YouTuberが銀行に断られるのはなぜか
Karatは、クリエイターに特化した金融サービスを5〜6年手がけてきた企業です。宮武さんと草野美木さんは、2021〜2022年ごろからKaratに注目してきたといいます。
エリック氏によると、世界有数のYouTuberでさえ、普通の銀行に行くと仕事の中身を理解してもらえず、クレジットや質の高い銀行サービスを受けにくいのが現状です。
例に挙がったのは、チェスプレイヤーでTwitch配信者のアレクサンドラ・ボテズ氏です。ボテズ氏はビジネス用クレジットカードを申し込み、取引銀行から2〜3回断られました。
銀行側の反応は「どうやって収入を得ているのか」「別の会社に勤めているのか」「ネットでコンテンツを作る、とはどういう意味か」というものだったそうです。エリック氏は、アメリカでは銀行が仕事を理解できないと、妥当な与信枠どころか口座開設すら難しくなると説明します。
エリック氏は、Karat創業前にInstagramでInstagram Live ── Instagram上でリアルタイム配信ができる機能。視聴者がコメントで参加でき、クリエイターとファンの交流の場として広く使われていますの立ち上げに関わりました。そこで多くのクリエイターと接し、ビジネスと金融の面で助けが必要だと実感したことが、Karatの出発点になったといいます。
Karatの役割分担は、エリック氏がクリエイターの課題を解く製品づくり、共同創業者のウィル氏が提携金融機関との関係づくりです。KaratのビジネスカードはVisaのクレジットカードで、銀行サービスも実在の提携銀行と組んで提供されています。
FICOスコアがクリエイターを測れない理由
宮武さんは、日本でも同じ問題を見たことがあると話します。人気YouTuberが家を買おうとするテレビ番組で、全員がローンを断られていたそうです。
(番組のYouTuberたちは)毎回断られていました。半額を現金で先に払うと言っても、です。
エリック氏はこの理由を、既存の金融の仕組みから説明します。金融機関は「この人にお金を渡して返ってくるか」を指標で判断し、アメリカではその中心がFICO ── 米国で最も広く使われる個人の信用スコア。返済履歴や借入残高などをもとに算出され、ローンやカードの審査に使われますと呼ばれるクレジットスコアです。
エリック氏によれば、FICOは1950年代にフェアとアイザックという2人が開発したもので、当時はインターネットすら存在しませんでした。FICOが主に見るのは「過去に借りたことがあり、それを返したか」です。
コンテンツ制作に忙しいクリエイターは、借入の経験がないまま財務的には強い状態にあることが多いといいます。その結果、限度額の高いカードも、住宅ローンも、自動車ローンも得られないという事態が起きます。
エリック氏は、何百万ドルも稼ぐクリエイターが、1日1000ドル以上動かせない口座しか持てない例もあると話します。お気に入りのエピソードとして、カイ・セナト氏も所属するグループAMPのメンバー、レイ・エイジアンボーイ氏の話も挙げました。
レイ・エイジアンボーイ氏は「なんでChaseは50ドルもカードで使わせてくれないんだ」という趣旨を、かなり乱暴な言葉でツイートしたそうです。しかもそれはクレジットではなく単なる銀行口座で、原因は銀行が彼の仕事を理解していないことだった、とエリック氏は説明します。
Karatは銀行とクリエイターの「橋」になる
宮武さんの「従来の銀行と何が違うのか」という質問に対し、エリック氏は、Karatはクリエイターを本物のビジネスとして理解し、信用履歴だけでなく財務状況とSNSの数値も見て審査すると答えます。
ボテズ氏の例でいえば、信用履歴が少なく銀行に2〜3回断られていても、Karatから見れば非常に高い収入があり、はるかに高い限度額を持てる人だったといいます。
FICOスコアが中心で、主に過去の借入と返済の履歴を見る
信用履歴に加え、財務状況とSNSの数値を見てビジネスとして評価する
Karatの仕組みの肝は、リスクの引き受けにあります。Karatは銀行に「質のよいビジネスを紹介し、リスクはこちらが負う」と提案し、カードの債務不履行や不正な資金移動が起きた場合はKaratがコストをかぶります。
Karat
クリエイターを独自に審査し、優良なビジネスを銀行に紹介する
リスク引き受け
債務不履行や不正な資金のコストはKaratが負担する
提携銀行
リスクを負わずに金融サービスそのものを提供する
