焙煎したて、挽きたて、飲みたての「三たて」コーヒー
斎藤さんがこの日の収録のために、工房に戻ってコロンビアの豆を焙煎してくれました。挽きたてを淹れて、飲みたてで味わうという「三たて」です。
金子さんは一口飲んで「ワイルドな味」「ちょっと土っぽい感じ」と表現します。浅煎りながら濃いめに淹れられていて、香ばしさの奥にフルーティーな酸味が残るコーヒーでした。
最初に金子君に飲んでもらった時に、「いや、これ紅茶じゃないですか、マジで美味しくないです」って言われないように、多めの豆で少なめのお湯で入れました。
斎藤さんは個人的に浅煎りが好きで、苦味より「豆感」を残したいと考えているそうです。濃いめに淹れたのは、その豆の香りを伝えやすくするための工夫でした。
斎藤さんが使っているのは熱風式の焙煎機で、十分ほどで仕上がるそうです。焙煎は「ここだ」というポイントでしっかり冷まさないと余熱で進んでしまうため、冷ます工程も大切な作業だと話されています。
豆にハマる人の気持ちがなんかわかったというか。豆が愛おしい。
コーヒーを淹れたケメックスアメリカ発のガラス製コーヒーメーカー。砂時計のような独特の形と、職人が手で吹いて作るハンドブロー版があることで知られていますは、メルカリで手吹きのものを偶然安く手に入れたものだそうです。「金子君に振る舞う用に買った」と、収録のための気遣いも明かされました。
神戸・西宮阪急の展示会を振り返って
話題は、二人で行ってきた神戸での展示会へ移ります。会場は西宮阪急の中で、入り口近くの明るく開けた売り場でした。
人通りは多かったものの、足を止めてじっくり見る人はそれほど多くなかったといいます。それでも、たまたまフラッと立ち寄った一人のお客さんが大きな作品をまとめて買ってくれて、展示を支えてくれたそうです。
すごいいいお客さんが来てくれて、たまたまフラッと。その人が二個ぐらいこう大きいのまとめて買ってくれた、その人に結構助けられたというか。
接客で印象的だったのは、こちらが標準語で話すと関西弁で返ってくることだったそうです。「やっぱ関西ですよね」というやり取りが新鮮で、親しみやすかったと振り返ります。
移動中の車内収録は、トンネルの反響音などで使い物にならず、ほぼ諦めることになりました。それでも、夜に立ち寄った今津駅での「店がやっていない」やり取りだけは収録できて、唯一の救いだったそうです。
唐突なターンエンドと、金子さんのドロー
斎藤さんはここで「俺のターンをそれでちょっとターンエンド」と宣言します。遊戯王のドロー自分のターンの最初にデッキからカードを引く動作。この回では「次の話題を出す」合図として使われていますノリで、ここから話題を回す形式が始まりました。
一回それでターンエンドしとくわ。金子くんの次はもうドロー。
金子さんがドローして話したのは、土曜日にバンド仲間の後輩ケイキ君とカラオケに行った話でした。普段ボーカルとして活動している金子さんは、わざわざカラオケに行くことが少ないそうです。
きっかけは二人の共通の好きなアーティスト、ORANGE RANGE沖縄出身のロックバンド。2000年代に『上海ハニー』『*〜アスタリスク〜』『イケナイ太陽』などのヒット曲で知られていますとLinkin Parkアメリカのロックバンド。ラップと美メロを組み合わせたミクスチャーロックの代表格で、2000年代に世界的な人気を得ましたでした。約二年越しの「いつか行こう」を、ようやく果たした形です。
小学校の時ORANGE RANGEか宇多田ヒカルしか聴いてなかったんで。MDカセットで。
MDにCDをダビングしている最中に兄弟がドンと音を立てると、録音が飛んでしまう。「絶対ドンってすんなよ」と言って、結局ドンとされてキレる、という子どもの頃の風景も語られました。
下関の鉄板焼き店では、お好み焼きと生姜焼き定食を半分こしたそうです。雰囲気のよい昔ながらの定食屋で、謎のおばあちゃんが現れて去っていく、独特の空気があったといいます。
金子さんが特に盛り上がったのは、定食についてきた赤味噌の味噌汁に、温泉卵のような卵が入っていたことでした。
赤味噌の味噌汁が出てきたんですよ。ちゃんと中に卵入ってたんですよ。
名古屋で味噌カツ定食を食べたときにも、同じく赤味噌の味噌汁に卵が入っていたそうです。金子さんは「言ったと思う」と主張しますが、斎藤さんは「展示で頭がいっぱいだった」と覚えていないことにショックを受けていました。
