AIで誰でも作れる時代、なぜ教養が足りなくなるのか
2026年1月7日配信の本つまみぐいラジオは、本の紹介をいったん離れた番外編です。司会の幸あれこさんが、テーマを「2026年に学ぶべきこと」と設定しました。
イケダハヤトさんによると、2025年2月に始まった番組はSpotifyで9位を獲得するなど反響を得てきました。特に教養や知識、哲学の回の反応がよかったことから、「何を学べばいいか」は番組として扱う意味のある切り口だと話しています。
打ち合わせなしで最初に指名されたイケダハヤトさんは、2026年はAIを使ったアニメーション制作に本腰を入れる年だと語ります。周りのメンバーも含め、漫画やアニメを作れる人を増やしていく計画です。
イケダハヤトさんが挙げた背景は、AIの進化です。2年ほど前なら映画や音楽はどう作ればいいのかすらわからなかったのに、今は道具があるので普通に作れてしまいます。
ただ、普通のビジネスパーソンはクリエイティブをやってこなかった、というのがイケダハヤトさんの問題意識です。だからこそ音楽を聴く、映画を見る、文学を読むといった形で芸術やアートを吸収し、それを「ある種ロジカルに」学んで作品に転換したいと話しています。
イケダハヤトさんの具体例は忍者です。制作中なのが忍者のアニメーションのため、忍者の本家ともいえる甲賀市 ── 滋賀県南部の市。伊賀と並ぶ忍者の里として知られ、甲賀流忍術の発祥地とされていますを訪ね、分厚い忍者の本も買い込んだそうです。
イケダハヤトさんは、ものを作り始めると、付随して自分の勉強不足に気づく過程が始まると振り返ります。幸あれこさんも、取りかかっていなければ「知らないこと」にすら気づけないと応じ、教養はこれからもっと大事になると受け止めました。
まず「月5万円」を稼ぐ力を、という提案の理由
続いて指名されたしゅうへいさんの第一声は「朝早く起きた方がいい」でした。朝が苦手なまま、フリーランス・法人として7〜8年生き残ってきたしゅうへいさんらしい冗談まじりの入り方です。
しゅうへいさんの本題は「余裕を作ること」です。イケダハヤトさんのようにAIでアニメを作ろう、そのために映画を見ようと思っても、多くの人は日常に精神的にも物理的にも余裕がない、と指摘します。
しゅうへいさんがこれまでに相談に乗ってきたフリーランス志望者は、累計で2000〜3000人にのぼるといいます。その経験から見えたのは、多くの人が自分の可能性に気づけず、「できない」と思い込んでいる姿でした。
しゅうへいさんは、思い込みの背景には社会的な抑圧もあると考えています。その抜け出しにくさは、次のような循環として語られました。
忙しい
平日は仕事に追われ、時間が空かない
スマホを見る
空いた時間に他人の成功話やすごい情報が流れてくる
自分にはできないと思う
できるかわからないと感じ、動けない
同じ週を繰り返す
周りも似た状況のため、抜け出すきっかけがない
この循環の中では、お金になるかわからないけど好奇心でやってみる、という機会が現れにくく、現れても選びにくいとしゅうへいさんは話します。そこで「イケダハヤトさんより一つ前の段階」として提案したのが、月5万円を自分で作る力でした。
しゅうへいさん自身も、月5万円に挑んだときに文章が書けないこと、自分の商品をどう作るか、SNSで何を言えば見てもらえるかがわからないことに気づいたといいます。月5万円を作れればマーケティングの視点の9割ほどはそこで学べる、というのがしゅうへいさんの見立てです。
しゅうへいさんによれば、月5万円を作れるスキルは10万円、20万円に伸ばすことも、本業に生かすこともできます。何より「いろんな可能性があるんだ」と見える世界が変わることが、余裕を作るためのトレーニングになると締めくくりました。
借金500万円からの変化を、スピノザ哲学で読み解く
イケダハヤトさんから「では、稼げる人を増やしたいしゅうへいさん自身は何を学ぶのか、早起きの方法か」と突っ込まれ、しゅうへいさんが挙げたのは哲学でした。本つまみぐいラジオを通じて哲学の面白さに目覚めたといいます。
しゅうへいさんに特に刺さったのは、國分功一郎さんの『暇と退屈の倫理学』から入ったスピノザ ── 17世紀オランダの哲学者。神と自然を同一視する汎神論的な思想や、主著『エチカ』で知られ、感情や自由を体系的に論じましたの哲学です。17世紀にそんなことを考えていたのか、と驚いたそうです。
しゅうへいさんは哲学を直接教えるのではなく、自身が運営するコミュニティの設計に生かしていると話します。スピノザ哲学の変状という概念を意識しているといい、ジル・ドゥルーズのスピノザ論もまとめ買いして読み進めています。
