DVDの「監督コメンタリー」はどこへ行ったのか?
この回で宮武さんが最初に示した前提は、今のネット上の消費行動では、人は何かの現象そのものだけでなく、その現象についての話を見ることのほうが多くなっている、というものです。
宮武さんによると、こうしたメタな層そのものがカルチャーの一部になっています。そこで今回は、前回扱ったニュースやゲーム以外の領域でのコメンタリーの使われ方を見ながら、それがリファレンスカルチャーにどうつながるかを話すと説明しています。
身近な例として宮武さんが挙げたのが、DVDに付いていたディレクターズコメンタリーです。同じ映画を監督のコメント付きでもう一度見るもので、シーンの意図や制作の苦労などの裏話が語られていました。
(ディレクターズコメンタリーや)裏方の、どういうふうにこのデザインにしたのかとか、そこら辺の説明とか見るのは、ファンとしてはマジ楽しかったので。
宮武さんは、スターウォーズのエピソード3とみられるDVDを持っていて、こうした解説を楽しんでいたと振り返ります。
ところが動画配信が盛り上がると、DVDというビジネス自体が縮小しました。宮武さんは、コメンタリーの需要は消えずに、YouTubeでのインタビューやポッドキャストへと場所を変えたと見ています。
DVD時代
映画に監督の音声解説や裏方映像が付録として付いていた
配信の拡大
動画配信の盛り上がりでDVDビジネスが縮小した
場所の移動
コメンタリーの需要は残り、YouTubeのインタビューやポッドキャストへ移った
リウォッチポッドキャストはなぜ広がった?
宮武さんは、テレビ番組の制作時や再上映時、Netflixでの配信時に、エピソードを一緒に見ながら解説するポッドキャストが増えたと話します。最近の例として挙がったのが「セヴェランス」です。
草野さんも、昔のコンテンツをリウォッチするポッドキャストや、音声や編集の担当者が出る番組をよく見かけると応じます。
宮武さんによると、こうした番組の需要が一気に高まったのはコロナ期間中でした。新しい番組が作れず古い作品を見直すしかなかった一方、ポッドキャストならリモートで収録できたためです。
代表例として挙がったのが、「ザ・オフィス」の出演者による「オフィス・レディース」です。ほかにも「ワントリーヒル」や「ザ・ウェスト・ウィング」の番組が生まれ、新番組の公開に合わせてポッドキャストを出すことが当たり前になってきたといいます。
草野さんは、「セヴェランス」のように監督と主演俳優がそろってホストを務める形は珍しく、豪華だと感じています。宮武さんは、「サクセッション」ではキャラ・スウィッシャー ── アメリカのテック業界を長く取材してきたジャーナリスト。ポッドキャストのホストとしても知られていますが司会を務めた例を挙げ、記者や関係者を入れる形などパターンがさまざまだと話します。
宮武さんは、こうした番組は追加のスポンサーを入れられるため、売上の面でも作品の世界観を広める面でも意味があると見ています。
映画のキャストの人が全員出てQA回答するみたいなのって、キャストの人10人以上とかいると、もう一言しかみんな喋れないから、ポッドキャストとかすごくいいですよね。
宮武さんも、ポッドキャストなら1つのエピソードに特化でき、記者会見には呼ばれないような出演者まで登場させられるのが強みだと応じます。そのうえで、こうした出演がすでに契約に含まれているのか、後から交渉されるのかが気になると話しています。
草野さんが、TikTokでのプロモーション動画の本数なども契約に入るのかと尋ねると、宮武さんは「多分入っているのでは」と推測しつつ、関わる人にとっては出演先が増える大変さもあると指摘しました。
WhatsAppのチャットで観るNFLドラフトとは?
