コミュニティが先なら、プロダクトは長続きしなくていい?
宮武さんがこの回で最初に投げかけたのは、コンテンツやコミュニティを起点にしたビジネスが当たり前になったとき、プロダクトの作り方やプロダクトそのものも変わるべきではないか、という問いです。以前の回で扱った「コンテンツセントリックカンパニー」の考え方を、もう一段深掘りする狙いがありました。
草野さんはまず、クリエイター自身がすでにその変化の中にいると指摘します。Vlog系だったYouTuberがモッパン系やトレンド系に移ったり、ロングフォームとショートフォームを行き来したりと、コンテンツのトレンドに合わせて発信内容が変わっていくという見方です。
宮武さんが挙げたのは、クリエイターがブランドを立ち上げる流れです。かつては「プロダクトを作ってからコミュニティを作る」のが普通でしたが、今はコンテンツから始めてフィジカルな商品を作るケースが増えています。その場合に、従来と同じ考え方でよいのかが問われていると宮武さんは話します。
まあ例えばですけど、そもそも(クリエイターブランドは)長続きしないといけないプロダクトなのかっていう。
例として出たのが、MrBeast ── 世界最大級の登録者数を持つアメリカのYouTuber。大規模な企画動画で知られ、動画以外にも食品などの事業を展開していますが立ち上げたお菓子ブランドのFeastablesです。宮武さんの見立てでは、MrBeastはハーシーのような定番ブランドの立ち位置を狙っていますが、その考え方自体が正しいのかを問いたいといいます。
そもそもクリエイターブランドってゼロイチがすごい得意な人たちで。で、その初期から、まあマーケコストゼロで、多くのユーザーに認知を獲得できるので。
宮武さんは、クリエイターブランドなら1つの大きな商品で何年も戦うより、小さな商品を次々に出すドロップ式や、1年ごとにラインアップを入れ替えるやり方が合うのではないかと考えます。クリエイター本人も成長していくからです。
草野さんはこの考えに強くうなずき、メンバーシップ向けのニュース回で話したカミソリブランド・Harry'sのリブランディングに触れました。在庫の問題はあるものの、シーズンごとにブランドの雰囲気を変える、固定のロゴを持たないといった発想は、デザインのコストが下がった今なら「意外とありかもしれない」と話しています。
1つの大きな商品で何年も続ける。MrBeastのFeastablesがハーシー的な立ち位置を狙う形
小さな商品を次々に出し、ラインアップや見せ方を定期的に入れ替える
宮武さんは、ブランドは同じまま商品ラインアップだけ毎回変えるパターンもありうるとし、過去の商品を売りつつフレグランスへ大きく寄せているGlossierも、流動的なブランドづくりの例だとしています。
なぜGlossier出身者はGlossierを超えられないのか
コミュニティ起点の話の続きとして、宮武さんは「Glossierマフィア」の話題を出しました。草野さんがある人物とランチした際に出た話で、Glossier ── エミリー・ワイスさんが美容ブログ「Into The Gloss」を起点に立ち上げたアメリカのコスメブランド。熱心なファンコミュニティで知られますを卒業してブランドを作った人は多いものの、元のGlossierのようなコミュニティ感を作れた人は誰もいない、という内容です。
でもなんかこれじゃあなぜかって考えた時に、一つの仮説としてあるのが、そもそもGlossierってプロダクトカンパニーじゃなかったっていう。
宮武さんによれば、Glossierは個人ブログから始まり、そこで育ったコミュニティの強さがあったからこそ、プロダクトを乗せて成功できたという仮説があります。草野さんはタイミングの良さも大きかったと補います。
宮武さんは特に「個人ブログから始まった」点を重視します。創業者のエミリーさんへの親近感やキュレーション能力への信頼、セレブの視点も加わって作り上がったコミュニティであり、D2Cブランドで同じ熱量を持つ会社は正直あまりないと話します。