しゅうへいさんがスピノザに惹かれる理由は、自分自身の変化にあります。借金500万円を抱えて絶望していたところから、少しずつやりたいことができるようになった、その変化は何なのかが不思議だったといいます。
しゅうへいさんは、漫画の『闇金ウシジマくん』や『カイジ』を見ると「自分はこっちの世界に行っていた」と感じるそうです。イケダハヤトさんに出会って方法を知り、幸あれこさんに尻を叩いてもらった変化は、自分の力ではなかったと振り返ります。
しゅうへいさんは、その出会いによって自分の性質、つまりコナトゥス ── スピノザ哲学の概念で、あらゆるものが自分の存在を維持し高めようとする力や傾向のこと。人間の本質とも位置づけられますのようなものがよい方向に働き始めたのではないかと考えています。そして自分と似た人がそうした変化にアクセスするには何が必要かを、小さくコミュニティに実装しようとしているそうです。
話の締めでは、幸あれこさんが前日も収録準備で3時半まで起きていたことが発覚します。イケダハヤトさんに「10時に寝なさい」と諭され、早起きは3人共通の課題として笑いに変わりました。
TikTokの「侘び寂び」トレンドと、愛されるキャラの弱点
幸あれこさんが挙げたのは「侘び寂び」です。きっかけは、2025年末のTikTokで流行した「わびさび」トレンドでした。
幸あれこさんによると、そのトレンドは自分の好きな顔のパーツをフィーチャーし、不完全でも愛そうという姿勢で、侘び寂びの音声と一緒に投稿するものだったそうです。幸あれこさんは、こうした動きはこれから広がり、大事になると考えています。
幸あれこさんの理由は、整形やAIによって完全な美しさが簡単に手に入る時代になったことです。完璧な映像がタイムラインにいくらでも流れてくるからこそ、不完全なものに美しさを見出す力が必要になる、と語ります。
幸あれこさんは、完全なものだけを美しいと考えると人間は途中でしんどくなると指摘し、不完全なものほど美しいという千利休 ── 安土桃山時代の茶人。華美を排した簡素な「わび茶」を大成し、不完全さや素朴さに美を見出す美意識を広めましたの考えがこれから大事になると話します。メンタルヘルスの面でも意味があるといいます。
幸あれこさんは身近な例として、しゅうへいさんがダメなところを公言しているから好感が持てる、という声をよく聞くと紹介します。完璧なサイボーグには愛されるところがあまりない、というのが幸あれこさんの見方です。
イケダハヤトさんも、流行るアニメのキャラクターも同じだと応じます。そこから3人で、人気キャラクターの「不完全さ」を挙げていきました。
| キャラクター | 不完全なところ |
|---|---|
| ルフィ(ワンピース) | 海賊なのに、海に落ちると力が出なくなる |
| アンパンマン | 水に濡れると力が出なくなる |
| ドラえもん | ネズミが苦手 |
| サザエさん | 財布を忘れるうっかり者 |
幸あれこさんは、アンパンマンが「ウォータープルーフ」だったら、かっこよくはあっても全然愛されないはずだと話します。誰も死ぬまでずっと完全ではいられないからこそ、2026年は不完全なものの美しさを感じる力が大事だとまとめました。
イケダハヤトさんも、BeRealのように「生の自分、完璧じゃない自分を愛そう」というメッセージは2025年から見えており、2026年にさらに一般的になると同意します。幸あれこさんは、完璧な映像にさらされ続ける10代ほど、その違和感を敏感に察知しているのではないかと付け加えました。
不完全さを受け入れる力は、本では学べないのか
イケダハヤトさんが投げかけたのは、不完全なものを愛でる力をどうやって学べばいいのか、という問いでした。幸あれこさんは、それは人生の体験の中にあるのかもしれないと答えます。
イケダハヤトさんは、幸あれこさんがテレビリポーターやラジオDJとして、完璧に見える人たちの中でレギュラー番組を持つまでのプロセスこそがそれではないかと水を向けます。幸あれこさんは、自身の転機を語りました。
綺麗に喋るアナウンサーを目指すがなれず、天然と言われる素の自分を出してはいけないと思っていた
力を抜いて素の自分で喋ったときに番組が跳ね、ディレクターからも「絶対そっちがいい」と言われた
幸あれこさんは、それまで「小賢しい、賢いと思われたい」と考えていたそうです。素のダメな自分を「いいじゃん」と言ってくれる人がいた経験こそが学びで、それは本を読んでいても出てこなかったと話します。
しゅうへいさんも、本を紹介する番組ではあるものの、この種の気づきは人とつながり認め合う中で築かれるものだと同意しました。
