やりたいことリストに突拍子もないことを書く理由
話の入り口は、ナルセがネタ帳に控えていた「やりたいことリスト」の話題でした。SNSのXで見かけたある投稿によると、多くの人はやりたいことリストに「TODOリスト」のような、できそうなことばかり書いてしまうといいます。しかし本来は、叶えられなさそうもないことも書くべきだ、という主張でした。
舎長自身も今年の初めに「死ぬまでにしたい100のこと」を考えたそうですが、意外と出てこなかったと明かします。ひねり出せばスカイダイビングや金髪などは挙がるものの、本当にやりたいかと問われると別にやりたくない。だから実はそんなにない、というのが実感だったようです。
ナルセが指摘したのは、できそうなことから書くと、結局その範囲のことしかできないという点。できるかわからなくても書くことで、「じゃあこれをやるにはどうしたらいいのか」という発想が初めて生まれるといいます。
さらに舎長は、リストに書くだけでなく「公言する」ことの大切さを、ある実体験から語ります。気絶のメイドの中に、ある芸能人が好きだと公言していた子がいました。あるとき舎長が知り合いの店にその芸能人が収録に来ると聞き、見学させてもらえるよう頼んだところ、実現。その子はとても感激したそうです。
リストに書くだけじゃなくて、発表した方がいいよ。
ぼんやりした「これやりたいかも」という願望を言語化し、周囲に表明することで、自分の本当の望みがはっきりし、周りから機会が巡ってくることもある。そんな学びが共有されました。
人生の目標をクリアした先にある「退屈」
舎長には、20代の頃からぶれずに口に出してきた人生の目標がありました。それは「嫌いな人とは関わらず、朝早く起きずに、毎日お酒を飲んで過ごす生活を手に入れる」というもの。26、7歳の頃からずっと言い続けてきて、今それがほぼ叶っているといいます。
目標をクリアしたということは、ある意味で大きな夢がもうない状態でもあります。ナルセが「それって楽しいの?」と尋ねると、舎長は「楽しいけど飽きてきている」と正直に答えました。
興味深いのは、最近の舎長が「めっちゃバイトしたい」と思っているという点。店に関わる全てのことが自分の責任である今の状況だからこそ当初の目的が達成できているものの、たまには「人の責任において仕事もしたい」と感じているそうです。
790円で1000万本──インディーゲームの夢
「人生の目標をクリアした先」の話から、舎長はあるインディーゲーム作者のエピソードを紹介します。ほぼ一人で作ったゲームがスマッシュヒットし、少なくとも億以上のお金が入ってきたという人物です。
お金持ちになると、成金的なサロンなどへの誘いが来るものの、その作者は面白いと感じなかったといいます。結局、退屈だからと言ってゲームの続編を作り、それもヒット。その人にとってはゲーム作りそのものが楽しみなのだろう、と舎長は分析します。
ここで話題は、収録中に流れた緊急地震速報のアラートで一時中断。実際に揺れを感じつつも、二人はトークを再開します。
続いて話題に上ったのが、Steamで配信された『めっちゃカメレオン』というゲーム。舎長によれば、リリースから2週間ほどで1000万本を売り上げ、しかもサーバー費も広告費もゼロ円だといいます。価格は790円ほど。ほぼ二人で作ったゲームだそうです。
趣味でゲームを作っている舎長は「夢があるな」と刺激を受けつつも、自分の作るゲームはどこかで見たことのあるものになってしまうと語ります。オリジナリティは入れているけれど、イノベーションは起こせない、と。
これに対しナルセは、「何かに似ている」ことは初めて見た人に「こういうやつね」と伝わりやすいという利点があると指摘。発明しようとこれまでにないことをやると、かえって人がついてこないという創作の逆説が語られました。
オリジナリティは必要か?二次創作をめぐる考察
オリジナリティの話題から、舎長は作家・栗本薫の小説論を持ち出します。栗本薫は「小説にオリジナリティは必要ない」と語り、よくあるステレオタイプなキャラクターを登場させても、ストーリーテリングで面白くさせるのが自分の手法だと述べていたそうです。
舎長は、栗本薫は現代なら二次創作を盛んに行ったであろうタイプだが、当時はまだ二次創作文化が盛んではなかったため、オリジナルキャラで小説を書いていたと説明。今は二次創作で名を上げる人も多く、借り物の世界観でも面白い物語は書けるのだろう、と受け止めます。
そして舎長が「ずっと提唱している説」として披露したのが、「『ちいかわ』は『HUNTER×HUNTER』の二次創作なのではないか」という新説です。
ちいかわの出来事がハンターハンターのある島で起こってる出来事だと捉えると、すげえ納得感があるの。
広大な世界を持つ『HUNTER×HUNTER』の、ある島での出来事として『ちいかわ』を捉えると腑に落ちる、というのが舎長の見立て。作者の長野氏が意識してやっているかは別として、少なからず影響を受けているのではないか、と語ります。
考察ブームと一挙配信の是非
話は冒頭で触れた『デルタルーン』にも戻り、いつの頃からか「考察」というジャンルが一般化したという指摘に発展します。謎の多い物語を考察することも、結局は二次創作の一種なのではないか、と舎長は考えます。ナルセは、考察が流行った背景にはSNSの存在が大きいと補足しました。
舎長はガンダムの『GQuuuuuuX』を例に挙げ、リアルタイムにネットで「これはどうなる?」と語り合うのが面白かったと振り返ります。物語そのものより、みんなで考察する体験が魅力だったという分析です。
