観測史上1位が相次いだ豪雨、あなたの家は大丈夫でしたか
今回のテーマは「千葉豪雨から考える、水害への本当の備え」の後編です。前編では保険の話が中心で、入っていれば何でもいいわけではないという内容でした。
たとえば車の場合は車両保険に入っていれば使えますし、通常の火災保険では床上浸水か床下浸水かで扱いが変わるという話でした。まだ前編を聞いていない方は、そちらから聞いてみてくださいね。
この後編を収録する前後も、記録的な大雨のニュースが続きました。8月26日水曜日には、福岡博多で40.4度を記録し、福岡市内で観測史上初の酷暑日になったそうです。
ところが同じ日の夕方、一転して大気が不安定になり、中央区では1時間に67ミリという激しい雨が短時間で降りました。道路の冠水やマンホールからの噴き出し、一部停電もあったといいます。
翌日は石川県と富山県で観測史上初のレベル5、大雨特別警報 ── 数十年に一度レベルの、重大な災害が起こるおそれが著しく大きいときに気象庁が出す最大級の警報。ただちに命を守る行動が求められますが出ました。激しいところでは24時間で313ミリ、1時間で82ミリの雨を記録しています。
この石川・富山の豪雨は、社会的・経済的な影響としておよそ10億から40億くらいになる見込みとのことです。
つまりこの2週間で、千葉、福岡、石川、富山と、離れた地域でいずれも観測史上1位を更新する大雨が相次いだことになります。伊聞いている人やその家族・友人の自宅が大丈夫だったかを気づかいながら本題に入っていきます。
1時間に何ミリって、実際どのくらいの雨なの?
まず伊藤さんが取り上げるのは、被害を減らすために事前にできることです。とはいえ「1時間に何ミリ」という数字は、なかなかピンとこないですよね。
その雨がどれだけ激しいものなのか、数字と目の前で降ってる雨とがなかなかリンクしないんですよね。
そこで伊藤さんは、気象庁が定める1時間雨量の強さの目安を紹介します。10〜20ミリはやや強い雨で、地面一面に水たまりができるくらい。20〜30ミリは強い雨で、傘を差していても濡れる土砂降りです。
30〜50ミリになると激しい雨で、道路が川のようになったり、ハイドロプレーニング現象 ── 濡れた路面を高速で走るとき、タイヤと道路の間に水の膜ができて車が浮き、ハンドルやブレーキが利かなくなる状態。アクアプレーニング現象とも呼ばれますが起こったりします。
50〜80ミリは非常に激しい雨。滝のように降り続いて視界が悪くなり、車の運転自体が危険になるレベルです。
そして80ミリ以上は猛烈な雨。息苦しさを感じるほどの圧迫感で、屋外にいる場合は頑丈な建物の2階以上に避難すべきレベルだといいます。
この目安に当てはめると、福岡の67ミリは非常に激しい雨、石川・富山の82ミリは避難すべき猛烈な雨だったことになります。
そして千葉市中央区では、1時間になんと115ミリを記録していました。これだけ降っていたら本当に怖かっただろうと想像します。
雨の数字と行動を結びつけて、通知で備える
1時間に115ミリはとても特別な例だと思いたいところですが、近年の異常気象で、降ったときに激しくなる傾向が強まっています。線状降水帯もできやすくなっていますよね。
だからこそ伊藤さんは、雨の数字と自分の行動を結びつけて知っておくことをすすめます。「80ミリ以上で大きな水害が発生していたよね」と思い出せるようにしておく、という感覚です。
とはいえ、いつもニュースや天気予報をチェックしているわけではありませんよね。そこで役立つのがお天気アプリや自治体の通知だといいます。警報級のものは通知が届くようになっています。
地震の緊急通知は多くの人のスマホに届きますが、雨の防災アプリは入れていない人もいるようです。伊藤さんは複数の防災アプリを入れていて、音が鳴りすぎて大変なほどだとか。
職場の同僚のスマホは音が鳴らないので、入れていないのかなと感じることもあるそうです。それでも、自分の身を守るために入れておいた方がいいというのが伊藤さんの考えです。
被害に遭ったら知っておきたい「雑損控除」