草野さんは、最近のコスメやスキンケアではセレブのブランドが伸びていて、起業家発のD2Cブランドがコミュニティを作ろうとしても難しく、引きのあるセレブがアテンションを取っていく構図になっていると見ています。
宮武さんは、これも同じ話だと受けます。セレブはコンテンツを出しているからこそすでにコミュニティを持っており、そのユニバースを広げるためにブランドを出している、つまりプロダクトファーストではないという点が共通しているという整理です。
若い世代の幸福度が下がった理由に「コミュニティ」
宮武さんは、プロダクトファーストでない形が普通になる一方で、マクロで見るとコミュニティへのニーズがどんどん高まっていると指摘し、世界幸福度報告 ── 国連の関連組織などが毎年発表する、各国の幸福度を調査したレポート。年齢層ごとの分析も含まれますの話を紹介しました。
一般的には、幸福度は若いころが最も高く、年齢を重ねるにつれて下がり、最後にまた少し上がると言われています。宮武さんは、仕事や家族のストレス、身近な人の死などを考えるとなんとなくわかると話しますが、草野さんは「わかんないです」と返しました。
結構でも大人の方が楽しいかなって思うんですけど。若い頃より、20代、30代の方が一番楽しい気がする。わかんないですけど。
宮武さんは「全員が同じ体験をしてるわけじゃない」と断ったうえで、アメリカの現状を説明します。アメリカでは2006年ごろから15〜24歳の若い層の幸福度が下がり続け、今では最も年上の層よりも低くなっているといいます。
その理由を探るため、メディア企業のDazedがZ世代に、幸福度を上げるために何が必要かをインタビューしました。仕事や生活できる給料、健康や健康保険といったベーシックなニーズ、大学時代のような自由度、スマホに頼りたくないという声も挙がる中で、最も多く出てきた言葉が「コミュニティ」だったそうです。
2006年ごろから
アメリカの15〜24歳の幸福度が下がり続ける
現在
最も年上の層よりも幸福度が低くなる
Dazedの調査
Z世代が最も多く挙げた言葉は「コミュニティ」
その結果
ランニングクラブなど各種アクティビティクラブが増える
宮武さんは、求められているのは特に深く意味のあるつながりだと説明します。草野さんはランニングクラブやピックルボール、読書クラブ、編み物を挙げ、出会いや集まりを求める流れだと受けました。宮武さんはチェスクラブやヨガクラブ、ただ集まってそれぞれ本を読むサイレントブッククラブ、伸びているStravaにも触れています。
そのうえで宮武さんが気にしているのは、このニーズをプロダクトファーストのブランドが解決できるのかという点です。ブランドがランニングクラブを開くこと自体は正しいとしつつ、プロダクトから始めるべきか、先にコミュニティを立ち上げてそこに合うプロダクトを作るべきかが論点だと語りました。
(コミュニティとプロダクトは)どっちも正しいとは思うんですけど、今の流れでいうと。
ブランドのニュースレターと、ソースブランドになったMomofuku
次に宮武さんが挙げたのは、ブランドが始めるSubstackのニュースレターです。リセール大手のリアルリアルThe RealRealは無料ニュースレター「リアルガールリアルガール」を始めており、宮武さんはこれがどこまでコミュニティ作りになるのかに注目しています。
宮武さんが良かったと話すのは、マッチングアプリのHingeによる「No Ordinary Love」です。Hingeで実際に出会ったカップルのストーリーを書く内容で、草野さんは、最初はZINE的なウェブサイトとして作り、その後Substackに移したようだと補足しました。
