1年溜めたテーマ、GoogleのAIはどれだけ使われている?
今回のテーマは「オープンウェブの危機」です。宮武さんによると、1年ほど前のエピソードで「インターネットの根本のインフラが心配だ」と少しだけ触れたものの、当時はきちんと説明しなかった話題だといいます。
宮武さんは、データが集まり始めたので今回あらためて取り上げると話します。AIが各業界を変えるのはわかりやすい一方で、宮武さんが気にしているのは、コンテンツの作り方や消費の仕方よりも、ウェブ上のインフラや構造そのものが変わる可能性です。
その根本のウェブ上のインフラ、ストラクチャー自体が変わる可能性があるのかなと思っているので。
議論の入り口として宮武さんが挙げたのは、2025年第2四半期のGoogleの決算発表です。CEOのスンダー・ピチャイさんがAIプロダクトのアップデートを説明し、利用規模の大きさを示す数字を出していました。
AI Overview ── Google検索の結果ページ上部に、AIが生成した要約を表示する機能。ユーザーが検索するとリンク一覧の上に回答のサマリーが出ますは、検索結果のサマリーを出してくれる機能です。AIモードは、検索結果の中でAIとチャットできる、より新しい機能だと説明されています。Google検索クエリの半分ほどでAI Overviewが出ているという話もあるといいます。
ただし宮武さんは、AI Overviewの「月次20億人」という数字には注意が必要だと指摘します。ユーザーが自分で選んで使っているのではなく、検索すると勝手に表示されるものだからです。
めちゃくちゃ検索されてる中で勝手に表示してるのが(月次で)20億人ですっていう話かなっていう。
草野さんは「でも便利ですよね」と返します。QuoraやRedditを見に行かなくても答えがパッと出てくるからです。宮武さんは、この「便利さ」こそが今回の議論のポイントだと受け止めます。
AIからのリファラルは伸びているのに、何が問題なのか
ChatGPTやGemini、AI OverviewのようなAI検索 ── AIが検索結果をまとめ、その場で回答を生成するタイプの検索サービス。回答の中に参照元のリンクが示されることもありますサービスは、ユーザーをほかのサイトへ送る新しいリファラル ── あるサイトから別のサイトへユーザーが移動すること。参照元からの流入を指し、ウェブ解析では流入経路の一つとして扱われますの源にもなっています。
宮武さんが紹介したSimilarwebのデータでは、2025年6月にAIプラットフォームが上位1000サイトへ送ったリファラルは11.3億件でした。2024年6月から357%増えています。
ただ、Google検索全体のリファラルは1910億件ほどで、AIのおよそ200倍弱にあたるといいます。比較の範囲は同じではないものの、AIはまだ小さい一方で急成長している、というのが宮武さんの整理です。
2025年6月に上位1000サイトへ11.3億件。前年同月比357%増
全体で約1910億件。AIのおよそ200倍弱
オープンウェブは、オープンで分散型で、誰でもアクセスできることを基盤にしてきました。宮武さんは、その前提が変わり始めているのではないかと考えています。
その理由の一つがBOTです。宮武さんによれば、インターネット上の全トラフィックのうち、人によって数字は違うものの3割から5割ほどがすでにBOTだといいます。Googleのクローラーがサイトを見に行って情報を集めるのもBOTによるトラフィックです。
AIエージェントみたいなものが出てくると、絶対(BOTの割合は)50パー超えてくるんですよ。
草野さんが「AIエージェントに見つけてもらえるコンテンツを作る」ことが重要になるのかと聞くと、宮武さんはその流れは必ず起きると答えます。またGoogle自身も、アメリカ政府との独占禁止法の裁判で、オープンウェブはやや落ち気味だという趣旨の発言をしていたといいます。
「URL経済」とは何か、SEOからAEOとの違いは?