製品
クリエイターが使うWebサイトなどの体験はKaratがつくる
現在Karatは、ビジネスカードに続いてクリエイター向けのビジネス銀行口座を立ち上げようとしています。資金を預けて保有でき、利回りも出す口座です。
エリック氏によると、適切な銀行パートナーを見つけるには何年もの交渉が必要でした。銀行は常に資金の不正を心配するため、配信者やYouTuberが10万ドルを口座に入れても正当なお金だと、規制やコンプライアンスに沿って説明し続けてきたといいます。エリック氏はKaratを「まったく違う2つの世界をつなぐ橋」と表現しました。
すべての起業家がコンテンツで売る時代へ
ビジョンを問われると、エリック氏は「すべてのビジネスが、マーケティングのためにコンテンツの使い方を学ぶようになる」と話します。全員がクリエイターやYouTuberになるとは限らないものの、Z世代やα世代の起業家は製品を売るのにコンテンツが必要だと知っている、という見立てです。
Karatの目標は、クリエイターやコンテンツ事業者が銀行、給与支払い、税務、与信をすべてKaratで行う状態です。エリック氏は、街のコーヒーショップから始まったSquareや、EC事業者から始まったStripeが、のちに幅広い市場へ金融サービスを広げた例と重ねます。
宮武さんも、草野さんと以前の回で話したとおり、最近の起業家はマーケティングやコンテンツ制作がうまく、製品より先にフォロワーを築いていると応じます。
製品をつくるだけじゃなく、コンテンツや、ライフスタイルや、ブランドを先につくらなきゃいけないんですよね。
エリック氏が挙げた例が、Karatと関わりのあるナディア・オカモト氏です。ベンチャー出資を受けたタンポンなど女性用衛生用品の会社を経営しながら、本人も女性の衛生ケアの大切さを発信するインフルエンサーです。
エリック氏は、オカモト氏が「製品を開発して収益化したクリエイター」なのか「コンテンツ活用がうまい創業者」なのかを問い、時間とともに両者は同じものになると述べます。
共通の友人であるサラ・デュ氏も例に挙がりました。Andreessen Horowitz ── シリコンバレーを代表するベンチャーキャピタル。通称a16z。多くのテック企業に投資していますなどから数百万ドルを調達した起業家で、事業は企業向けでも、LinkedInでの発信が会社のマーケティングにもなっているといいます。
Karat自身はどうやってクリエイターに届けたのか
エリック氏は、良い金融製品をつくるだけでは足りず、クリエイターにその必要性を知らせる啓発が欠かせないと話します。コンテンツに集中するあまり、税金を払うべきことすら知らないクリエイターも多いからです。
象徴的なのが2020年の出来事です。米国政府はコロナ対策として、条件を満たせば返済が免除されるPPP ── 給与保護プログラム。コロナ禍で中小企業の雇用維持を支えるため、米政府が実施した融資制度。給与支払いなどに使えば返済が免除されましたという融資を行いましたが、KaratがYouTuberに紹介しても、制度を知らないため全員が断ったといいます。
そこでエリック氏は、最良のマーケティングは自分たちでコンテンツをつくることだとして、3種類のコンテンツに取り組んできました。
| 種類 | 内容 | 狙い |
|---|---|---|
| クリエイター自身の投稿 | カードの写真や銀行サービス加入、ビルボード掲載を本人がシェア | 強力な推薦になる |
| イベント | グラハム・ステファン氏やPatreon CEOのジャック・コンテ氏らを審査員にした「Creator Shark Tank」 | クリエイターも起業家だと見せる |
| ポッドキャスト | クリエイターを招いてストーリーを語ってもらう | 互いのブランドを築く |
こうした発信を通じて、クリエイターの間に「自分はただの表現者ではなくビジネスで、与信や税金や銀行口座を気にする必要がある」という意識が広がってきた、とエリック氏は振り返ります。
カードから住宅ローン、AI経理までの構想
Karatはベンチャー出資を受けた企業で、5000万ドル以上を調達しています。エリック氏が掲げるビジョンは「クリエイターエコノミーのすべての1ドルがKaratを通ること」です。
最後の段階としてエリック氏が描くのは、クリエイターが「今いくら稼いで、いくら使っているか」「どの動画が好調で、どの事業が赤字か」をKaratのAIに尋ね、その答えを活動内容の見直しに生かせる状態です。
