機械音痴だったあれこさんは、AIで何を作っている?
本つまみぐいラジオの番外編は、3人がAIをどう使っているかを語り合う回です。最初に話を振られたのは、司会の幸あれこさんでした。
あれこさんはChatGPTとGeminiを毎日使っていて、SNS投稿のアイキャッチ画像はGeminiで作ることが多いそうです。画像生成については、ChatGPTよりGeminiのほうが好みの画像を出してくれる印象だといいます。
あれこさんが印象に残っているのは、箒にまたがった自分の写真をGeminiに読み込ませ、空へ飛び立つ動画を作ったときのことです。最初は横に飛んだり、逆さになったり、飛び立つ瞬間に髪型が変わったりと、思いどおりにならなかったといいます。
めっちゃ時間かけて、その(動画の)何秒かに時間かけたんですけど、面白いなって、奥深いなと。
あれこさんがこの魔女の動画を作ったのは、自分のインスタのリールに使うためでした。オリジナルキャラクターの表情を変えた画像をストーリーに使うなど、しゅうへいさんから見ても「かなり使っている」といいます。
ChatGPTについては、新しいGPT-5を使いつつも、言葉の柔らかさでは旧モデルのGPT-4oのほうがいいと感じる場面があるそうです。あれこさんは、モデルごとに使い分けるものなのかもしれない、と話しています。
しゅうへいさんによると、あれこさんはもともと「超機械音痴」でした。MacBookを買ったときは電源の入れ方から調べ、画面をiPadのように指で触ってしまい、切り取りのショートカットは「XJAPANの切り取り」と覚えていたほどです。
そんなあれこさんが、ブログ、WordPress、note、インスタ(フォロワー2万以上)と発信の場を広げ、Brain ── 個人が知識やノウハウを文章コンテンツとして販売できる日本のプラットフォーム。購入者が紹介者として報酬を得られる仕組みでも知られていますでは月100万円を稼いだこともあるといいます。そのうえで今はAIまで使いこなしています。
(AIは)絶対使いたくないっていうところから、今はなくてはならない。
イケハヤさんは、やり切る根性があるあれこさんの性格を「根本が違う」と評価しています。あれこさん自身は、イケハヤさんの発信を見て「AIを使わなきゃ」と思えたことが大きかったと振り返ります。
無料版と有料版の差は「三輪車と自転車」
3人の共通点として、しゅうへいさんが挙げたのは「全員がAIに有料課金している」ことでした。しゅうへいさんがセミナーなどで見る限り、使ったことがある人は増えたものの、感覚では8割が無料版のままで、有料は1〜2割ほどだといいます。
しゅうへいさんは、「AIは微妙」と言う人の多くは無料版しか使っていないのではないか、と指摘します。イケハヤさんもこれに強く同意しました。
無料版と有料版の差について、二人が語った内容を整理すると次のようになります。
使う人が多数派(しゅうへいさんの感覚では8割)。この程度しか出せないのかと「AIは微妙」という印象を持たれやすい
月2000〜3000円ほど。イケハヤさんは、ChatGPTに3000円払えばかなり仕事で使えるのは間違いないと話す
ゼロからAIを始めるなら、まずは有料課金をすること、そして最初の1つは幅広い用途に使えるChatGPTがよい、というのが二人の見立てです。
しゅうへいさん自身は、ChatGPT、Gemini、Midjourney ── テキストの指示から高品質な画像を生成するAIサービス。初期はチャットツールのDiscord上でのみ利用できました、Claudeのすべてに課金し、用途で使い分けています。Midjourneyは2023年に出た直後から課金していて、noteのアイキャッチなどに使っているそうです。
しゅうへいさんの最近の発見はメルマガ作りです。自分の文章をGeminiのGem機能に読み込ませて自分らしい文章を出すほか、テキストのメルマガのソースをClaudeのArtifacts機能ClaudeCodeのArtifactsに貼り付け、フリーランス学校の色味に合わせた見やすいHTMLデザインにしてもらっています。
しゅうへいさんは、Claudeのバージョンが4.1あたりから生成精度がかなり上がり、4.5で崩れにくくなったと感じているそうです。あれこさんも、文字だけだったしゅうへいさんのメルマガが急に色づいて見やすくなったと話しています。
こんなメルマガこんな綺麗に自分で作れるんだみたいな。これ割とこれだけでも仕事になるなみたいな。
AIで5分のアニメが2万円。なぜ仕事は増えるのか
イケハヤさんは、AIの使い方には段階があると整理します。無料版で会話や調べ物をする人々がいて、そのうち1割ほどが課金して仕事で使う。そしてその上に、新しいレイヤーができているといいます。
無料で使う
ChatGPTと会話したり、ちょっとした調べ物をしたりする
課金して仕事に使う
1割ほどの人。コンテンツ制作やリサーチなど普段の仕事で使う
クリエイティブAIを使う
動画や画像を生成する段階。イケハヤさんが今いるところで、たどり着く人はまだほとんどいない