宮武さんは、AI時代にインターネットが大きく変わる理由が2つあると話します。これまでのインターネットは検索を土台に成り立ってきた「URL経済」であり、無数のサイトのURLを整理してきたのがGoogleでした。
そのURL経済が、AI生成技術によって根本的に変わってしまう、というのが宮武さんの問題意識です。変わるのは「ビジネスモデルそのもの」と「裏方のインフラの意味合い」の2つで、今回はまずビジネスモデルの課題を扱うと説明されます。
草野さんは、よく言われる「SEO ── 検索エンジン最適化。Google検索などで自分のサイトが上位に表示されるよう、内容や構造を工夫する取り組みですからAEO ── 回答エンジン最適化。AIが生成する回答の中に自社の情報が引用・反映されるよう工夫する取り組みを指す言葉ですへ」という話とは違うのかと尋ねます。
SEOからAEOに変えるっていうのは、ある意味正しいことではあるんですけど、ただ、そこに対しての根本的な課題があると思っていて。
宮武さんの言う根本的な課題とは、Googleがコンテンツクリエイターやサイトを作る人たちと交わしてきた「取引」が、今まさに壊れようとしていることです。
Googleがコンテンツクリエイターと交わした「約束」とは
宮武さんは、Googleの歴史をさかのぼって説明します。27年ほど前にラリー・ペイジさんとセルゲイ・ブリンさんが書いた論文、つまり研究プロジェクトから始まり、今では検索エンジン、Waymo、YouTube、Androidなどを運営する世界最大級のインターネット企業になりました。
それでも宮武さんは、Googleのウェブへの一番の貢献は、インターネット上のビジネスモデルを確立させたことだと考えています。過去25年ほど、とくに西洋や日本のインターネットは検索をインターフェースにしてきて、その検索を独占していたのがGoogleです。
コンテンツが増える
インターネットが大きくなるほどサイトが増える
カオスになる
情報が増えすぎて、何を見ればいいかわからなくなる
検索の需要が高まる
整理整頓してくれる検索エンジンが必要とされる
作る動機が要る
コンテンツを作ってもらうインセンティブ設計が必要になる
そのインセンティブ設計として宮武さんが挙げるのが、Googleとコンテンツクリエイターの間の取引です。Googleはクローラーでサイトの情報を引っ張ってくる代わりに、検索結果からサイトへユーザーを送ってきました。
「検索用にコンテンツをコピーさせてください。その代わりにトラフィックを送ります」と。
宮武さんは、スクレイピング ── プログラムでウェブサイトの情報を自動的に収集すること。検索エンジンのクローラーも、ページの内容を取得するためにこれを行っていますを無料でできるという概念を作ったこともGoogleのすごさだと話します。草野さんは「ダメっていう世界線があったかもしれない」と返し、宮武さんも初期はそうなっていたかもしれないと応じます。
コンテンツクリエイターにとって、受け取ったトラフィックは広告、サブスク、ECでの販売、あるいは見てもらえる・いいねがもらえる喜びなど、さまざまな形で価値に変えられるものでした。
いっぱい良い記事を、コンテンツを作って、まあGoogleにスクレイピングされても、その分トラフィックが来るんだと。そういう約束だったんですよね。
Googleはさらに、DoubleClickを買収してAdSenseを作り、サイト運営者が広告を出せるようにしました。30年ほどこの関係はお互いに利点があり、それによってウェブは大きく拡大したと宮武さんは説明します。
検索流入はなぜ減り始めたのか
ところが宮武さんは、この関係が本当に変わり始めていると話します。2015年以降、Googleからの検索流入は落ち始め、Googleの検索シェアも去年末ごろから90%を切り始めたといいます。
草野さんが「チャットで聞こうってなっちゃってますよね」と言うように、AIの登場が変化を後押ししています。ChatGPTやAI Overview、Geminiがその場で答えを出すと、ユーザーはサイトを訪れません。
うーん、約束が。
「約束が守ってないじゃないですか」っていう話ですね。すごい簡単に言うと。
サイトを作る意味は、ユーザーが来てくれる場所を持ち、そこでマネタイズできることにありました。AIの画面上で答えが完結すると、販売もサブスク登録も広告表示も、いいねを稼ぐこともできなくなります。
草野さんは「デザインを頑張ったサイトでも、テキストでパーっと出てくるだけ」と嘆きます。宮武さんは、ビジュアルを見せる形に変わる可能性もあるとしつつ、結局サイトに来てもらえなければ、どこまで見られたのかもわからず価値を生み出せないと話します。
ニュース検索でクリックしない人はどれだけ増えた?
