1冊の本から始まったパーソナリティ症の話
この回のきっかけは、ホストが本屋で目にした『性格が悪いとはどういうことか』という本でした。
著者はパーソナリティ心理学や発達心理学を専門とする押尾先生で、サイコパシーやナルシシズム、サディズムといった話題が扱われていたといいます。
そこから、疾患としてのパーソナリティ症も関わってくるのではないかと考え、今回のテーマに至りました。
そもそもパーソナリティ症とはどんな病気なのか。ホストの問いに、島田先生はざっくりとした説明だと前置きしつつ答えます。
すごく偏った認知、ものの見方だったり、感情的な反応だったり、極端な行動を取るとか、そういうのが続いてしまってる状態です。
それによって対人関係の問題が起きたり、そのこと自体でご本人とか周りがかなり困ってしまうっていうのが、一つポイントなのかなと思います。
誰にでもある「偏り」と、疾患との境目
ホストは本の中の「大事な日に雨が降ると天気さえ呪いたくなる」というエピソードを挙げ、自分にも当てはまる部分があると話します。
島田先生も、偏りは誰にでも多かれ少なかれあるもので、連続したグラデーションとして捉えたほうがよいと応じます。
誰でも多かれ少なかれ、一般的な枠に入る考え方とは違う部分があって、連続したもの、グラデーションという感じで捉えていった方がいいのかなと思います。
では何が境目になるのか。ポイントは、その偏りが日常生活に支障をきたすほど強く出てしまうかどうかだといいます。
パーソナリティ症の3つの群と分類
パーソナリティ症には細かく見ると10種類ほどがあり、それらは大きく3つの群に分けられると島田先生は説明します。
各群にどんなタイプが含まれるのかを整理すると、次のようになります。
| 群 | 主なタイプ |
|---|---|
| A群 | 妄想性、スキゾタイパル、シゾイド |
| B群 | 境界性、反社会性、自己愛性、演技性 |
| C群 | 回避性、依存性、強迫性 |
ホストは、B群の境界性や反社会性、自己愛性には、一般的に使われる「サイコパス」や「ナルシシズム」も重なりそうだと指摘します。
境界性パーソナリティ症の症状
もっともよく聞かれるのが境界性パーソナリティ症です。中心にあるのは「見捨てられ不安」だと島田先生は話します。
例えば「見捨てられ不安」と言ったり、対人関係の不安定さで、「理想化とこき下ろし」と言ったりもします。ゼロか百かみたいな感じで、ものを捉えてしまったりします。
他にも、気分の波が激しいこと、衝動性が高いこと、慢性的な空虚感、リストカットやオーバードーズといった自傷行為の繰り返しが挙げられます。
一方で、幻覚や妄想は特に出てこない点が特徴で、これは以前扱った統合失調症との違いにあたります。
症状のもう一つの軸が、自分と相手の区別があいまいになることです。自分の考えを相手も同じように思うだろうと感じてしまったり、逆に相手の気分に巻き込まれやすくなったりします。
自分と相手の区別が曖昧だから、自分が考えてるのが相手もそう思うだろうみたいに思っちゃったり、逆に周囲の相手の気分にこう巻き込まれやすいというか。
ホストは、思い込みや「相手もこう思っているはず」という感覚は誰にでもありそうだと共感しつつ、その濃淡と困りごとの有無が境目なのだと確認します。
反社会性・自己愛性、そして「性格か病気か」
反社会性パーソナリティ症については、ビジネスの場でも「サイコパス」や「ソシオパス」という言葉が聞かれます。ただし島田先生は、それらが完全にイコールとは言えないと注意を促します。
反社会性の特徴は、読んで字のごとく法を犯すような行動につながりやすい行動様式にあるといいます。
自己愛性のほうは、非常に強い賞賛を求めることが特徴で、承認欲求を超えたレベルで自己愛が強く、他者にも悪い影響が及ぶほどになってしまう状態です。
では、これは性格なのか疾患なのか。島田先生は、ここは議論が分かれるところで、まだきれいな結論は出ていないと率直に語ります。
ずっとこれが一生そのままとかっていうわけでもなくて、一定程度変化は見込めるものではあるかな。
実際の症例と、著名人に見る像
より具体的なイメージを、と求められた島田先生は、境界性パーソナリティ症の患者の例を挙げます。
うつ状態で家族の運転する車で通院していた女性が、助手席から突然ハンドルに手を伸ばして切ろうとし、運転者が反射的に止めたことがあったといいます。こうした衝動的な行為が起こりうるといいます。
著名人では、診断が下ったかは本人にしか分からないと前置きしつつ、そうではないかと言われる例が話されました。
治療法と、周囲の人が心がけたいこと
治療の中心は精神療法などの非薬物療法だと島田先生は説明します。代表的なものが弁証法的行動療法です。
ホストは「正しい認知」といっても何が正しいかは難しいと問いかけます。島田先生は、明らかに自他の考えは違うのに、一度思ったら絶対だと考えてしまう部分を戻していくイメージだと答えます。
薬物療法はあくまでサブの位置づけで、うつや不安障害、不眠などの二次的な合併症に対して使うことが多いといいます。
合併症としては、パーソナリティ症をベースに起こる周囲との摩擦や自分の認識から、うつ病が合併しやすく、アルコール依存症などの依存症も知られています。
周囲の家族やパートナーが心がけたいこととして、島田先生は一貫した対応を挙げます。
接するときに、一定の気分で一貫した対応っていうのを心がけるというか。
避けたいのは、最初だけ手厚く関わって途中で破綻してしまうパターンです。毎日電話に出て世話をするような関わりは長くは続かず、一度できなくなると本人は「やっぱり嘘をつかれた」と感じてしまいます。
これは冒頭で触れた見捨てられ不安や理想化とこき下ろしにも通じる関わり方だといいます。
最後に、SNSで「自称境界性」といった投稿が見られることや、職場に難しい人がいることにも話が及びました。島田先生は、パーソナリティ症と「性格が悪い」はまた別だと整理しつつ、体験をもとにさらに深掘りできそうだと締めくくりました。
まとめ
パーソナリティ症は、誰にでもある偏りと地続きでありながら、その濃淡と困りごとの有無に境目がある疾患です。分類や症状を知ることは、身近な人との関わり方を考える手がかりにもなります。
- パーソナリティ症は偏った認知・感情・行動が続き、本人や周囲が困る状態で、幻覚や妄想は特徴ではない
- 偏りは誰にでもあるグラデーションで、日常生活に支障をきたすほどかどうかが病気との境目になる
- 境界性の中心には見捨てられ不安があり、理想化とこき下ろし、衝動性、自傷などが見られる
- 治療は弁証法的行動療法などの精神療法が中心で、薬物療法は合併症へのサブ的な位置づけ
- 周囲は熱意に波を作らず、できる範囲で一定の枠組みを保った淡々とした関わりを続けることが大切
