家賃13%上昇、でも給料は追いつかない
献血会場で偶然出会ったさくらとハル教授。 さくらの視線はジュースバーではなく、アパート探しのスマホアプリに向いていました。
実は来年の春に賃貸契約が切れるんです。 それで先生、この物件の一覧見てください。家賃高すぎませんか?
ハル教授によれば、東京中心部の一人暮らし向け物件の平均家賃は、いまや月およそ720ドル。 しかも、これはたった1年で13%も上がった数字だと言います。
13%?そんなにお給料が上がった人、誰もいませんよ。
最近、新卒の初任給の上昇が話題になっていました。しかし、記録的な初任給をもらっていても、家賃に回せるのは月およそ430ドルほど。
平均的な部屋が、平均的な新卒には払えないという、計算の合わない状態が生まれています。
9平米・天井4メートル、東京のロフト暮らし
そこで教授が持ち出したのが、想像を超えて小さく暮らす若者たちの存在でした。その広さ、なんと9平米です。
でも、想像もできないくらい小さく暮らすことで、その計算を成り立たせている若い人たちがいるんだ。9平米という狭さがキーワードだよ。
ちょうど寝転んでいた献血ベッドのスペースが9平米近いと知り、さくらは驚きます。ただし、この狭い部屋には秘密がありました。
教授にうながされて、さくらが献血ルームの天井を見上げると、そこには遠く高い空間が広がっています。9平米の部屋には4メートルの天井と、キッチンの上に浮かぶロフト(はしごで上がる寝床)がついているのです。
「床は狭いけど、空間は高く」ということですね。縦に暮らす。ベッドは上、生活は下って感じで。
ある東京の会社は、こうした部屋をおよそ1500戸建てているそうです。家賃は月およそ400ドルで、地域の平均をぐっと下回りながら、入居率はほぼ99%だと言います。
ロフトは「床じゃない床」?建築ルールの抜け道
なぜわざわざロフトなのか。さくらは「もう少し広い部屋を建てればいいのでは」と素朴に疑問を投げかけます。
ところが供給の実態は逆でした。東京23区では、賃貸住宅のおよそ4分の3が50平米未満だと教授は説明します。
4分の3?じゃあ小さい部屋は少数派じゃなくて、主力商品ってことなんですね。
ここで鍵になるのが建築ルールです。日本の建築基準では、天井が約1.4メートル以下のロフトは床面積に数えられないという決まりがあります。
待ってください。ロフトは法律上は床じゃない、数値で表現できない空間ってことですか?
その通りで、オーナーは登録上の面積を増やさずに、使える半階分を足せるというわけです。教授いわく、これは1980年代から続く巧みな抜け道です。
さくらは、いまいる献血の場になぞらえてこの仕組みを言い表します。体が分けられる余力が誰かの命につながるように、建物が手放した頭上の空間が、誰かの寝室になるのだ、と。
相変わらず鋭いね。余った容量を活かす。それこそがロフトの経済のすべてだ。
家賃高騰と小さな部屋
東京23区は賃貸の約4分の3が50平米未満
1.4メートルルール
天井1.4m以下のロフトは床面積に数えない
使える半階が増える
登録面積を増やさず寝床を確保できる
低い家賃で提供
平均を下回る家賃で高い入居率につながる
夏はサウナ、冬は寒い?それでも愛せる小さな部屋
ここでさくらは、ロフトの暗い面にも切り込みます。友人がロフト部屋を「夏はサウナ」と呼んでいたそうです。
彼女は間違っていない。ロフトかどうかにかかわらず、若い借り手に部屋のことを聞くと、家賃がいちばんの不満じゃないんだ。いちばんの不満は「部屋が冬に寒い」だ。
屋根のすぐ下にあるロフトは、その影響を最初に受けやすく、夏は暑く冬は寒くなりがちだと教授は言います。半分眠ったままはしごを上るのも、ちょっとしたスポートのようなものです。
だからロフトの次の課題は快適さで、断熱、風通し、より安全な階段が挙げられます。一方で、その本当の力は感情の面にあるかもしれません。
ある家具メーカーは、秘密基地のように作った子ども用のロフトベッドを売っています。アーチ型の入り口があり、その下には机がある作りです。
秘密基地。友達も自分の部屋をそう言ってました。狭くて暑いけど、あの小さな巣が大好きだって。
そのうえで教授は、この回の核心となる問いを投げかけます。
献血を終えたさくらに、教授は最後のアドバイスを残します。次に部屋を内見するときは、サインの前に上を見上げてみて、と。
いちばんいいところが、部屋としてすら数えられない空間だなんて。先生、私、ロフトが欲しくなってきました。
まとめ
家賃がすぐに下がらない東京で、9平米のロフト部屋は「小さく暮らして浮いたお金を好きなことに回す」という選択肢として広がっています。暑さや寒さ、はしごの手間といった弱点もありますが、こもれる楽しさが人を惹きつけているようです。
- 東京中心部の一人暮らし向け平均家賃は月約720ドルで、1年で13%上昇した
- 新卒が家賃に回せるのは月約430ドルほどで、平均的な部屋に手が届きにくい
- 9平米・天井4メートルのロフト部屋は家賃約400ドルで、入居率はほぼ99%
- 天井約1.4メートル以下のロフトは床面積に数えない建築ルールが背景にある
- 問いは「大きいか小さいか」ではなく「小さくても愛せるか」にある

