アメリカ展開で見落とされる「文化のギャップ」とは?
この回のテーマは、アメリカの「コメンタリー文化」です。宮武さんは、アメリカでブランドを展開したり勝負したりするには、まずアメリカの文化を理解する必要があると考えています。
宮武さんによると、企業からUS展開について相談を受ける中で一番の気づきになるのは、マーケティング手法の違いではなく、カルチャーについてのノウハウやナレッジのギャップだそうです。
一般的にそのマーケティングの戦略とか、やり方とかに関してはそんなに変わらないじゃないですか。でもより重要なのがこの文化の違いだと思ってまして。
インフルエンサーマーケティングやSNSマーケティングといった手法は、チャネルの違いこそあれ日米で大きくは変わりません。宮武さんは、その文化の違いの中でも大きなポイントがコメンタリー文化だと話します。
草野さんは、日本ではディズニーやハリウッド映画のようなアメリカのコンテンツは受け入れられていても、ニュアンスを含んだコメンタリー系のコンテンツを見ている人は少ないと指摘します。日本に限らず、アジア圏全体でそうだといいます。
宮武さんも、ヒット作がたまたまコメンタリー系だったということはあっても、それを一つの文化として捉えている人は少ないと応じます。アメリカは「こういうことをすごくやりたがる国」だと説明することが大事だという考えです。
コメンタリーと「解説」はどう違うのか?
草野さんは、宮武さんが言うコメンタリーとは何かを確かめます。宮武さんの定義では、ファクトだけでなくオピニオンが含まれた解説がコメンタリーです。
その解説がファクトベースだけの解説であれば、多分コメンタリーにはならない可能性があるんですけど。
ただし宮武さんは、ファクトだけを伝えていても、どのファクトを出すかを選ぶこと自体が意見の表明になる場合もあると補足します。スポーツの試合やニュースでも、そうした形のコメンタリーがあるといいます。
アメリカでコメンタリー文化が栄えている理由として、宮武さんはニュースメディアのエンタメ化、日本より政治の存在感が大きいこと、そして教育を挙げます。
宮武さんが通った高校や大学では、授業で手を挙げて自分の意見を述べることが成績の大きな割合を占めていたそうです。草野さんが「正しい答えを見つけるより、意見を発することが大事なのか」と尋ねると、宮武さんはエビデンスを使って意見を述べるのがよい生徒だと答えます。
宮武さんは、エッセイの書き方はまさにそうした訓練であり、OffTopicというポッドキャスト自体もテック業界やアメリカに対するある意味でのコメンタリーだと話します。
アメリカは「コメンタリー」から生まれた国?
宮武さんはさらに踏み込み、アメリカという国そのものがコメンタリーからスタートしたとも言えると話します。独立革命の前、アメリカのトップの人たちは当初、独立したいとは考えていなかったそうです。
当時の根本にあったのは、イギリスに税金を払っているのに政治に関われず、自分たちの意見が代表されていないという不満でした。もともとは、それを直してほしいと提案したかったのだといいます。
独立という考えが広まるきっかけになったのは、大きく2つのコンテンツだったと宮武さんは説明します。1つ目は、トマス・ペイン ── 18世紀の思想家・著述家。1776年に『コモン・センス』を匿名で出版し、イギリスからの独立を平易な言葉で訴えましたが書いた47ページほどのパンフレット『コモンセンス』です。
今でも、アメリカで一番売れてる本はコモンセンスなんですよ。
宮武さんによると、『コモンセンス』は公開から3ヶ月で12万部、独立革命が終わる頃には50万部ほど売れ、当時の人口から見れば5人に1人が持っていた計算になるそうです。アメリカ初期のバイラルメディア的な瞬間だったという見方もあるといいます。
草野さんは「最も読まれた本は聖書」とよく言われることに触れ、読まれたのは聖書で、買われたのはコモンセンスというのがアメリカらしいと反応します。