宮武さんが最近面白いと感じた例が、スポーツメディアのオフボールです。ニュースレターやサイトでスポーツニュースを出しているオフボールは、コミュニティ機能として「THE CHAT」というWhatsAppコミュニティを運営しています。
宮武さんによると、このコミュニティには5万人以上のメンバーがいます。スポーツイベントの最中にチャットグループを立ち上げると、1000人ほどが集まり、互いにコメンタリーを言い合うそうです。
NFLのドラフトでは、NBA選手のレブロン・ジェームズをこのチャットに招き、指名された選手について質問に答えてもらう形で解説を入れたといいます。草野さんの確認に、宮武さんはテキストで打ち込む形だったと答えています。
宮武さんは、Reddit ── アメリカの大型掲示板サービス。著名人が参加者の質問に答える「AMA」と呼ばれる形式のスレッドで知られていますのQ&Aに似ているものの、レブロン以外の参加者も自由に答えられる点が違うと説明します。草野さんは、ライブイベントならスレッドよりチャット形式のほうが合いそうだと話しました。
宮武さんによると、ドラフトでアナリストが解説しながら話すことは、スポーツ業界ではすでに普通です。選挙をコメンタリー付きでリアルタイムに見るのも同じで、それがセレブも入るプライベートなチャットへ広がってもいいのではと考えています。
紅白の副音声のような「見方を選べる」中継は?
草野さんは、日本の紅白歌合戦の副音声を例に挙げます。アーティストの音楽が小さく流れる中で有名人が解説し、ときにはゲストも来る形式で、アメリカにもあるのかと宮武さんに尋ねました。
宮武さんの答えは「多分そこまでない」というもので、音声を切り替えるとしても言語を変える程度だといいます。
近い例として宮武さんが挙げたのが、木曜日のNFL放映権を持つAmazonプライムの取り組みです。特定のイベントで、通常の解説者ではなく、人気YouTuberグループのドゥード・パーフェクトによる解説を選べるようにしたそうです。
草野さんはスポンジボブの声優が解説した例も思い出します。さらに宮武さんは、次のワールドカップでブラジルの有名なTwitch配信者が運営側と提携し、全試合を解説できる権利を持っていると紹介しました。
その解説側のコメンタリー側のオプションがどんどん増えていくっていうのは、それがどこまで選ばれるのかっていうのもすごい見てみたいなと思いますね。
草野さんは、初心者向けとプロ向けのように、初めて見る人に合ったコメンタリーを選べたら楽しそうだと話しています。
試合がまるごとトイ・ストーリーになる中継
宮武さんが紹介したもう1つの例は、ディズニーがNFLやNHLと提携し、自社のIPを使って試合をリアルタイムでアニメ化した取り組みです。
トイ・ストーリー版のアメフト中継では、NFLと提携したテレビチャンネルでは普通の試合が流れ、ディズニー側のチャンネルではアンディの部屋で試合が行われているように見えます。各選手はトイ・ストーリー風の姿になり、ウッディやバズは横で応援しているそうです。
宮武さんによると、選手の顔までは似せていないものの、ユニフォームの名前は本物と同じです。ハーフタイムショーには犬のキャラクターのスリンキーなどが登場し、カメラのアングルは通常の中継とほぼ同じだといいます。
草野さんが「どういう人が見ているのか」と尋ねると、宮武さんは、アメフトを初めて知る子どもや、子どもと一緒に試合を見たい親が想定されているのではと推測しました。
宮武さんによると、この技術はスタジアム内に多数のカメラを置き、選手の位置や体勢をリアルタイムで3Dモデル化してトラッキングするものです。NBAもこの技術を披露していますが、バスケはボールも含めて追う必要があり、より大変かもしれないと話しています。
アメフト選手をずっとトイストーリー風でしか追ってなかったら、本物人間版に会った時に、ちょっとリアクションが薄くなるのか、ちょっと気になりますけどね。
草野さんは、AIが学習して作戦の展開を予測し、その瞬間に戦略が表示されるような見え方も面白そうだと提案します。宮武さんは、Amazonが実際にAIでプレイをリアルタイム解析し、どちらに動く確率が何パーセントかを出す取り組みをしているらしいと応じました。
MSCHFはなぜ「ジーザスシューズ」を作ったのか?
