毎年恒例、1年のエピソードをつなぐ年末テーマとは?
Off Topicでは毎年この時期に、その年に配信したエピソードが実は1つのテーマでつながっていた、という話をまとめる「年末テーマ」回を配信しています。
大変なんですよ、これやるの。
宮武さんによると、2025年はニュース関連の回が多く、通常回は例年より少なめでした。そのぶん「全部を結びつけなくていい」のはありがたい、と笑います。
2025年に扱ったテーマとして、宮武さんはベル研究所とインキュベーション、夢とシミュレーション、ドラマ『セヴェランス』、時間のコントロールによる体験作り、ストリーミング戦争、インターネットフィクション、新しいスポーツリーグ、AIエージェント、リファレンスカルチャー、オープンウェブの危機などを挙げます。
テーマを明かす前に、宮武さんはまず2025年の消費行動を振り返るところから話を始めます。そうした消費の変化こそが、1年間の話題とつながっていると考えているためです。
流行語「6-7」は何を意味しているのか
米国では、辞書を持つ複数の組織がそれぞれ「今年の言葉」を選びます。宮武さんが最初に挙げたのは、dictionary.comが2025年のWord of the Yearに選んだ「six seven(6-7)」でした。
多分日本に住んでるとほぼ聞かないですよね、six sevenっていう。
「6-7」は「67(sixty seven)」ではなく、6と7を続けて読む言葉です。曲から生まれたとされ、TikTokでバイラル化し、言うと周りが一緒に唱えたり、手の動きを付けたりするムーブメントが自然発生しました。
アルファ世代の子どもたちが学校で一日中「6-7」としか言わなくなり、先生たちが困惑したといいます。6月ごろから検索ボリュームは約6倍に増えましたが、言葉としての意味はほとんどありません。
いろんな意味合いを定義づける人たちはいるんですけど、基本的にはあんまり意味がない。
宮武さんは、その意味のなさ自体がポイントだという見方を紹介し、前年の流行語ブレインロット ── 英語で「脳の腐敗」の意味。質の低いネットコンテンツを延々と消費し、思考力が鈍った状態を指す俗語ですの続き、あるいは進化だと捉えています。
草野さんは、かつての「OK Boomer」と同じように、意味の薄い言葉が世代をフィルタリングする役割を果たしているのではないかと指摘します。大人がハロウィンで6-7の仮装をして、アルファ世代に呆れられる光景もよく見られたそうです。
ブレインロットという言葉自体は、作家ヘンリー・デイヴィッド・ソローが1854年に使ったのが最初とされます。宮武さんは、ソローが暮らした家が自分の通った高校のすぐ近くにあり、訪れたこともあると明かしました。
「バイブスコーディング」はテック業界の外へどう広がったか
宮武さんが挙げたもう1つの流行語は「バイブスコーディング」です。元テスラ、元OpenAIのアンドレ・カーパシーさんが、2025年3月ごろにX(旧Twitter)で使い始めた言葉だとされています。
あ、そんな最近だったんですね。
バイブスコーディングは、自然言語でAIに指示してアプリやソフトウェアを作る新しい開発スタイルを指します。宮武さんによると、Y Combinator ── 米国の著名なスタートアップ・アクセラレーター。Airbnbなどを輩出しましたの参加起業家の多くが、この手法でプロダクトを作っているそうです。
代表的な企業の成長ぶりも語られました。宮武さんが挙げた数字を並べると、急拡大の様子がわかります。
| 企業 | これまで | 2025年の状況 |
|---|---|---|
| Replit | 2022年はARR 1ミリオン | 240ミリオンまで成長 |
| Lovable | 前年11月にローンチ | 8ヶ月でARR 100ミリオン、年内250ミリオン程度の見込み |
| Cursor | 2025年1月にARR 約100ミリオン | 年内に約1ビリオンの見込み |
宮武さんが注目するのは、むしろ「Vibes」の部分の浸透です。Vibesでゲームを作る、Vibes Graphing、Vibes Analysisなど、「Vibes◯◯」という言葉が増え始めているといいます。
宮武さんによると、Vibesという言葉は2018年ごろ、TikTokやInstagramの普及とともに再び使われ始めました。TikTokの「Vibesチェック」や、ブランドがナラティブよりも雰囲気を伝えようとムードボードを多用する動きも、その流れにあるといいます。
ずっと曖昧なその自然言語を使って、そのダイレクトなコードではなくて、ちょっと曖昧な言葉を使って、AIにコードに落とし込んでもらうっていうことだと思うので。
Vibesは、明確な理由なく「なんとなく雰囲気が悪い」と伝えるような曖昧な言葉です。宮武さんは、バイブスコーディングにもブレインロットに近い部分があり、これらの言葉が同時に流行したのは偶然ではないと考えています。