2つ目は、『ザ・フェデラリスト』連作論文です。85本のエッセイを、アレクサンダー・ハミルトン ── アメリカ建国の父の一人で、初代財務長官。『ザ・フェデラリスト』の大半を執筆したとされますやジョン・ジェイ、ジェームズ・マディソンらが同じ偽名で新聞に発表し、アメリカ憲法を支持して国のあり方を論じたものだと宮武さんは紹介します。
こうした文章に加えて、タウンホールのような場でも人々が集まって意見や主張をぶつけ合いました。宮武さんは、その結果としてアメリカが独立を決めたという流れを重視しています。
不満
税金を払っているのにイギリスの政治に関われず、意見が代表されない
提案
当初は独立ではなく、状況の改善を求めたかった
言論の広がり
『コモンセンス』や『ザ・フェデラリスト』、タウンホールでの議論
独立の決断
アイデアのぶつかり合いの末に独立を決める
言論の自由と「不完全な憲法」が残したもの
宮武さんは、アメリカ憲法の修正第一条として言論の自由が置かれていることも、意図的なものだと考えています。言論の自由が根本にあるからこそ国を前に進められる、という発想です。
宮武さんは、ケーブルニュースから音楽、アート、映画に至るまで、アメリカのコメンタリーカルチャーが栄えているのは、建国のスタートが議論から始まったからではないかと話します。
草野さんは、政府に反対すると罰せられる国もある中で、アメリカはどうなのかと尋ねます。宮武さんは、アメリカはそもそも革命から始まった国で、のちに南北戦争も起きており、ガバナンスや法律に反論することが昔から文化としてあると答えます。
共和党と民主党の二大政党も、互いのやり方を批判しながら、どちらもアメリカを前に進めたいという気持ちを持っている、と宮武さんは説明します。
アメリカ憲法についても、宮武さんは興味深い見方を示します。複数人で3、4ヶ月ほど議論して作られた憲法は、全員が合意したものではなかったそうです。
しかもなんかその不完全だからこそ改善ができる。
完璧であればもう改善する余地がないっていうところなので。
宮武さんは、不完全だからこそ議論して改善し続けるという姿勢が憲法に込められていたのではないかと考えています。
草野さんが「自由の国」というコンセプトは当時からあったのかと尋ねると、宮武さんはおそらくそうだと答えます。イギリスから制限されることに強い不満を抱えていたので、自分たちの国ではそれをやりたくなかったのだろう、という見立てです。
草野さんは、国の哲学を国民が共通認識として持ち続けているのはすごいと感心します。宮武さんは、テレビ番組、ドラマ、ドキュメンタリー、国歌、自由の女神など、あらゆる場所で「自由の国」が語られ続けるブランディングの強さがあり、それを伝え続ける人たちがいることもコメンタリー文化の影響だと話します。
宮武さんがコメンタリー文化に出会ったゲーム実況解説
宮武さんが初めてコメンタリー文化に気づいたのは高校生の頃で、きっかけはゲームの実況解説でした。スタークラフト ── アメリカのブリザード・エンターテイメントが開発したリアルタイムストラテジーゲーム。eスポーツの草分け的タイトルとして知られますのプロの試合に、本人ではない別の人が勝手に解説を付けた動画を、YouTubeでたまたま見つけたそうです。
草野さんがどこが面白かったのかを尋ねると、宮武さんは、プレイヤー本人ではないからこその視点と、対戦する両者の状況を見られる点を挙げます。
昔だと多分テレビで、スポーツをやってる中でプロの解説者がいるみたいな感じだったのが、もうアマチュアでもできる、知らない人でも全然できちゃうみたいなのを最初に見たのが多分この瞬間だった
日本の恋リアにはあって、アメリカにはないコメンタリー
草野さんは、日本にあってアメリカにないコメンタリーとして、恋愛リアリティショーを挙げます。日本ではMCがスタジオで映像を見ながらコメントを入れるのが定番ですが、欧米のコンテンツにはそれがないといいます。
テラスハウスって思いました。
宮武さんも、アメリカの番組はホストがいてもコメンタリーは入れず、出演者本人へのインタビューはあっても第三者の視点はないと同意します。『テラスハウス』がアメリカでも人気なのに、なぜその形式を取り入れないのかは不思議だと話します。