2020年のブームとショート動画の誤算
宮武さんは、クリエイターエコノミーが2020〜2021年に盛り上がり、多くのクリエイター向けサービスが生まれた一方、2022〜2023年には資金調達が落ち込んだと指摘します。
エリック氏はこれを2点で説明します。1点目は、コロナ禍で誰もが家にいて、オンラインコンテンツが人とつながる唯一の手段になり、「投稿してフォロワーを築き、収益化できる」と多くの人が気づいて一斉に参入したことです。
2点目は誤算です。かつてはYouTubeに15分や1時間の動画を投稿し、登録者を集めて収益化するのが主流でしたが、この時期にはTikTokなどのショート動画で成長する人が増えました。
ショート動画では誰もが再生数とフォロワーを得られるようになったものの、エリック氏によれば、そのフォロワーは同じ価値を持たず、同じ方法では収益化できませんでした。2022〜2023年ごろ、多くの人が「TikTokの100万フォロワーは、YouTubeの100万登録者と同じようには稼げない」と気づいたといいます。
2020年
在宅生活で、コンテンツで稼げると気づいた人が一斉に参入
2021年
ショート動画でクリエイターとフォロワーが爆発的に増加
2022〜2023年
ショートのフォロワーは長尺と同じように稼げないと判明
この1年
ショート動画を広告として使い、収益化する方法が見つかり始める
エリック氏は、この1年で状況が変わり始めたと話します。ショート動画を自然発生的な広告として使い、有料コミュニティや商品・サービスに誘導する「クリエイティブ起業家」が生まれているといいます。
こうした人々は、長尺動画でブランド案件を取るのではなく、60秒の広告のようなクリップで自分の商品を売ります。エリック氏はこの変化を、クリエイターエコノミーが普通の経済になりつつあると表現し、それこそがKaratの市場が広がる理由だと語りました。
フォロワー1人の価値が最も高いのはInstagram
宮武さんは、Karatが2022年ごろに発表した、各プラットフォームのフォロワー数を入れると価値がわかる計算ツールに触れます。当時はInstagramのフォロワー単価が平均で最も高く、TikTokが最も低かったといいます。
エリック氏は、その分析にすでに今の流れの兆しがあったと話します。Instagramが最も高かった理由は、人々が自分のビジネスの商品やサービスを売るのに使えるからです。
熱心な視聴者がつく長尺のYouTubeやTwitchのほうが高そうに見えますが、エリック氏はパン屋の例で説明します。Instagramならパン屋がお店の投稿をして話題になれば客が来ますが、YouTubeで10分のパン職人の日常動画を編集して出すのは大変な手間です。
同じショート動画でもTikTokとの差は、Instagramが元々SNSである点にあるといいます。コメントやDMの層があり、ビジネスは最初の視聴を有料顧客へと育てられます。一方、TikTokはコンテンツが次々と流れてくるフィードで、「フォローしてつながる」感覚が薄いという見方です。
TikTokで誰かをフォローしても、あとでその人が誰だったか覚えていないことが多いですよね。
| プラットフォーム | 特徴 | 今後の見通し |
|---|---|---|
| SNSとしてコメントやDMで顧客を育てられる | トップを維持 | |
| TikTok | ブランド案件もInstagram型の育成も難しいが、ライブコマースなど新形式が登場 | 上昇していく |
| YouTube・Twitch | 収益化しやすいが、新規事業者が大量に投稿するのは難しい | 現状維持 |
宮武さんが「ブランドにとってはYouTubeやTwitchよりInstagramやTikTokが合う」とまとめると、エリック氏は同意し、全員がクリエイターになるわけではないが、2025年や2035年に存在感を保ちたいビジネスはSNSに出てコンテンツの作り方を知る必要がある、と繰り返しました。
他人に切り抜かせる「クリッピング」という新潮流
宮武さんは、成功しているソフトウェア企業やリアル店舗が複数のTikTokアカウントを持ち、アンバサダーを雇っている例を挙げ、最近ショート動画で効果を上げている手法を尋ねます。
エリック氏が挙げたのが「クリッピング」です。これまでも長尺の動画やポッドキャストを自分で切り抜き、ショートに投稿して本編へ誘導する手法はありました。