草野さんは、曖昧だからこそ受け取り手によって感じ方が違い、「絶対」を出せないところが面白いと応じます。宮武さんも、毎回答えが変わるLLMに通じるとして、「絶対」を曖昧にしていく消費行動の変化に注目しました。
ラブブ1つでは足りない?「IRLブレインロット」という現象
宮武さんは次に、2025年に米国で流行した商品に目を向けます。ラブブ、プロテイン、ドバイチョコ、バッグチャーム、抹茶、スムージーなどです。
ライターのカイル・チャイカさんは、こうしたヒット商品を「IRL Brainrot」と名付けました。宮武さんによると、掲載媒体はニューヨーカーかニューヨーク・タイムズのどちらかだといいます。
IRLは「In Real Life(現実世界)」の略です。奇妙でどこか幻覚的なリアルの商品が流行しているのは、ネット疲れから自分を守る反応であり、同時に内輪ネタとしてミームを肉体に取り入れる行為でもある、という見立てです。
ラブブつけてる人は絶対片手に抹茶持ってますね。
宮武さんが面白いと感じているのは、こうしたトレンドに1つだけ乗る人がほとんどいない点です。画面で見たものをリアルで摂取し、それがまた画面に映るというサイクルを、人々は意識し始めているといいます。
インターネット上ってなんかいろんなトレンドが同時発生しているので、なんか一個だけ乗ってもオンライン上でなんかちゃんと見てるっていうステータスシンボルにならないっていう。
同じフィードにはラブブも抹茶もロードも流れてきます。その世界観の中で「今のトレンドを知っている」と示すには、ラブブだけでは足りない、というのが宮武さんの推測です。
以前のトレンドとの違いを問われた宮武さんは、昔はトレンドが別々のコミュニティで流行っていたのに対し、今は全員が1つのアルゴリズムのフィードを見ているため、すべてが統一されていると答えました。
なぜ米国はマス向けに寄っていくのか
草野さんは、日本ではアイドル、J-POP、洋楽とファンが分かれ、全員が同じチャームを付けることはあまりないと話します。一方で米国には、スケールさせる資本主義のカルチャーがあると指摘しました。
最後大きくなるのがもうちゃんと見えてるっていう世界観だと、すごくその「最初からつけてましたよ」っていう、言いたくなるっていうのは、余計日本よりあるような気がしました。
宮武さんはこの指摘を、日米の大きな違いだと評価します。宮武さんの見方では、米国は「コミュニティが薄い」社会です。
Twitterだったり、まあより、よりパブリックな場所にみんな最初集まりに行ったので。
宮武さんの説明では、米国のネット利用者は最初からパブリックな場に集まったため、自分をマスにどう見せるかを気にするようになりました。特定のコミュニティのものを見せてもイケて見えず、マスで流行るものを身につける必要が出てきます。
インフルエンサーも同様にマス向けへ寄せることになり、どうしても中身が薄くなります。宮武さんは、日本も少しずつその方向に向かっていると見ており、米国ではそれが大きな課題を生んでいると話を進めます。
SNSはなぜ「テレビ」になったのか
宮武さんが次に紹介したのは、元ザ・アトランティック記者のデレク・トンプソンさんによる記事「Everything is Television(何でもテレビ化)」です。あらゆるコンテンツがテレビ化している、という主張の記事です。
最もわかりやすい例がSNSです。Metaによれば、Facebookの利用時間の8割、Instagramの9割が動画視聴で、その多くはユーザーが直接知らない人のコンテンツだといいます。
宮武さんは、OpenAIのSoraやMetaのAI動画フィード「Vibes」も、AIをテレビ化したものだと見ています。Netflixも同じ流れにあるといいます。
今部屋に入りました。えー、これからこういうことを、この人に言いますみたいなことをわざわざ言うんですよね。
Netflix作品の登場人物が自分の行動をいちいち説明するのは、別の画面を見ながら「ながら視聴」をする人が多いためです。テレビ化とは、コンテンツが即時的、感情的、スペクタクル的で手短な方向へ進化することだと宮武さんは整理します。
科学
ストーリーテリングに変わる
ニュース
パフォーマンスになる
政治
演劇になる
政治の代表例として、宮武さんは米国大統領がもともとリアリティ番組のスターだったこと、そして民主党の期待の星でニューヨーク市長になったマムダニさんもカメラ映えする人物であることを挙げました。
草野さんは、テレビ映えをスキルとして身につけるべきという面はあるとしつつも、少しエクストリームだと感じています。不安な世の中では、感情を動かすリーダーが求められやすいという見方でも、2人は一致しました。
旅行も友人関係も、テレビ化している?
