📝 エピソード概要
本エピソードでは、運動嫌いな人でも自然と体が動くようになるための「環境設計」について、東京大学准教授の鎌田真光先生をゲストに迎え、公衆衛生学の視点から議論します。子供の集団登校から大人の職場環境、個人の足元の改革に至るまで、具体的な環境づくり事例を紹介。特に、鎌田先生が世界で初めて科学的に検証・成功させた地域ぐるみの運動促進プロジェクトの裏側や、「健康のため」以外の目的で行動変容を促す重要性について深掘りしています。
🎯 主要なトピック
- 子供の身体活動を支える日本の環境: 学校の設置基準や集団登校、地域の見守り活動など、日本の子供の徒歩通学率が世界トップレベルである背景にある、社会全体の仕組みを解説しました。
- 世界の最先端としての「ウォーキングスクールバス」: 日本では当たり前の集団登校が、欧米では「ウォーキングスクールバス」という取り組み名で、安全面と運動促進のために注目されている事例を紹介しました。
- 大人世代(働く世代)の運動を促す環境づくり: 企業が駐輪場やシャワールームを整備することで運動通勤を奨励できることや、個人レベルでは「靴」をスニーカー通勤など歩きやすいものに変えることの有効性を議論しました。
- 運動を継続させる「仲間づくり」と「誘い」の重要性: 家族や友人を誘うことで、自分のモチベーション維持だけでなく、誘われた相手の運動開始のきっかけにもなるという、社会的な環境設計の側面を強調しました。
- 世界初の成功事例となった地域運動促進プロジェクト: 鎌田先生が島根県雲南市で実施した、クラスターランダム化比較試験に基づく地域介入が、住民の運動量を増やした世界初の成功例であることを解説しました。
- 行動変容に必要な期間と多面的なアプローチ: 運動促進は短期では効果が出にくく、雲南市や藤沢市の事例から、政策としても5年間の継続的な取り組みが重要であるという科学的な知見が示されました。
- 「健康」を隠す運動促進戦略: 「健康のため」ではなく、野球ファン向けに「パ・リーグを楽しむため」として歩行を促した「パ・リーグウォーク」など、目的をエンターテイメントにすることで行動変容を促す方法を紹介しました。
💡 キーポイント
- 運動不足解消のためには、個人の努力よりも、自然と体が動くような環境設計(エンバイロメント)が決定的に重要である。
- 日本の集団登校や登校時の見守り活動は、子供の安全だけでなく、意図せず子供の身体活動量を高める世界的な最先端の仕組みとして機能している。
- 地域の大人を巻き込む際は、「防犯・社会貢献」など健康以外の動機付けが、特に高齢男性などの行動変容に有効である。
- 企業や個人ができる環境整備として、通勤のしやすい環境(駐輪場、シャワー)や、足元の環境(歩きやすい靴)を変えることが、運動量を増やす大きな一歩となる。
- 世界初の成功例となった地域ぐるみの運動促進プロジェクトから、効果的な行動変容には、情報提供、教育、サポート環境の多面的な取り組みと5年程度の長期継続が必要であることが科学的に証明された。
- 鎌田先生は、環境問題(地球温暖化)への関心とスポーツ科学が結びつき、「環境と人の行動」を研究する公衆衛生学のトレンド領域に進んだ。