影響はすでに数字に表れています。Similarwebがニュースメディアに対するChatGPTの影響をまとめたレポートでは、ChatGPT内のニュース関連クエリが2024年1月から2025年5月にかけて200%以上増えました。同じ期間、Google検索のニュース関連クエリはほぼ横ばいか、やや減少です。
たとえばトランプ大統領の関税発表について検索すると、AI Overviewが要約を出します。その結果、Google上でニュース関連の検索をしてもどこもクリックしない「見て終わる」率が上がっているといいます。
2024年5月時点で約56%
2025年5月時点で約69%
草野さんはユーザーの立場から、記事がたくさん並び、選んで開いたらペイウォールが出てくると「もういいよ」となってしまう感覚を話します。宮武さんも、エンドユーザーは答えを知りたいだけなので、それが出れば満足するのは当然だと応じます。
特にニュースとかだと即時性系のやつが見に行く理由でしたけど、もう見ないですもんね。
AIサマリーが出るとクリック率は半分になる
AIの回答には参照元のリンクも付いていますが、そこがクリックされる率も高くありません。宮武さんが紹介したのは、ピュー研究所がアメリカの成人900人のオンラインでのブラウザ利用データを分析した調査です。
2025年3月のデータでは、回答者の58%が、その月に少なくとも1回はGoogle検索でAIサマリーが表示されていました。表示された場合と表示されなかった場合で、クリックする率が比べられています。
クリック率は約15%
クリック率は約8%。ほぼ半減
草野さんは、そもそもインターネットで何かを検索するのは、くだらないことか最近の出来事が大半で、複数のページを深く見比べる使い方をする人は少ないのではないかと問いかけます。宮武さんも、みんな選択肢を見たくないから一番上をクリックする傾向があると認めます。
ただし宮武さんは、複数の結果が出ることにメリットはあると個人的には思いつつ、基本的にはわからないというのが正直なところだと慎重に答えています。
宮武さんは、Googleは生成AI以前から、計算問題や人の年齢などを検索結果上で直接答え、サイトへのトラフィックを減らしてきたと指摘します。草野さんが挙げた歌詞検索でサイトが怒った件や、Googleフライト、レストラン情報でYelpが反発した件も同じ構図で、AIはその「進化版」だといいます。
AIサマリーで「探求」が消える?
ピュー研究所の調査には続きがあります。AIサマリーの中にある引用サイトへのクリック率は、下に並ぶ通常のリンクよりさらに低いといいます。
草野さんが、大きなメディアはまだ頑張れても小さなメディアは表示すらされないのではと心配すると、宮武さんは、表示されたとしてもトラフィックが入ってくるわけではないと答えます。AI企業がメディアとライセンス契約を結んでいるのは、この課題を全員が認識しているからだといいます。
さらにAIサマリーが出ると、ユーザーがブラウジングのセッションをそのまま終える率が上がります。追加の検索や、たとえば「ニューヨーク・タイムズはこれをどう見ているか」と調べ直す行動がなくなり、ほかのサイトにまったく行かなくなるということです。
あっ、このニュースメディア、こういう面白い記事も書いてるなっていうのでクリックするんですけど、(そういう)探求がなくなっちゃいますよね。
宮武さんは、一般的なユーザーは複数サイトの視点を求めていないので、満足して終わると話します。ここが重要な点で、インフラは危機的な状況なのに、エンドユーザーは満足しているのです。
インターネットインフラの危機的(な)状況になってるっていう話はしているものの、エンドユーザーとしては満足してるっていうところなんですよね。
宮武さんは、クリック率の数字は調査によってかなり変わるので断定はしにくいとしつつ、ほとんどの調査で検索流入への悪影響が出ていると付け加えます。
メディア業界には悲報?大手サイトの検索流入の落ち込み
実際のメディア企業のトラフィックも、わかりやすく落ちています。ハフィントンポストはデスクトップとモバイルのオーガニック検索流入が過去3年で半減し、Business Insiderは2022年4月から2025年4月に55%減り、スタッフの約20%をレイオフしました。