宮武さんは、Hingeやリアルリアルのようにすでにブランドがあるからできることかもしれず、新興ブランドが同じ手法を取るべきかはわからないと話します。草野さんは「ありじゃないですか」と答え、クリエイターはそもそもそういうやり方だと返しました。宮武さんは、全員がクリエイターになれるわけではないとして、次世代ブランドを作る人がどう考えるべきかを話したいと続けます。
そこで出てきたのが、レストランのMomofukuです。数年前に立ち上げたCPGブランドが成功し、今ではレストラン事業の売上を超えているといい、宮武さんは今後Momofukuがソースブランドとして見られる可能性もあると話します。
宮武さんの関心は、逆にソースブランドがレストランを作るパターンとの比較です。どちらにも成功例と失敗例があるとしたうえで、レストランから始めてCPGへ広げる側のほうが成功確率は高いのではないかと考えています。
Momofukuの形。宮武さんは、こちらのほうが成功確率は高いと見る
ソースブランドが後からレストランを作るパターン
草野さんが「すでにファンを囲えるから」と理由を尋ねると、宮武さんは別の視点として「摩擦のレイヤー」を挙げました。
摩擦の高い体験から始めると、間でマネタイズできる
宮武さんは、Momofukuの展開を見るときは摩擦のレイヤーで考えることが大事だと話します。摩擦が最も高いが満足度も高い体験から始めていることが重要で、摩擦が高いからこそファンが作りやすいという考え方です。
Momofukuの場合、最も摩擦が高いのはレストランというコミュニティで、最も低いのは誰でも無料でアクセスできるコンテンツです。コンテンツを担っているのは創業者のデイビッド・チャンさんで、草野さんはNetflixで「アグリー・デリシャス」を見ればいいと補足しました。
なんかモモフクって元々持ってたのが一番低い摩擦のレイヤーと一番高い摩擦のレイヤーだと思っていて。
宮武さんによれば、Momofukuはその上下をユーザーに行き来させており、その間にプロダクトを置くことで購入しやすくしています。逆にプロダクトから始めた場合、上下のレイヤーへ広げるのは難しいのではないか、だからコンテンツとコミュニティが大事だと話します。
草野さんは、飲食なら設計しやすいがソフトウェアでは難しいと疑問を出します。宮武さんは、ソフトウェアでもリアルイベントのようなフィジカルな場がコミュニティになり、摩擦が高くなると答えました。草野さんはFigmaのConfigを挙げ、海外からわざわざ行くほどの大型イベントは摩擦が高いけれど熱量もあると話します。
宮武さんの見立てでは、Figmaはプロダクトファーストからうまく展開できた例ですが、次のFigmaを作るなら、すごいイベントから始めてコンテンツを作り、その中でソフトウェアを作るほうが勝負しやすいかもしれません。
宮武さんはこれをタイミングの話だとし、10年前や20年前ならテレビやFacebook広告でマスにユーザーを獲得できたが、今はマスブランドの世代ではないと説明します。分散化された社会では、コンテンツとコミュニティから始める手法が正しいのではないかというのが宮武さんの考えです。
「カタールの王子の愛人」から始まるTikTok広告
宮武さんが最近面白かったと話すのは、バイラル化したあるTikTok動画です。女性が「カタールの王子の隠れた愛人なんです」と語り出し、美を保つために毎日ネイルや毎晩の顔のマッサージをし、どのイベントにもスタイリストのチームとカスタムジュエリーがつくと続けます。費用はすべて王子持ちだという設定です。
動画の最後では、体重を落とすための商品をギフトされ、10キロほど落とせたという話で終わります。宮武さんによれば、この動画は広告で、話は嘘だといいます。
で、これって広告なんですよ。で、あの話は嘘なんですよ。
草野さんが演技っぽいのかリアルっぽいのかを尋ねると、宮武さんは「わからないですよね」と答えます。綺麗な女性が話していて本当かもしれないと思わせる一方、使っている画像はフリー素材で、最後に体重を落とす商品だけを明確に名指しし、本人のアカウントでアフィリエイト販売していました。