宮武さんによると、旅行さえもテレビ化しています。ドラマ『ホワイト・ロータス』のホテルに行きたがる人がいるほか、TikTokでは「日帰り海外旅行」が流行していました。
宮武さんが紹介した例は、朝5時にニューヨークを発ってエジプトで1日観光し、その夜にニューヨークへ戻るというものです。旅行そのものが、動画コンテンツのネタになっているといいます。
宮武さんが「個人的にすごい悲しい」と語るのが、友人関係までテレビ化しているという点です。その兆しとして、2010年のアニメ『サウスパーク』のエピソード「You Have Zero Friends」を挙げます。Facebookの友達の数を競う話です。
でもそれっていわゆる本当に友達をなんか平らかしてるわけじゃないですか。
フィードでは、パートナーの投稿のすぐ後に知らない人のミームが流れます。通知も、友人からのLINEと最近登録したアプリのお知らせが同じ枠に届きます。
宮武さんによると、こうした「平ら化」によって、友人とのやり取りはTikTokの動画と同列の選択肢の1つになりました。草野さんも、友人からの電話に出ることと動画を見ることが同じオプションになっている、と言い換えています。
友人はパラソーシャルに、セレブは身近になる逆転
宮武さんは、ファンがセレブやインフルエンサーを一方的に知っているような関係、パラソーシャル ── メディアを通じて相手を一方的に知り、親しみを感じる疑似的な人間関係のこと。心理学の用語ですな関係を取り上げます。
宮武さんによると、セレブやインフルエンサーはコメントに返信するなど、ファンとの関係を積極的に築こうとしています。宮武さんは、テイラー・スウィフトをその達人に挙げます。
一方、友人同士の関係はパラソーシャルに近づいていると宮武さんは見ています。友人のInstagramストーリーズを見ても、反応しない人のほうが多いためです。
でもそれってテイラー・スウィフトが、えー、今年婚約したニュースを消費した形と、なんか同じ消費行動をとってるんですよね。
コメントに返信し、ファンと双方向の関係を築こうとしている
投稿を見るだけで反応せず、一方的に人生を知るパラソーシャルな関係に近づいている
「キャッチアップ」では人生を共有できない?
