10年来の友人モコちゃんとの出会い
この回はゲスト回です。ケージくんが約10年の付き合いになる音楽業界の裏方、モコちゃんこと芝崎萌子さんを迎えて収録されました。
芝崎さんは現在東京在住で、音楽業界の裏方をしています。最近ポッドキャスト番組「でんでんばらばら」を始めたばかりです。
二人が初めて会ったのは2016年、大阪梅田のライブハウス「シャングリラ」でした。それぞれ別のバンドのスタッフとして物販の準備をしていた時のことです。
隣でめっちゃ仕事できそうな人おるわと思ってました。僕その時、物販二回目とかぐらいで全然慣れてなくて。
私は私で、なんかベテランのおじさんスタッフがいるみたいな感覚でした。
一時期は近所に住んでいたこともあり、長い付き合いの中で自然な距離感ができていったといいます。
友だちは「お手入れし続けるもの」
この番組は「人生で一番大切なものは友だちなのではないか」という仮説をテーマにしています。ケージくんはゲストに友だちの定義やコミュニケーションの価値観を聞いています。
芝崎さんにとっての友だちの判断基準は、相手のことをどれだけ自分事だと思えるか。そして、会っていない時にもその人のことを考える時間があるかどうかだといいます。
一人でいる時に、あの子転職活動するって言ってたけど、どうなったんかなとか、ぼんやりその子のことを考えてる時間があると、自分はその子のことすごい大事に思ってるんだなって思います。
学生でなくなった今、芝崎さんが強く感じているのは、友だちは勝手に続くものではないということです。
友達っていうのは勝手にそばにいてくれるものじゃなくて、お手入れし続けるもの。自分がちゃんと縁をつなぐっていう意思を持って続けるものみたいな感覚があって。
大事に思っているなら自分から連絡しなければ、と自らを戒めていると話します。ケージくんはその意識の高さに驚いていました。
すごいちゃんとしてて。僕、もこちゃんより意識が低すぎたと思って、ちょっと。
SNSとポッドキャストで緩くつながる
ケージくんは自分のSNS初体験がミクシィだったと振り返ります。大人になってからSNSが始まったため、友だちの動向をSNSで見ることでつながっている感覚があったといいます。
芝崎さんもSNSでつながっている感覚に共感します。インスタグラムで近況を見ているから、2年ぶりに会っても近況を知っている、という状態をポジティブに捉えているそうです。
一方でケージくんは、自分からの発信はあまりせず、ポッドキャストをSNSの代わりに使おうと考えていると話します。
友達のポッドキャストを聞くことで、その人の近況とか考えてることが聞けて、なんとなく緩く友達と繋がっていられる感じがすごいしてて。
ただしケージくんは、SNSにも良い面と悪い面があると指摘します。特にXについては、人の醜い部分が抽出されて流れてくる特殊な場だと考えています。
95%めっちゃいい人だけど、5%ちょっと嫌なところがある人の、その嫌なとこの5%が露出するのがXだったりすると、悪いところばっかりが抽出されてタイムラインに流れてくる可能性もあって。
その点ポッドキャストは、興味がなければ聞かなくなるメディアです。つい毎週聞いてしまう相手のことは、結局は好きなのだ、とケージくんは考えています。
薄い会話より、心の深いところへ
芝崎さんはエッセイを読むのが好きだといいます。その理由は、仲良くなる工程をすっ飛ばして、その人の一番深いところを聞かせてもらっている気分になれるからだそうです。
初対面の薄っぺらい会話に耐えられへんくて。「どこに住んでるんですか」とかもうどうでもいい、みたいな。
もちろん、そこから仲を深めていく楽しさもあると理解しつつ、最近は「これに関してはどう思う?」という持論の展開を早く聞きたくなるといいます。ポッドキャストにも同じ魅力を感じているそうです。
芝崎さんへの問い
芝崎さんが惹かれるのはオタク気質の人です。小さなことをずっと考えている人、少しひねくれてこじらせている人の、絡まった頭の中身を見たいという気持ちがあると話します。
ケージくんは、芝崎さんにこじらせている印象はなかったと言いつつ、理屈をこねるのが好きで好奇心が旺盛なのはよくわかると応じます。
友達について聞きたいのも、本当にただの好奇心で。得た知識を何かに役立てようとか全然思ってなくて、ただ自分が知りたくて知りたいっていう。
人を知ることは、自分を知ること
芝崎さんは、人に興味があるのは、極論すれば自分にめちゃくちゃ興味があるということなのではないか、と最近考えているといいます。
日々を生きていく中で一番の喜びって、自分がどんな人間なのかを知っていくことやなって思ってて。でもそれは一人で部屋にこもって考えててもわかんなくて。
人とのずれを自覚するたびに、自分がどういう人間なのかがわかっていく。だから人を知れば知るほど自分の性質もわかっていく、という感覚があるそうです。
ここで二人の興味のベクトルの違いが浮かび上がります。芝崎さんから見たケージくんは、人の生い立ちからプロセスを研究のように追っていくタイプだといいます。
KGさんは教科書の偉人の歴史ぐらい、人の生い立ちからそこになるまでのプロセスを研究みたいな感じで追ってってるイメージがあって。
一方の芝崎さんは、プロセスよりも「今その状況になった時に、この人はどう考え、どう感じるか」に強くフォーカスしているといいます。
ケージくんも、その人が今のキャラクターになった背景を知ることに喜びを感じると認め、二人の興味の方向性の違いを確かめ合いました。
生い立ちや背景など、過去のプロセスからその人が今こうなった理由を掘り起こしたい
今この状況で、その人がどう考え、どう感じるかという現在の反応に強くフォーカスしたい
青春=年齢ではなく「無敵スター状態」