宮武さんが確認した時点で再生数は1500万回ほどあったといいます。草野さんは、日本でも白衣を着ただけの人が化粧品やスキンケアを勧める動画が議論になっていると重ねました。
宮武さんは、この動画自体は「多分」嘘で違法に近いと慎重に断りつつ、一本の面白い動画で少なくとも数千ドル分の売上を作れるのが今のインターネットの面白さであり、怖さでもあると話します。
宮武さんは、こうしたインターネット上のフィクションは今後増えると見ています。例として挙がったのが過去のライブ配信でも話したItalian Brainrot ── AIで生成された奇妙な動物キャラクターと意味不明なイタリア語風の音声で広まったミーム。2025年ごろにTikTokなどで流行しましたで、草野さんは、何なのかわからないからずっと見てしまい、レコメンドのループに入る現象だと説明しました。
それをうまく活用して新しいナラティブとかストーリーテリングをできる人って絶対出てくるので。
草野さんは、プロダクト起点の会社には難しいが、コミュニティやクリエイター起点ならこのやり方で規模が大きくなっていきそうだと応じました。
匿名でバズる仕掛け人、ティモシー・シャラメのそっくりさんコンテスト
宮武さんは、匿名アカウントが今後どんどん人気になると考えています。MrBeastのように顔を出して成功するだけでなく、何十もの匿名アカウントで人気を得る人も出てくるという見方です。
その代表例として紹介されたのが、バイラルイベントを作ることで有名なYouTuberのアンソニー・ポーアンソニー・ポーさんです。ニューヨークで話題になったティモシー・シャラメのそっくりさんコンテストを開いたのが彼でした。
宮武さんによれば、コンテストには40人ほどが集まり、ティモシー・シャラメ本人も来てバズりました。きっかけは、ニューヨーク市内に100枚ほど貼ったチラシで、そこにアンソニーさんの名前は一切出していなかったといいます。
それってやっぱコンテンツとしてのインターネット的な面白さを、リアルでそこで開催しちゃうっていう凄さの掛け算なんですかね。
宮武さんは、リアルの部分とリアルタイム性が重要だと答えます。草野さんは、別の国のそっくりさんコンテストでも、友達を連れてきて広場でみんなで点数をつける様子を見て、作り込んでいない感じが「一緒に作っている感覚」を生んでいると感じたそうです。
話は、特定の名前の人が集まる会や双子が集まる会にも広がりました。草野さんは、1月生まれの人の会のように、珍しくはないが出会えたらちょっと嬉しい共通点のミニイベントがもっと増えてもいいと話します。
宮武さんは、そこにはスペクタクルの要素が必要だと指摘します。実はアンソニーさんは同時に人気配信者のカイ・セナのそっくりさんコンテストも開いていましたが、そちらにはほぼ誰も来なかったといい、一か八かの面があると話しました。
40人ほどが集まり、本人も来場してバズった
ほぼ誰も来なかった
チーズボールを食べるだけのイベントと、40日で70万人の匿名アカウント
アンソニーさんは、そっくりさんコンテストの前にもプチバイラルしたイベントを開いていました。誰かが「この時間に来たらチキンを丸ごと食べるのが見られる」と投稿しているのを見て面白いと思い、同じようにニューヨークにチラシを貼ったのです。
チラシの内容は、マスクをかぶった誰かが、指定の時間と場所で巨大なプラスチック容器に入ったスナック「チーズボール」を丸ごと食べる、というだけのものでした。草野さんは「カールみたいな」オレンジ色の丸いスナックだと確認しています。
いや、それ(チーズボールのイベント)をイベント開催される前からバズり始めて、これをやる人がいるよみたいなことを何人かTikTokで出し始めて。
オレンジ色のスキーマスクで正体がわからないことも話題を呼び、メディアが取り上げました。専用のインスタアカウントにDMが届いて取材を受け、イベント後にはスポンサー案件も来るようになったといいます。宮武さんは、アンソニーさんをフィクションのキャラクターをインターネット上でうまく作る人だと評しています。
