Unifyは何を「検索」しているのか?
この回は、宮武徹郎さんが、サンフランシスコにあるAI営業スタートアップUnifyのオフィスを訪ね、共同創業者兼CEOのオースティン・ヒューズさんに話を聞くインタビューです。
ヒューズさんによると、Unifyは「ソフトウェアが営業担当者の仕事の多くを担う世界」に向けて、go-to-market ── 製品を市場に届け、顧客を獲得するまでの戦略や活動全体を指す言葉。GTMと略され、営業・マーケティング・販売チャネルなどを含みますの未来をつくる会社です。シリーズBの段階にあり、これまでに約6000万ドルを調達しています。出資者にはOpenAI、Thrive、Emergence、Batteryが名を連ねます。
Unifyの創業は2023年です。ヒューズさんは当時のソフトウェア市場を「ひどかった」と振り返ります。製品は売れにくく、企業評価額も低かったといいます。取締役会で繰り返し聞いた一番の悩みが、パイプライン ── 商談につながる見込み顧客の流れ。B2Bでは最初の接点から商談、受注へと進む案件の連なりを指しますをつくれないことでした。
UnifyはB2B企業のパイプラインづくりを手伝います。ヒューズさんは自社の役割を、技術に強い人材が営業課題に取り組む「前線に配置されたエンジニアリングチーム」のようなパートナーだと説明します。中心となる領域はアウトバウンド営業です。
宮武さんはVC時代の経験から、パイプラインができても、本物の見込み客になっていない例が多いと指摘します。ヒューズさんは、Unifyの違いは「正しい人に、正しいメッセージを、正しいタイミングで」届けることにあると答えました。
ヒューズさんが使うたとえは、サンフランシスコの路上を歩いている人に、アリゾナの家を売るのは難しい、というものです。ヒューズさんは営業を、顧客の抱える課題を実際に解決しようとしている見込み客を探す「検索の問題」として捉えています。
ヒューズさんによると、探す手がかりになるデータは2種類あります。
自社のマーケティングサイトや無料プロダクト上での行動など、自社サービスの近くで得られるデータ
新しいマーケティング責任者の採用や営業担当の増員など、外から観察できる変化のデータ
たとえばある会社が新しいマーケティング責任者を雇えば、その会社はパイプラインづくりにお金と人を投じていると読めます。ヒューズさんは、2種類のデータを組み合わせることで、TAM ── Total Addressable Marketの略。ある製品が理論上獲得しうる市場全体の規模を指しますの大部分から連絡すべき相手を見つけられると話しています。
Ramp時代に直面した「届ける」難しさ
ヒューズさんは以前、法人カード・経費管理のRamp ── アメリカのフィンテック企業。法人カードと経費管理ソフトを提供し、急成長したことで知られますに約40人目の社員として入社しました。Rampの市場は巨大でしたが、資金力のある既存企業や大手銀行が押さえていました。そのためRampが直面した最大の問題は、ディストリビューション、つまり顧客にどう届け、関心を持ってもらうかだったといいます。
ヒューズさんは、売り込み先が何百万社もあり、チームは小さいという状況では、型にはまらない発想が必要だったと振り返ります。そこでアウトバウンド営業を、エンジニアリング主導の視点で考えるようになりました。ChatGPTが登場したのはUnify創業のおよそ8週間前で、その偶然のタイミングも創業の追い風になりました。
宮武さんは、日本ではプロダクトの機能に焦点が当たりがちだと話します。シリコンバレーでも「良い製品なら売れる」と考える人は多いものの、ピーター・ティールらがディストリビューションの重要性を強調してきた、と問いかけました。