トップクラスのニューヨーク・タイムズでさえ、3年前と比べてオーガニック検索流入がデスクトップで36%ほど、モバイルで44%減っているといいます。宮武さんは、アプリへの流入に移っている可能性もあると補足しています。
メディア業界の人もう、聞いてられないですよ。もう悲しくなってきて。
ChatGPTの影響を大きく受けているといわれるのが、エンジニア向けQ&AサイトのStack Overflow ── プログラマーやエンジニアが技術的な質問を投稿し、ほかのユーザーが回答するQ&Aサイト。開発者の情報源として広く使われてきましたです。質問も回答もChatGPTでできてしまうため、トラフィックだけでなく投稿数そのものが減っています。
2025年4月時点で、Stack Overflowの質問と回答の投稿数は1年前から64%、2020年からは90%減ったといいます。草野さんは「根本的にコンテンツの量も減りつつある」と受け止めます。
ほかにも、TinderやMatch.comの親会社であるIACは、サイト全体のトラフィックに占めるGoogle検索流入が52%から28%に下がりました。GrouponのCEOもAI Overviewによる流入減に言及するなど、多くの企業が決算発表で検索流入の厳しさを口にしているといいます。
英語ニュースサイト上位50で、唯一伸びたのはどこか
宮武さんは収録当日ごろに出たPress Gazetteの分析も紹介します。英語のニュースサイト上位50について、2024年8月から2025年8月にかけて月次訪問者数が増えたかを見たところ、増えたのは1社だけでした。
え?逆にどこ?
Substackです。
| サイト | 変化 | 補足 |
|---|---|---|
| Substack | 49%増 | 上位50で唯一の増加 |
| フォーブス | 53%減 | 最も大きく下落 |
| ハフィントンポスト | 45%減 | - |
| Business Insider | 44%減 | - |
| CNN | 約30%減 | - |
| ウォール・ストリート・ジャーナル | 約7%減 | - |
| ニューヨーク・タイムズ | 6%減 | 下がってはいる |
Substackについて宮武さんは、もともと流入数が少ないうえに多くのニュースレターに分散しているため、合計値で見ている点に留意しつつも「すごい」と評価しています。
さらに、ローリングストーン、デッドライン、バラエティの親会社であるペンスケ・メディアが、AI Overviewによってトラフィックが落ち売上に直接影響が出ているとして、Googleを訴えました。宮武さんは、アメリカの大手ニュースメディアがこれを理由にGoogleを訴えたのは初めてではないかといいます。
Appleも、Safari上でのGoogle検索が過去22年で初めて減ったと述べています。Googleはこれを認めず「iPhone全体では伸びている」と返しましたが、宮武さんはSafariでの減少をほぼ認めたものと受け止めています。
ニュースメディアはそもそも必要とされているのか
草野さんは、スマホでの検索はTikTokやInstagram、Substackのようにクリエイターが多い場所に移っていて、そちらのほうがオーガニックに感じられる面もあるのではと話します。宮武さんはそれも絶対あると同意し、SNS企業がニュース系コンテンツをあまり表示しなくなった影響もあると加えます。
ニュース企業は、AIで検索流入が減り、SNSからの流入も減り、とても厳しい状況にあるというのが宮武さんの見立てです。
草野さんが「ユーザーはそんなにニュースを求めていないのか」と問うと、宮武さんは、めちゃくちゃ求めているわけではないことに加え、そもそもどれだけ多くのニュースメディアが必要なのかという問題もあると答えます。
(ニュースを)SNS上で1人のユーザーが拡散してしまうと、無料でその情報を他の人たちが見れてしまうので。
ニューヨーク・タイムズの有料記事を読んだ人がSNSで要約やヘッドラインを流したり、TikTokで解説したりするだけで、元記事へのアクセスは生まれません。リンクすら貼られていない場合もあります。
草野さんは、海外のニュースレターでクリエイターがニューヨーク・タイムズの記事をスクショ付きで紹介し、課金していない自分でも読めてしまう例を挙げ「グレーというかアウトな気がする」と話します。宮武さんは、ニューヨーク・タイムズからすれば明らかに売上損失で、トラッキングもできないため非常に難しい問題だと応じます。