草野さんがキャラクターを演じているのかと尋ねると、宮武さんは、めちゃくちゃ演じているわけではなく顔を見せないようにしている程度で、面白い企画という感じだと答えました。草野さんは企画力とスピード感を挙げます。
さらに数ヶ月前には、ニューヨークの銅像に巨大なクロックスを履かせる「KidwithCrocs」という匿名アカウントが話題になりました。これも実はアンソニーさんで、クロックスとのコラボ案件だったそうです。
宮武さんは、匿名でもインターネットフィクション的な企画にリアルなコミュニティを重ねれば、新しいブランドのようなものが生まれる可能性があると話します。
ビジネスっぽく見えない、その案件っぽく見えない、で、しかもまあシンプルにそもそもコンテンツとして面白いっていう、なんかそれができるのがすごいですよね。
宮武さんは、こうした企画には需要があり、みんな話題の人に会いたがっていると話します。アンソニーさんがKidwithCrocsの格好で歩くと声をかけられることもあり、名前を明かさずにやっている点も、クリエイターとしてもブランドとしても可能性を感じるといいます。
自作自演のパパラッチアカウントは何を生むのか
宮武さんがもう1つ面白いと話したのが、わざと立ち上げられたパパラッチアカウントです。急成長中のヒップホップアーティストであるリル・マブさんは、自分のTikTokとは別にパパラッチアカウントを作り、友人に自分を追いかけて撮影してもらっているといいます。
投稿されるのは、リル・マブさんがニューヨークで買い物をしている、スーパーから出てきたといった動画です。宮武さんは、ジャスティン・ビーバーが車から降りる姿をパパラッチが撮るような映像のTikTok版を、セレブ側が自ら作っていると説明します。
あと第三者目線だから、なんかより信頼感があると思うんですよ。
宮武さんによれば、ほとんどのファンはこのアカウントをリル・マブさん本人が運営しているとは知らず、動画を見ると彼が有名人に見え、わざわざパパラッチするファンがいるのだと感じてしまいます。第三者視点でコンテンツを作ることも、コミュニティ作りの面白いやり方だという見方です。
草野さんは、インターネット的なノリが現実に広がっていると受け止めます。こうしたものに「嘘じゃん」と言うのがダサく、コントやお笑いとしてやっているのだから怒るほうが真面目すぎる、騙されるほうが悪いという雰囲気がインターネットにはあると話しました。
なんかそれがインターネット的ですよね。インターネット的フィクションだなって思います。
フェイクストーリーを売る代理店はどこまで許されるか
宮武さんは、こうしたフィクションには嘘が含まれるため会社として運営できるのかという課題があるとしつつ、活用するブランドや、そこから始まるブランドは今後多く出てくると見ています。
一方で宮武さんが「賛同しない」と明言したのが、デジタル代理店のウォータークーラーウォータークーラーです。アーティストと提携し、クライアントについてのフェイクストーリーをプロモーションしているといいます。
例えば、あるアーティストを超有名人の孫娘だと仕立てるような話です。草野さんは「この人が実は優しい」といった話ではなく、ファクトの嘘だと驚きます。さらにディープフェイクで有名人のインタビュー映像を加工し、「この人は息子なんだよね」と言わせるケースもあるそうです。
それはゼロイチの嘘ですね、本当に。
ウォータークーラーの言い分は、代理店がファンページやファンアカウントを作る延長として、ファンフィクションを作っているだけだというものです。各ページにファンフィクションだと書いているようですが、宮武さんは、それを本当だと思ってメディアが記事にしてしまうこともあり、行き過ぎていると話します。