自分の長尺コンテンツを自分で切り抜き、自分のショート用アカウントに投稿して本編へ誘導する
長尺コンテンツを外部のグループに渡し、それぞれが切り抜いて自分のアカウントに投稿し、再生数に応じて報酬を受け取る
新しいクリッピングでは、依頼者は投稿者に1000再生あたり10ドルのようなCPM ── Cost Per Milleの略で、1000回表示あたりの広告費用を指す指標。ここでは1000再生ごとに支払う報酬単価の意味で使われていますで支払います。アルゴリズムのおかげで、新しく作ったアカウントでも拾われて話題になりうるからです。
これがTikTokやリールの強みですよね。フォロワーがいなくても、コンテンツが良ければシェアされる。
エリック氏はこれを「UGC版のAdSenseを発見したようなもの」と表現します。クリップの担い手は、副業として稼ぎたい人を集めるコンテンツに詳しい人たちの業界があり、SNSで育ち、どこを切り抜くべきかを見抜ける若い世代だといいます。
10年前なら、ポッドキャストの名場面を見抜く才能があっても、番組の編集者に応募するくらいしか使い道がありませんでした。エリック氏は、今はその才能を仕事にできると話します。実例として、ドレイク氏が曲をクリッピンググループに渡して各自に投稿させ、話題になったうえで報酬を払った件を挙げました。
ショートか長尺か、中途半端が一番危ない
宮武さんは、ポッドキャストや配信のように切り抜きやすい長尺コンテンツを作ることが重要になるのかと尋ねます。エリック氏は、コンテンツは「バスタブ曲線」の形になると答えます。
エリック氏は、両端のどちらかに振り切るべきで、真ん中に機会はないと強調します。今後は、長尺からショートを切り抜くような両者の相互作用も増えると見ています。
宮武さんも、YouTubeでは30分を超える動画が増えていると指摘し、ショートに慣れた人が増えたからこそ長尺の需要も大きくなっている、という二極化の見方を示しました。
これから始めるクリエイターは何から手をつけるべきか
宮武さんは、多くのα世代がYouTuberやTikTokerを目指す中、これから始める人への助言を求めます。エリック氏の答えは、作って配信するのが簡単になった今、自分の強みが最も生きる形式を選ぶことです。
エリック氏自身の場合は、会話が好きで、共有と学びが楽しいのでポッドキャストを選びました。始めたときは何も知らず、2人が座ってマイクとカメラ、それもスマホがあれば十分だったといいます。
踊りたいならスマホを置いて踊りを撮って投稿し、映画を作りたいなら撮ってYouTubeに出す。エリック氏は、最もシンプルな機材でまず出してみることを勧め、好きなら徐々に質を上げ、いずれ収益化に進めばよいと話します。
宮武さんは、ここに2つの考えを加えます。
1つは、大きな期待をしないこと。楽しんでやって、どこに行くか見てみる。
2つ目は、プロセスを好きにならないといけないということです。(クリエイターは)大変な仕事なので。
宮武さんによれば、クリエイターは次に何をするか考え続け、毎回自分を超えなければならず、燃え尽きも大きな問題です。
エリック氏はこれを受けて、コンテンツはビジネスだけでなく個人の視点でも大事で、生活の一部になっているときに持続しやすいと話します。友人のクロエ・シー氏と続けてきたポッドキャストも、2人がコンテンツ以外で充実した生活を送っているからこそ、作りたいものが生まれてくるといいます。
エリック氏は、Y Combinatorのポール・グレアム氏のエッセイだったと記憶する言葉として「完璧なスタートアップをつくるには、まず自分を完璧にして、自然に湧き出ることをやれ」を紹介し、コンテンツはすでに送っている生活から生まれる創造性の反映であるときに最もうまくいく、とまとめました。
アメフトのルールは『アイシールド21』で覚えた
話題は日本へ移ります。Karatは日本進出の予定はなく、国ごとに大きく違う金融規制の関係で、まず米国に集中しているとエリック氏は説明します。
エリック氏は日本を訪れたことはないものの、漫画は大量に読んできたといいます。好きな作品として『ONE PIECE』『BLEACH』『NARUTO』の三大作品を挙げ、最近は『ダンダダン』を楽しんでいると話しました。
もう一つ名前が出たのが、落語を題材にした漫画です。エリック氏は名前をうまく思い出せませんでしたが、あかね噺とみられます。伝統をどこまで変えて現代に合わせ、どこまで守るのか、登場人物がそれぞれの語り口を育てていく姿に引き込まれたといいます。
