📝 エピソード概要
本エピソードでは、医療統計学者の伊藤ゆり先生をゲストに迎え、政府が検討を進める「高額療養費制度」の限度額引き上げ案が国民生活にもたらす深刻な影響を統計的根拠と当事者の声から解説します。先生の分析により、この引き上げが低所得者層だけでなく、広範な所得層を「破滅的医療支出」による貧困の危機に晒す可能性が判明しました。日本が誇る国民皆保険制度の公平性を守るため、市民がこの問題にどのように向き合い、声を上げていくべきかを議論しています。
🎯 主要なトピック
- 高額療養費制度の基本的な仕組みと議論の背景: 医療費の自己負担額(3割)に上限を設け、高額な治療が必要な人が負担可能な額で医療を受けられるようにする制度です。政府は医療財政の逼迫から、この自己負担上限額を引き上げる案を提示しました。
- 制度変更の公平性に関する懸念: 伊藤先生は、この制度変更が健康格差を拡大させ、特定の層(特に国民健康保険や付加給付がない保険加入者)の治療断念や生存時間の短縮につながる可能性を危惧しています。
- 所得層ごとの衝撃的な影響分析: WHOの基準(支払い可能額の40%超で貧困に陥る)に基づき分析した結果、現状でも低所得層は既にこのラインを超えており、引き上げ後はほとんど全ての所得層が高額な病気になった際に貧困に陥るレベルになることが示されました。
- 患者の切実な声が国会を動かした経緯: 全国がん患者団体連合会が集めた3,000人を超える患者の切実なアンケート結果(「死ねと言われているのか」「生活がカツカツ」)が公開され、これが国会での議論を動かし、引き上げ案の一時凍結につながりました。
- 財源確保のための代替案の提案: 伊藤先生は、国民の負担を増やすのではなく、科学的根拠に基づいた予防策の徹底、効果のない予防策の削減、高額薬価のコントロールなど、別の角度からの医療費削減策を検討すべきだと提言しています。
- 市民による政策決定への関与の重要性: 健康な人も「自分事」として捉え、学会への参加や声を上げることを通じて、医療政策や研究に市民参画(ペイシェント・市民参画)し、より良い社会の仕組みを作るためのプレイヤーとなることが求められています。
💡 キーポイント
- 高額療養費制度の上限引き上げは、結果的に、病気になった国民の多くを「破滅的医療支出」に追い込み、健康格差を拡大させる危険性があります。
- 特にフリーランスや自営業者が加入する国民健康保険などは、大企業組合にあるような付加給付金制度がないため、この制度変更による影響を直接的に受けやすい構造です。
- 患者の切実な声の集積は、政策決定プロセスにおいて専門家や政治家を動かす強い力を持つことが証明されました。
- 日本の医療制度の公平性を守るためには、データに基づきつつも、関係者全員(研究者、臨床医、当事者、市民)が膝を詰めて議論し、全体が見通せる形で政策を決定する必要があります。
- 医療は「いつなるかわからない」備えであるため、健康なうちから制度に関心を持ち、意見を表明することが大切です。