(ディストリビューションは)多くの人が気づいていない問題だと思うんです。特に日本では、プロダクトへの注目がすごく大きいですよね。
ヒューズさんの答えは、ソフトウェアをつくる環境の変化から始まります。
20〜30年前は、データセンターに行き、自前でサーバーを立てる必要があった
今は課金や通知の仕組みまでインフラが揃い、数千ドルで本番品質のソフトウェアをつくれる
ヒューズさんによると、つくりやすくなったうえに米国では資本市場も発達しているため、競合が次々に生まれています。Unifyのカテゴリでも、何らかの形で競う会社は何十万社にのぼるといいます。
ヒューズさんは、多くの会社がブレイクできない一番の理由を、製品に十分な注目を集められないことだと見ています。初期の製品には熱狂されるような機能がまだありません。そのため、どう期待感と勢いをつくるかというディストリビューションの問題になる、という見立てです。
Unifyの場合、初期に信頼と注目を集めたのはSNSでの積極的な発信でした。以前はカンファレンスで名乗っても「Unifyって何?」と聞かれたものの、今では話す相手の多くが何らかの形でUnifyを知っているそうです。宮武さんは、サンフランシスコではローンチ動画を撮るカメラクルーが街中にいると述べ、TechCrunchやProduct Huntに載るだけでは足りなくなった変化を指摘しました。
犯罪発生を「連絡の理由」にするFlock Safetyの事例
Unifyの顧客は主にB2Bソフトウェア企業で、現在400〜500社です。ヒューズさんは名前を挙げた顧客として、Cursor、Perplexity、Flock Safetyを紹介しました。
ヒューズさんによると、使い方は顧客によって違います。CursorやPerplexityのようにPLG ── Product-Led Growthの略。無料版などで製品を直接体験してもらい、利用を起点に顧客を増やす成長戦略です型で需要の大きい会社では、すでにある利用データを、規模の大きい自動アプローチにつなげることが課題になります。
Flock Safetyの事例は、データの使い方がまったく違います。Flock Safetyは地域の安全を高めることを使命とするセキュリティ企業です。ヒューズさんは、Flock Safetyの製品が買われる最も強いきっかけは、近くで空き巣や店舗への破壊行為などの犯罪が起きることだと説明します。
UnifyはFlock Safetyのために毎日エージェントを走らせています。エージェントは見込み客の拠点の近くで起きた新しい犯罪を検知し、それを連絡するきっかけにも、メッセージの内容にも使います。ヒューズさんは、この方法が非常にうまくいっていると話しています。
検知
エージェントが毎日、見込み客の拠点の近くで起きた犯罪を探す
きっかけ化
その出来事を連絡する理由として使う
メッセージ
何を伝えるかの材料にも同じ出来事を使う
こうした「連絡する理由」は、今はUnifyのチームが顧客チームと一緒に考えています。ヒューズさんは、この部分をAI主導に移す取り組みが進んでおり、実現は遠くないと話しました。
ヒューズさんによると、AIはどんな人間よりも多くの業界の細部を知っています。例に挙げたのはバイオテック業界に販売する顧客です。売り方は、販売先がどんな種類の製造施設を持っているか、といった細かい情報で変わります。AIは「この業界ではこの4つのサブタイプが重要で、この会社はそのうちの1つを2カ所持っている」といったことを最初から知っているといいます。
ヒューズさんは、こうした情報は自分やプロの営業チームならかなり調べないと出てこないと話します。そのうえで、エージェントが実行だけでなく、創造的な思考まで担う世界に向かっていると見ています。
退屈な課題を先に解くという差別化
