帰国後は食べたいものを食べまくる日々
帰国して一週間が経った長男に、まず日本の感想を聞くところから対談は始まりました。
いやー、まずご飯が美味しくて。一旦もう食べたいものを食べまくる一週間だった気がする。
外食はそれほどしていないものの、到着初日に空港のエアポートガーデンで焼肉を食べるなど、好きなものを好きなだけ食べる生活を送っているそうです。
一番食べたかったものを聞くと、意外な答えが返ってきました。
なんか地味だけど納豆とか。ないから、やっぱり。
前回は英語編として、在英5年で英語力がどう変わったかを話したとのことです。今回は勉強以外の日常生活がテーマになります。
寮生活から二人暮らしへ、住まいの変遷
まずは、これまでどんな暮らしぶりで過ごしてきたのかを整理します。
最初の2年間は、高校2年と3年をボーディングスクールの寮で過ごしました。
大学に入ると、1年生はほぼ全員が寮に入り、2年生からは自分で家を探す仕組みだったそうです。
寮に残る選択肢もあったものの、シニア枠だとスタッフに近い立場になり、イベント運営なども担う必要があるため、寮を出ることにしたと話されています。
友達も普通にもう一年でできたから、あんまりその寮に残って交流を深めなくてもいいかなと思って。みんないなくなっちゃうし。
大学2年、3年は、同じ大学で科学を学ぶ日本人の男の子とフラット(アパートの一室)を借りて二人暮らしをしていました。来年からはまた別の場所へ引っ越す予定だそうです。
何を作ればいいかわからなかった自炊のはじまり
食事の話に移ります。最初の3年間はずっと食事が用意されていたのかと思いきや、事情は少し違いました。
ボーディングスクールでは朝昼晩の食事がすべて提供されていました。ところが大学1年の寮ではケータリングが一切なく、夕飯すら出なかったそうです。つまり、いきなり全自炊のスタートでした。
ロンドンの大学はこうしたケースが多いようです。一方でオックスフォードやケンブリッジ、ダラムのようなカレッジ制の大学では、併設の食堂で食事が出るとのことです。
最初の自炊は手探りでした。
大変だったし、何作ればいいかわかんないから、とりあえずパスタを茹でてミートソースぶっかけて食べるみたいな。
市販の缶のミートソースを使っていましたが、それも高いと感じ始め、次第にソースから自炊するようになったそうです。
日本食から鶏もも解体まで、二人暮らしの自炊術
二人暮らしになってからは、パスタソースにも頼らない本格的な自炊をするようになりました。作るものは意外にも日本食が多いといいます。
その背景には、以前knockoutの妻が現地を訪れた際、スーツケース一個分の調味料を持って行ったことがありました。
片方、二個スーツケース持ってきて、片方が衣類入ってて、もう片方全部自分の調味料入れになってて。
みりん、酒、醤油、出汁、ごま油、鶏ガラスープなど、日本食や中華風の料理に必須の調味料が詰まっていたそうです。現地でも手に入るものの、少量でも日本の大容量並みの値段がすると話されています。
食材で苦労したのは、日本のような丸いキャベツがなく、とんがった形のスイートハートキャベツしか見つからなかったことや、もやしなどエスニックな食材が普通のスーパーにないことでした。
肉は鶏、豚、牛がそろっていますが、節約のため鶏胸肉や骨付きのドラムスティック、安いひき肉が中心だったそうです。
鶏もも肉は皮付き骨付きの大きなブロックで売られており、動画を見ながら自分でさばく生活を2年続けた結果、思わぬスキルが身についたと語ります。
この二年間ずっと鶏ももは皮付き骨付きのでっかいブロックで売られてて、それをいちいち剥がして一口大に切ってっていうのをやってたので。めっちゃ捌くの上手いの今。超いらないスキル。
自炊は二人の当番制で、交互に担当していました。相手は中学から自炊するタイプで、当初は腕前に差があったものの、横目で見ながら練習して追いついてきたそうです。
平日は毎日調理するのが大変なため、一度に6食や8食分をまとめて作り、タッパーに詰めて数日食べる方式を取っていました。これをミールプレップと呼ぶそうです。
基本のサイクルは、朝はパン、昼は作り置きのパスタソースでパスタ、夜は当番制の料理という流れでした。野菜はパスタソースやおかずに多めに入れ、食物繊維もしっかり取れていたと話されています。
一日十ポンドの予算と、浮いたお金の使い道
食費には明確な予算がありました。一日にマックスで使っていい額を10ポンド、日本円で約2100円に設定していたそうです。
イギリスは全般的な物価は高いものの、パスタは1キロ120円ほどと非常に安く、野菜も比較的安価です。一方で肉、特に魚はとても高いといいます。お米はAmazonで注文し、5キロで約3000円だったそうです。
ただ、実際には予算をかなり下回っていました。
作る量が多いと、それだけスケーリングで安くなるじゃん。だから多分今年だとトータル三点五ポンドから四ポンドぐらいで収まってる。本当に半分以下ぐらいでいけてる。
浮いたお金は、外食や旅行の費用に回していたそうです。外食は安いイタリアンでも一食3000円から4000円と高額なため、普段は節約し、友人と会うときなどに使う工夫をしていました。
半地下住居と壊れまくる家電
続いて住環境の話です。長男が2年間住んでいたのは半地下、いわゆるハーフベースメントの家でした。
韓国映画「パラサイト」で経済格差の象徴として描かれた半地下を思い浮かべるかもしれませんが、イギリスでは一般的な住居形態だといいます。道路から階段を下りた先に玄関があるタイプです。