スポーツ解説に続いて宮武さんが挙げたのが、コメンタリーをプロダクトで表現しているMSCHF ── ニューヨークを拠点とする集団。風刺的な商品やアート作品を数週間おきに「ドロップ」として発表することで知られていますです。草野さんはアート集団のようだと言い、宮武さんは一応スタートアップだと補足します。
宮武さんによると、MSCHFはおおむね2〜3週間に1回、新しいドロップを出しています。Supremeに近い売り方ですが、プロダクトそのものに意味があり、今の社会へのコメンタリーになっている点が特徴です。
ジーザスシューズが生まれたのは、コラボ商品が急増した時期でした。adidasとアリゾナアイスティーのコラボを見て、MSCHFは「もう何でもありだ」と考え、最強のコラボ相手としてキリストを選んだといいます。
MSCHFはナイキのエアマックスを大量に購入し、空気の入ったソールに聖水を注射で注入しました。ナイキからの許可はまったく取っていなかったそうです。
宮武さんによると、ジーザスシューズは訴訟になりませんでした。その後、リル・ナズ・Xと組み、各靴に本物の血を1滴入れたとされるサタンシューズを販売したところ、こちらはナイキに訴えられ、最終的に和解したようだといいます。
ナイキのエアマックスに聖水を注入。行き過ぎたコラボの流行への指摘で、訴訟にはならなかった
リル・ナズ・Xと組み、血を1滴入れたとされる靴を販売。ナイキに訴訟され、最終的に和解した
日本で人気だったという鉄腕アトム風の靴は、最初は100足ほど、その後400足ほどまでしか作られていません。宮武さんは、メルカリやeBayで出回っているもののほとんどはコピーで、本物と偽物の区別がつかなくなっていると注意を促しました。
ふざけているだけではない、MSCHFのマニフェスト
宮武さんは、MSCHFが各商品にマニフェストを用意している点を強調します。コラボの流行が行き過ぎているという指摘のように、どの商品にもきちんとした意味があるといいます。
アートへの投資が広がった時期には、ドット柄で知られるアーティストの作品を買い、ドットを1つずつ切り抜いて販売しました。宮武さんはアーティストをダミアン・ハーストとうろ覚えで挙げており、最後の枠まで売った結果、購入額を上回ったそうです。
スタントマーケティングに見えますけど、しっかりポイントがあるからこそ、許される分(がある)と思いますし。
宮武さんは、MSCHFの取り組みをプロダクトを通じた社会へのコメンタリーと表現しています。毎週月曜日に全員でブレインストーミングを行い、そこからアイデアを選ぶそうです。
草野さんが「怒られる境界線は無視していますよね」と言うと、宮武さんは、普通のブランドよりはるかに際どいところに境界線を置いているはずだと応じます。草野さんは、裁判沙汰や血の使用も含めてリスクを取る度胸がすごいと話しました。
宮武さんの背後にも、潰れたスタートアップをおもちゃにしたMSCHFの商品があり、セラノス ── 血液検査技術を掲げて巨額の資金を集めたアメリカのスタートアップ。技術の虚偽が発覚して破綻し、創業者は詐欺罪で有罪となりましたのおもちゃも置かれているといいます。
MSCHFは自社の雑誌で、潰れたスタートアップの情報は表に出にくく、誰が働いていたのかも確認しにくいと説明しているそうです。創業者のエリザベス・ホームズに確認しようにも、刑務所にいるためできません。
そのため、冗談半分で、セラノスが存続していた期間を示し、空白期間を埋めるフェイクの職歴を作れるようにしていたといいます。宮武さん自身は「良くない話」と断りつつも、草野さんは発想が面白いと話しています。
サウスパークはVHSでどうバイラルしたのか?