草野さんは、アメリカのコンテンツはそもそも激しめなので映像だけで完結するのに対し、ゆったりした番組には鋭いツッコミが必要なのかもしれないと考えます。MCが出演者の本当の意図を汲み取る気遣いも、コメンタリーの良さだといいます。
宮武さんは、言葉遣いや小さな手の動きをワイプ越しに拾ってコメントするのは日本っぽいと話します。そのうえで、アメリカでは文化やダイバーシティがありすぎて、細かなニュアンスをすべて読み取れる人がいないのかもしれない、という仮説を示します。
MCが映像を一緒に見て、仕草や言葉遣いなど細かいニュアンスにコメントを入れる
ホストはいても映像はそのまま流し、第三者のコメンタリーは入れない
草野さんはここで、最近流行っているテレビシリーズ『カップルセラピー』を紹介します。カップルセラピストが実際のカップルにセラピーを行う番組で、厳密にはコメンタリーではないものの、それに近い面白さがあるそうです。
セラピストの人が「それ以上に彼女は言ってることあるよね」って、「その中に情報がもっとたくさんありますよね」って促すんですよね。
宮武さんは、多文化の国でニュアンスを汲み取る難しさの例として、コメディコンビキー&ピール ── キーガン=マイケル・キーとジョーダン・ピールによるアメリカのコメディコンビ。同名のスケッチ番組で人気を集めましたの「オバマの通訳」というスケッチを挙げます。本当は激怒しているオバマの気持ちを、通訳役が代わりに表現するというネタで、黒人の話し方の意味合いなども込めたパロディだと説明します。
リアクション動画もコメンタリーなのか?
宮武さんはゲームの話に戻り、ゲームの解説系コンテンツが大きく盛り上がったのは5年から10年ほど前で、PewDiePieなどが有名になったと話します。他人のコンテンツを見て意見を言うのは、友達と一緒に何かを見ながらコメントし合う感覚に近いといいます。
宮武さんは、アメリカではオピニオンを出すこと自体がエンタメ化されていると見ています。草野さんがK-POPのリアクション動画もコメンタリーに入るのかと尋ねると、宮武さんは一つのコメンタリーであり、解説系をさらにエンタメ化した単発的なバージョンだと答えます。
宮武さんによると、日本のワイプもコメンタリーの一種ではあるものの、その度合いはそれほど高くないそうです。そしてアメリカで最もコメンタリーが多い場所は、ニュースだといいます。
ニュースを変えたウォルター・クロンカイトの一言
今のアメリカのニュースはファクトを活用しながら意見を話すコメンタリーベースになっていますが、宮武さんによると昔はそうではありませんでした。どのニュースを取り上げるかに意見は入っても、伝える時は基本的にファクトベースだったそうです。
その流れを大きく変えたのが、CBSのイブニングニュースでアンカーを務めたウォルター・クロンカイト ── 1960〜80年代にCBSイブニングニュースのアンカーを務めたジャーナリスト。「アメリカで最も信頼される男」と呼ばれましたです。ジョン・F・ケネディや月面着陸も伝えた人物ですが、最も有名なのはベトナム戦争についてのコメンタリーだといいます。
他のニュース番組がベトナム戦争のファクトを伝えるだけだった中、クロンカイトはそれでは足りないと考えました。1968年2月、彼は自らベトナムへ行き、1時間ほどレポートしたあと、最後に自分の意見を述べたそうです。
これはもう戦争負けましたと。このままやり続けても意味がないですと。
信頼されていたアンカーだったからこそ、その放送はアメリカの世論を変えるほどの影響力を持ったと宮武さんは話します。学生デモなどのきっかけも、彼が作った面があるといいます。
放送の翌日には、大統領がCBSに電話をかけてきて激怒したそうです。それでも、すでに放送された言葉は取り消せませんでした。
その後その大統領が、その記者について話したことがあって、「その記者の信頼を失ったら、アメリカを失ったと同じことだ」っていう。