「デッドインターネット理論」は現実になるのか
話題は、インターネット上の陰謀論であるデッドインターネット理論 ── インターネット上の活動の大半はすでに人間ではなくBOTやAIによるもので、人間はそれを受け身で眺めているだけだとする陰謀論。2016年ごろから語られてきたとされますへ移ります。宮武さんによると、インターネット上のやりとりの90%以上が人間ではなくBOTだとする説です。
草野さんは「哲学的ゾンビみたいな話ですか」と返し、宮武さんもそれに近いと応じます。BOTが盛り上がりやハイプを生み出し、人間はそれをパッシブに見ているだけ、という考え方です。
宮武さんは、陰謀論とはいえ、すでにトラフィックの3分の1から半分ほどがBOTで、Cloudflareの調査では3分の1ほどだと指摘します。現在の多くはOpenAIなどのAIモデル学習用クローラーですが、AIエージェントの時代には人間の代わりにサイトを見て、まとめ、投稿し、購入までするようになります。
いよいよこのデッドインターネットセオリーが、陰謀論じゃなくて、もう本当に起きてるような状況に陥るんじゃないかな。
サム・アルトマンさんもLLMが運営するX(旧Twitter)アカウントが増えていると話していたといいます。草野さんは、それが面白かったり便利だったりすれば「BOTでもいいや」と思えてしまうと話します。
宮武さんは、短期間で3000以上のAIポッドキャストを出し、1エピソード1ドルほどで制作できるという企業のニュースも紹介します。草野さんは「私たちからしたら悲しいニュース」と受け止め、宮武さんは将来Off Topicもほとんど AI になっているかもしれないと冗談めかしています。
Cloudflareのデータが示す「スクレイプ対トラフィック」の悪化
ここで登場するのがCloudflareです。宮武さんによると、Cloudflareは世界のウェブトラフィックの約2割を管理・モニタリングしており、だからこそウェブ全体の状況を把握しています。そのデータが、Googleとクリエイターの「約束」の変化を示しているといいます。
10年前のGoogleは、検索すると10個の青いリンクが並ぶ形でした。余談として宮武さんは、リンクの青を選んだのはマーク・アンドリーセンさんで、デザイン上の理由だったと紹介しています。
当時の取引の数字感は、Googleが2ページスクレイプするとユーザーを1人送る、というものでした。その後インターネット人口は40億人から60億人に増え、Googleのクロール率は大きく変わっていないので、本来なら1スクレイプあたりのトラフィックは増えるはずです。
しかしCloudflareのCEOが去年末から今年初めにかけて出版社に聞くと「3倍ぐらい難しくなっている」との答えで、データでも2対1が6対1になっていました。さらに2025年1月から6月までの半年で、また3倍悪化したといいます。
えー、じゃあ今年の年末どうなってんの?っていう話ですよね。
宮武さんは、Googleの創業メンバーにとっては「できるだけ早くgoogle.comから離れてサイトに行かせる」ことが仕事だったと話します。ところが2025年初めには、Google上のクエリの75%にGoogle自身が答えるようになっていて、AI Overviewのリンクの中にはGoogleやYouTubeに飛ばすものも多いという調査もあるといいます。
原因として宮武さんが挙げるのはAI Overviewの加速です。10年で10倍ほど難しくなり、しかもAI Overviewがほぼデフォルトになる未来も見えているといいます。
ChatGPTやClaudeでは、桁違いにトラフィックが来ない
宮武さんは、Googleでは「リンクを踏む」ことがユーザーの頭の中でトレーニングされている気がすると話します。一方、ChatGPTやAnthropicのClaude、Perplexityは回答を出すエンジンとして見られていて、そもそも検索エンジンと呼ばれていません。
でもChatGPTとかAnthropicのClaudeとかで同じ期待値を持ってるかっていうと、逆にその期待値が全くないんですよね。
宮武さんはクイズ形式で、同じ指標をAI企業でも示します。草野さんの予想を上回る数字が続き、2025年1月から6月にかけての悪化の速さが際立ちます。
| 企業 | 2025年1月 | 2025年6月 |
