📝 エピソード概要
本エピソードでは、古代から現代までの「痛み」と人類の戦いの歴史を、手術、麻酔、そして鎮痛薬の発展という観点から深掘りします。麻酔や消毒がなかった時代の凄惨な手術現場から、笑気ガスやクロロホルムといった麻酔薬の発見、そしてヴィクトリア女王の出産が社会に与えた影響を解説。さらに、痛みのメカニズムに関するゲートコントロール説の紹介や、アスピリン、分子標的薬など、現代に至る鎮痛科学の進化の道のりを追います。
🎯 主要なトピック
- 麻酔なき時代の手術: 文字の発明以前から頭蓋骨穿孔術などが行われており、当時は麻酔も消毒もなく、手術は患者にとって極めて過酷な試練でした。
- 早業外科医の登場と過酷な現場: 苦痛を最小限にするため、手術の「スピード」が最も重要視され、中世には床屋が外科医を兼ねるなど、手術室は常にカオスな状態でした。
- 全身麻酔の発見と進化: 19世紀に笑気ガス、エーテルが試され、その後クロロホルムが登場。これにより、外科手術から苦痛を取り除くことに成功しました。
- ヴィクトリア女王による麻酔の普及: 出産の痛みを神の試練とする宗教的考えがあった中、ヴィクトリア女王がクロロホルムを使用し、麻酔の社会的受容を一気に高める転機となりました。
- コカインから局所麻酔薬へ: 精神分析学の父フロイトらの研究から、コカインの局所麻痺作用が発見され、目の手術や指の手術などに使える局所麻酔として応用されました。
- 「痛み」の科学的理解(ゲートコントロール説): 1965年に提唱された説により、脊髄に痛みの信号を脳へ送るかどうかを制御する「ゲート」があるという、痛みの神経メカニズムの基礎が確立されました。
- アスピリンと鎮痛薬の近代化: 柳の皮に含まれるサリチル酸から、副作用を抑えたアスピリンが開発され、現代の疼痛治療薬や、特定の標的を狙う分子標的薬へと進化しました。
💡 キーポイント
- 麻酔がない時代の手術の死亡率は約50%に及び、痛みによるショック死も一般的でした。
- 痛い部分を無意識にさすって和らげる行為は、触覚信号(太い繊維)が痛覚信号(細い繊維)の通過をブロックするというゲートコントロール説で説明できます。
- アスピリンは非常に画期的な鎮痛薬でしたが、効くメカニズムが解明されるまで約70年間、理由が不明なまま使用され続けていました。
- 現代の鎮痛薬には、炎症の原因物質を抑えるアスピリン系と、より脳に作用して鎮痛効果を発揮するアセトアミノフェン系などがあります。
- 最新の治療法として、VR技術を用いた鎮痛法や、特定の炎症司令塔を狙い撃ちする分子標的薬が活躍しており、特にリウマチ治療に大きな進歩をもたらしています。