話題は青春へと移ります。芝崎さんは、同窓会で昔話に盛り上がるのが嫌いすぎて、同級生の誘いを頑なに断り続けてきたといいます。
あの頃よかったねみたいな話ってダサすぎるだろみたいな気持ちもあって。せっかく会うなら、今こういうことやってて、こうなりたくてこれをやってるんだよねって話をしたいのに。
しかし、かつての上司である中井さんと長電話でパンゲアの時代を振り返る時間はとても楽しかったといいます。そこで芝崎さんはある解釈にたどり着きました。
芝崎さんにとっての青春時代は学生時代ではなく、パンゲアで働いていた数年間でした。当時をリアルタイムで「マリオのスターを取っている無敵状態」だと感じていたといいます。
今無敵やみたいな。それは振り返ってそう思うんじゃなくて、リアルタイムの時点でずっとそう思ってたんですよ。
そこから芝崎さんは、同窓会の昔話が楽しい人は、無敵だった時代がたまたま学生時代だったのではないか、と考えたといいます。
一方ケージくんは、自分にはスター状態だった時期がないような気がすると返します。彼の青春の定義は、年齢と切り離されたものでした。
その時にしかできないことをやってる瞬間が青春だと思ってるんで。年齢関係なく、後になって、あの時でしかできなかったよなって思えたらもう勝ちみたいな。
芝崎さんは、過ぎ去った過去を美化することは、この先続いていく人生に対して虚しすぎないかと語り、年齢を謳歌することこそ青春だという定義に希望を感じたといいます。
若さ信仰への疑いと「今が一番早い」
ケージくんは、日本には若さそのものに価値を置く風潮が強いのではないかと指摘します。その背景には、中学2年生の時のある気づきがありました。
終わりの会で担任の先生が「若いっていいよね」といった話をした時、ケージくんは一つの真実にたどり着いたといいます。
人間って若いってだけで価値があるんだと思った時に、めっちゃ怖いと思って。だって年取ったらなくなるじゃん。
若さに価値があるだけなのに、それを自分の価値だと勘違いしたまま年を取り、失って初めて気づくのは怖い。だから若さ以外の価値を身につけねばと強く思ったそうです。
芝崎さんも、若ければ若いほどいいという価値観は人を苦しめると共感します。小学生の頃、習い事を早く始めた子と比べて「私にはもう遅すぎる」と感じていたといいます。
その時のタイミングでは全部が遅すぎるように感じてっていうのが結構その恐怖で。でも今は、今やるのが一番早いから、もうとりあえずやろうみたいな。
今が一番若い、という言葉を身をもって実感した芝崎さん。ケージくんも、その人の旬はそれぞれにあり、始めたい時に始めるのが一番いいと応じました。
ポッドキャスト「でんでんばらばら」を始めるまで
芝崎さんがポッドキャストを始めたきっかけには、ケージくんの存在が大きかったといいます。昔から「YouTubeやポッドキャストをやりなよ」と言われ続けてきたそうです。
当初はピンと来ていませんでしたが、2021年か2022年頃、ケージくんが手伝うポッドキャストにゲスト出演し、喋る楽しさを実感します。
2025年にポッドキャストを聞くようになると、好きになった番組を一気に遡って聞くようになりました。
それタイムトラベル聞きってやつですよ。
そうしてファン心理を理解し、誰かと喋る形でやりたいと考えていた時に出会ったのが、相方のサルシッチャすずきさんでした。
サルシッチャすずきさんは、京都の鴨川近くでソーセージを一から手作りするお店を営む人物です。芝崎さんが食事に行った際、その話のあまりの面白さに惹かれたといいます。
サルシッチャさんとポッドキャストやるまで二回ぐらいしか会ったことないんですよ。だからお互いのこと全然知らんくて。
ケージくんは、二人がまるで昔からの友達のように話しているので驚きます。性別も世代も違い、互いをまだよく知らないからこその自然な距離感が、番組の魅力になっていると評しました。
「友達にはちょうど言えない腹の底」を伝える
番組名「でんでんばらばら」の説明には、「友達にはちょうど言えない腹の底を、恐れを承知で伝えます」と書かれています。ケージくんはその言葉のセンスに惹かれたといいます。
芝崎さんによれば、それは角が立ちそうな話や、ありふれた愚痴にはしたくない話を指します。
友達に共感したくないとかって、なかなか言えないというか。だからサルシッチャさんが友達じゃないからこそ言えるし、歳が離れてるからこそ話せる。
ケージくんは、番組全体がコミュニケーション論になっていて、芝崎さんらしいと評します。他人とどうコミュニケーションを取っていくか、という関心が一貫していると感じたそうです。
特にケージくんがおすすめするのは第3回「シャドウおじ」の回です。概念に名前をつけることの意味から話が始まり、思わぬ方向へ転がっていくラリーの面白さを挙げていました。
まとめ
友だちを知ることは自分を知ることであり、青春や若さは年齢に縛られるものではない。ゲストのモコちゃんこと芝崎萌子さんとの対話は、コミュニケーションと人生の楽しみ方をめぐる価値観の交換になりました。
- 芝崎さんにとって友だちは「お手入れし続けるもの」で、自分から縁をつなぐ意思が大切だと語られました。
- 人とのずれを知ることで自分を知れる、という「他人への興味は自分への興味」という視点が示されました。
- 青春は年齢ではなく「その時にしかできないことをやっている瞬間」であり、無敵状態を感じられる時期こそ青春だと二人は語り合いました。
- 若さそのものへの価値観は人を苦しめる一方、「今やるのが一番早い」という実感が共有されました。
- 芝崎さんの新番組「でんでんばらばら」は、友達には言えない腹の底を伝えるコミュニケーション論の番組として紹介されました。
