HOKAの靴をすすめ続ける桜林さんの「そもそも思考」とは?
本題の相談に入る前の雑談では、桜林直子さんがゴールデンウィークの旅行の話をしています。桜林さんは知らない場所を歩くのが好きで、一人旅だと1日2万5千歩ほど歩くそうです。
旅行先で、ぺたんこのスニーカーを履いていた友人が「足が疲れる」とこぼしたため、桜林さんはクッション性の高いHOKAの靴をすすめました。友人は立ち仕事で前かがみの姿勢が多く、車移動中心で運動不足だったこともあり、購入を決めたといいます。
また買ったんだ。それ(HOKAの靴)大丈夫?アフィリエイトリンク渡した?
HOKAしか儲からないネズミ講みたいなことになってるんだけど、私は一切儲からないんだけど。
桜林さんがその友人から指摘されたのは、靴選びの理由の立て方でした。「たくさん食べたいから運動したい」「歩きたいから靴や体を整えておきたい」というように、目的から逆算して行動を決める癖があるというのです。
なんかあんたはいつもそうだねみたいな。この靴可愛いから買おうとかじゃないんだねみたいな。
欲求
たくさん歩きたい、好きなものを食べたい
手段
運動する、歩く
準備
靴や体を整える(HOKA、整体など)
中里祐次さんはこれを「欲望をロジカルシンキング的に考えている」と表現しました。桜林さん自身は、目的がはっきりしているから「これ何やってんだっけ?」と疑問が湧かず、運動を続けられるのだと話しています。
むしろそこ(目的)がないとすぐそうなっちゃう。え?これ何やってんだっけ?とか意味あんだっけ?とかなっちゃうから。
次女が発達障害グレーゾーンかもしれない、という父親からのお便り
今回のお便りは、ラジオネーム匿名さんからのものです。番組の進行役である中里さんの紹介のあと、桜林さんが読み上げました。
私は10歳長女小5と8歳次女小3、4歳長男年中の3児の父親です。次女が発達障害グレーゾーンに当たるのではないかと思っており、親として今後どのように向き合っていけば良いのか悩んでおり、お便りいたしました。
特に医師から診断を受けたわけではないのですが、以下のような特徴からグレーゾーンではないかと考えています。忘れ物が多い。言われたことに対して返事はするが行動できない(本を読んだり他のことに集中していると返事もできない)。調子に乗っていると声の音量調整や力の加減ができない。勉強していてわからない問題にぶつかると激しい癇癪を起こす。些細な行動を何度指摘しても直らない。物理的な距離が近く、私の行動範囲を邪魔するなどなど。
長女は比較的周りと歩調を合わせるのがうまく、親子のコミュニケーションや意思の疎通は取りやすいのですが、次女と向き合うとどうしてもイライラが募ってしまい、ついつい声を荒げてしまいます。発達障害に関する診断を受けることで何か変わることがあるのでしょうか。診断を受けるにはどのような病院を受診すれば良いのでしょうか。今後、次女とうまく向き合っていくためにはどうしたら良いでしょうか。
相談の中心は、診断で何が変わるのか、どこで受けるのか、次女とどう向き合えばよいのか、という3つの問いです。中里さんはまず、この父親が次女と「うまく向き合っていきたい」と考えている点を確認しました。
診断を受けると何が変わるのか?
診断の場所について、中里さんは病院やそうした施設で受けるものだと答えています。そのうえで「何か変わるのか」という問いには、次女さん本人が変わるというより、周りの大人に共通認識が生まれることが大きいと説明しました。
(診断で)次女さんが変わるっていうよりも、受けた結果を見て、あ、こういう対応をしてった方がいいんだっていう共通認識が次女さんの周りの方にも生まれてくる感じかなと思っていて。
中里さんによれば、忘れ物が多い、返事はするが行動できないといった特徴は、確かに発達の傾向があるお子さんに見られるものです。ただ、それを指摘したから改善するという話にはならず、父親や母親、学校の先生が対応を変えていくことがポイントになるといいます。
次女本人の行動を指摘して直そうとする
父親・母親・学校の先生など周りが対応を変えるという共通認識が生まれる
中里さんはこの相談のケースについて、診断を受けていいのではないかという考えを示しています。
WISCでは何がわかるのか?