リアルで友人と会う形も変わってきている、と宮武さんは言います。ある記事では、時間を区切って近況を報告し合う「キャッチアップカルチャー」が増えていると紹介されていました。
で、次のキャッチアップまでに一回時間が止まるんですよ。
キャッチアップを繰り返すだけでは、一緒に人生を経験していることにはならない、と宮武さんは考えています。ハングアウトとは違う関係性だという指摘です。
草野さんは、SNSには良いことしか載らないため、つらかったことや愚痴は、実際に会って相手の雰囲気を見てから話すかどうかを決めるものだ、と付け加えました。
宮武さんは、キャッチアップでは過去の大きな出来事ばかりを話し、「昨日これ食べた」ような小さな話や、今と未来の話が減ったと感じているそうです。仕事では未来の話をしても、友人とのキャッチアップではしないといいます。
一年間会ってなかった友達だったとすると、過去一年間何が起きたのかだけでなんかいっぱいいっぱいで、それで結局その会が終わっちゃうみたいな。
米国人はなぜ人に会わなくなったのか
宮武さんによると、米国人が人と会う機会は以前より減っています。草野さんは、サンフランシスコやLAでは車で1時間かけて会うより、同じ市内でもZoomで話すほうが楽だと考える人がいる、という話を紹介しました。
宮武さんは、昔は放課後のモールやタウンスクエアのように「行けば誰かいる」場所があったと振り返ります。今はスマホで事前に計画するため、偶然の出会いが起きにくくなりました。
宮武さんは、対面での交流時間が減っていることを示す数字を挙げています。
| 対象 | 期間・比較 | 変化 |
|---|---|---|
| 米国の男性 | 2003年→2022年 | 対面交流の時間が約30%減 |
| 未婚の米国人 | 同上 | 35%以上減 |
| 10代 | 同上 | 45%減 |
| 高校3年生(毎日友達と外で遊ぶ割合) | 1970年代後半→2017年 | 半分強→28% |
15〜19歳では、友人とのハングアウト時間が週に約3時間減ったとされます。米国人が一人で過ごす時間は、歴史上最も長くなっている可能性があると宮武さんは言います。
アメリカ人の八人に一人は友達がいないって自分で回答してるんですよ。
草野さんは、友達の定義が厳しくなっているのかもしれないと問いかけます。オンラインでは「いいね」をくれないのに、会えばよく話してくれる人もいて、関係の濃さがわかりにくくなっていると話しました。
「アンチソーシャルの世紀」と日本の個食文化
デレク・トンプソンさんは、この100年を「アンチソーシャル・センチュリー」と呼んでいます。米国ではフードデリバリーを使って一人で食べる人が増え、外食は減っているといいます。
草野さんは、一蘭のように一人で外食する文化を持つ日本にはビジネスチャンスがあると指摘します。宮武さんも、米国で一人でレストランに入ると心配されると応じ、日本にとって1つのチャンスだと同意しました。
宮武さんによると、米国の男性は家の外で人と過ごす1時間ごとに、家でテレビを7時間見ているといいます。新築住宅からダイニングルームがなくなり、ホームパーティーの文化も衰えています。
草野さんは、明るくパーティー好きという米国人のイメージに反し、そうでない人も多いと話します。宮武さんは、その背景にもテレビの影響があると見ています。
1970年:約6%
1999年:77%
一緒にいても会話せずにコンテンツを見る時間が増えてきた、と宮武さんは説明します。
テーマの半分「インティマシー(親密さ)」が求められる理由
番組開始からおよそ1時間たったところで、宮武さんは2025年のテーマの半分を発表しました。ブレインロット、バイブスコーディング、何でもテレビ化を経て人々が求めているのは「インティマシー(親密性)」だといいます。
宮武さんによると、エクスクルーシブなメンバーシップ、アクティビティベースのコミュニティ、Roblox、ポピュリズム、パブリックからプライベートなメッセージグループへの移行も、すべて親密性への欲求につながっています。
テック業界でも、起業家のサンフランシスコへの回帰、ハッカーハウス、ベル研究所のような施設、AIコンパニオンの成長に同じ流れが見えると宮武さんは話します。
宮武さんの考えでは、グループに属すると精神的な安定やムーブメントにいる希望、次に何をするかという意味が得られることが、親密性を求める要因です。調査では、米国人の41%、Z世代の48%がSNSの利用時間を減らす計画だといいます。