宮武さんは、ヴァージル・アブローもプロダクトで表現していたと触れたうえで、個人的に一番好きなコメンタリーカルチャーの事例としてサウスパークを挙げます。合う人と合わない人がいるので、おすすめはしないけれど自分はとても好きだといいます。
サウスパークは、マット・ストーンとトレイ・パーカーの2人が作った大人向けのカートゥーンです。もともとは厚めの紙を切り抜いてキャラクターを作り、ストップモーションのように撮影したクリスマス用の動画でした。
宮武さんによると、2人がVHSで見せた相手が「家族に見せたいからコピーがほしい」と頼み、そのコピーが大量に出回ってLA中に広まりました。映像には作者名が入っておらず、「誰が作ったのか」という謎もバイラルの一因になったといいます。
自分が作ったと名乗ってスタジオに現れる偽物も何人かいました。インターネットもない時代で、2人は自分たちの作品が広まっていることを知らず、知人から「面白い動画がある」と紹介されたものが自作だったそうです。
制作
2人が紙のキャラクターでクリスマス用の動画を作る
コピーの拡散
VHSを見た人がコピーを頼み、それが大量に出回る
作者不明の謎
作者名がなく「誰が作ったのか」が話題になり、偽物の作者も現れる
本人が知る
知人に紹介された話題の動画が自分たちの作品だった
当時の内容は社会へのコメンタリーではなく、3年生の子どもたちが過激な発言をしたり、サンタとキリストが殴り合ったりするものでした。宮武さんは、キリスト教を茶化すことは当時は普通なら出せないコンテンツだったと説明します。
(MSCHFは)サウスパークみたいなものがあるからこそ許されてる部分があると思うんですよ。
社会問題を「過激化」して見せる風刺の手法
宮武さんによると、サウスパークはシーズン1や2の頃はあまりコメンタリーをしていませんでした。シーズン27の今では、直近の出来事を扱う風刺で知られています。
宮武さんは、サウスパークの手法を、社会現象や課題を過激化することで、その面白さやおかしさを見せるものだと説明します。民主党寄りでも共和党寄りでもなく、両方をばかにしているといいます。
2010年のエピソード「You Have Zero Friends」では、伸びていたFacebookへの参加を迫るピアプレッシャーや、オンラインのアイデンティティがリアルを追い越す現象、友達の数を増やすことに集中する人々を描いていました。映画「トロン」風の映像で物語を伝えていたそうです。
草野さんは、友達の数が見える化されたのはちょうどその頃だったと振り返ります。宮武さんは、当時は1000人の友達がいることがすごいことで、フォロワー数という考え方の一部もそこから出てきたと見ています。
2004年の「Giant Douche and Turd Sandwich」は、学校のマスコットを決める選挙の話です。どちらの候補も微妙なのに、どちらかの味方にならなければいけないから相手を激しく批判する、という現象を、くだらない形で見せたといいます。
6日間で1話を作るから、直近の話題を扱える
草野さんが制作期間を尋ねると、宮武さんはドキュメンタリーを紹介しました。かつては2〜3週間かかっていた1話の制作を、今はアイデアがゼロの状態から放映直前まで6日間で行っているそうです。
宮武さんによると、トレイ・パーカーは最初の2日間で「全然面白くない」「いいアイデアがない」と落ち込むといいます。草野さんは、週刊誌の漫画家のようだと応じました。
まあ6日間でやってるからこそ、本当にリアルタイムの話ができる。
シーズン27のエピソード1では、公開の1〜2週間前のニュースを取り上げ、トランプ政権を扱いました。宮武さんは、他の番組には絶対にできないことだと評価しています。
一方で、サウスパークは必ずしも直近のニュースだけを扱うわけではありません。Macを使うトレイ・パーカーが、iTunesの規約更新の同意画面を見て「これを読む人はいるのか」と思ったことが、あるエピソードのベースになったそうです。
そのエピソードは映画「ムカデ人間」をオマージュしています。Appleの規約に同意すれば何でも許されるという設定で、規約を読んでいないのは主人公1人だけ、という体になっています。宮武さんは、作中の規約の内容はあくまでフィクションで、実際の契約には書かれていないと念を押しました。
宮武さんは、2015年か2016年ごろにノスタルジアの中毒性がポップカルチャーを動かしていると描いたシリーズや、ネイティブ広告やポリティカル・コレクトネスを扱った回も紹介します。かつては1話完結が中心でしたが、最近は1シーズンで1つの大きな物語になっているといいます。
| 題材 | 時期 | 描かれた内容 |
|---|---|---|
| 選挙 | 2004年 | どちらも微妙な候補のどちらかを選び、相手を批判する現象 |
| 2010年 | 参加へのピアプレッシャー、友達の数への執着 | |
| Appleの規約 | 不明 | 誰も規約を読まないという指摘 |
| ノスタルジア | 2015〜2016年ごろ | 懐かしさの中毒性がポップカルチャーを動かすこと |
| トランプ政権 | シーズン27 | 公開1〜2週間前のニュースを題材にした批判 |
トランプ政権も嫌がる風刺は、なぜ続けられるのか?