桜林さんが「診断では何をもとにグレーかどうかを言われるのか」と尋ねると、中里さんは医師の診察に加えて、よく使われる検査としてWISC ── ウェクスラー式の児童向け知能検査。全体の数値だけでなく、複数の指標ごとの得意・不得意を把握できるのが特徴です(ウィスク)を挙げました。
中里さんの説明では、今のWISCには言語理解、知覚推理、ワーキングメモリ、処理速度の4つの指標があります。発達の特性があるお子さんは、この4つに凸凹が出やすいそうです。
言葉を理解する力
見たものから推理する力
情報を一時的に覚えて扱う力
作業をすばやく処理する力
中里さんは自分の子どもの例として、言語理解はとても高い一方で処理速度が低いケースを挙げています。この場合、内容は理解できているのに、答案用紙に書くのが遅れてしまうといったことが起こり得るといいます。
100が平均で、だいたい発達の特性があるお子様とかだと、本当にその平均と一番高いところと低いところとかで30とか40とか差があったりして。
結果は数値で出るため、桜林さんは「わかりやすい」と反応しました。中里さんは、診断はWISCと医師の診断の両方で行われ、WISCは多くの場合受けることになるだろうと話しています。
「なんでできないんだ」が「これが苦手なんだ」に変わる
WISCを受けると、その子の特徴がわかり、それに合わせた対応を周りが心がけられるようになります。桜林さんは、ただイライラするよりもいいと受け止めました。
なんでできないんだって思ってたことが、まあここがこうだから、この子はこれが苦手なんだなっていうことが、数値なりなんなりで理解するから。
イライラしても意味ないみたいなことがわかるね。
一方で中里さんは、発達障害の特徴が定型発達 ── 発達障害の特性が目立たず、多数派の発達の道筋をたどっているとされる状態を指す言葉ですの子にまったくないわけではないと付け加えます。忘れ物も、返事だけして動かないことも、定型発達の子にも起こり得ることです。
桜林さんは、診断を受けたり学んだりして知識が増えることで、次女だけをじっと見つめるのとは違う見え方ができるかもしれないと話しています。
学校とのやりとりで診断はどう役立つ?
中里さんは、学校側に何かを伝えたほうがよい場面でも診断が役立つと説明します。たとえば激しい癇癪が学校で問題になっている場合、医師から得た対応の助言を学校に伝えれば、学校側もそれに沿って対応しやすくなるといいます。
対応した方がいいですねっていう風に周りをこうちょっと固められるというか。
桜林さんは、自分たちが小学生だった頃は発達障害への理解が皆無で、できない子を怒ったり、見せしめにしたり、できるまでやらせたりする先生がいたと振り返りました。
今はさすがにないのでは、という桜林さんの問いに、中里さんは「なくもない」と答えています。学校、先生、校長、地域によって差が激しいそうです。
診断・相談
医師に学校での困りごとを相談する
助言
周りがとるべき対応について回答をもらう
共有
学校側にその内容を伝える
連携
学校も対応を合わせ、無理やりさせない方向で話ができる
向き合いたいと思えている時点で大丈夫
中里さんは、この父親が次女とうまく向き合いたいという気持ちでお便りをくれていることに注目します。仮に診断で父親自身が対応を変える必要があるとわかっても、この方なら変えられるだろうと話しました。
まあそもそもさ、次女とうまく向き合っていくためにどうしたらいいか考えてる時点で大丈夫よって思っちゃうよね。
桜林さんはここで、自身の父親の話をしています。今の時代に数値化したら発達障害の傾向がかなりはっきり出ていただろう父親は自覚もなく、似た特性を持つ桜林さんに向き合おうとはせず、「こいつはダメだ」と決めつけていたといいます。
それを言われることで子供も洗脳されて、あ、ダメなんだみたいになってた。最悪のパターンだったので。
そうした経験から、桜林さんは「うまく向き合いたい」と考えている父親の姿勢そのものを、とてもいいと評価しています。
発達の特性がある子への対応は、どの子にも有効?
中里さんが常々感じているのは、発達の特性があるお子さんへの対応の考え方が、どの子どもにも有効なことが多いという点です。子どもにやらせたり指導したりするのではなく、環境を整えた結果として子どもが自由に生きていける、という方向性です。
診断は予約が取れず時間がかかることもあるため、中里さんは待つ間に発達障害の本を読むことをすすめました。中里さんがリスペクトしているという本田秀夫 ── 児童精神科医。発達障害に関する一般向けの著書を多数出しており、特性を「治す」より環境側の工夫を重視する考え方で知られています先生の著書が、何冊も出ているそうです。
発達障害だろうがグレーだろうが白だろうが、子供がのびのびできるやり方がいいよねっていうのはみんな同じだよね。
桜林さんは、親が「こうすべき」という呪いの種を持ってしまうのはあるあるだと話します。忘れ物はないほうが本人は困らないとしても、「宿題は絶対にやらなければいけない」「先生に迷惑をかけてはいけない」といったふわっとした思い込みを、一つずつ疑ってみる視点が大切だといいます。
中里さんも、発達の特性がある子や不登校の子の子育てを学ぶと、従来の子育てとまるで違うことが多いと応じました。そこで初めて、親世代から受け継いだやり方が自分の子には合っていないと気づく人が多いそうです。
正解探しをやめられない大人はなぜ生まれる?
