📝 エピソード概要
本エピソードでは、NYで13年間上演され熱狂を呼んだ体験型シアター『Sleep No More』の振付師兼ディレクター、マキシーン・ドイル氏が、その創造プロセスと哲学を語ります。観客をマスクを着用した傍観者として、自由に広大なセットを探索させる「深く体験的」な作品の意図や、身体性に富んだダンサーとのコラボレーションについて解説。
また、観客を日常から引き離す緻密な「入場儀式(オンボーディング)」の重要性、3時間3ループという特殊な形式の構造、そしてニューヨーク、上海、ソウル公演におけるローカライズの裏側など、没入型エンターテイメントの最高峰を作り上げた洞察が詰まっています。
🎯 主要なトピック
- パンチドランクの哲学と制作のルーツ: マキシーン氏はコンテンポラリーダンスから転身し、伝統的な劇場のルールを打ち破り、観客の体験に焦点を当てるパンチドランクのビジョナリー、フェリックス・バレットと協働を開始した経緯。
- コラボレーションによる制作プロセス: 動き自体を作るのではなく、音響、美学、テーマといった「世界」の文脈を想像し、ダンサーや俳優との議論を通じて具体的なムーブメントと言語を生み出す手法。
- 『Sleep No More』の作品形式: シェイクスピアの『マクベス』をフィルム・ノワール視点で言葉を使わずに描き、観客はマスクを着用し、100以上の部屋を持つ建物を自由に探索する「深く体験的」なサイト・シンパセティック(場所に共感した)作品。
- 観客を誘う「入場儀式」の意図: 暗い迷路やバーを経由する導入プロセスは、観客の方向感覚を失わせ、知性や論理ではなく遊び心や「今そこにいる」感覚を活性化させるために意図的に設計されている。
- 3時間3ループ構造の目的: 物語の核となる出来事を分解し、3ループで繰り返すことで、観客にパズルのピースを組み合わせる十分な探索時間と、多様な視点からシーンを見る機会を提供している。
- 危険性と好奇心のバランス: 観客を、現実ではしないような追跡や探索へ誘うことで緊張感を生み出し、群衆に従わず、自分の好奇心に従うことが最も充実した体験につながると強調。
- 音響と照明による世界観の構築: サウンドデザイナーによるドローン(持続音)や、映画的でシネマティックなスコアが空間全体を満たし、照明と連携して観客の注意をアクションへ誘導する。
- 各地でのローカライズと変更点: 上海公演では、1930年代の上海に再文脈化し、中国の民間伝承(白蛇)を統合。ソウル公演では建物の特性(元映画館)や韓国人キャストの起用により地域性を加味している。
💡 キーポイント
- 『Sleep No More』は、コンテンポラリーダンスの高度なスキルとトレーニングを持つパフォーマーによって成立しており、彼らのフィジカルなストーリーテリングが作品の核心である。
- 観客とパフォーマーの関係性は、訓練されたダンサーが観客の位置を察知し、ダイナミックに対応する緻密な「デュエット」として機能する。
- 観客が秘密や告白を明かされる「1対1の体験」は、観客がキャラクターへの深い洞察を得て、ショー全体を異なる視点から解釈するための「贈り物」として設計されている。
- ニューヨーク公演において、体験の大きな部分を占める「ヘイズ(霧)」の使用許可を得るために、消防署との交渉が最も困難なプロセスの一つだった。
- 劇中で使用される血については、マキシーン氏は「それは絶対に『本物の血』です」と冗談を交えつつ回答し、秘密のままにしている。