宮武さんが『アイシールド21』でアメフトのルールを、『弱虫ペダル』で自転車競技を覚えたと話すと、アメリカ在住のエリック氏も、実は『アイシールド21』でファーストダウンを知ったと明かし、作中のチーム「デビルバッツ」の名前で盛り上がります。
宮武さんは、日本の漫画業界は競争が激しく、人気がなくなればすぐ打ち切られる点で、米国のスタートアップの生態系に最も近いと語ります。エリック氏も、米国の読者は好きな作品が日本の読者投票で3週連続最下位になり打ち切られるのを見てきたと応じます。
話は、漫画家がランキングで生き残る苦闘を描いた『バクマン。』に及びます。宮武さんは『DEATH NOTE』の作者による作品だと補足し、週刊少年ジャンプの関係者に聞いた話を紹介しました。
(『バクマン。』の内容は)だいたい80%正確だそうです。
エリック氏は、漫画も作るのが容易になり競争が激しくなった結果、ウェブトゥーンのように誰でも作家になれる別の形式が生まれており、クリエイター業界と重なると話します。
日本のクラフトマンシップと「お金の話」のバランス
日本に行くなら、と聞かれたエリック氏は、日本には洗練された美意識と創作文化があり、西洋にはない形で創造性を尊重していると話します。西洋では創造性の裏に「どう収益化するか」という問いが常にある一方、日本では作品そのものの質に向き合う情熱を感じるといいます。
宮武さんは、そこには良い面と悪い面があると返します。良い面は、漫画だけでなく飲食店にも見られる比類ないクラフトマンシップで、エリック氏も映画『二郎は鮨の夢を見る』を挙げます。
一方で日本の課題は、お金の話をあまりしないことです。(お金の話は)ちょっとタブーなんですよね。
宮武さんは、成功を語るクリエイターが増え、ファンがそれを祝福するような米国の影響が日本ではむしろ役立つかもしれないと話します。
エリック氏は、商業的で下品になる境界と、大事な話題を無視する境界の間にバランスがあると述べ、「結局、食べられなければ創作はできない」と語ります。『バクマン。』で主人公の叔父が無理をして健康を損なった話や、『HUNTER×HUNTER』の作者が腰の不調に苦しんできたことに触れ、芸術の美しさの裏には生活面のコストがあると話しました。
眠れないほど考えているのは「タイミング」
最後に宮武さんが「夜も眠れないほど考えていることは」と尋ねます。エリック氏は、市場が大きく伸びていて、新しいクリエイターや創造的な起業家にKaratが必要だということは明確だと答えます。
難しいのは、正しい製品を正しいタイミングで届ける実行だといいます。創業初期は「収益化や成長やプラットフォームを提供するのではなく、事業の金融面を扱う」と説明しても、何のためのサービスなのか理解されにくかったそうです。
創業初期は、稼ぐ・伸ばす以外のサービスが何のためにあるのか理解されにくかった
この数年で業界が成熟し、税金や与信を管理しないと困ると気づいたクリエイターから関心が集まっている
エリック氏は、税金を払わなければ、稼げなければ、与信がなく住宅ローンが組めなければ、困るのはクリエイター自身だと話します。Karatのブランドの認知も高まったものの、早すぎる可能性は消えないといいます。
エリック氏は「市場は伸びているし、必要とされている。でも自分たちが正しいタイミングにいる正しい人間なのかは分からない」と語り、多くはタイミングと運と機会次第だと自覚していると締めくくりました。宮武さんは、日本でまた会って一緒に飲もうと誘い、インタビューを終えています。
まとめ
エリック・ウェイ氏の話は、クリエイターが金融から締め出されている現実から始まり、やがてすべてのビジネスがコンテンツで自らを売り込む時代へと広がっていきました。Karatの事業もその流れに乗る形で設計されています。
- FICOスコア中心の既存金融はクリエイターを測れず、Karatは財務とSNSの数値で審査し、リスクを引き受けて銀行との橋渡しをしている
- エリック氏は、クリエイターエコノミーは普通の経済になりつつあり、起業家はコンテンツの作り方を知る必要があると見ている
- ショート動画は広告としての収益化が進み、他人に切り抜かせるクリッピングという新手法も広がっている
- コンテンツはショートか長尺に振り切るべきで、始めるならシンプルな機材で、生活の延長として続けるのがよいと語られた
- 日本の漫画とクラフトマンシップの話からは、創作の質と生活の糧を両立させるバランスが論点として浮かび上がった