AI営業ツールが乱立するなかでのUnifyの違いを問われ、ヒューズさんは、面白いことをするには退屈で痛みを伴う問題を先に解く必要があると信じていた、と答えました。具体的にはSalesforceやHubSpotといったCRMのデータの整理、重複データの処理、誰に営業をかけ誰を避けるかという取り決めなどです。
ヒューズさんが例に挙げたのは、創業エンジニアの1人です。そのエンジニアは、まだ顧客が1社もいない時期に、最初の3カ月をSalesforce連携の構築だけに費やしました。
ヒューズさんは、同じ領域の多くの会社は、面白くて楽しそうなAIの課題に先に向かったと見ています。けれど、AIは使えるデータ以上には役に立たないので、良いデータを得るにはまず連携の層を解く必要がある、というのがヒューズさんの考えです。
宮武さんは、CRM各社が自らを「記録のシステム」と呼ぶのに対し、Unifyは「行動のシステム」を掲げている点を尋ねました。ヒューズさんはCRMの歴史から説明しています。
ヒューズさんは、基盤を開放して誰でもその上に構築できるようにしたSalesforceの判断を、直感に反するが見事だったと評価します。その上に業務に欠かせない複雑な仕組みが築かれ、10〜15年かけて強い囲い込みが生まれたといいます。
一方でヒューズさんは、AIがソフトウェアに期待される役割を切り替えたと見ています。情報を蓄えて連携されることで堀を築いた記録のシステムは、次の10年では十分でなくなるかもしれない、という見立てです。営業担当が担う退屈な作業の95%をソフトウェアが引き受け、本当に面白い残り5%に人が時間を使える世界を描いています。
ただしヒューズさんは、CRMのカテゴリに正面から挑むのは、パックが向かう先ではなく今ある場所に行くことになると話します。Unifyは隣接した別のニーズから入り、データの基盤が共通していることを生かして領域を広げていく考えです。
売上の半分近くを自社製品で生む「ドッグフーディング」
Unifyは自社の営業にも自社製品を使っています。ヒューズさんによると、さまざまな形で、売上の半分近くを自社製品から生んでいるそうです。
ヒューズさんは、自社利用は良い実績になるだけでなく、自分たちが一番の批判者になれる点が大事だと話します。ある時期には、社内から出すバグ報告やチケットが、どの顧客1社よりも多く、ときには全顧客の合計より多かったといいます。使っていて「何か違う」と感じる言葉にしにくい感覚に気づけることが、顧客体験の向上につながるという考えです。
Unify社内での使い方は、全自動から担当者の日常業務まで幅があります。自社サイトの訪問者に自動でアプローチするほか、営業担当者が個別に相手を探したり、意欲の高い相手に電話タスクを立てたりする作業も、すべてUnify上で行っています。製品は自動化から始まり、その後に人が確認する仕組みが加わりました。
どこまで自動化すべきかについて、ヒューズさんは、担当者が慣れた順に広げるよりも、その会社の販売先によって決まると説明します。
1回の接点が重く、電話も重要。現状ではAIより人のほうが得意なので、人の関与を多くする
TAMの多くが手つかず。たとえば5万社のうち毎月5000社を狙うべきだが人手が足りず、Unifyを仕組みとして立ち上げる
「AIっぽい営業メール」は問題なのか?
宮武さんは、AI営業ツールが増えて、どのコールドメールも同じに見える、AIが書いたと思われる、という業界の批判を投げかけました。
AIの営業プロダクトが増えたせいで、どのコールドメールも同じに見えるとか、(受け手が)全部AIだと思い込むとか、そういう批判があります。
ヒューズさんは、問題だと認めたうえで、AI以前からスパムメールは多かったと指摘します。ただ、相手が本当にその課題を抱えていれば、自動送信か人が書いたかは大して気にしない、というのがヒューズさんの考えです。
