番組「チームワーディング」とは
番組「チームワーディング」は、言葉を会社経営に生かす起業家の井上拓海さんと、企業に言葉を通じて伴走するコピーライターの小林拓未さんが進めていく番組です。
テーマは、AIで簡単に言葉が作れてしまう時代だからこそ、組織やチームが言葉にするまでのプロセスに目を向け、生まれた言葉を研ぎ続けていくことの価値を探ること。
2人は名前がどちらも「たくみ」で、以前一緒に案件をやっていた頃には「拓未コンビ」と呼ばれていたそうです。そのコンビでの再スタートでもあります。
コピーライター・小林拓未さんの仕事
小林さんは、コピーライター事務所「株式会社砥石」を1人で営んでいます。新卒でリクルート(当時のリクルートジョブズ)のバックオフィス部門に1年在籍し、その後、広告制作会社やコピーライター事務所を経て、2021年に独立しました。
大手広告代理店の出身ではなく、採用系の制作会社や、理念づくりも手がける事務所を経てきたのが特徴です。
CMでよく出てくるキャッチコピーよりも、企業の経営理念やサービスのネーミング、タグラインとか、組織やブランドの柱になる言葉を言葉にする仕事がメインですね。
井上さんは、短い言葉も長い取材記事もどちらも手がける人はそんなに多くない、と指摘します。
小林さんによると、それは師匠である元上司の影響が大きいそう。コピーライターになった当初は日本語がうまく扱えず、まずは長い文章でちゃんと日本語を扱えるようになれ、という方針で、キャリア初期は記事をたくさん書いていたと振り返ります。
レゴを使って、あえて言葉を使わないワークショップ
小林さんは2024年に、レゴを使ったワークショップの資格を取得しています。コピーライターがなぜレゴなのか、という井上さんの疑問から話が広がります。
理念など組織の柱になる言葉を作るときは、作るまでも作った後もプロセスが大事だと小林さんは言います。いい言葉を置いて終わり、というわけにはいかないからです。
レゴを使う良さは、立場に関係なく議論しやすくなること。言葉だけだとどうしても立場が上の人の声が大きくなりがちですが、レゴをワンクッション挟むことで、ボトムからの声も拾いやすくなると話します。
意見を統合するときも、言葉で統合するのは難しいけど、みんなのレゴを一つの作品として統合してみましょう、みたいなこともできる。理念作りに応用できたらめっちゃ良さそうと思って資格を取りました。
井上さんは、コピーライターがあえて言葉を使わないプロセスを挟むことに、番組のヒントを感じ取ります。
起業家・井上拓海さんが言葉を大切にする理由
井上さんは高校卒業後に飲食店を立ち上げ、上京して上場企業の出資を受けたITベンチャーを経て、現在は「ミッケ」という会社を10年ほど経営しています。事業を作っていく起業家としての活動が主です。
言葉という点では、書き言葉よりも話し言葉、対話の中で言葉を扱うことが多いと言います。一方で、これまで作ってきた数え切れないほどの事業やプロジェクトでは、名前やコンセプトをとても大事にしてきました。
井上さんが言葉を大切にする大きな理由は、言葉が刃になったり、壁になったりすることがあるから。あるコピーや名前が、ある人には刺さっても、別の人には「自分には関係ない」と感じさせてしまう可能性を気にしています。
言葉にすることの大切さも感じつつ、言葉にすることによって生まれてしまう壁みたいなものもあるなと思っていて。本来関係したいと思っていた人と、ちゃんと関係が生まれる状態をどう作れるか、を意識しています。
小林さんは、言葉には主作用と副作用があるのでは、と応じます。狙った効果だけでなく、見えていない副作用のケアも考えていきたい、という視点です。
言葉は外に出た瞬間、相手のものになる
ここで井上さんは、校閲会社「鴎来堂」を営む柳下恭平さんから聞いた話を紹介します。本屋「かもめブックス」も手がける柳下さんと、キャンプの帰り道に校閲について語り合ったそうです。
井上さんが印象的だったのは、言葉を編集する作業は届けたい人に届く言葉を紡ぐことである一方、校閲はその過程で排除してしまう可能性のある人を認識し、その人たちも考えた言葉に整えていく仕事だ、という話でした。
あなたが紡いでしまっている言葉が、実は誰かを阻害していたり、誰かを敵に回していたりする可能性がある。そこにどう意識を向けるか、というのがめちゃくちゃ難しいし、職人芸な仕事だなと思ったんです。
