二人のアーティストとしての立ち位置
番組は二人の簡単な自己紹介から始まります。草野は生成AIを使い、レトロフューチャーや架空の過去を再生産する作品を、主にデジタルアートNFTとして発表していると話します。
たかくらは、ピクセルアートや3DCG、AIなどを使ってアニメーションやインスタレーションを制作しており、テーマは東洋思想中国やインドを中心とした、儒教・道教・仏教などアジア圏の哲学・宗教思想の総称や仏教が多いと紹介します。
二人は日本のポップカルチャーや東洋思想を扱う点、そしてNFT黎明期に深く関わってきた点で共通しています。たかくらは、草野の息子「ZombieZooKeeper」のNFTを最初に買ったコレクターでもあります。
草野恵美です。私は生成AIを使ってアート作品を作っています。興味があるのは、レトロフューチャーだったり、架空の過去を再生産して、未来のテクノロジーについて考えたりっていう作品です。
たかくらかずきです。基本的にはデジタルアートが多くて、ピクセルアートや3DCG、AIも使いながらアニメーション作ったり、それをキャンバスにしたり、インスタレーションでゲーム作ったり。テーマは東洋思想とか仏教が多いですかね。
コロナ禍のNFTムーブメントと二人の出会い
二人の出会いは、コロナ禍にマインクラフトを一緒にプレイしたことがきっかけでした。雑談に飢えた人々がオンラインに集まり、Clubhouse2020年に米国で公開された招待制の音声SNS。コロナ禍で爆発的に流行したやXスペースで濃い議論を交わしていた時代です。
草野がNFTを知ったのも、Clubhouseでの村上隆スーパーフラットなどの概念で世界的に知られる現代美術家とクリプト系の人物の対談だったと振り返ります。Beepleアメリカのデジタルアーティスト。2021年にクリスティーズで作品が約75億円で落札されたの落札がきっかけで「これは何だ?」と興味を持ったと話します。
コロナ禍で誰もが外に出て雑談したりとかできないから、雑談に飢えた私たちがオンラインでつながってひたすら喋ってるっていう。招待制で、結構ネットの黎明期みたいな感じで新鮮でしたね。
「いつからアーティスト?」キャリアの転換点
草野は父が画家だったこともあり、当初は「自分はアーティストではなく、アーティストをサポートする側になる」と考えていたと話します。しかし、80年代アイドルの格好で現代テクノロジーを批評的に歌う動機が抑えられず、最終的にアーティストという立ち位置がしっくりきたといいます。
たかくらは長くクライアントワーク中心で、「イラストレーター枠」として見られることに葛藤を抱えていたと振り返ります。本格的にアーティスト活動に踏み出したのは、コロナ禍に京都へ移住してからだと話します。
本当は僕はずっとアートをやりたかったんだけど、なかなかクライアントワーク中心から抜け出せなくて。本格的に活動し出したのは、コロナ禍に入ってから京都に引っ越してからですね。
最終的にやっぱすごくミュージシャンをやる時も、80年代アイドルの格好をして、現代のテクノロジーに対して批評的な歌を歌いたいっていう動機が抑えられなくて、結局アーティストが一番しっくりきてますね。
「現代美術の中心」はどこにあるのか
草野は、海外の美術館で展示する機会が増えた一方、日本国内では作品がほぼ売れていない現状を語ります。ギャラリストからは「国際的な評価と日本での美術での評価が乖離している」と指摘されたといいます。
そこから話題は「現代美術の中心とはどこにあるのか」という問いに広がります。「みんなが俺だけハブられてると思っている」という草野の発言にたかくらも共感し、中心は幻想にすぎないのではないかと議論します。
現代美術の中心なんて存在しないのかもしれないけど。みんなが俺だけハブられてる説。この間つぶやいたらめちゃくちゃみんな共感してて。
美術館での展示機会、クリスティーズへの出品、グッゲンハイムやウィットニーのキュレーターが個展を訪問
フィジカル作品がほぼ売れない、美術内での評価が国際的評価と乖離