草野さんは、サウスパークが過激とされる境界線を押し広げながら、なぜ今も受け入れられているのかを尋ねます。宮武さんは、長く続けてきたので「サウスパークだから」という反応になってしまうと答えました。
放送局のコメディ・セントラルはデイリーショーも放送している局です。草野さんがコルベアのレイトショーの終了に触れると、宮武さんは、レイトショーはコメディ・セントラルではなくCBSだと補足しました。
宮武さんは、サウスパークもキャンセルの可能性はゼロではないと話します。シーズン27では、トランプ大統領がサタンと付き合っている設定で、1998年ごろの劇場版でサダム・フセインがサタンと付き合っていたときと同じ声を使って、強く批判しているからです。
宮武さんによると、トランプ政権側も嫌がっているような動きを見せており、今後どう反応するかが注目されています。
宮武さんは、サウスパークをスタンドアップコメディに近いものとして捉えています。それをアニメで、主人公の4人を子どもにすることで、さらに過激なことができるといいます。
宮武さんは、ほぼ主人公のエリック・カートマンが初期からユダヤ人への差別的な発言をしていた例を挙げ、普通ならやってはいけないことをやっていると話します。
今の時代に第2のサウスパークは作れるか?
草野さんが、最初からそういうコンテンツとして作れば第2のサウスパークは生まれるのかと尋ねると、宮武さんは、可能性はゼロではないものの、今の時代には難しいと答えました。時代背景に加え、アニメであること、子どもが言っていること、明らかにリアルではないことが大事だったといいます。
もしやるとすると、結構大事なのはエピソード1から両側をバカにすることだと思うんですよね。その民主党派と共和党派みたいな。
宮武さんは、どちらかに傾いて見えた瞬間に「そういう番組だ」と思われてしまうと説明します。草野さんは、右寄りにも左寄りにも見えないキャラクターのビジュアルが絶妙だと応じました。
宮武さんも、帽子とジャケットという服装は基本的に変わらず、3年生から4年生に一度進級しただけで、ずっと4年生のままだと補足します。カートマンは明らかに悪い子ですが、子どもらしい要素も多く、キャラクター作りがうまいと評価しています。
宮武さんによると、世界観のベースを作り、ストーリーを書いているのは主にトレイ・パーカーです。2人はミュージカル「ブック・オブ・モルモン」も手がけており、共作者はパペットを使った過激なミュージカル「アベニューQ」の作者でもあるといいます。宮武さんはニューヨークでアベニューQを観て、パペットだから許される表現があると感じたそうです。
草野さんは、カートゥーンやパペットのかわいさと攻めた内容のバランスがいいと話します。キャラクターショップで、ちいかわやリラックマの隣にサウスパークのキャラクターが並んでいて驚いたというエピソードも語られました。
宮武さんは高校時代からサウスパークを見ていますが、先にファミリーガイを見ていたため、最初は古く見える絵と下品さになじめなかったといいます。草野さんも、自分はファミリーガイで止まってしまったと明かしました。
ブランドはなぜカルチャーを自ら作らなければならないのか?
