2年連続の1次選考通過、ロンドンから授賞式へ
サイエントークは、第7回JAPAN PODCAST AWARDS ── 日本国内のポッドキャスト番組を表彰するアワード。リスナー投票などによる選考を経て、審査員が受賞作を選ぶ仕組みで行われていますの1次審査を通過しました。前年に続く2年連続の通過で、レンさんとエマさんはまず投票してくれたリスナーへの感謝を口にします。
いやー、まさかね、2連続いけるとはね。
特に今回厳しいって聞いてたからちょっとびっくりでしたね。
エマさんは、前年に一度通っていたぶん今年は正直期待していて、だからこそ悲願のような気持ちがあったと振り返ります。前年は感極まっていたレンさんも、今年はまだ泣いていないと話しています。
レンさんは当初、エマさんを驚かせる音源を収録の場で録ろうと考えていました。けれど通過を知らせるメールが見えてしまうため、そのドッキリは無理だったそうです。
いやほんとね、これ(1次通過は)みんなで起こせた奇跡ですよ。
ここから先は審査員による本格的な審査になるため、二人にできることは多くありません。エマさんは「真面目にポッドキャスターやるぐらいしかない」と話し、レンさんもひたすら更新を頑張ると応じています。
リスナーの愛称は「サイエンファミリー」、略して「サイファー」です。授賞式は3月18日に予定されていて、ロンドン在住の二人は話し合いの末、東京の現地会場へ行くことに決めました。
ロンドンから東京に行くっていうことで、結構大変ではあるんですけど。ノミネートしていただいたからには行きたいなっていう気持ちがあって。
なぜYouTubeではなく「ポッドキャスト」なのか
前年はお礼だけで終えたものの、今年はポッドキャストを始めてもうすぐ5年という節目もあり、レンさんは「なぜポッドキャストをやっているのか、何がしたいのか」を一度まとめて話したいと切り出します。エマさんは聞き手に回ります。
この回は初めてのビデオポッドキャストでもあり、YouTubeでも配信されています。ただしレンさんは、あくまで音声が基本のポッドキャストで、映像は感謝を込めたおまけコンテンツだと位置づけています。
なぜYouTubeではなくポッドキャストなのかという問いに、レンさんは一言で「ポッドキャストを信じているから」と答えます。その根拠として持ち出したのが、ブロードキャストとナローキャストの対比です。
それ(ブロードキャスト)に比べてポッドキャストはナローキャストだと思うよ。
ポッドキャストは、ラジオのように流しておけば聞こえてくるものではなく、聞く人が選んで再生する能動的なメディアです。レンさんは、その選ぶという行為自体が、話し手への「歩み寄り」だと話します。
不特定多数に同じ情報を幅広く届ける。テレビやラジオのように、つけておけば聞こえてくる
選んだ人が能動的に聞く。リスナー数は少なく広がりにくいが、ちゃんと聞こうとする人に届く
小難しい科学の話でも、ちゃんと聞いてみようという好奇心のある人がまず来てくれる。レンさんはこれを利点とする一方、エマさんが指摘するように、広がりにくいというデメリットでもあると認めています。
「欠如モデル」から「対話モデル」へ、科学コミュニケーションとの相性
レンさんがポッドキャストを信じるもう一つの理由は、科学コミュニケーションの歴史にあります。かつては、一般の人には知識が欠けているから正しい知識を入れればよい、という啓蒙的な考え方がありました。
レンさんによれば、この考え方は今ではすでに否定されています。聞き手は空っぽではなく、それぞれの知識や文化、社会的な背景を持っているからです。1990年代ごろから世界的に批判する人が出てきて、現在は「対話モデル」が推奨されているといいます。
エマさんは、テレビや新聞が一方向だった時代から、SNSで誰もが発信できる双方向の時代に変わったことと重ねて受け止めます。レンさんも、昔が講義なら今は会話だと応じます。
知識が欠如している一般の人に、上から正しい知識を入れる「講義」型の啓蒙
聞き手の知識や文化を尊重し、やりとりを通じて伝える「会話」型の対話モデル
さらにレンさんが注目するのは、出演者どうしの会話を聞くことで、リスナー自身も会話に参加している感覚になる点です。これが現代の科学を伝える最適解ではないかと言う人もいる、と紹介しています。
だからこそポッドキャストと科学ってすごい相性いいんじゃないかなっていうのが僕(は)思ってる。
アワードに選んでもらえるようになったことで、レンさんは信じてきた方向性が間違っていないと感じています。冒頭でYouTubeを勧めたこととの矛盾については、核はあくまで声であり、YouTubeはポッドキャストの存在を知ってもらう入り口になりうると二人で話しています。
理由1:研究者や受験生、頑張る人の背中を押したい
なぜポッドキャストで科学を語るのか。レンさんはその目的を3つ挙げ、1つ目を「研究者や受験生、勉強を頑張っている人を応援し、背中を押したい」と説明します。
動機には、研究者自身のSNS発信が「研究つらい」など暗いものに偏りがちだという問題意識があります。どの業界にも闇はあるものの、そればかり目に入ると、本当に目指したい人が目指したくなくなるのではないか、とレンさんは懸念しています。