卵に反応して全細胞のギアが上がったあと、二人は三時間ほどカラオケで歌い倒したそうです。Linkin Parkは声を張る曲が多く、最後はゼーゼー言いながら歌い切ったと話されています。
山桜のカッティングボードと、リンゴが場を締める力
斎藤さんのターンに戻り、展示で印象的だった「リンゴ」の話が始まります。カッティングボードだけを並べていても雰囲気が作れないと感じ、上に乗せる小道具として、阪急のスーパーで買った小ぶりのリンゴを置いてみたそうです。
桜の木のカッティングボードに赤いリンゴが乗ると、場がぐっと締まり、お客さんもリンゴに釘付けになりました。
カッティングボード売りよりもリンゴ売りとしてやっていった方が良かったなっていう。
金子さんもこの感覚に強く同意します。山桜は意外と原色のものが映えると、お客さんによく説明しているそうです。
赤いリンゴやバナナなど、原色でパキッとした色のもの。和食の肉じゃがのような彩りある料理にも合う
朴の木のような地味めの色合いの素材より、暖色寄りの山桜は鮮やかな色を引き立てやすい
金子さんは過去に肉じゃがを山桜のお椀風の器に盛ったところ、和食ながらしっくり来た経験を話します。人参のオレンジ、じゃがいもの黄、さやえんどうの緑、しいたけの黒という和食の彩りが、山桜の表情と合うのではないかと考えているそうです。
斎藤さんは、その情景から「鉄板焼き屋さんのおばあちゃんが、桜のボウルに山盛りの肉じゃがを差し出してくる」イメージまで想像していました。
DJ台作りでわかった「木は動く」の本当の意味
話は、金子さんが以前斎藤さんに手伝ってもらって作ったDJ台DJ機材を載せて使う台。今回はクラブやイベント現場で組み立てと解体ができるよう、ある程度着脱できる構造で作られたそうですの話題に移ります。普段ああいう構造物を作らない金子さんにとって、大きな学びの機会になりました。
「木は動く」という知識自体は持っていても、実際にどう作りに反映するかは別の話です。金子さんが一番驚いたのは、ぴっちり作らず「遊び」を持たせる必要があるという指摘でした。
ぴっちり作んないといけないって思ってたんですよ。もうとにかく剛性を持たせるには。
1. 知識として知る
木が乾燥や湿気で動くこと自体は、木工をしていれば一般的な知識として知っている
2. ぴっちり作る
最初は剛性を求めて、ホゾや組み手を隙間なくぴっちり仕上げてしまう
3. 動いて噛み合わなくなる
引き出しが開かない、ボンドの水分で膨らんで組み立てられないなどの失敗を経験する
4. 遊びを持たせる感覚を得る
1〜2ミリの余裕を見越して作るべきだと、身体感覚として理解できるようになる
斎藤さん自身も、ホゾにボンドを塗った瞬間に木が水分を吸って膨らみ、組み立てられなくなった経験があるそうです。そうした失敗を経て初めて「木にはゆとりを持たせないとダメだ」と腹落ちしたといいます。
せっかくすごい頑張って作ったのが組み立てられないみたいなのを経験し。人間がやっぱ木はゆとり持たせないとダメっていう風に、そこでやっとなるみたいな。
金子さんは、自分のDJ台では振動を減らしたい一方で、着脱もできる必要があり、「遊び」と「剛性」のバランスが難しかったと振り返ります。条件次第で、緩める部分と詰める部分の判断が変わるという話でした。
調色師ながこさんからの「数字言いがちわかる」
金子さんはここで、嬉しかった反響の話を挟みます。前回の自己紹介回で語った木工あるあるの「独り言で数字を言いがち」について、知り合いの調色師塗料や絵具などの色を調合して作る職業。微妙な配合の違いが仕上がりを大きく左右するため、職人的な技術が求められますながこさんから「めっちゃわかる」と連絡が来たそうです。
独り言のやつ。数字言いがちなやつめっちゃわかるわつって。めっちゃ嬉しかった。
ながこさんはバンド「パイロVX」のメンバーで、ポッドキャスト『辺縁遊戯強存』もやっている同い年の知人です。職業を越えて「数字を言いがち」というあるあるが通じたことが、金子さんには印象的だったといいます。
金子さんは「リスナー同士が違う島に行き来する感じで広がっていけたら」と話していて、ポッドキャスト同士の横のつながりへの期待もにじみました。
須佐の釣りで起きた「魚にも気を使われる」事件