草野さんは、人は何によって親密さを感じるのかと問いかけました。宮武さんは、親密性にはいくつか種類があると答えます。
なんか本当は多分そのオーセンティックなインティマシーを本当は全員求めてるはずなんですよ。
パートナーや家族、親友、支え合うコミュニティといった本物の親密性には、なかなかアクセスできません。だからこそ、ラブブや以前のスタンレーのような「製造された親密性」でもよくなる、と宮武さんは説明します。
高校の「イケてるグループ」が全世界に広がった
草野さんは、中高生のころに「イケてる奴らが着けているもの」を真似した感覚を思い出します。社会に出ればさまざまなコミュニティがあるはずなのに、大人の世界でもみんながラブブを着けて抹茶を飲んでいる、と話しました。
なんでいわゆる高校生のああいう流行り方がもう全世界に広がっちゃったって感じですよね。
宮武さんによると、TikTokのフィードはパーソナライズされてニッチに見えながら、メインストリームの流行も同時に流します。その結果、全員が同じようなものを買いながらも薄さを感じるため、複数を買うことになります。
で、薄さを感じるから複数買わないといけないんですよ。
宮武さんは、この状況を世界規模の「親密劇場」と表現しました。一対一のコネクションをマスにスケールすると起きる現象であり、Instagramの「親しい友達」機能も、親密に見えて薄く見えるものの一例だといいます。
なぜ今、リアルなものが共感を生むのか
宮武さんは、IRLブレインロットのようにフィジカルなものが流行る理由について、親密性を作るうえで制約が重要だからだと説明します。オンラインではコンテンツとチャネルが無限にあり、アテンションが分散するため、共感が生まれにくいのです。
ディズニーチャンネル、ニコロデオン、カートゥーンネットワークに限られ、全員がスポンジ・ボブなどを知っていた
ココメロン、ブルーイ、パウ・パトロール、ミスタービースト、ミス・レイチェルなどに分散している
フィジカルなものには、スペースという制約があります。宮武さんは、スナックの流行も、ウォルマートやターゲット、エレウォンなど買える場所が限られ、全員が同じパッケージを目にするからだと見ています。
あ、これ前見たこの、このパッケージだっていうのがわかるので。
「シェアード・インティマシー」とRampの成功
宮武さんは、テーマのもう半分として「シェアード」を加えます。2025年のテーマは「Shared Intimacy」です。
宮武さんは、ブランドや企業が次の世代で勝つには、本物か製造されたものかを問わず、この親密性を作りにいく必要があると考えています。
わかりやすい例が、法人カードのRampによるキャンペーンです。ニューヨークで大型のライブイベントを開き、訪れた人が写真や動画を投稿してUGC化しながら、キャラクターに共感できる仕組みになっていました。
スピードやカイ・セナのようなライブ配信者がミスタービーストより濃いファンを集めているのも、同じタイミングで見るというライブの共感の強さだ、と宮武さんは言います。サバンナ・バナナズ、Netflixのライブイベント、インターネットフィクションも、2025年に話した事例としてこのテーマにつながるといいます。
親密性はどう作る?時間・努力・フィジカル
宮武さんは、親密性を作るヒントとして時間のコントロールを挙げます。リアルタイムのライブ配信に加え、Palantirがイベントやブートキャンプで顧客オンボーディングを進めた例もあり、B向けでも同じだといいます。
Appleが開発するルクソーJr.に似たロボットも、あえて時間をかけて人間味を出す例として挙げられました。サンデー・ノーバディのように、時間と労力をかけたことを見せるのもブランドの手法だといいます。
フィジカルを活用するという手もあります。宮武さんによると、米国の本市場の8割はいまだに紙の本で、前年には31億冊、1人あたり約9冊が購入されました。
さらに、2021年以降はリテール店舗の開店数が閉店数を約2000店上回っています。現金の利用頻度も同じ時期から下げ止まり、レコードも再び盛り上がっているそうです。
長期的な関係は、なぜ後回しになるのか
草野さんは、ショート動画が無限にある中で、長期的な関係や投資がおざなりになってきたと話します。連絡に返信するよりTikTokを見るほうが楽しく、店を予約するよりデリバリーとNetflixのほうが楽だというのは、よくわかるといいます。
「長くかけることって意外と大事だね」っていうのにまた再発見してきて。