日当たりは玄関口の大きな窓から採光が取れ、地下ゆえに温度変化に強いという利点もありました。
冬は結構あったかくて、暖房がしっかり効いて。で、夏は逆にその温度を一定に保ってくれるから、クーラーとか要らずに。
イギリスの住居にはエアコンがほとんどなく、あるのはラジエーターと呼ばれる暖房器具だけだそうです。近年の猛暑を考えると、半地下は涼しく過ごせる利点があったといえます。
住まいは家具付き(fully furnished)で、鍵を開けた瞬間からベッドやソファ、調理器具までそろっていました。しかし、いいことばかりではありませんでした。
家電が古いから結構頻度で壊れるのね。今年に入って三つ壊れて。電子レンジ、冷蔵庫、洗濯機。
生活必需品が立て続けに壊れただけでなく、その後の対応もひどかったといいます。管理する不動産屋がなかなか修理に動かず、交換された冷蔵庫は業務用の巨大なもので、なぜか冷凍機能がありませんでした。
そのため冷凍食品での節約ができず、ほぼ一年間その状態が続いたそうです。この対応の悪さと家の古さが、引っ越しを決めた理由になりました。
なぜ日本人と住むのか、交友関係のリアル
次の住まいは、別の友人3人との四人暮らしになる予定です。全員が男性で、日本人か日本人とのハーフだといいます。ここには本人なりのポリシーがありました。
自分がポリシーとしてあんまり日本人以外と住みたくないなみたいなのがあって。
外国人の友人の家を訪れたときの散らかり具合を見て、一緒に住むとフラストレーションが溜まりそうだと感じたそうです。日本人は清潔にしている印象が強く、文化や食事の好みも合わせやすいため、総合的に過ごしやすいと考えていると話されています。
寮生活では個室があったため、キッチンで少し話す程度で済みました。しかし生活空間を共にするシェア生活は、また事情が違うといいます。
一方、遊ぶときの交友関係は日本人だけにとどまりません。大学のジャパニーズソサエティで知り合った日本人のほか、学科の友人とも遊ぶそうです。長男の学科に日本人は本人一人だけだといいます。
長男が入っていたのはフォトグラフィーソサエティで、テムズ川沿いを歩きながら写真を撮るなどの活動を通じて、日本人以外とも交流していたそうです。旅行に行った相手は学科の友人で、香港、香港、フィリピンという顔ぶれでした。
なお、留学費用については、奨学金だけでなく自費留学の学生もいると語られています。留学生の授業料はホームスチューデントの約4倍で、長男の学費は今年約840万円になったそうです。住居費や生活費を含めると、一年で優に1000万円を超えるといいます。
浸透する日本カルチャーと、狙い目の海外公演
最後に、ロンドンの若者に流行っているカルチャーについて聞きました。本人はカルチャーに疎いと言いつつ、みんながやっているのはクラブに行くことだと答えます。
クラブは酒代が高いため、事前に友人宅でウォッカなどを飲む「プリ」をしてから行くのが定番だそうです。本人はまだ行ったことがなく、後悔していると話します。
大学一年生の時とかに行っておけばよかったなって。今になって後悔してる。いや、でもちょっと来年行ってみようかな。面白そうだし。
一方で、日本のサブカルチャーの浸透ぶりには目を見張るものがあるといいます。ナルト、ワンピース、ジョジョ、鬼滅の刃、呪術廻戦などが人気で、日本人だと分かると作品名を挙げて話しかけられるそうです。
日本のコミックマーケットに相当するコミコンというイベントが年二回開催され、多くの人が集まっているといいます。オタッキーなカルチャーに触れておくと、現地で友達ができるきっかけになるかもしれないと話されています。
ポケモンも人気で、ロンドンの自然史博物館(Natural History Museum)とのコラボもありました。長男は現地限定のトートバッグを買ったそうです。
メインのエントランスにクジラのでっかい骨があるんだけど、そこのイラストとポケモンが一緒にいるみたいな。そこでしか買えない。
食では焼肉ライクや丸亀(うどん)、ユニクロ、さらに抹茶ラテなどの抹茶系も流行っているそうです。韓国のK-POPの勢いも強いといいます。
日本のアーティストの海外公演には、意外な狙い目があると語られました。
日本だと取れないのよ、チケットが。倍率が高すぎて。だから狙い目の外国公演。これは行くしかないと思って身銭切って行って。
長男は米津玄師のパリ公演、YOASOBIとADOのロンドン公演に足を運んだそうです。客層には日本人だけでなく、さまざまな国籍の人がいたと話しています。
部屋を契約する際も、日本人だと受け入れられやすいという噂を聞いたことがあるそうです。先人が築いた評判に頭が上がらないと語り、自分もそれを汚さないよう部屋を綺麗に使わなければ、と締めくくりました。
まとめ
英国留学の日常は、節約のための自炊術と、家電が壊れまくる過酷な住環境の連続でした。それでも工夫を重ねる中で生活力が高まり、現地では日本カルチャーの存在感がじわじわと広がっている様子が語られました。
- 大学1年からいきなり全自炊が始まり、鶏もも肉の解体から作り置きまで生活力が鍛えられた
- 一日10ポンドの予算を実際は3.5〜4ポンドまで圧縮し、浮いたお金を外食や旅行に回していた
- 半地下住居は温度変化に強い利点がある一方、古い家電が次々と壊れ引っ越しの決め手になった
- 清潔さや文化・食の合わせやすさから、あえて日本人とのシェア生活を選んでいる
- アニメやポケモン、抹茶、日本人アーティストの海外公演など、日本カルチャーが現地で浸透している