続いて金子さんが話したのは、日曜日の須佐での釣りです。普段から釣りに親しんでいる先輩・後輩三人に誘われて、何も準備せずに車に乗ったら須佐まで連れていかれた、というスタートでした。
金子さんは自分のことを「釣りムチ」と表現します。投げれば根がかり、リールはぐちゃぐちゃ、ラインの結び方も知らず、毎回「すいません、つけてもらっていいですか」とお願いする状態でした。
基本地球しか釣らないんですよ。リールがぐちゃぐちゃになって発狂して帰るみたいな。
時間が経つにつれて、先輩の学さんは「金子君に釣ってほしいわ」と気にかけ、後輩たちも「この辺ならこうやって投げれば釣れますよ」とアドバイスを重ねてくれます。気温は下がり、プレッシャーだけが上がっていきました。
最後の最後、もう帰ろうかというタイミングで、ファインディング・ニモ並みの小さなカサゴが二匹釣れたそうです。金子さんは「カサゴにも気を使われた」と表現していました。
なんかこいつ釣れてなくてかわいそうやなと思って、ちょっと釣られたるかって。
以前なら「向いてないわ」と拗ねて終わっていたところを、今回は「もう一回はやりたい」と思えたことを、金子さんは小さな変化として話します。釣るからには食べたい、という気持ちも芽生えてきたそうです。
三年寝かせたウナギ釣りの夢
ここで斎藤さんから、温めてきた話題が出ます。三隅の方にウナギが釣れる橋下があると、林業関係の人に三年前に聞かされたそうです。梅雨どきの夜が狙い目だと教わり、その場では「マジ行きます」と意気込みました。
マジっすか?俺もうマジ行きたいっす。マジもう行きます。ここっすよね?つって、Googleのピン刺して。夜っすよね?つって。三年経ってんの。
釣ったウナギを樽で泥抜きし、板に打ち付けてさばいて焼くという話を聞いて以来、想像のなかでは完璧なウナギの蒲焼ができあがっています。ただし、実際にはまだ一度も釣りに行っていません。
金子さんは「やんないと釣れないですよ」とつっこみつつ、梅雨が近いことを指摘します。コーヒーの「焙煎したて、挽きたて、入れたて」になぞらえて、ウナギも「釣りたて、捌きたて、焼きたて」で味わいたい、という妄想がエスカレートしていきました。
ウナギ釣りたて捌きたて焼きたてみたいな。
「あと二年寝かせたら、誰も釣らないから掴み取りレベルになっているのでは」と冗談を交えつつ、「やれば叶う夢は叶えておきましょう」と二人で約束する流れになりました。
マジックシリンダーと、収録環境のありがたみ
話題が落ち着いたところで、二人は遊戯王の話で締めにかかります。斎藤さんが「マジックシリンダー遊戯王カードゲームの罠カード。相手のモンスターの攻撃を跳ね返し、その攻撃力分のダメージを相手に与える効果で、20年以上前から知られていますで攻撃を返す」と言い出し、金子さんは「今の人たちには通じないですよ」と苦笑します。
斎藤さんが当時使っていたという「ダイヤモンドドラゴン」というカードについては、金子さんが「いそうだけど、いない気がする」と疑い続けていて、これも今後の宿題として残されました。
最後に斎藤さんが触れたのは、車内収録に比べて、今回のように落ち着いた環境で録れることのありがたみでした。トンネルの反響音や走行ノイズに悩まされない、編集しやすい音だと話しています。
今日やっぱりこの環境下で、あの録音できるありがたみを僕はもう今日はすごい感じてます。絶対編集しやすい。
「次回予告、城之内です」「闇の遊戯、デュエルスタンバイ」と、最後まで遊戯王ノリのまま、二人は今週の収録をターンエンドしました。
まとめ
焙煎したてのコーヒーから始まり、神戸の展示会、カラオケ、リンゴと山桜、DJ台作り、調色師ながこさんからの反響、釣りとウナギ釣りの夢まで、話題は次々と切り替わっていきました。雑談のなかに、木工の手触りや、ものづくりに向き合うふたりの姿勢がにじむ回です。
- 焙煎したて・挽きたて・飲みたての「三たて」コーヒーから、豆の作り手の気持ちがわかる感覚へ
- 西宮阪急の展示会では、桜のカッティングボードに乗せた小さなリンゴが、場を締めるアイコンになった
- DJ台作りの経験から、「木は動く」を本当に理解するには、ぴっちりではなく「遊び」を持たせる必要があると実感
- 調色師ながこさんから「数字言いがちわかる」と反応がきたことで、職業を越えた共通点に手応えを感じた
- 「魚にも気を使われた」釣りと、三年寝かせた梅雨のウナギ釣りが、これからの宿題として残された