後半で宮武さんは話を広げ、コメンタリーにはさまざまな表現の仕方があると理解すること、さらに見るだけでなく自ら形づくることが大事だと話します。コメンタリーそのものが認知や信頼を得る戦略になっているからです。
宮武さんによると、昔はプロダクトやクリエイティブなマーケティングを出すだけで「面白いブランド」「カルチャー的にかっこいい」と思ってもらえました。今はそれだけでは足りず、カルチャーとの近さを自ら作り、どう見せるかが重要になっています。
プロダクトやクリエイティブを出し、テレビなどに露出するだけで面白さやかっこよさを伝えられた
それだけでは足りず、カルチャーに近いことを自ら作りに行き、どう見せるかが問われる
草野さんは、社会的な出来事にどう反応し、どう面白さで返し、どう解釈するかに、ブランドの人となりやスタンスが表れると話します。そこにブランドを好きになるきっかけが詰まっているといいます。
宮武さんは、カルチャーのリテラシーがブランドの認知度や信頼に直接関わるようになったと受けて、盛り上がっているクラブのパーティーにブランドが入り込む場面にたとえます。
(パーティーで)自分たちの商品をただただプロモーションしてると、まあアメリカで言うcringeですし、かっこ悪いですし、イケてないですし。
宮武さんは、ラブブーを大量に付けて入り込んでも受け入れられないだろうと例えます。クールさの見せ方は難しいものの、それができるブランドのほうが圧倒的に信頼される時代だといいます。
草野さんは、個人なら好きだからやればいいけれど、ブランドという大きな人格をチームでダサくならないように意思決定するのは難しいと話します。売上も必要なので、無駄にお金を使って成果がなければそれも違う、と悩ましさを語りました。
宮武さんは、Off Topicがカルチャーにこだわる大きな理由もここにあると説明します。リファレンスカルチャーの話は次回になりそうだとしたうえで、特にアメリカ展開を目指す人にとって、こうした理解がますます重要になると話しました。
テックを「テック以外」から見る意味
草野さんは、Off Topicを始めたときから、アメリカのコンテンツやカルチャー、社会問題を知ったうえでテックの話をすると立体的に見えると感じていたと話します。
草野さんにとっての面白さは、ザ・バージやテッククランチで扱われる話題がサウスパークでも扱われ、SNLでも話されるというつながりです。CEOやテックジャーナリスト以外のコメントを知ることが大事だといいます。
宮武さんは、日本ではテックメディアやCEO、Twitter以外でテックへのコメンタリーをあまり見ないと指摘します。草野さんは、日本では業界ごとに独立しがちで、わかりやすさを重視するあまり、ニュアンスを込めた「わかりにくさ」があまり表現されていないのではと話しました。
宮武さんは、サウスパークが扱う広告やFacebook、ChatGPT、アメリカの保険の複雑さは、一見玄人向けでも誰もが接しているものだと説明します。玄人すぎない題材選びが面白いといいます。
許容される背景について宮武さんは、国民性に加え、著作権や商標権の扱い、コメディならフェアユーズの範囲だという考え方など、規制面もあると見ています。トム・クルーズなどのセレブをいじるため、冒頭にディスクレイマーを入れているそうです。
日本で同じことをするなら何が題材になるかという草野さんの問いに、宮武さんはアイドル文化を挙げます。ただ、誰のことかが明確に特定されて批判が出るため、日本では難しいだろうといいます。
宮武さんは、他の国でも難しく、イギリスならあり得るかもしれないがわからないと話します。サウスパークの作り手はリバタリアンではないかとよく言われ、言論の自由や政府への反発が表現されているとも見られています。
敵を作る覚悟の上でやらないといけないので。
宮武さんは、ある意味コメディとはそういうもので、それを徹底する必要があると話します。あれほど過激で、しかも全米で知られるレベルの作品は他国にはないのではないか、という見立てで、この回は締めくくられました。
まとめ
この回では、DVDの監督解説がリウォッチポッドキャストへ移った流れから、スポーツ中継の見方の選択肢、MSCHFのプロダクトによる風刺、サウスパークの過激な社会風刺までをたどり、コメンタリーがカルチャーの中心になっていることが語られました。最後には、ブランドもカルチャーを自ら作らなければ信頼されないという視点に行き着きます。
- コメンタリーの需要はDVDの縮小後も消えず、ポッドキャストやYouTubeへ場所を移した
- スポーツ中継では、チャットでの解説やYouTuberの解説、トイ・ストーリー化など「見方を選ぶ」取り組みが広がっている
- MSCHFは各商品にマニフェストを持ち、プロダクトそのものを通じて社会へのコメンタリーをしている
- サウスパークは6日間で1話を作り、両陣営をばかにする姿勢と過激化の手法で時事を風刺している
- 商品を出すだけでは売れず、カルチャーを動かし、それとの近さを見せることがブランドの信頼につながる





