効率化しているのに、なぜ忙しくなるのか
AIを導入すると時間が浮いて余裕が生まれる、と思っていたのに、逆に忙しくなっている。そんな声を聞くことがあります。
実際、資料の作成やメールの作成、調査といった付随業務は、圧倒的に時短できるようになりました。1時間かかっていたものが10分ぐらいで終わるんです。
それでも忙しくなるのはなぜか。私は、アウトプットが簡単に出せるようになったがゆえに、確認コストが爆増しているからじゃないかと思っています。
これは私自身、すごく肌感覚で感じていることです。
AIを使うと、基本的に文章が長くなります。そして今の確認業務は、チャットやテキストベースのものが多いと思うんです。
テキストでやり取りすればするほど、確認作業はどんどん増えていく。効率化しているのに忙しい、という状況の背景には、テキスト化された確認コストがあるんじゃないかと思います。
「ワークスロップ」が上司の時間を奪う
もう一つの問題は、AIから出てくるアウトプットの質です。
海外では、AIが作った中身の薄いアウトプットのことを「ワークスロップ」と呼んで問題視しているそうです。
AIを使えば、誰でもそれっぽいものは作れます。ただ、そのそれっぽいものがビジネスでそのまま使えるかどうかは、まったく別の問題なんです。
たとえば、AIで10ページぐらいの資料を10分で作ったとします。それをリーダーや上司、社長にそのまま見せて、解読するのに30分かかってしまう。
これ、意味がわからないですよね。相手の時間を奪ってしまっている訳です。
会議の議事録もそうです。AIを使えば簡単に出ますが、ものすごい文章量のものを社長にコピペでドーンと送って、社長が読むかといったら、読むわけがないんですよね。
大事なのは、相手が何を求めているかをちゃんと考えること。一言で言うと、やっぱり思いやりだと思います。
思いやりがあれば、改行がぐちゃぐちゃでアスタリスクが並んだような、ありきたりなAIの出力をコピペした長文を送ったりはしないと思うんです。AIで簡単にできるようになったぶん、そういう配慮が少し減ってきているんじゃないかと、私は感じています。
AIを使って評価される人、されない人
AIを使って評価される人と評価されない人。ここにも決定的な差があると思います。
評価されない人は、内容が薄い、結論がない、無駄に長い。シンプルに、相手への配慮が欠けているんです。
それに、AIが作ったものを自分ごととして捉えられていないのも、もったいないと思います。
AIが作ったものを出して、その質が低くても、AIのせいにはなりません。評価が下がるのは、それを出した自分なんです。
AIで簡単に仕事が終わって、早く提出できた。ちょっと待ってください、その質が低ければ、自分の評価が下がっているんですよ。
逆に評価される人は、仕事が早くて丁寧。これはAIを使っていてもいなくても同じだと思います。
もう一つは、AIのアウトプットに付加価値をつけられるかどうか。AIは基本的に平均値のものを出してきます。それを自分たちのお客様や市場、上司が求めていることに合わせて再編集できるかどうかが、評価を分けるんじゃないかなと思います。
浮いた時間を「効率化の逃避」に使わない
人間は本質的に、楽をしたい動物です。
本来なら、浮いた時間で新しい付加価値をつくったり、お客様への価値提供を増やしたりしたいところです。でも放っておくと、価値をつくるのではなく「効率化の逃避」が生まれてしまいます。
AIを導入して効率化し、さらに効率化する。無駄なアウトプットが増え、リーダーや上司の時間を奪い、会社は忙殺されて付加価値が上がらない。
そんな最悪な効率化のループに入ってしまう可能性があると、私は非常に危険視しています。
AIは作業を減らす道具です。でも経営者がやるべきなのは、価値を増やす仕事なんです。
売上は客数かける客単価です。効率化して時間が余ったら、AIを使ってどう客数を増やすか、どう客単価を上げるか、どうもっとお客様に喜んでもらうか。そこに全振りしていくのが、本来やるべきことじゃないかなと思います。
いまいちなアウトプットがたくさん出てきて、微妙なマニュアルや微妙なチェックリストが増産される。誰が使うんですか、それ。まったくもって無駄ですよね。
社内で「AI使い方NG集」をつくって勉強会をしたい
では、どうすればいいのか。私がいま考えているのは、AIのこういう使い方はダメだよ、という「AI使い方NG集」をまとめて、社内で勉強会をすることです。
一度ちゃんと明文化して伝えておけば、最低限の間違った使い方は減ってくるんじゃないかと思っています。たとえば、こんな内容です。
- AIが出したものを、コピペでそのまま上司や同僚に共有しない
- 無駄な長文は禁止。3行でまとめ、詳細は別のノートに入れておく
- グラフィックレコーディングのように、ビジュアルで伝える工夫をする
- 結論をちゃんと伝える
報告する側は「これも報告しておこう」と長文を送りたくなるかもしれません。でも、それは見ないんです。
AIでなかなかの文章が作れたとしても、受け取った側は、意思決定すればいいのか、助言すればいいのかわからない、ということが起きます。
こうした間違った使い方や情報共有のやり方を勉強会で伝えるだけで、ワークスロップは激減するんじゃないかなと思っています。
AIは、正しく使えば時間を生む装置です。その時間をワークスロップの量産に向けるのか、お客様にどう喜んでもらうかを考えて取り組む方向に向けるのか。舵を切るのは社長の意思決定だと思います。
AI時代の経営は、経営資源、特に時間をどう再投資するかが一つのポイントになってくるんじゃないかなと思っています。経営者や幹部の皆さんには、効率化の先で、お客様にどう喜んでもらうかを突き詰めて実行できる組織にしていただきたいです。
最後は少し宣伝になりますが、私の方で「生成AI実践会」という、AIをこう使えば成果が出る、という勉強会を開いています。2ヶ月に1回ゲスト講師をお呼びしていて、AIを組織の仕組みとして入れていきたい方には、すぐに元が取れるおすすめの会だと思っています。
AIをどう使うかで、2026年、2027年は本当に変わると思います。みんなでAIを正しく使って、成果が出る経営をしていければと思います。それではまた次回お会いしましょう。さようなら。
まとめ
AIで作業は早くなっても、中身の薄い長文が増えると確認コストが膨らみ、上司の時間を奪ってしまいます。私は、相手への思いやりと付加価値をつけることを前提に、浮いた時間をお客様への価値提供に再投資すべきだと考えています。
- AIによるアウトプットの増加で、テキストの確認コストが爆増している
- 質の低いアウトプットで評価が下がるのは、AIではなく出した自分
- コピペ・長文・結論なしを防ぐ「AI使い方NG集」で、ワークスロップは減らせる
- 効率化で浮いた時間は、客数と客単価を上げることに全振りする