草野は自身のキャリアを、ZombieZooKeeperでの話題化、Galversのコミュニティ運営を経て、大規模言語モデル登場期からの本格的なアート制作という流れで整理します。クリスティーズや海外美術館での発表を重ねながら、世界中のキュレーターのフィードバックを得て、自分の作品をコンテンポラリーアートの言語に翻訳する作業を続けていると話します。
「NFTアート」から「デジタルアート」へ
興味深い変化として、草野は2023年頃から「NFT」という言葉自体が使われなくなった現象を指摘します。FTX2022年に経営破綻した大手暗号資産取引所。詐欺事件として大きく報道された事件などでNFTのイメージが悪化し、現在は「デジタルアート」と呼ばれることが一般化したといいます。
もうNFTって言わないです。NFTのイメージが悪すぎて。アメリカだと本当に悪魔のような詐欺がいっぱいあったし、それで失った人がいっぱいいるし、FTX事件もあって。
たかくらは「ずっとデジタルアートって言ってたのに、なんで結局戻ってくるんかい」とツッコみます。2023年のクリスティーズデジタルサミットでは、二日間で「NFT」という言葉を一度も聞かなかったと草野は明かします。
美術館が注目するAIアートの最前線
MoMAニューヨーク近代美術館。世界有数の現代美術コレクションを持つでは、AIアーティストのレフィック・アナドルAIとデータを使った大規模インスタレーションで知られるトルコ出身のアーティストの作品が常設展示され、現在はSashaStilesの作品が展示されているといいます。
草野のニューヨーク個展には、グッゲンハイムやウィットニーのキュレーターも訪れ、AIアートのリサーチを進めている様子を肌で感じたと話します。一方で日本では、デジタルで作られたものを絵画と呼ぶことへの抵抗感がまだ残っていると、たかくらは指摘します。
日本のデジタルアートをいろいろ見てきても、デジタルで作られたものは絵画とは呼べないみたいなことも未だに言われてたりするから、そういう常識をちょっとずつ変えていかないといけないなとは思うんですけどね。
AIへの寛容さと、海外での反発
国別のAIへの態度の違いも話題になります。草野によれば、日本はヨーロッパに比べてAIに寛容で、法律面でも比較的ポジティブだといいます。一方、海外ではイラストレーター界隈を中心に反発が強く、AIを使うアーティストとの交流自体を避けられるケースもあると明かします。
カートゥーンネットワークで配信されている作品を作っているアニメーターの友達が「絵美のことは好きだけど、友達が怒るかもしれないから、遊んでいることもバレたくない」って言われて。
テクノロジーに比較的ポジティブ。法律面でも寛容。業界による
イラストレーター界隈で強い反発。殺害予告が届くケースも
Sora2が開いた「AIコント」という新ジャンル
たかくらは最近、Sora2OpenAIが提供する動画生成AIの最新世代モデル。セリフ指示や一貫したキャラクター生成が可能を使って美術業界をディスるコント動画を作り続けていると話します。細かいプロンプトでセリフ指示ができ、自分のアバターで同じキャラクターを連続出演させられるようになった点が大きな変化だといいます。
Sora2でちょっと細かいプロンプトで自分のなんかやつが簡単に作れるようになってから、ひたすら美術業界をディスるコントを作り続けてるっていう。
たかくらはモンティ・パイソンイギリスのコメディグループ。シュールでブラックなコント番組で知られるへの愛を語り、脚本性の高いコントとAI動画の相性の良さに気づいたと話します。AIはこれまでSFX的なリッチビジュアル制作の方向で語られてきましたが、Sora2以降は「バカな世界」が広がるフェーズに来ていると感じているそうです。
草野は、自分はAIリアリズム世代のアーティストだと自覚しつつ、たかくらの作るコントは「次のフェーズ」だと評価します。たかくらは「お風呂で考えていることをそのまま打ち込むとそれになるのがAIのすごさ」だと語ります。
AIを自然に取り入れる映像作家たち