ヒューズさんが挙げた例は、自身が株式管理サービスCartaの製品を買った体験です。ヒューズさんは毎週、上位2〜3個の優先事項をリストにしています。創業初期、その1つが、社員にストックオプションの価値や税金の考え方を伝えることでした。
そこへCartaから、社員が個人の税務アドバイザーにつながれる「Carta Tax Advisory」の案内が届きました。ヒューズさんは約4時間後に購入したそうです。メールが自動か個別かはわからないものの、気にならなかったといいます。
ヒューズさんは、問題は今のアウトリーチの98%が、課題を持っていない人に向けられていることだと話します。宮武さんも、もっと狙いを絞ったアプローチが必要だとまとめました。
ファインチューニングを避ける理由と、無料ツールというマーケティング
宮武さんは、Unifyが意図的にAIモデルのファインチューニング ── 既存のAIモデルに追加データで再学習させ、特定の用途に合わせて調整する手法ですをしないと決めた点を尋ねました。多くの創業者はそれを差別化要因に挙げるからです。
ヒューズさんの考えは、基盤モデルの会社が最先端のモデルとその周辺の仕組みを次々に改良している、というものです。モデルは良くなり続けるという前提に賭け、ファインチューニングへの重い投資は避けています。カスタマイズするときは、守りが効き、時間とともに優位が積み上がる形かを慎重に見るそうです。
宮武さんが、OpenAIやAnthropicが新モデルを出すたびに作り直さずに済むと補うと、ヒューズさんは同意しました。素早く動き、捨てることになる仕事を避けたいという考えです。
話題は、Unifyがその年の4月に公開した、企業がAI検索でどう表示されるかを調べるツールに移ります。ヒューズさんは、通常なら製品と見なされるものを無料で配ったのは、理想の顧客層に向けた良いマーケティングになると考えたからだと説明しました。
ヒューズさんは、広告のような従来のチャネル以外にも創意工夫の余地は大きいと話します。PLG企業が無料ユーザーのホスティング費用をマーケティング費とみなす例も挙げ、こうした型破りな賭けをもっと多くの会社がすべきだと考えています。
人の記憶のように働く「オブザベーションモデル」
ヒューズさんによると、オブザベーションモデルは、Unifyの製品の中でAIがどう働くべきかを示す中核的な考え方です。
多くの製品は、エンティティごとにデータを整理するリレーショナルデータベース ── データを表形式で管理し、表同士を関連づけて扱うデータベース。多くの業務ソフトの土台になっていますの上に作られています。ヒューズさんは、AIの時代には別の発想が必要になると考えています。
オブザベーションモデルは、顧客企業とその先の顧客との関係ややり取りを、人間の営業担当のように理解しようとする仕組みです。データは人の記憶に近い柔軟な知識の保管庫にためられ、更新や整理を繰り返します。判断が必要なときは「前回の電話はどうだった?何が印象に残った?」と記憶を引き出す形です。
ヒューズさんは、この構造ならLLMとその周辺ツールが良くなるほど拡張しやすいと見ています。
宮武さんは、AIに情報を詰め込みすぎると性能が落ちるコンテキストロット ── AIに大量の情報を入力すると、重要な情報を拾えなくなったり誤りが増えたりする現象を指す言葉ですの問題を持ち出しました。ヒューズさんは、詰め込むほど望む結果は得にくくなると認めます。そのうえで、大量の情報から関連する点を取り出す方法が今後1〜2年で盛んに研究されるだろうと述べました。Unifyとしては、自分たちの考えを明確に持ち、実験して学ぶことが大事だと話しています。
AIが「ソフトウェアを買う」時代は来るのか?