逃げられたとしても、家や車が被害を受ける可能性は高いですよね。そこで伊藤さんが取り上げるのが、被害に遭ったときに知っておきたい税制です。
保険で埋まらない自己負担分が出たとき、確定申告とセットで使えるのが雑損控除 ── 災害や盗難などで生活に必要な資産に損害を受けたときに、所得から一定額を差し引ける所得控除。受け取った保険金は差し引いて計算しますです。
これは、災害で住宅・家財・車両など、生活に通常必要な資産に損害を受けたときに使える所得の控除です。受け取った保険金分は差し引いて、自己負担分で考えます。
たとえば火災保険で住宅や家財がすべて補填された場合は、雑損控除は使えません。逆に、結局自分で何百万も出すことになったような場合には、この控除が適用されます。
ここで注意したいのが対象外になるものです。あくまで「生活に通常必要な資産」が対象なので、商売の棚卸資産や事業用の固定資産、オフィスなどは対象外になります。
別荘や貴金属も、生活に通常必要とはいえないため対象外です。
そして扱いがちょっと難しいのが車両です。これも基本的には、通勤に使っている、日常的に買い物に使っているなど、生活に通常必要な資産に限られます。趣味のための車は対象外になります。
たとえば福岡市内では通勤・通学が車ではない人も多く、通学の送迎だけに使っていた車が「生活に通常必要な資産」とみなされなかったケースもあるそうです。
週末のお出かけや子どもの送迎に使うくらいだと、雑損控除の適用を受けられないことがあるわけです。ここで大事なのが、車両保険は使えても、雑損控除という税の優遇は別物という点です。
車両保険は使えるんだけれども、雑損控除という税の優遇に関しては適用されないということです。
確定申告で税金が戻る。制度は自分で調べて申請する
伊藤さんは、一言一句覚える必要はないと言います。ただ、何かしらの被害を受けたときには税の優遇があると知っておくといいそうです。
実際に被害に遭ったときは、自治体から「こういう制度があるので使ってくださいね」というアナウンスがあることが多いといいます。そこにアンテナを立てて、見逃さないようにしておくことが大切です。
将来はマイナポータルから「あなたのエリアはこの制度の対象なので使ってね」とプッシュ通知が届く時代が来るかもしれない、と伊藤さんは見ています。ただ今の時点では、自分で調べて申請するのが基本です。
今年被害に遭った人は、確定申告で雑損控除が使えるケースがあります。会社の年末調整とは別に自分で確定申告をすると、納めた税金の一部が戻ってくることがあるそうです。
その年の所得が1000万以下の場合は、雑損控除と災害減免法 ── 災害で住宅や家財に大きな損害を受けた人の、その年の所得税を軽減・免除する法律。所得金額に応じて減免の割合が決まりますのどちらか有利な方を選べます。税務署に相談すれば、より良い方をすすめてもらえます。
この辺り、チャッピー(ChatGPT)とかに聞いてみてもいいんじゃないかなと思います。
さらに細かい点として、控除しきれない損失があった場合は、翌年以降3年間繰り越して控除を受けられます。まずは、被害に遭ったら税の優遇があると頭の隅に置いておくといいですね。
福岡の治水に見る、個人では動かせない社会の備え
3つ目の切り口は、個人では動かせない社会レベルの備えです。伊藤さんは福岡の治水の話を紹介します。
福岡市では1999年に博多駅周辺の浸水被害 ── 1999年6月の集中豪雨で、博多駅周辺の地下街や地下室が浸水し、犠牲者が出た災害。都市部の地下空間の水害リスクが注目されるきっかけになりましたにつながる豪雨があり、2003年にも太宰府豪雨がありました。九州は長崎や佐賀も含め、全体的に水害が多かった地域です。
これを受けて福岡市は2000年度以降、「雨水整備Doプラン」という取り組みで、約1258億円を投じて雨水幹線やポンプ場の整備を続けてきました。現在は後継の「雨水整備Doプラン2026」が進行中だといいます。
1999年や2003年ごろと今の2、3年とでは、素人感覚でも雨の量が全然違うように感じる、と伊藤さん。だからこそ、こうした整備を継続的に行っているのが福岡市だと説明します。
