつのベストな形として続いてきたため、いきなりなくなるのは想像しにくいと言います。
将来的には、データベースを使わずファイルだけで完結させ、管理をAIに任せる発想もあります。そうなればWordPressどころかCMS自体が要らなくなる、という極端な話にもなります。その手前として、ヘッドレスな使い方が広がれば、WordPressを使う人が減っていく可能性もゼロではありません。あくまでグラデーションのある変化だ、というのがポイントです。
私は将来のことも考えつつ、目の前の困ってる人を助けたいという気持ちで仕事しているので。グラデーションしているところで、いろいろできるかなと思っています。
あまり遠い先を考えすぎず、そのグラデーションの中で新しい技術を取り入れていきたい、と敏田さんは締めくくります。はっきりした答えではないものの、専門家として今どう考えているかが伝わる回答となりました。
まとめ
Claude Codeは強力な制作ツールですが、それがそのままWordPressを駆逐するわけではありません。鍵になるのは、Web担当者が使いこなせるかというコストの問題と、WordPressの既存資産をどう活かすかという視点です。
敏田さんの結論は「いきなりなくなることは考えにくい。ただし役割のグラデーションは変化していく」というもの。HTML直接運用やヘッドレス化といった選択肢が広がる中で、今あるWordPressの資産をどう守り、どう流用していくかを考え続けることが、これからのWeb戦略の要になりそうです。
- Claude Codeはブラウザ版AIと違い、エディター内でファイルやコードを直接扱うCLI版のAIツール。
- あくまで制作ツールのため、Web担当者が使いこなせなければ外注コストがかかり、WordPressの息はまだ長い。
- 一部のリテラシーが高い人は、AI×GitHub Actionsで記事をHTML化し、CMSを使わない運用を始めている。
- WordPressを裏方(データ倉庫)に回すヘッドレス化という選択肢があり、Astroでの静的化はセキュリティ対策にもなる。
- 結論はWordPressが急になくなることは考えにくいが、役割のグラデーションは変化していくというもの。既存資産をどう流用するかが重要。