宮武さんは、AIが人に代わってソフトウェアを買う未来について尋ねました。ヒューズさんは、売り手も買い手もエージェントで日々の業務を回す世界は遠くないと答えます。
ヒューズさんによると、ECサイトに行く代わりにChatGPTやPerplexityで調べ物をする人はすでにいます。LLM各社の初期の連携にも買い物の用途が見られます。ヒューズさんは、同じことが取引型のB2Bソフトウェアにも起きると見ています。
宮武さんは、ShopifyのAIアシスタント「Sidekick」が、レビュー用アプリを3つ比較して勧める機能を例に挙げました。
結局、(AIが示す)トップ3に入れるかどうかが、また別の問題になってくるんですよね。
一方でヒューズさんは、年に数万〜20万ドルを払うような従来型のB2B取引は、変化の影響を受けにくいと考えています。金額が大きくなると、関係への信頼や確実さ、人のつながりが重くなるからです。
5年後の大企業向けソフトウェアについても、ヒューズさんは、ある程度は人の関与が残ると見ています。ただし、レビューサイトやReddit、コミュニティでの事前調査はエージェントが担い、それが購買の重要な一部になるという見方です。最終的な意思決定には、人がより深く関わるだろうと話しています。
Rampから受け継いだ「傾き」と「速度」の文化
ヒューズさんは、自分の会社の運営や組織づくりは、Rampでの経験に強く影響を受けていると話します。最も大事なのは人材への注力だといいます。
ヒューズさんが入社した当時のRampは40人規模でした。市場ではBrexやDivvyのほうがずっと大きく、周囲からは「なぜその会社に?」と聞かれたそうです。Figmaなどからも内定がありましたが、決め手は人でした。ヒューズさんは、まだ自分を証明していないが証明したい、という飢えを持つ人たちがいたと振り返ります。
当時の上司ジェフ・チャールズさんは、Rampの最初のPMから初代プロダクト責任者になり、今は評価額200億ドル超の会社の最高プロダクト責任者です。Rampには、社内で人を育てることへの強い信念と、切片より傾き ── 現時点の能力(切片)より、成長の速さ(傾き)を重視して採用するという考え方を表す言い回しですで採用する方針がありました。四半期ごとに倍近く成長する会社では、ある時点の必要だけで採った人は会社の成長についていけないからです。
ヒューズさんが響いたもう1つの考え方は「速度」です。
週100時間かけて100のことに取り組む
やり遂げたい2〜3個のことに絞り、自分に責任を課して毎週やり切ることを続ける
Rampでは、会社の設立から何日経ったかを数え、時間の経過を意識していました。Unifyも同じことをしています。
共同創業者のコナーさんとは大学の知り合いでした。2人の親友ジェームズさんから「コナーと話すべきだ」と勧められたそうです。友人たちが「サンフランシスコでコナーと会おうとしても、いつもサイドプロジェクトに没頭している」と話すのを聞き、ヒューズさんは一緒に働きたいと思ったといいます。2人とも世代を代表する上場企業をつくることを最初から目指しており、今もほぼずっと働いているそうです。
採用で「飢え」や成長力を見極める方法として、ヒューズさんは仕事以外で何をしているかを見ます。偉大な人から学ぼうとしているか、本を読んでいるか、副業的に何かをつくっているかです。成功している必要はなく、何かを最後までやり遂げようとする意欲が人柄をよく表す、と話しています。
良いコールドメールの2つの条件
コールドメールのコツを聞かれ、ヒューズさんは、思っているよりずっと難しいと前置きしました。第一の条件は、肩書きではなく、メールの向こうにいる人そのものに訴えかけることです。
ヒューズさんは大学卒業後の最初の仕事を、コールドメールで得ました。件名は「ライス大学2016年卒、夏のインターンを探しています」でした。ライス大学は小さな大学で、卒業生は在学時代を懐かしみ、内輪の話や冗談を共有しています。ヒューズさんは本文にもそうした話をいくつか入れたそうです。
第二の条件は、明確で簡潔であることです。ヒューズさんは、多くの言葉が必要なら伝えたいことが明確でない可能性が高いと話します。何を求めているかわからないメールをよく受け取るとしたうえで、相手の要望がすぐわかり、自分が役に立てるなら喜んで協力すると述べました。
(コールドメールは)すごく過小評価されているスキルだと思います。コールドDMやコールドメールだけで、開けられる扉はたくさんある。
