📝 エピソード概要
本エピソードでは、社会疫学の専門家である近藤尚己教授をゲストに迎え、世界的な課題である孤独・社会的孤立の具体的な予防と対策について深掘りします。孤独を「環境づくり」によって予防することの重要性が強調され、特に高齢者や退職後の男性の孤立を防ぐための、地域や企業による革新的な取り組み(通いの場事業、CSV経営など)が紹介されました。さらに、災害時における地域の「つながり」(ソーシャルキャピタル)の力が、メンタルヘルスを守る上で決定的な役割を果たすという、日本の大規模研究(J-AGES)の知見が共有されます。
🎯 主要なトピック
- 孤独予防のための「環境づくり」の重要性: 個人レベルの対処ではなく、誰もが自然とつながりを持てるような社会的な仕組みや環境(ノーマライゼーションの考え方)を整備することが、孤独予防の鍵である。
- 介護予防における「通いの場事業」の成果: 高齢者の孤立が介護リスクを高めることから、地域住民によるボランティアの交流の場(通いの場)が推進されており、参加することで要介護状態になる確率が半減するという大規模研究(J-AGES)の結果が示された。
- CSV経営による企業の社会貢献: 企業が本業を通じて社会課題解決に取り組むCSV(Creating Shared Value)の事例として、阪急阪神ホールディングスによるリタイアした男性向けの「コーヒー教室」が紹介された。これは沿線住民のウェルビーイングを高め、街の価値を維持する戦略である。
- 高齢男性の孤立とライフチェンジの壁: 伝統的な役割意識(男は仕事)により、定年退職というライフチェンジの際に孤立しがちな男性に対し、地域活動において「役割」や「目的」を与えることの重要性が議論された。
- 家族から始める孤独予防:おせっかいのススメ: 孤立しがちな親世代に対して、子どもや近しい家族が積極的に興味のある活動を勧めたり、一緒に参加したりする「おせっかい」が、行動を促す強力な力となる。
- 災害時におけるソーシャルキャピタルの力: 地域住民同士の「つながり」(ソーシャルキャピタル)が強い地域に住んでいる人は、熊本地震などの災害後も、うつ病になるリスクが半分以下になることが研究で確認された。
💡 キーポイント
- 孤独や孤立は、個人の問題ではなく、誰もが参加できる「環境」を社会全体で作ることが予防策の基本となる。
- 日本で行われている「通いの場事業」は、経済的にゆとりがない層にも届きやすく、結果的に介護予防に絶大な効果を発揮している。
- 企業が地域住民の孤立を防ぐ活動を行うことは、沿線の価値向上につながるなど、経済合理性(CSV)を持つ新しい取り組みとして注目されている。
- 男性は「目的」や「役割」がないと集まりにくい傾向があるため、阪急阪神のコーヒー教室や、欧州発の活動「メンズシェッド」のように、スキル習得や地域貢献といった出番を与える仕組みが有効である。
- 災害発生時にコミュニティのつながり(ソーシャルキャピタル)が壊れると、その後のメンタルヘルスが悪化するリスクが高まるため、平時から地域のつながりを保つ備えが重要である。
- 近藤先生の研究の原点は、病院で命を救えなかった孤立していた患者の経験から来ており、「治療した患者を病気にし た環境に戻さない」ための社会疫学の必要性が強調された。