宮武さんは、短期的な快楽に流れるのは動物に近い人間らしさだと応じます。草野さんは、一人で過ごすことが幸せならそれでもいいと話しました。
平均的に見ると幸せじゃないと思うんですよ。
宮武さんは、関係性を完全に振り切って求めるべきだという話ではないとしつつ、それがゼロに向かっていることがよくないと考えています。そして、そこにこそビジネスのチャンスがあるといいます。米国では聖書を読む割合が上がり、教会のような場に親密性を求める傾向もあるそうです。
野外広告の高騰とピザで顧客を得たスタートアップ
宮武さんは、『セヴェランス』のマーケティングやRamp、AIウェアラブル「Friend」の野外広告を、場所を活用して共有される体験を作る例として挙げます。
サンフランシスコでは、野外広告が最も値上がりしている広告フォーマットだそうです。枠はほぼAI企業で埋まって半年待ちになり、YCのオフィス周辺では2027年の枠を買う必要があるといいます。
宮武さんが2024年の好例として挙げたのが、ニューヨークのスタートアップAntimetal ── クラウド費用の最適化を手がける米国のスタートアップですです。正式ローンチの際、カスタムのピザボックスに連絡先を入れ、ニューヨークとサンフランシスコの顧客候補に1000枚以上のピザを届けました。
投資
約15万ドル(200万円以上)をかけ、配達パートナーと提携
配達
1000枚以上のピザを届け、不要な場合は配達員に寄付
成果
75社が顧客になり、年間1ミリオン分の契約を獲得
日本のものづくりに足りない「共有される」視点
宮武さんは、日米の違いを踏まえると、このテーマは日本にとって大きなチャンスだと考えています。日本はクラフトが強く、共感されるものづくりが得意だからです。
多分足りてないのは、あの、共有されるようなマーケ思考だと思うんですよ。
抹茶店の行列やI'm donut?のバイラル化のように、自然に広がっている例はあります。宮武さんは、インターネットをストーリーテリングの一環として見ることが大事だと話し、どうすれば友人に動画をDMしたくなるかを理解する必要があると指摘します。
オープンウェブの危機によってGoogle検索だけに頼れなくなる中、新しい見つかり方や商品設計の鍵がShared Intimacyだと宮武さんは言います。AIエージェントが人と人の間に入る時代に、どう親密性を作るかが今後の課題になると見ています。
見るだけで仲間になれる「witness」の力
草野さんは、Rampのキャンペーンのすごさは、参加者でなくても目撃者(witness)になるだけでその場の関係者になれる点にあると語ります。
事件も目撃しただけで、そこの場の関係者になれるっていうのが、なんか見るだけでそこの仲間になれるっていうのがすごいなっていう感じがあります。
宮武さんは、レブロン・ジェームズのスローガン「We are all witnesses」を引き合いに出してこの言葉を評価しました。ただし、目撃者になるには共感の入り口が必要です。
Rampの場合、人気シットコム『The Office』の俳優が登場したことで、Rampを知らない人も「パロディー?」と足を運びました。Rampの企業名を知る人以外も誘い込む組み合わせが巧みだった、と2人は評価します。俳優アンディさんは、動画を見て自ら参加を申し出た人物だったそうです。
宮武さんは、2025年の年末テーマを「Shared Intimacy」とすると締めくくります。草野さんは、2026年はこれを意識して日本や米国の事例を紹介したいと話しました。年内には、恒例のニュースTOP10を1回にまとめて配信する予定です。
まとめ
ブレインロットやVibesの流行、何でもテレビ化する社会、そして米国で広がる孤独を出発点に、宮武さんは人々が親密さを求めていると読み解きました。そのうえで、共感され、共有される親密さ「Shared Intimacy」を、これからのブランドに欠かせない視点として提示しています。
- 6-7やバイブスコーディングの流行は、意味や「絶対」が曖昧になっていく消費行動の表れとして語られた
- SNSや友人関係までテレビ化し、米国では対面での交流が大きく減っている
- 本物の親密性に届かない人々が、流行のモノなど製造された親密性に向かっている
- Rampやピザのキャンペーンのように、フィジカルとライブを使った共有される体験が成果を上げている
- ものづくりが得意な日本には、共有を意識したマーケティング思考を加えることで大きなチャンスがある