宮武さん自身も、これまでのインタビューの多くはコールドメールから実現したと話しています。
続いて宮武さんは、ヒューズさんがXに投稿した、ShopifyのトビーさんにならったChatGPTのo3向けプロンプトに触れました。内容は「私について気づいた特別な点で、私自身がまだ気づいていないと思うことを教えて」というものです。
ヒューズさんの学びは、AIは自分が思う以上に自分を知っている、ということでした。最近もう一度試すと、更新された説得力のある答えが返ってきたといいます。創業者は他人のやり方を見て、自分らしくない方法に迷い込みがちです。AIの答えは、自分の強みに寄りかかってよい、という内容だったそうです。学んだことは借りつつも、自分の「超能力」は何かを持っておくべきだ、とヒューズさんは話しています。
新しい職種「アウトバウンド・クォーターバック」
ヒューズさんによると、アウトバウンド・クォーターバックは、企業にとって非常に価値の高い新しい役割です。営業の大部隊のような活動量を、裏側で仕組みを指揮する1人が生み出します。
この役割の人は、従来の営業職とは経歴が違うことが多いといいます。元エンジニアや、コンサルティングや金融などのプロフェッショナルサービス出身者もいます。ヒューズさんは、こうした経歴は過小評価されがちだと話します。実験的で仕組み志向の人で、アイデアを厳密に試し、効果を見極めて定着させます。肩書きはレベニューオペレーションやビジネスオペレーションの場合もあります。
ヒューズさんは、この人材の需要が急騰しており、非常に高い給与の内定が出ていると話します。トップ企業の多くから紹介を頼まれるものの、見つけるのは難しいそうです。
AIがこの仕事を置き換えるかについて、ヒューズさんは、かなりの部分を置き換えると見ています。ただ、ソフトウェアで負担が減るほど、人が得意な創造的な発想に使える余力が増え、より良い組み合わせになるとも話しています。
TBPNへの感謝動画と、愛読書
Unifyは資金調達の際、テック系番組TBPN ── テクノロジーやビジネスのニュースを扱う、アメリカの配信番組ですに出演しました。その後、ドラマ『シリコンバレー』の登場人物ラス・ハネマンによる感謝動画をXで送り、話題になりました。
ヒューズさんによると、これはパートナーや顧客、知人に向けて約25本のカメオ動画をつくった施策の一部でした。Unifyの今を支えてくれた人に何か特別なことをしたい、という発想です。前例は見たことがなく、自分がクールだと思う人からの個別の感謝動画が届いたら面白い、と考えたそうです。宮武さんは、既存顧客向けでも、見た人が共有することでディストリビューションにもなると指摘しました。
愛読書を聞かれたヒューズさんは、同じ本を繰り返し読むタイプではないとしつつ、新しい学びのために多く読むと答えました。今はマーク・ベニオフのSalesforce創業記を読んでいて、マーケティングの知恵が今も通用すると話します。歴史は繰り返すと考えており、経済サイクルを理解するためにレイ・ダリオの本も最近すべて読んだそうです。
眠れないほど考えていることを聞かれ、ヒューズさんは、今会社をつくっていることへの興奮を挙げました。2023年の創業時点で、AIが知識労働を変えることは明らかだったといいます。今は成功の機会があふれている時代だと感じる一方で、どんな優位もすぐ追いつかれる怖さもあると話します。
そのうえでヒューズさんは、積み上がるのは、革新し続ける文化だけだと語りました。宮武さんは、Unifyが日本にも展開することへの期待を伝えてインタビューを締めくくっています。
まとめ
オースティン・ヒューズさんの話は、営業を「正しい相手を探す検索の問題」と捉える視点で一貫していました。地味なデータ基盤づくりを先に済ませ、AIを実行だけでなく思考にも生かす。その先に、CRMの次の姿として「行動のシステム」を描いています。
- アウトバウンド営業の要は、課題を実際に抱える相手を、ファーストパーティとサードパーティのデータで見つけるターゲティングにある
- AIは使えるデータ以上には役に立たない。そのためUnifyは、CRM連携やデータ整理という退屈な課題から着手した
- 取引型の購買はAIエージェントに移りつつあるが、高額なB2B取引では信頼と人のつながりが残るとヒューズさんは見ている
- 良いコールドメールの条件は、相手その人に訴えかけることと、明確で簡潔であることの2つ
- Ramp譲りの「傾き」重視の採用と、2〜3個の優先事項をやり切る「速度」が、Unifyの文化の土台になっている