|---|---|---|
| 6対1 | 18対1 | |
| OpenAI | 250対1 | 1500対1 |
| Anthropic | 6000対1 | 6万対1 |
うわぁ、ゼロが増えた。
草野さんが「もう見られない」とこぼすと、宮武さんは「見られてはいる。ただサイトに来てくれない」と訂正します。草野さんは、悲しい一方でユーザーとしてはありがたく便利だと感じてしまうとも話します。
ビジネスモデルが壊れたら、誰がコンテンツを作るのか
宮武さんは、ここが最も重要なポイントだと強調します。ユーザーは今満足していても、コンテンツクリエイターにとっては今のビジネスモデルが成り立たなくなります。
分散型で、誰でもアクセスでき、誰でもサイトを作れるのがオープンウェブでした。その世界が、限られた人しか作れない未来へ向かう可能性が出始めていると宮武さんは見ています。草野さんは、BOTやAIエージェントが作った情報が増えていくのではと応じます。
宮武さんはこれを、AI時代のインターネットにおける最初の大きな根本的課題だと位置づけます。違う形でマネタイズするか、根本的なモデルを変えるかが必要になっているといいます。
ニューヨーク・タイムズのような1社が強くなる可能性もありますが、それでも検索流入は落ち、ライセンス契約でその分を補えているかというと、今はおそらくできていないと宮武さんは見ています。
宮武さんが懸念するのは、ニュースを扱う主体が限られることです。インターネットが民主化されていることの大きな価値は、いろいろな視点から意見が出てくることにあるからです。
SNSは守られる?Yahoo!JAPANとポータル時代への回帰
草野さんは、コンテンツを流す場所としては検索エンジンとSNSが二強で、検索は意外と簡単なことにしか使われない一方、SNSはダラダラ過ごす時間も含めて多くの時間が使われていると指摘します。
宮武さんは、リールやTikTokのクリエイターもある程度は検索を意識しているものの、ニュースメディアほどではないと答えます。サム・アルトマンさんがChatGPT内にSNSを作りたいと話しているので先は見えないとしつつ、今のところSNSのインフラはある程度守られ、危機的なのは検索ありきのインフラだと整理します。
次回は、CloudflareのCEOが出しているマネタイズの解決案と、流入減とは別のインフラ上の課題をもう1つ話す予定だと宮武さんは予告します。
最後に草野さんは日本に目を向けます。日本ではYahoo!JAPANが強く、検索の中にニュースを埋め込むデザインを貫いてきたうえ、Yahoo!ニュースは自社記事ではなくキュレーション記事です。
あれって今考えたら(検索エンジンの)生き残り戦略としてはめっちゃ正しかったのかもしれないなって思いました。
ポータル戦略ですよね、それは。
宮武さんは、そのポータルの役割をChatGPTが担うかもしれず、ある意味でポータル ── ニュースや検索、各種サービスへの入口をまとめたウェブサイト。インターネット黎明期にはYahoo!などのポータルが利用の起点でした時代に戻るのかもしれないと話します。草野さんは次回に「明るい解決策」を期待し、宮武さんは「明るくなるかわからない」と返して回を締めます。
まとめ
この回では、Googleが「コンテンツをコピーさせてもらう代わりにトラフィックを送る」という約束でウェブを広げてきた一方、AI検索の普及でその前提が急速に崩れていることが、複数のデータから示されました。ユーザーは便利さに満足していても、作り手が稼げなくなればオープンウェブの多様性そのものが失われるかもしれない、というのが宮武さんの問題提起です。
- Googleの最大の貢献は、スクレイピングとトラフィックを交換するウェブのビジネスモデルを確立したことだと宮武さんは見ている
- AIサマリーが出るとクリック率はほぼ半減し、ハフィントンポストやBusiness Insiderなどの検索流入は大きく落ちている
- Cloudflareのデータでは、1人を送るまでのスクレイプ数がGoogleで18対1、OpenAIで1500対1、Anthropicで6万対1に悪化した
- ビジネスモデルが成り立たなくなれば作り手が減り、限られた企業が情報を握る未来につながりかねない
- 次回はCloudflareのCEOによる解決案と、もう1つのインフラ上の課題が取り上げられる予定