収録の前日には、OpenAIの動画生成AISora ── OpenAIが開発した、テキストなどから動画を生成するAI。第2世代のSora 2では、生成動画を共有するSNS型アプリも公開されましたの新バージョンが出たばかりでした。イケハヤさんは、熟練した絵描きやアニメーターでなければ作れなかったものが、映像経験がなくてもパソコン1つでできるようになっていると話します。
ただし、クリエイティブ周りのAIにはお金がかかります。イケハヤさんは先月、動画生成だけで約7万円を課金し、今月も同じくらい使う見込みで、年間では100万円近くになるといいます。
無課金の人とかからしたら7万円も月に課金するって気が狂ってるんですかね。だけど今ここがめちゃくちゃ面白いですよ。
しゅうへいさんが「アニメを1本作ると思えば安いのでは」と返すと、イケハヤさんはテレビアニメも手がけている立場から相場感を語りました。
イケハヤさんが手がけたアニメクリプトニンジャ咲耶は3期まで制作され、合計で億を余裕で超えるといいます。しゅうへいさんは、一部の人しかできなかったことを多くの人ができるようになる「民主化」が今まさに起きていると受け止めました。
そこから話題は「AIに仕事を奪われる」という議論に移ります。しゅうへいさんの実感は逆で、むしろ仕事が増えているというものでした。
やるべきことって実はもともといっぱいあったけど、見ないふりして前に進んでたけど、今できるから。もうしょうがねえ、やるしかねえみたいな感じで。
プログラミングができなかったイケハヤさんは、今ではLP(ランディングページ)や小さなウェブサービス、ECサイトまで自分で作っています。エンジニアに頼めば200万円ほどかかるECサイトも、作れるから自分で作る。できることが増えるから仕事も増えるという構図です。
スマホの中に専門家がいる。チェーンソーが直った話
しゅうへいさんは、課金したAIの身近な使い方として、意外と知られていない例を挙げました。動画編集で分からないところがあれば、画面をスクショしてChatGPTに「音量にコンプレッサーをかけたい」と聞くと、ちゃんと教えてくれるといいます。
もう1つの例は、マキタのチェーンソーです。しゅうへいさんはチェーンが外れたまま1年ほど放置していましたが、写真を撮ってChatGPTに聞くと、黒いネジを締める前に別の部分を外す必要があると分かり、使えるようになったそうです。
この4、5万するマキタのチェーンソー壊れたと思ったら戻った。だから2000円課金してることによって5万円の損を取り戻したみたいな。
しゅうへいさんは、専門家に聞けば費用も手間もかかることを、スマホの中の「専門家」が教えてくれると表現します。間違うこともあるものの、自分たちが聞く程度のことならほとんど正しいといいます。
そのうえでしゅうへいさんは、困りごとを解決する段階の上に、困ってはいないけれど「できることを増やしていく」レイヤーがあると考えます。そしてそこは、もうAIの問題ではないのではないか、と問いを投げかけました。
なぜみんなAIでアニメを作らないのか?
しゅうへいさんの問いに、イケハヤさんは「なぜみんな今AIでアニメを作らないのかよく分からない」と率直に答えます。多額のお金をかけてテレビアニメを作ってきたイケハヤさんにとって、それがパソコンでできる今は興奮しかないといいます。
イケハヤさんは、AIで「こんなの作れるじゃん」と思いつく人と、行動しない人がはっきり分かれると感じています。バイブコーディング ── AIに自然な言葉で指示を出しながら、雰囲気(vibe)でプログラムを作っていく開発スタイル。コードを細かく書かなくても動くものを作れるのが特徴ですで作り手に回れるようになったのに、周りがあまりついてこないのが不思議だそうです。
あれこさんが出した答えは、生活に「余白」があるかどうか、というものでした。月7万円を出せるゆとりがあるか、そこに時間をかけるリソースがあるか、ほかにやるべきことがあるのではないか、という問題です。
池田さん(イケハヤさん)は多分これまでずっと積み上げてきたものがあって、それで自分のゆとりを作り出されてるからこそ、やりたいことにガッといける。
あれこさんは、しゅうへいさんが100%そちらに行こうとしたら「待ちなさい」と止めるだろう、と笑います。イケハヤさんも「まずお金を稼いでね」と続け、やりたい人は本当はもっといるのに、ゆとりがない人が多いのかもしれない、という話になりました。
余裕を奪う「社会のOS」とブルシット・ジョブ
しゅうへいさんは、余白のなさの背景には資本主義の悪い部分があるのではないかと考えます。スマホも家電も家も車もあって昔より豊かなのに、それでも時間がない状態を、しゅうへいさんは『暇と退屈の倫理学 ── 哲学者の國分功一郎さんの著書。人はなぜ退屈するのか、暇をどう生きるかを、哲学や人類学の議論をもとに考察しています』の「多忙な退屈」になぞらえました。
しゅうへいさんはこの番外編に先立つ回で扱った本ともつなげます。AIを使おうという「意思」がないから使わないのではなく、欲望を形づくる核のようなものが、自分たちの内側に生まれにくい社会のOSになっているのではないか、という見方です。