ニュース番組は基本的にファクトだけを伝える
信頼されるアンカーの意見が世論を動かすとわかり、徐々に意見をより言うようになる
宮武さんは、これを機にニュースで意見を言うことが徐々に広がったのではないかと見ています。当時は「それが仕事ではない」と言われてもおかしくなかったものの、クロンカイトにはそれだけ強い思いがあったと話します。
ニュースをバカにするニュース番組『コルベア・レポー』
宮武さん自身がニュースのコメンタリー文化に出会ったのは、高校時代に友達が見ていた『コルベア・レポー』でした。表記はレポートでも、フランスっぽい響きにするためにわざと「ト」を発音せず「レポー」と読むのだそうです。
番組は、『サウスパーク』で知られるコメディセントラル ── アメリカのケーブルテレビ局。コメディ番組を中心に放送し、『サウスパーク』や『デイリーショー』で知られますの番組で、ニュース風のコメディという体裁でした。ホストのスティーブン・コルベアさんは、のちに2015年にデイビッド・レターマンの後継としてレイトショーを引き継いだ人物です。
『コルベア・レポー』は『デイリーショー』のスピンオフで、どちらも「ニュースをバカにしたニュース番組」です。ただ宮武さんによると、ストレートにパロディ化する『デイリーショー』に対し、『コルベア・レポー』はひねった形になっていました。
ニュースをストレートに解説し、小バカにしたりパロディ化したりする
コルベアさんが共和党派のキャスターというキャラクターを演じ、その立場からニュースを語る
コルベアさん自身は、発言内容から見ると民主党派の人です。それでもFOXニュースや共和党派のラジオ番組の喋り方やニュースの扱い方をオマージュし、明らかに信じていないのに言っているとわかる形で小バカにしていたそうです。
草野さんが「共和党の人は怒らないのか」と尋ねると、宮武さんは基本的には怒るものの、言論の自由があるので最終的には何も言えないと答えます。さらに、『デイリーショー』と違って、騙される共和党派の人たちもいたといいます。
スティーブン・コルベアさんは本当は共和党派の人なんだっていうのを。
そのため、明確にバカにされているのに気づかないまま番組に出演し、インタビューを受けた共和党派の政治家も少なくなかったそうです。宮武さんは、ある程度のクオリティの番組でなければ成り立たない構造だと評価します。
番組の視聴者はリベラルな若者層で、宮武さん自身も『デイリーショー』や『コルベア・レポー』の中で育ち、政治に興味を持ったといいます。宮武さんは、新しい層を取り込むためのコメンタリー番組だったと位置づけます。
待つだけで政治家をいじる、コルベア流の笑い
草野さんがコルベアさんの知識に感心すると、宮武さんは、多くのライターがいて台本を読みながら話す番組だと補足します。一方で、インタビューではその場で違うリアクションや質問をすることもあり、本人も高く評価されている人物だと話します。
余談として、コルベアさんは『ロード・オブ・ザ・リング』の大ファンで、映画にカメオ出演もしているそうです。番組の構成は、ニュースキャスターが台本を読むのと同じ形にジョークを入れたスケッチに近いものだといいます。
宮武さんが紹介したのは、裁判所に十戒 ── 旧約聖書に記された、神がモーセに与えたとされる10の戒め。英語ではTen Commandmentsと呼ばれますを大きく掲示したいと主張する共和党派の政治家へのインタビューです。その地域の住民は全員がキリスト教徒ではないにもかかわらず、その政治家にとっては重要なことだったそうです。
コルベアさんはわかりましたと。そういうことをやりたいんですねと。じゃあその十戒を言ってくださいと。
で、答えられなかったっていう。
コルベアさんは指摘するのではなく、ただずっと待ち続けたそうです。草野さんは「嫌な司会者だな」と笑います。インタビューは別撮りなので、おそらくそのままカットされたのだろうと宮武さんは話します。
ブッシュの目の前でブッシュをいじった夕食会