小林さんは、これは技術だけでなく想像力の仕事だと受け止めます。SNSのように言葉がパブリックな場にすぐ出てしまう時代では、全く関係ない他者もパッと言葉を目にしてしまうからです。
井上さんは、言葉は外に出た時点で自分のものではなくなり、聞く側のものになる感覚を持っていると話します。それでいて、自分のものでもあり相手のものでもある状態を保ちたい、という思いも語ります。
「生産を促す言葉」と生きた言葉の条件
番組名「チームワーディング」に込めた思いを、小林さんが語ります。コピーライターになった当初から、消費を促す言葉もいいけれど、生産を促す言葉を作りたいという思いがずっとあったそうです。
理念や行動指針、ときには部署名を作る仕事を通じて、チームを方向付ける言葉をみんなで作り、自分たちの言葉を自分たちで考えて作る。そうした営みを探求したいという思いが、番組名の背景にあります。
こういう旗印の下で僕たちはこういう社会を作ろう、こういう会社を作ろうという言葉の下で、生産活動や事業活動が生まれる。そういう仕事をもっと探求していきたいなと思っています。
この感覚の原体験は、新卒で入ったリクルートにあると小林さんは振り返ります。士気が高く戦闘力の高い集団で、独自の「リクルート用語」がしっかり運用され、機能していたそうです。
一方で、言葉単体のクオリティが高ければいいわけでもない、と小林さんは言います。「お客様の幸せのために」のようなよくある理念でも、みんながしっかり意識している組織があるからです。
発信ではなく、言葉が循環する組織へ
井上さんは、言葉が生まれるプロセスと同じくらい、使う側が言葉を自分のものにしていく学習のプロセスも重要だ、と話を広げます。
そのうえで、行政や企業でよく出てくる「発信する」という言葉に違和感があると言います。読み手がどう感じ、どう自分の言葉にしていくかという目線が抜けている、と感じるからです。
究極は、発信せずとも向こうが勝手に理解しているとか、言葉を通じて共有せずとも、なぜか向こうが勝手に言葉にしている。その状態が目標の一つとも言えるのに、手段として発信することに固執しているように感じることがあるんです。
チームの中で流通する言葉は、誰かと誰かの間にあってこそ意味が生まれる、と2人は確認します。言葉とは何か、チームにおける言葉がどういう状態だと目的が結実するのか。そこを意識している組織が、生きた言葉を扱えているのではないか、という見立てです。
送り手の目線が強く、義務感で言葉を出しがち。読み手がどう受け取るかの視点が抜けやすい。
言葉が誰かと誰かの間で流通し、使う側が自分の言葉として宿していく。生きた言葉が育ちやすい。
小林さんは、リスペクトするコピーライターが「浸透ではなく循環ではないか」と言っていたことを紹介します。理念は浸透させるものなのか、という問いも、今後のテーマになりそうです。
これから話していきたいテーマ
最後に、2人がこれから扱いたいテーマを少しだけ紹介します。
ゲストとしては、アパレル会社ユトリの片石さん(ゆとりくん)や、スープストックトーキョーを手がけるスマイルズなどの名前が挙がりました。井上さんはスマイルズの理念に触れ、「体温を上げる」という言葉が印象的だと話します。
集団の中における言葉というものが、どういう存在であるといいんだろうか、ということを、いろんな角度から探索していける番組にできたらいいなと思っています。
まとめ
初回は、起業家とコピーライターというそれぞれの立場から、チームや組織の中で「生きる言葉」がどう生まれ、育っていくのかを探る番組の入り口が語られました。言葉を作ることと同じくらい、それを誰かと誰かの間で循環させることが大事だ、という視点が印象的です。
- 番組「チームワーディング」は、言葉を作るプロセスと、生まれた言葉を研ぎ続ける価値を探る番組
- 小林さんはレゴを使い、あえて言葉を使わないワークショップで対話や合意形成を促している
- 井上さんは「言葉は外に出た瞬間、相手のものになる」という感覚を大切にしている
- 言葉単体の質だけでなく、それを自分の中に宿すプロセスが生きた言葉を作る
- 今後は「理念はなぜ浸透しないのか」などをテーマに、生きた言葉を使う組織のゲストも招く予定