さらに幸あれこさんは、誰かに認めてもらうだけでなく、自分が先に誰かの不完全さを受け入れることが出発点ではないかと気づきます。完璧だけを追うと自分にも他人にも厳しくなるため、「朝起きられないのもいいじゃねえか」と受け入れる行動が大事だと話し、笑いを誘いました。
しゅうへいさんは、何をしても批判される「ロバを連れた親子」の風刺を例に、他人に完全さを求める構図を指摘します。そして自身の経験として、ブログが伸びずイケダハヤトさんに相談した際、借金を表に出すよう勧められた話を紹介しました。
しゅうへいさんは当初、愛媛へUターンして豊かに暮らしているように見せていたそうです。しかし実際はお金がなくなって戻ったことを明かし、借金や、人が来ず赤字のコワーキングスペースの様子を発信すると、かえって多くの人が見てくれるようになったといいます。
しゅうへいさんは、エヴァンゲリオンのように完璧に見える作品にも批判する人はいると話し、良いところも悪いところも含めて全体として受け止める感覚のトレーニングが大事だと語りました。幸あれこさんも、すぐにはできない人が多いからこそ練習が必要だと応じています。
「上手くなるから待ってろ」という出し続ける姿勢
幸あれこさんから、不完全さを受け入れる考えをいつから持っているのかと聞かれたイケダハヤトさんは、中学生の頃から文章を書いてきた経験を挙げます。完璧なものは書けないから出すしかない、出したら下手くそと言われても仕方がない、と子どもの頃から思っていたそうです。
イケダハヤトさんは、当時ブログ以前のウェブサイトを楽しく運営していたら目立ち始めて叩かれた、と振り返ります。それでも完璧なものは出せず今の最大限しかできないため、「上手くなるから待ってろ」という気持ちで続けてきたといいます。
しゅうへいさんが「いい言葉」と反応すると、イケダハヤトさんはこれをエクササイズとして勧めました。下手でも「最初は下手だけど待ってよ」と出せるようになると、自分や他人の不完全さを見つけやすくなるかもしれない、という提案です。
しゅうへいさんは、不完全さを許せると自分を出しやすくなり、見つけてくれる人も増えると話します。完璧なものを作れたけれど出す前に死んでしまうのはもったいない、生きているうちにどんどん発表しようという言葉に、幸あれこさんは「生きやすさにもつながる」と応じました。
弱みを見せるマーケティングの次に来るもの
しゅうへいさんは、SNS映えで「すごい人」を見せるやり方は頭打ちになったと感じています。幸あれこさんも、インスタグラムでは2年ほど前から、完璧な投稿はもう伸びない空気があると話します。
ただ、しゅうへいさんによれば、弱みを出すマーケティングにもみんなが気づき始めました。借金6000万円と発信していると「資本家だろ」と疑われるようになり、マクドナルドのLサイズのポテトを食べているだけで「余裕がある人だ」と逆張りされることもあるそうです。
しゅうへいさんは、疑う側は自分に完璧さを映し出しているのかもしれないと受け止めています。幸あれこさんは、借金を抱えながら明るく振る舞う人が少ないからこそ本当かと思われるのだろうと分析しました。
しゅうへいさんの話では、島の人たちも、テスラから軽トラに乗り換えたことでようやく「本当に大変なんだね」と信じてくれたそうです。2026年はテスラを買う年にしたいと冗談を言い、2人から「まだ早い」と止められる一幕もありました。
最後に3人は、リスナーにも「2026年に学びたいこと、学ぶべきだと思うこと」をコメント欄やSNSで共有してほしいと呼びかけました。ハッシュタグは番組の「#本つま」で、今後の企画の参考にするといいます。
まとめ
新年番外編では、3人がそれぞれの活動と結びつけて2026年に学ぶべきことを挙げました。AIで作れる時代の教養、余裕を生む稼ぐ力と哲学、そして不完全さを愛する侘び寂びの感覚は、どれも「完璧でなくても動き出す」という一点でつながっています。
- イケダハヤトさんは、AIでアニメを作る中で勉強不足に気づき、芸術や文学などの教養を学ぶと宣言しています
- しゅうへいさんは、余裕を作る第一歩として月5万円を稼ぐ力を勧め、自身はスピノザ哲学をコミュニティ運営に生かしています
- 幸あれこさんは、TikTokの侘び寂びトレンドを入口に、不完全なものに美しさを見出す力が2026年に大事になると語りました
- 不完全さを受け入れる力は本より体験から育ち、まず他人の不完全さを受け入れることが出発点だという気づきが共有されました
- 「上手くなるから待ってろ」と下手でも出し続ける姿勢が、自分と他人の不完全さを許す練習になると語られています