それでも宮武さんは、ファンフィクションを使ったコンテンツ作りには強い関心があり、そこまでの嘘をつかずに活用する方法はないかと考えています。草野さんは、フェイクだと思っていた激しいアカウントの運営が実は会社やアーティストだったというような「フィクションが実はノンフィクションだった」話を見てみたいと話しました。
宮武さんは、以前話したヴィランの作り方も含め、面白いストーリーを作りながらブランドとしてマネタイズする会社が出てくると考えています。昔ならIPからグッズへという流れでしたが、最初からブランド作りを目的に計画する会社が現れるだろうという見立てです。
ゴシップの「言ってたよ」は、AIが言っても嬉しいか
草野さんが「人間って単純」と言うと、宮武さんは「いいストーリーが欲しいっていう」と応じます。宮武さんは出張中に話した「ゴシップ」という言葉の面白さに触れ、人は生産性だけでなく感情や人間味のあるものを重視すると話しました。
草野さんは、ゴシップには良いものもあると話します。例えば知り合いが「Off Topicのポッドキャストがめっちゃいいって言ってたよ」と伝えてくれると、直接言われるより嬉しさが倍増するといいます。
なんかそこってゴシップって真実と思いが入り混じってるから余計面白いですよね。
宮武さんが気になるのは、その「言っていた」第三者をどこまで知っている必要があるかです。草野さんは知らなくてもいい気がすると答え、宮武さんは、それならAIが第三者になれると続けます。
ただし宮武さんは、その第三者が実在すると信じていなければならず、たどったらAIだったとわかれば多分めちゃくちゃ残念がると話します。一方で、お笑いAIに「オードリーみたいですね」と具体的に言われるなら、単に面白いと言われるより喜ぶかもしれないとも話しました。
宮武さんは、AIを使って人々がお互いを良く思うようにするコミュニティ作りを試してみたいと話します。草野さんは良さそうだとしつつ、「みんな面白いって言ってくれて嬉しい」と思ったら誰も言っていなかった、という虚無感もあると返しました。
(褒め言葉が)シンプルに分析じゃない、面白いよとか、いいらしいよみたいな言われても、人じゃなかったら嬉しくないかもしれない。
草野さんの整理では、冷静な分析としての評価なら人からでもAIからでも嬉しく、別の番組に同じことを言っていても納得できます。しかし「あの人があなたを好きと言っていた」のような感情の話は、関係性ごとに違うもので、同じ言葉を使い回されると違う気がするといいます。
「オードリーみたいなラジオに似ている」など。AIからでも、他の番組に言っていても納得できる
「あの人が好きと言っていた」など。関係性ごとに違い、使い回されると響かない
収録は1時間を過ぎ、予定していた新スポーツリーグの話は次回に持ち越しになりました。宮武さんは、コンテンツやコミュニティ中心の会社づくりの数少ない事例として、変化しているスポーツリーグを深掘りしたいと締めくくります。草野さんも、NBAプレーオフをきっかけにバスケにハマろうとしているそうです。
まとめ
この回では、コンテンツやコミュニティから始めるブランドづくりを軸に、プロダクトの寿命、摩擦のレイヤー、匿名のバイラル企画、自作自演のパパラッチ、フェイクストーリー、ゴシップとAIまでが語られました。宮武さんと草野さんは、ストーリーで人が動く力に可能性を見つつ、事実の嘘には一線を引いています。
- クリエイターブランドは、長く続く定番商品より、ドロップ式で入れ替える形が合う可能性がある
- Momofukuのように、摩擦の高いレストランと無料のコンテンツを持つと、その間のプロダクトでマネタイズしやすいと宮武さんは考える
- アンソニー・ポーさんの匿名企画やリル・マブさんのパパラッチアカウントは、インターネットフィクションとリアルを重ねた新しいコミュニティ作りの例
- 一方で、ディープフェイクで血縁関係を捏造するようなフェイクストーリーには、宮武さんも草野さんも否定的
- 「言ってたよ」というゴシップの嬉しさは、分析の言葉ならAIでも成り立つが、感情の言葉は人でないと響かないかもしれない