僕らは今とにかく働いてお金を稼がないといけないっていう、なんか歴史の正当性みたいな、その物語の中にいて、そこから逸脱するってことはなんか変な感じがする。
イケハヤさんはここで、人類学者グレーバー ── アメリカの人類学者デヴィッド・グレーバー。『ブルシット・ジョブ』のほか、考古学者との共著『万物の黎明』でも知られますの『ブルシット・ジョブ』を挙げました。人間の欲望や時間がどうでもいい仕事によって消耗させられ、官僚主義が行きすぎて創造性を発揮しにくい社会になっていることへの反発が、あの本の中心にあるといいます。
イケハヤさんによれば、余裕やリソースを持ち、自分の欲望に忠実に従える人は爆速で進んでいき、二極化が起きています。そしてそれが「自己責任」に回収されてしまうところに難しさがあると話しました。
しゅうへいさんは「AIというテーマを切り出しても、結局こういうところに戻ってくる」と面白がります。AI活用の情報をブックマークするだけで何もできない、という人の気持ちもよく分かるといいます。
イケハヤさんは、多忙な退屈やブルシット・ジョブから自分を取り戻すプロセスを経ないと、新しいAIが出ても「もうついていけない」となってしまうと話します。AIは凄まじいことができる道具だけれど、その利便性を享受できる人はごくわずかなのかもしれない、というのがイケハヤさんの本音でした。
AIを使う人を増やすのはコミュニティ
しゅうへいさんは、それを社会がどうサポートするかを考えたとき、答えはコミュニティではないかと言います。イケハヤさんのコミュニティのように、みんながAIを使っている環境に入ると、使っていない自分のほうが変だと感じるからです。
しゅうへいさんとイケハヤさんの話から、コミュニティがAI活用を後押しする流れを整理すると次のようになります。
使うのが当たり前の環境に入る
周りがみんな使っていると、使っていない自分が変だと感じる
実際に触って体験する
「今日は早めに帰ってAIを触る」人が増える
「できるかも」と感じる
体験を通じて、自分にもできるかもしれないという感覚が内側で働く
欲望が形成される
「これも作ってみたい」と次の行動につながる
イケハヤさんのコミュニティでは、仲間が「AIでこんなことができた」と見せ合い、刺激を与え合っているそうです。新機能を待ち望み、AIの限界も正確に把握しているから、うまく使えるのだといいます。
あれこさんは、そうした場は家族でも仕事先でもない、第三のコミュニティでなければなかなか得られない環境かもしれない、と付け加えました。
ここでしゅうへいさんは、自分自身のことにハッと気づきます。
多分僕、池谷さん(イケハヤさん)とかアレコさんに出会ってなかったら、ほんと何かやばい依存症でなんか人生壊れてたと思うんですよね。
あれこさんは、しゅうへいさんは短絡的な快楽に逃げやすい一方で、素直だから一緒にいる人に染まりやすいのだと話します。しゅうへいさんも、影響を受けやすい自分のコアな部分を二人がうまく変えてくれている、と認めました。
余裕より大きいのは「誰といるか」
イケハヤさんは、ここまでの議論を一歩進めます。AIを使うかどうかを左右するのは、余裕のあるなしよりも、誰と一緒にいて、どのコミュニティにいるかのほうが大きいのではないか、という考えです。
イケハヤさんは、AIに限らず学ぶ力や実践する力も、いる場所によって変わると話します。怠惰で転がり落ちていきそうな人ほど、いい場所といい人を見つけることが大事だといいます。
しゅうへいさんは、紹介する本が変わってきた自分の姿を見て、リスナーに「しゅうへいが変われるなら自分も変われる」と思ってほしいと話します。あれこさんも、本を読めないと言っていたしゅうへいさんが寝る前に普通に本を読めるようになったのは、大きな習慣の変化だと評価しました。
最後は、本つまみぐいラジオでつながる場の話になり、ポッドキャストのリアルイベントもいつかやってみたい、という話題に。もっとも「赤字にならないように」「まずはゆとりを」と、余裕の話にきれいに戻ってきます。
AIを使ってお金を稼いで、本を読み、はい、やっていきます。
まとめ
3人のAI活用は、魔女の動画、メルマガのデザイン、アニメやECサイトの自作、チェーンソーの修理まで幅広いものでした。そこから見えてきたのは、AIの性能そのものよりも、余白の有無や社会のOS、そして誰とどこにいるかが使いこなしを分けている、という視点です。
- AIは無料版と有料版で「三輪車と自転車」ほど違い、まずは月2000〜3000円の課金から始めるのが近道
- 動画や画像を作るクリエイティブAIでは、5分のアニメが約500万円から約2万円で作れるほど民主化が進んでいる
- AIはできることを増やすため、仕事を奪うよりむしろ仕事を増やすという実感が語られた
- 使いこなせない背景には、生活の余白のなさや「多忙な退屈」、ブルシット・ジョブがあるのではないかという議論になった
- 最終的には、余裕よりも「誰と一緒にいるか、どういう場所にいるか」が大きいという結論にたどり着いた