これ僕自身が研究者だから言えるんですけど、そもそもの動機として研究者の発信がむっちゃ暗いとこがあったりするのよ、SNSで。
だからこそ、研究のいいところや面白いところを取り上げる場がポッドキャストにあってもいい、というのがレンさんの始めた当初の動機です。エマさんは、レンさん自身が楽しそうに話すことや、第一線の研究者をゲストに招くことが、研究者を目指す人の後押しになると話します。
レンさんは、以前ゲスト出演した阪神タイガースの近本光司選手を例に挙げます。プロ野球選手として頑張る裏側が見えるからこそ、より応援したくなる。研究も同じだと考えています。
研究の論文とかパッと見マジややこしいみたいな。だけど、そこにはちゃんと人が裏側で関わってて。あ、人じゃんみたいな。
受験生からのお便りが届くこともあり、エマさんは番組とリスナーが一緒に「頑張れ」と応援できることも喜びとして挙げています。
理由2:短い情報があふれる時代に、科学リテラシーを育てたい
2つ目の目的は、世の中の科学リテラシーが上がってほしいということです。レンさんはこれを、10年以上かかってもおかしくない長期の話だと前置きします。
背景には、ショート動画などが中心になり、複雑な話をすることが難しくなっているという感覚があります。「なんちゃらが危険」という単純な情報だけが流れると、それを信じて不幸になる人が出かねない。レンさんはパンデミックのときにもその危機感を覚えたといいます。
短い情報の流通
ショート動画などで説明の時間が与えられない
単純な主張
「なんちゃらが危険」だけが伝わる
鵜呑み
それを信じてしまう人が出てくる
不幸の可能性
誤った判断で不幸な人を生むおそれがある
だから長時間の話でもちゃんとこう理解できたり議論したりする場所みたいなのがものすごく重要だと思うの。
レンさんは、ポッドキャストが長い話をちゃんと理解し議論できる場所になれば、科学リテラシーもゆくゆくは上がっていくのではないか、という希望を語ります。
エマさんは自身の変化を話します。以前はデマをすぐ信じてしまうほうでしたが、懐疑的なレンさんと過ごすうちに「これおかしくない?」と思えるようになったそうです。
それって多分ずっとれんくんといるからだと思うんだけど、それと同じことがさ、こうサイエントークをずっと聞いてくれる人たちに起きたらいいよね。
エマさんは、前提となる知識や、情報が本当かを調べる方法を知っていればデマに気づけると補足します。レンさんは、正しい可能性があるものを探していくことが科学の本質だとして、それをみんなでできたらいいと話しています。
理由3:基礎研究の大切さを伝え、科学業界を盛り上げたい
3つ目の目的は、日本の科学業界自体を盛り上げることです。レンさんは、科学を楽しめる大人が増え、人間が積み上げてきたものに感謝できるようになることも大切ではないかと話します。
理解が進めば、基礎研究の大切さも伝わりやすくなるとレンさんは考えます。ノーベル賞受賞者が「基礎研究は大事」と言っても、なぜ大事なのかは学校で習わず、言葉だけではあまり刺さらないからです。
エマさんが挙げたのは、番組で以前取り上げた二進法 ── 0と1の2つの数字だけで数を表す方法。現代のコンピューターは、この仕組みを使ってあらゆる情報を処理していますの話です。もともとは純粋に数学的な興味から考えられたものが、発展した結果として今のコンピューターにつながったという流れです。
数学的な興味
実用を目的とせず、純粋な関心から二進法が考えられる
発展
研究が積み重なっていく
コンピューターの誕生
今の生活を支える技術として恩恵をもたらす
コンピューターを作ろうと思って二進法(を)やってないからね。
すぐに成果が出ないなら投資の意味がない、という短期的な見方は実際にあるとレンさんは認めます。それでも、マイクやビデオ、声を届けるインターネットなど、生活を支えるものはほとんど基礎研究から生まれていると話します。
レンさん自身も「めっちゃでかいこと言ってる」と認め、あくまで夢の話だとしています。エマさんは「夢は大きく」と応じました。
毎週の配信とコラボで広げる「入り口」
3つの目的とは別に、喋っていて楽しい、いろんな人と知り合えて面白い、という素朴な理由ももちろんあるとレンさんは話します。そのうえで、大きな目標のためにできることは、コツコツとポッドキャストを成長させることだといいます。
毎週の配信、ホームページやSNSでの入り口づくり、リスナーによる口コミや投票。レンさんは、こうした積み重ねがすべて先ほどの目標につながっていると考えています。
今後は大学や研究機関とのコラボレーションも広げたいとレンさんは語ります。自分の分野の魅力を伝えたい人はたくさんいるはずで、ショート動画が流行る時代だからこそ、文脈を大事にするポッドキャストでそうした人たちと連携したいという希望です。
エマさんが「株主総会みたい」と冗談を言う場面もありつつ、レンさんは、応援してくれる人に自分たちの方向性や気持ちを表に出すことが大事だと話しています。
一人でもそういうふう(に科学面白いんだな)に思ってくれたらいいなとか、応援してくれたら嬉しいなっていうのはほんとありますね。
「聞いている自分が好き」と思える番組とは?