草野は、AIアートと明示せず自身のビデオアートに自然にAIを組み込むアーティストが増えていると指摘します。例として、AionKim、LuYan、DeliveryDancerなどを挙げ、StableDiffusionのリアルタイム生成やKlingを映像の一部に用いるスタイルが普通になりつつあると話します。
AIが揺らがす「リアルとフェイク」
話題はAIへの恐れの議論へと移ります。草野は社会から「楽観的にAIを語る役割」を求められることが多いと前置きしつつ、報道や著作権の文脈では別の難しさがあると慎重な姿勢を示します。
いい意味でも悪い意味でも、ちょっとインテリジェンスをすっ飛ばすっていうか、代用してもらうみたいな役割ですよね。
草野はSora2のリリース時にサム・アルトマンと対談した体験を共有します。その時の写真をXに上げると「髪が変だ」「服のパースが合っていない」など、本物の写真をAI生成と疑うコメントが大量についたといいます。
サムとの写真をネットに上げたら、3000リツイートとかされてたんですけど、よくわかんない人たちが写真をドアップにして「His hair is weird」とか「この女性が着る服がパースが合ってないぞ」みたいなコメントがめちゃくちゃ多発してて。
Sora2のカメオ機能Sora2に搭載された機能で、本人の顔データを登録すると、誰でもその人物を出演させた動画を生成できるの存在も対談のなかで話題になり、サム・アルトマン本人を100人同時に動画に登場させることすら可能な状況に、二人は驚きを語ります。
インターネット全体がフィクション化する世界
たかくらは、AI動画がここまで進んだ以上、インターネット上のコンテンツ全体が一度リアルから切り離され、「フィクション化」するのではないかと予測します。信じられる情報網が崩れ、人間は自分のフィジカルな周囲しか信じられなくなる「原始時代化」が起こるかもしれないと話します。
草野は自身の会社名が「FictionError」であることに触れ、ポストトゥルース時代の本格的な到来を予感していると話します。スキャンダルや報道の真偽が誰も気にしなくなる現象も、すでに兆候として現れているといいます。
政治家のゴシップや芸能人のゴシップがあった時に、結局嘘だったり本当だったりが何回か積み上がると、もうみんな本当かどうかどうでもよくなってます。
AIが代替する暮らしと、二極化する人間
未来の生活像として、二人はAI同士のエージェントが情報や消費を回す世界を語り合います。冷蔵庫AIが栄養計算し、家計AIが予算管理し、調理AIが料理を出すといった連携が現実味を帯びてくると予測します。
冷蔵庫AI
栄養バランスを計算して必要な食材を提案
家計AI
予算オーバーを判定し、購入を調整
調理AI
完成した料理を提供
コンテンツ消費も、ユーザーが「スターウォーズをジョジョ風のタッチでジブリ的ストーリーで黒沢監督風に」と注文するような時代が来るかもしれないと話題は広がります。たかくらは、それすら経由せずに脳内で直接生成される未来も想像できるとつなげます。
最後に、フィジカルなロボットが人型として普及するまでの間は、「実際に会って確かめる」ことだけが現実を保つ手段になるかもしれないと、たかくらは現実とAIの境界を結びます。
まとめ
草野絵美とたかくらかずきの対談初回は、自己紹介から始まり、NFT黎明期、現代美術の中心の不在、AIアートの歴史、そしてSora2以降のフィクション化する世界まで一気に駆け抜けました。二人のキャリアと、テクノロジーがもたらす表現とリアルの揺らぎが交差する内容です。
- NFTという言葉は2023年頃から急速に「デジタルアート」へ置き換わった
- AIアートはAARON、GAN、AIリアリズム、そしてSora2以降の「コンセプチュアル/コント」フェーズへ進化している
- 日本はAIに比較的寛容、欧米のクリエイター界隈は強い反発があり、態度の地域差が大きい
- AI動画の普及はインターネット全体を「フィクション化」させ、リアルとの境界を揺るがしている
- 未来は「考える人」と「AIに委ねる人」に二極化する可能性があり、フィジカルな対面が現実の最後の足場になりうる