宮武さんは、ホワイトハウス記者協会主催の夕食会でのエピソードも紹介します。毎年コメディアンを呼び、政党や記者を小バカにしながらみんなで楽しくディナーをする会で、トランプ大統領になってからは行われなくなったそうです。
コルベアさんはブッシュ大統領の時にこの会に呼ばれ、共和党派の人たちが集まる中でひたすらブッシュをバカにしたといいます。宮武さんは「完全にキャスティングミスだったと思う」と話します。
宮武さんの見立てでは、共和党派の人たちがコルベアさんをリベラルだと理解していなかったことが大きかったようです。コルベアさんや『デイリーショー』のジョン・スチュワートさんは、割合としては共和党派をバカにする傾向がありつつ、民主党派もバカにしていました。
当時はSNSがまだ活発ではなかったため、民主党を批判する一部分だけがFOXニュースなどで流れ、「この人はうちらの味方だった」と受け取った人がいた可能性がある、と宮武さんは話します。
流行語になった「truthiness」と、アイスになったコルベア
コルベアさんは番組のセグメントで、いろいろな言葉を自ら作っていました。その一つが「truthiness」で、宮武さんによると2005年に辞書のWord of the Yearに選ばれたそうです。
truthinessは、真実ではないのにそう思うことを指す言葉です。宮武さんは、感情ベースでファクトを無視して話す政治家への指摘だと考えており、のちにトランプ氏が登場した時にもコルベアさんはこの言葉を取り上げたといいます。
セグメントでは、タイトルコールで言葉を出し、定義し、エビデンスを話していく構成でした。宮武さんは、これもある意味で1つのエッセイであり、1つのコメンタリーだと話します。
宮武さんはコルベアさんの本を2冊ほど買うほどのファンでした。番組の終了については、長く役を演じ続けるのは難しいので、あのタイミングで終わらせたのが正解だと思うと話します。
コルベアさんはベン&ジェリーズ ── アメリカのアイスクリームブランド。リベラルな社会的メッセージを発信する企業として知られますのフレーバーにもなっていて、名前は「アメリコーンドリーム」だったそうです。宮武さんは、ベン&ジェリーズは非常にリベラルなので、共和党派の人にとっては本当の立場に気づくヒントになるはずだと笑います。
コルベアさんはもともと舞台をやりながらコメディをしていたコメディアンで、ジョン・スチュワートさんが『デイリーショー』を引き継ぐ前からスタッフとしていたそうです。SNLか『デイリーショー』の配下から育つ組の一人だと宮武さんは説明します。
草野さんが「コルベアさんのコメンタリーをさらにコメンタリーする人はいたのか」と尋ねると、宮武さんは、SNSが栄えていなかった当時は既存のテレビやブログ、ニューヨークタイムズなどが何度も取り上げたと答えます。
ワシを支援するキャンペーンで「アメリカン」を押し出しながら、名前はフランス風に「コルベア」と名乗り、共和党派の政治家から「エリートぶるな」と指摘されたこともあったそうです。宮武さんは、コルベアさんはそうした反応が来ることを理解したうえで仕掛けていたと話します。
コメディ番組か、ニュース番組か
宮武さんは、政治に興味がない人にとって、こうした番組は政治をエンタメ化してくれるおかげで理解度が上がると話します。草野さんも、どちらかの政党をまっすぐ批判されると初心者は身構えてしまうが、逆の政党を応援するコントという複雑な構図が緩和していると応じます。
宮武さんによると、『サウスパーク』や『デイリーショー』、『コルベア・レポー』は、法案などをエクストリームな事例で示すことで、そのヤバさに気づかせるのがうまいそうです。そのおかげで政治の仕組みや特定の法律に詳しくなった世代がいると考えています。
一方で、偏った発言でもあることから、番組側は「これはニュース番組じゃない」という逃げを用意しています。草野さんは、壮大なコントだからこそいい意味で言い訳がある、と受け止めます。
で、他からニュース摂取してない時期って僕も当時あって。