ここから、Netflixの一挙配信という話題に移ります。全12話のドラマを一話から最終話まで一括配信する方式について、舎長は「それでいいのか」と疑問を投げかけます。毎週決まった日に一話ずつ配信した方が、考察の盛り上がりが生まれるのではないか、というわけです。
視聴者は好きなタイミングで最後まで見られる。ストレスが少ない。一方で感想を語り合うタイミングが揃いにくい。
視聴者のタイミングが揃い、考察や感想で盛り上がりやすい。反面、見逃すと離脱する人もいる。
ナルセは、一週ごとに感想を言うタイミングができる利点を認めつつ、友人には「毎週ドラマを見られない」「漫画も全巻出てから読む」というタイプもいると紹介。視聴者のストレス面では自由に見られる方が都合がよい、という見方を示しました。
関連して、舎長は石黒正数の漫画『天国大魔境』を買いだめしつつ読んでいないと告白。作者本人が「発売日に買ってほしい」とSNSで発信していたことに触れ、その理由を語ります。
ファンとして応援したい気持ちから、舎長は完結するまで読むのを控えつつも、発売日に買い続けているそうです。
20年先取りしていた打ち切り漫画『度胸星』のトラウマ
ここで舎長が今でもトラウマだと語るのが、山田芳裕の漫画『度胸星』です。週刊ヤングサンデーで連載されていた作品で、地球人が火星を目指す物語でした。
物語の骨子は、火星に降り立った宇宙飛行士のチームが連絡を絶ち、人間の理解を超えた高次元の生命体「テセラク」と遭遇するというもの。4人のクルーのうち3人が命を落とし、1人だけが生き残ります。その彼を助けるため、地球でチームが編成される──。火星編と地球編が同時進行する構成でした。
取り残された宇宙飛行士と、高次元の生命体「テセラク」とのコミュニケーション。なぜ自分だけを生き残らせたのか、という謎が進行する。
どうしても宇宙飛行士になりたいトラック運転手・土居くんが、職を辞して宇宙飛行士を目指す。
舎長はこの作品を「両輪で面白い」と絶賛。新刊が出るたびに発売日に買い、読むたびに震えたといいます。漫画を読んで鳥肌が立った数少ない体験のひとつだったそうです。ところが、アンケートの結果が芳しくなく、編集長交代による編集方針の変更も重なって、『度胸星』は打ち切りになってしまいました。
こんな面白い漫画なんだから当然人気があると思ってたんだけど、打ち切りになっちゃって。マジで今でもトラウマ。
作者はその後、続きを書かないと公言。舎長は、後に映画化もされた小説『火星の人』(作者はアンディ・ウィアー)を引き合いに出し、火星に取り残された男の物語という点で『度胸星』はそれを20年ほど先取りしていた、と語ります。20年から下手をすれば30年前の作品ながら、未だにトラウマになっているといい、それでも「打ち切りだとしても傑作」だとナルセに強く薦めていました。
夢女子が語る「妄想」という原動力
二次創作の流れから、ナルセが自らを「夢女子」だと告白します。腐女子がBLを好むのに対し、夢女子は自分が物語のヒロインとなり、自分が主体となって推しのキャラクターと恋愛する妄想を楽しむ、という説明でした。
ナルセは夜な夜な夢小説サイトを読むといい、面白い書き手の小説にはポロポロと涙するほど。ところが、シリーズものの続きを楽しみに「次のページへ」を押そうとしたところ、「一年更新されておりません」の表示に出くわし、絶望した経験を語ります。これは舎長が語った『度胸星』の打ち切りトラウマと通じる感覚でした。
素晴らしい作品は一次・二次関係ない。
好きなキャラクターは共通認識としてイメージしやすく、キャラクター設定の説明が不要なぶん「いきなりクライマックスから入れる」という利点があるといいます。そして舎長は、こうした妄想が「物を生み出す力」になるのではないかと問いかけます。実際、この店で知り合った女の子も夢女子を自認し、自分で漫画を描いているそうです。
最後は「これ、元々何の話だったんだっけ」と二人とも話の変遷を思い出せなくなり、笑いのうちに終幕。話が途切れずどんどんテーマが移り変わる会話こそが楽しい、という舎長の持論とともに、フリートークらしい着地となりました。
まとめ
やりたいことリストから始まり、幸福論、創作論、二次創作、打ち切り漫画のトラウマまで、一見バラバラな話題が「自分は何を望み、何を作り、何に心を動かされるのか」というテーマで緩やかにつながった回でした。目標を言語化して公言することの力、オリジナリティに縛られない創作の自由さ、そして好きなものへの妄想が持つ原動力──。地震のハプニングも挟みつつ、二人の自由な会話の中に、創作と生き方についての小さなヒントが散りばめられていました。
- やりたいことリストには叶えられなさそうなことも書く方がよい。できることだけ書くと小さくまとまってしまう。
- 目標を言語化し、さらに公言・表明することで、実現の機会が巡ってくることがある。
- 人生の目標を早くにクリアした舎長は、今「人の責任で働きたい」という願望を抱いている。
- 『めっちゃカメレオン』のような少人数制作のインディーゲームが大ヒットする夢がある一方、面白いゲーム作りの難しさも語られた。
- 栗本薫の「小説にオリジナリティは必要ない」という論や、二次創作・考察ブームを通じて、借り物の世界観でも面白い物語は成立するという視点が示された。
- 舎長は打ち切り漫画『度胸星』を今でもトラウマとして語り、傑作として強く推薦している。
- ナルセの「夢女子」体験から、好きなものへの妄想が創作の強い原動力になることが浮き彫りになった。
