📝 エピソード概要
本エピソードは、生命活動に不可欠な「ホルモン」の基礎知識と、その歴史を巡る物語です。ホルモンの定義や最初の発見(セクレチン)から、焼肉の「ホルモン」の語源まで解説します。特に、コレステロール由来のステロイドホルモンに焦点を当て、かつて動物臓器から抽出され超高額だったプロゲステロンを、メキシコのヤマイモから安価に大量合成する画期的な手法を開発した化学者ラッセル・マーカーの功績を紹介します。この発見が、現代医療、特に経口避妊薬(ピル)開発への道を開いた革命的な経緯を深く掘り下げています。
🎯 主要なトピック
- ホルモンの定義と初期の認識: ホルモンは血液に乗って特定の臓器に命令を伝える化学物質であり、かつて全てが神経の電気信号でコントロールされていると考えられていた常識を覆しました。
- 最初のホルモン「セクレチン」の発見: 1902年に発見されたセクレチンは、膵液の分泌を促す物質として、電気信号を切断しても臓器間の伝達が成立することを示しました。
- 焼肉「ホルモン」の語源: ギリシャ語で「刺激する」を意味する「ホルマオ」が医学用語の語源ですが、焼肉のホルモンは「放るもん」(捨てるもの)説や、活力を与えるスタミナ源説があります。
- ステロイドホルモンと医療利用の初期の課題: 男性・女性ホルモン(プロゲステロンなど)はコレステロール由来のステロイド骨格を持つホルモンです。糖尿病治療のインスリン成功後、これらの抽出が試みられましたが、豚の卵巣などから少量しか得られず、超高額でした。
- ラッセル・マーカーによる植物からの合成: 化学者のラッセル・マーカーは、メキシコのヤマイモに含まれるサポニン(ジオスゲニン)から、安価にプロゲステロンを合成する画期的な手法「マーカー分解」を発見しました。
- シンテックス社の設立と価格破壊: マーカーはこの発見を元にシンテックス社を設立し、プロゲステロンの価格を従来の100分の1以下に引き下げました。これは後の経口避妊薬開発の基盤となりました。
💡 キーポイント
- ホルモンは、身体の機能を整えるだけでなく、精神にも影響を与える広範な化学物質であり、血液を道路として利用し情報を伝達します。
- 医療用ホルモンの初期供給は、牛や豚などの動物の臓器を大量に集めて抽出するという、非常に非効率的でコストのかかる方法に頼っていました。
- ステロイド骨格を持つ性ホルモンは、タンパク質系のホルモンと異なり、体内で分解されにくい脂質系であり、化学合成の難易度が高かった。
- ラッセル・マーカーがヤマイモから安価にプロゲステロンを合成したことは、流産防止薬や避妊薬を含むステロイド薬の大量生産を可能にした産業上の大きな転換点となりました。