そうすると、それってコメディ番組なのかニュース番組なのかっていうと、見てる一部の視聴者からするとニュース番組なんですよ。
宮武さんは、コメディでありながら一部の視聴者にはニュースになるという点が、面白くて難しいポイントだと話します。批判される理由も、番組側の言い分も、どちらも理解できるという立場です。
風刺番組から大統領選の討論会へ
草野さんは、番組をきっかけに政治をもっと深掘りしたくなったのかを尋ねます。宮武さんは、『コルベア・レポー』から『デイリーショー』へと入り、大学に入って間もない2012年の大統領選挙で、本格的に政治への興味を持ったと振り返ります。
ミット・ロムニー氏とオバマ氏の選挙で、まず共和党内の候補者討論会から見始めたそうです。討論会を見たあとも、ジョン・スチュワートさんやジョン・オリバーさんが何と言っているかを気にして見に行っていたといいます。
宮武さんは、当時は番組が共和党派をより小バカにしていたのは、番組側がリベラルだからというより、正直ベースで言えば当時は共和党派の変な発言が多かったからではないかと話します。
共和党寄りのコメンテーターと、日本で起きつつある変化
草野さんが、共和党寄りのホストや番組はいるのかと尋ねると、宮武さんは全然いると答えます。国の半分が保守的な共和党派なので、FOXニュースがよく見られているのもそのためだといいます。
最近では、ポッドキャストから始まって人気になった共和党派メディア『Daily Wire』の司会者を、宮武さんは「めちゃくちゃ頭いい人」と評します。そうした人がしっかりコメンタリーするからこそ、支持者が増えたりロイヤルティが深まったりするのだろうと話します。
面白く話すタイプではないものの、相手陣営を小バカにするのはお互いにやることで、そこにエンタメ要素があるそうです。リベラル側の「ウォークな発言」を取り上げたり、逆に保守側の発言を「1700年代に生きていたよう」と揶揄したりする文化だといいます。
草野さんが日本でもこうした流れが起きるかを尋ねると、宮武さんは増えていると答えます。収録が選挙の直後だったこともあり、過激な発言をする党や人が増える中で、議論や批判、そのエンタメ化も進み、有名なコメンテーターや番組、インフルエンサーが出てくる構図になりつつあると見ています。
政治以外も扱う風刺番組と、次回への問い
草野さんは、こうした番組が政治以外のエンタメの話もするのかを尋ねます。宮武さんは、政治が多いものの、ニュースをパロディ化する番組なのでスポーツなどさまざまなトピックを扱うと答えます。
宮武さんは、『デイリーショー』と『コルベア・レポー』は自分の世代に大きな影響を与え、特にリベラルな民主党派の支持者を多く生んだのではないかと話します。
次回は『デイリーショー』を詳しく取り上げる予定です。宮武さんは、レイトナイトショーや『デイリーショー』の人気が落ちている今、ニュース部門のコメンタリー文化の次の世代がどこにあるのかを議論したいと話します。
ポッドキャスト。
とかじゃないですかね、多分。もう答え出しちゃいましたけど。
まとめ
この回は、アメリカを理解するうえで欠かせないコメンタリー文化を、教育、建国期の議論、ニュースアンカーの発言、風刺ニュース番組という流れでたどりました。宮武さんは、意見を言い合うことがアメリカの根本にあり、それがエンタメとして広がってきたと語っています。
- 宮武さんは、アメリカ展開ではマーケティング手法よりも文化の違い、特にコメンタリー文化の理解が重要だと話しています
- 『コモンセンス』や『ザ・フェデラリスト』に象徴されるように、アメリカの独立は意見のぶつかり合いから生まれたという見方が示されました
- ウォルター・クロンカイトのベトナム戦争に関する発言は、ニュースで意見を述べることの影響力を示した出来事として紹介されました
- 『コルベア・レポー』は共和党派キャスターを演じる風刺で、若い世代を政治に引き込んだ一方、コメディかニュースかという難しさも抱えていました
- 次回は『デイリーショー』と、ニュースのコメンタリー文化の次の担い手について話す予定です