科学とは別の願いとして、レンさんは「聞いている自分が好きになれる番組にしたい」と語ります。これはポッドキャストのリスナーとしての実感から来ているそうです。
ただし、教養マウントの道具にはしてほしくないとレンさんは強調します。知っているから偉いという態度ではなく、いろいろ知れることが楽しい、自分も頑張ろうと思える、そんな感覚を大切にしたいということです。
受験頑張ってるとき、サイエントーク聞いてたなみたいなさ。
(そう)なったら結構、それでまたその人がなんか伝える立場になっていくとかあったらすごく俺はいいと思うんだよね。
エマさんはこれを「リスナーさんの生活のそばにありたい」という言葉で受け止めています。
「やめようと思っていた」エマさんの1年目と今
エマさんが「ひたすら続けることが大事」と話すと、レンさんはアワードの結果がどうであれやめることは絶対にないと宣言します。1次審査の突破だけで、やる気をたくさんもらったそうです。
レンさんが最近感心しているのは、エマさんのやる気です。番組のショート動画はエマさんが編集していて、X、Instagram、YouTube、Spotifyなどで公開され、それをきっかけに番組を知る人もいるといいます。
ただ、エマさんの1年目はまったく違いました。いつやめようかと考えていて、何度も喧嘩になったと二人は笑いながら振り返ります。
1年目はいつやめようかと考え、「そろそろやめさせて」と3回ほど伝えて喧嘩に
ショート動画の編集まで担い、やる気が上がっている。アワードの舞台にも立つ
てか1年目はいつやめようかなって考えてた。なんかそろそろやめさせてくんないかなみたいな話を3回ぐらいした気がする。
それでも今のエマさんは、ポッドキャストをやっていなければ授賞式に行くことも、コラボした人たちと知り合うこともなかったと話し、やってよかったと感じています。喋るのは今も苦手で趣味とは言えないそうです。
一方のレンさんは、ポッドキャストの作り方を語る別番組「ポッドキャスト研究室」まで始めるほどの入れ込みようです。そこでも「声ってすげえな」と感じていると話し、リスナーの応援がなければ心が折れていたかもしれないと感謝を重ねました。
JAPAN PODCAST FESTIVAL 2026に出演決定
最後のお知らせは別日収録で、3月14日(土)と15日(日)に東京・赤坂サカス広場で開かれる新イベント「JAPAN PODCAST FESTIVAL 2026」への出演が発表されました。サイエントークの出演は、3月15日(日)の午前中の予定です。
参加者には芸能人も多く、一般のポッドキャスターは少ないといいます。エマさんは、ここにサイエントークがいていいのかと思うほどの顔ぶれだったと話しています。
フェスはアワード授賞式の数日前にあたり、二人はその時期に日本へ行きます。詳しい内容はSNSやポッドキャストで今後お知らせされる予定です。
出演者の話題では、レンさんが中学校のサッカー部時代、ゴールを決めると友達とアンガールズの「ジャンガジャンガ」をゴールパフォーマンスにしていたという思い出も飛び出しました。今考えるとかなりの煽りだったと笑っています。
当日は会場を回りながら、話せる雰囲気ならリスナーと直接話したいと二人は期待を寄せます。日本に戻ると関西が拠点になるため、東京のリスナーと会える貴重な機会だといいます。
なんかラジオ局の人聞いてないかな、これ。聞いてないか。誰かオファーしてくんないかな。
せっかく日本に行くので、東京でのメディア出演などのオファーも歓迎だと呼びかけ、改めて投票への感謝を伝えて回は締めくくられました。
まとめ
サイエントークは第7回JAPAN PODCAST AWARDSの1次選考を2年連続で通過し、この回ではレンさんが番組を続ける理由を初めてまとめて語りました。核は声であり、対話のメディアとしてのポッドキャストが、科学を伝えることと相性がよいという考えが一貫しています。
- ポッドキャストは選んで聞く「ナローキャスト」で、対話モデルが推奨される現代の科学コミュニケーションと相性がよいとレンさんは考えている
- 目的は、頑張る人の応援、科学リテラシーの向上、基礎研究の価値を伝えて科学業界を盛り上げることの3つ
- 「聞いている自分が好き」と思える、リスナーの生活のそばにある番組を目指している
- 1年目はやめたがっていたエマさんも、今はショート動画の編集を担うなど意欲が高まっている
- 3月15日午前にJAPAN PODCAST FESTIVAL 2026へ出演し、3月18日の授賞式にもロンドンから参加する予定