当時は地下に水がたまって出られなくなり、亡くなった方がいました。福岡は博多や天神を中心に地下街があるため、そこが水に埋まると被害が起こりかねません。そうしたリスクを踏まえて治水が進められてきたわけです。
整備後もまったく水害がないわけではなく、雨量が増えているため浸水や川が溢れそうになることは起きています。それでも、知る限りでは当時以降に亡くなった方はいないレベルにはなっているといいます。
同じ雨でも被害が違う。ハザードマップで自分の土地を知る
一方で、水害の経験が少ない地域や台風があまり来ない地域では、雨水幹線やポンプ場の整備が福岡ほど進んでいないことがあります。すると同じ雨が降っても、被害はまったく違ってくるわけです。
だからこそ伊藤さんは、自分の住む地域が水害・風・雪・地震それぞれにどんな対策をしているのかを知っておく必要があると話します。家を買うときに、その土地がどういう土地柄なのかを確認した方がいい、というのは以前からの持論です。
その手がかりになるのがハザードマップ ── 洪水・土砂災害・地震などの被害が想定される範囲や避難場所を示した地図。自治体が作成し、住んでいる地域の災害リスクを事前に確認できますです。全国どこの地域にもあるので、自分の住む地域がどんな被害を受ける可能性があるかは知っておくべきだといいます。
伊藤さん自身はマンション住まいで一見被害はなさそうですが、1階が浸水すると電気設備がやられ、停電で水がくみ上げられなくなることも想定しているそうです。
だからこそ、どのタイミングでお風呂に水を溜めるかといったことも備えの一つ。ただ「雨が怖い、雷が鳴ってる」と怖がるだけでなく、備えられることは備えていきたいですね。
地震はいつ来るかわからず、備えようがない部分があります。それでも事前に対策が打てることには打っておく。そのためにも、自分がいる場所・住んでいる場所・働いている場所がどういうエリアなのかを確認しておくことが大切です。
治水インフラは「人が集まる場所」から。長い目で住まいを考える
社会的な備えは、なかなか自分では選べませんよね。治水がしっかりしていないからここには住まない、と言っても、さまざまな事情で住む場所を制限しきれないこともあります。
ただ、これからの未来を考えると、人口が増え続けてあちこちにインフラが整っていた時代から、人が集まるところを優先に治水を整えていく時代になるのではないか、と伊藤さんは見ています。
すでに各地で水道管が割れて水が噴き出したり、道路が陥没したりする事故が起きていますよね。こうしたことはこれからも出てくると伊藤さんは言います。
一方で、衛星からどの水道管を優先して工事すべきかがわかる技術も出てきているそうです。仕組みまではわからないものの、優先順位の高いところから工事する動きにはなっているといいます。
ただ、その優先順位は人が多く集まり被害が大きくなるところ、つまり都心部からになりがちです。家は30年、50年と住み続けるものなので、かなり長い目で見る必要があります。
安いからと買ったら、閑静な住宅街ではあるけれどインフラの整備が行き届かない、ということにならないか。そんなことも含めて、これからの住まい選び・居場所選びを考えたいという話でした。
まとめ
水害への備えは、雨量の数字を行動に結びつけて知ること、被災したら税の優遇を思い出すこと、自分の土地のインフラや災害リスクを確認することの3つが柱です。「これまで大丈夫だったから」で片づけず、疑いの目を持って住まいを見直しておきたいですね。
- 1時間の雨量は10〜20ミリで水たまり、80ミリ以上で避難レベル。数字と行動を結びつけて覚えておく
- お天気アプリや自治体・防災アプリの通知を設定し、警報を見逃さないようにする
- 保険で埋まらない自己負担が出たら、確定申告で使える雑損控除がある。ただし趣味の車などは対象外
- 所得1000万以下なら雑損控除と災害減免法の有利な方を選べ、控除しきれない分は3年繰り越せる
- ハザードマップで自分の土地の災害リスクとインフラ整備状況を確認し、長い目で住まいを考える