桜林さんは、雑談サービスで大人一人ひとりの話を聞く仕事をしています。そこで非常に多いのが、大人になっても正解を探してしまう、周りが喜ぶことを優先してしまう、という癖が抜けない人だといいます。
それ(周りに合わせること)がすごく上手になっちゃったけど、でもそれをやりすぎて、じゃあ自分はどうしたいんだっけ?とか、自分の考えって何だっけっていうのがすごく下手、わかんなくなっちゃったっていう人がもうすっごいたくさんいる。
桜林さんは、何十人、何百人とそうした話を聞いてきた立場から、「みんなが同じことをできた方がいい」「できない人はダメ」という教育の結果として、悩み続ける大人が多いと見ています。ただ、その教育にうまくはまった子もいるため、全部が間違っているとは思わず、合ってないことをさせるのは良くないという考えです。
中里さんはこれを、同調圧力型の教育による大きな呪いだと表現し、桜林さんは「後遺症とも言える」と応じました。全教科の平均点を上げるという考え方も、その一つだといいます。
得意なことじゃなくて、できないことを伸ばさなきゃダメですよねって大人になっても思ってる。できないことを探して、それをバレないように埋めなきゃって頑張っちゃうとか。いいよ、やんなくてみたいな。
「その子一人の観察」から始まる子育て
中里さんによれば、発達の特性がある子の子育てを学ぶと、「その子一人の観察から始まる」という考え方が出てきます。周りや学校の一般論ではなく、その子がどんな行動をとり、何に困り、何に夢中になっているかを見ていくのです。
周りに合わせる、全教科の平均点を上げる、できないことを埋める
本人の困りごとを解き、好きなものを受容し、一緒にやる
桜林さんはこの2つを「真逆」と表現しました。中里さんは、長年発達の特性がある子や不登校の子の子育てを学ぶ中で、この方向性を本来あるべき姿だと感じてきたといいます。
その子本人が好きなものとかを受容してったりとか、一緒にやったりとかすると、やっぱなんか生き生きしてくるんですよ。
凹を埋めるより凸を伸ばす、そして自信を持てること
桜林さんは、どんな子どもにも凸凹は必ずあると話します。これまでの教育は凹を埋めて丸い形にしようとし、凸の部分は無視されがちでしたが、将来すべての教科をやるわけではないので、凸を伸ばしたほうがいいという考えです。
桜林さん自身は、自分の子どもには意識的にいいところを見つけて伸ばしてきたといいます。できないことは「まあまあ誰かがやるよ」と伝え、できることや好きなことの大切さを伝えてきました。
それってまあやっぱり結局自分がされたかったことなんだろうなって思って。
桜林さんは、凹の部分を怒られ、できないことばかり言われてきたから自信をなくしたのだと振り返っています。
中里さんは、Branchで「好きなことやスキルがあったほうがいいか」とよく聞かれるそうです。それに対して中里さんは、自分は生きていて大丈夫だ、新しいことを始めても自分ならできるかな、という感覚さえあれば、最悪スキルがなくてもいいと考えています。
そのためには、自己否定をするような環境を減らすことが大切だと中里さんは言います。全部が平均点の子などいないので、平均点を目指すとできないところを叩かれることになるからです。だからこそ、パーソナルにその子本人のことを見ていくことが自信につながる、というのがこの回の結論です。
その子本人を見る
困りごと、夢中になっていることを観察する
自己否定の環境を減らす
できないところを叩かない
自信が育つ
自分ならできるかな、という感覚が持てる
まとめ
次女が発達障害グレーゾーンかもしれないと悩む父親に対し、中里さんと桜林さんは、診断は本人を変えるためではなく周りの対応をそろえるためのものだと伝えました。そして発達障害かどうかに関わらず、その子本人を見て凸を伸ばし、自信を育てる関わりが大切だと語っています。
- 診断の主な意味は、父親・母親・学校など周りが対応を変える共通認識を持てること
- WISCでは言語理解・知覚推理・ワーキングメモリ・処理速度の4指標の凸凹が数値でわかる
- 発達の特徴は定型発達の子にもあり、グラデーションとして捉えるとよい
- 診断を待つ間に、本田秀夫先生など発達障害の本で学んでおくのがおすすめ
- できないことを埋めるより、その子本人を見て得意を伸ばし、自信を育てることが大切






