Spotifyフォロワー1万人、総再生10万時間が意味するもの
番外編の冒頭で尾原さんは、ハイパー起業ラジオのSpotifyフォロワー数が1万人を突破し、Spotifyでの総再生時間が10万時間を超えたことを報告しました。
尾原さんによると、10万時間は年に換算すると12年分にあたります。1フォロワーあたりでは平均10時間、1エピソード30分として約20エピソード分を聴いてもらっている計算です。
ここまで濃密に付き合っていただけるものって、やっぱポッドキャストだけっすよね。
けんすうさんもこれに同意し、YouTubeですら最近はTikTokなどのショート動画に時間を取られているので、ここまで長く聴いてもらうのはほぼ不可能だと話します。番組は今回で85エピソード目、約1年半続いており、100エピソードも見えてきたといいます。
NOBROCK TVはなぜ面白いのか?
この日のテーマについて、けんすうさんは「本当に雑談しようかなと思って来てる」と前置きしたうえで、佐久間宣行さんのYouTubeチャンネル『NOBROCK TV』が面白い理由を考えてみたと切り出しました。
尖った人材をいかに生かすのかっていうところが上手いから面白いんじゃないかなと思ってるんですよね。
尾原さんは、Netflixで日本1位になったバトムラにも触れ、事情でテレビに出られなくなった芸人の「再生工場」のようだと応じます。
けんすうさんが挙げた具体例の1つが、トータルテンボスさんの「100ボケ100ツッコミ」です。この企画は2000万再生以上を記録し、視聴者に「あの人たちはこんなに面白いのか」と気づかせたといいます。
もう1つは、大喜利が苦手な雨宮さんを大喜利の強いアイドルと戦わせる企画です。雨宮さんがいい回答を出したときに佐久間さんがすかさず褒めることで、出演者の好感度も上がっていたと、けんすうさんは見ています。
YouTubeの「経営側」に立つプロデューサーとは?
けんすうさんは、NOBROCK TVを経営者の視点から見ても勉強になると話します。佐久間さんは自分で絵を描くのではなく、企画を出したら裏方に回り、映像を見て笑っているだけなのに、プレイヤーたちが頑張っていいものが生まれる構造になっているからです。
YouTuberって基本的にやっぱ執行側がほとんどだったんですよね。みんなプレイヤーとして出て編集もやると。
これまでのYouTuberは、出演も編集も自分でこなす「執行側」が中心でした。けんすうさんは、NOBROCK TVはそれと違い、経営っぽいことをやっているチャンネルだと捉えています。
尾原さんは、プレイヤーが輝いたり焦ったりする「遊びしろ」が設計されていて、面白くなる土台の上でキャラクターが意外な展開を生む点を、経営でいうエフェクチュエーション ── 優れた起業家に共通する意思決定の型として提唱された理論。手持ちの資源から始め、試しながら目的自体も変えていく考え方ですっぽいと指摘しました。
けんすうさんが挙げたのは、板倉さんがアイドルに乗り移って若手芸人と話す企画です。板倉さんは「人に乗り移って喋ると面白い」と発見されてシリーズ化され、他の番組でも同じような仕事が来るなど、芸人の仕事の幅が広がるきっかけになっているといいます。
尾原さんは、Netflix編で話した戦略の取り方と佐久間さんのプロデュース論は似ていると続けます。偶然を呼び起こす仕掛けを次々に打ち、本質を見定めたらそこへ全力投球する、という進め方です。
目的から逆算を重ねて、最初のステップを決める進め方
「これをやったらどうなるか」を試し、うまくいったら次を決める進め方
けんすうさんの説明によれば、佐久間さんがやっていることは後者のエフェクチュエーションに近いと考えられます。尾原さんはさらに、テレビプロデューサーとしての長年の経験が効いていると話します。
尾原さんによると、佐久間さんは失敗しても「この範囲では面白くしてくれる」というアフォーダブルロス ── エフェクチュエーションの原則の1つ。期待できる利益ではなく、失っても許容できる損失の範囲で挑戦するという考え方ですの見積もりがプロとして確かなので、現場を楽しめます。苦すぎて売れないレモンをレモネードにして人気を得るように、失敗を次の成功に変える「レモネード」の要素もあると指摘しました。
カジサックと中田敦彦に見る、キャラとフォーマットの相性
けんすうさんが最近興味を持っているのは、他人の生かし方だけでなく、自分の生かし方だといいます。例として挙げたのがカジサックさんです。
けんすうさんによると、カジサックさんはひな壇のように大勢がいる場は苦手でも、自分が主役なら面白くできます。動きや表情が面白く、少人数が映るYouTubeと相性がよかったことが大ブレイクにつながったと見ています。
尾原さんは、AIが効率的な仕事を担うほど、人間の良さとキャラしか残らないという文脈に近い話だと応じます。カジサックさんの場合は「笑いの運動神経」とも言える動きやリアクションが、YouTubeの対談フォーマットにぴったり合ったというわけです。
けんすうさんはもう1人、中田敦彦さんを挙げました。中田さんは説明の熱量がうまく、エピソードトークで笑いを取るより、30分説明していても聞けるほど面白い点が強みだといいます。
けんすうさんの強みは「こじつけ力」?
では自分の強みは何かと考えたけんすうさんは、カジサックさんなどいろいろな人に聞いてみたところ、答えはだいたい同じだったと明かします。箕輪さんにも同じことを言われたそうです。
(僕は)こじつけ力がすごいから、何話しても多分無理やりそれっぽい話にする能力が高い。
けんすうさんによると、自分の中にコンセプトや意思がないぶん、こじつけ力が働くと、読んだ人や見た人に納得感は残るのに、どこかピンとこない状態が起きるといいます。
実はこの佐久間さんの話も、佐久間さん面白いですよねっていうのだけ今日用意してきたけど、無理やり経営と執行なんですよ。
尾原さんは、カジサックさんや佐久間さんの話はどれも「キャラとしての強み×フォーマット」で説明できると整理します。そのうえで、こだわりがないぶんどんな話題にも物語感を作れるけんすうさんには、どのフォーマットが合うのかと問いかけました。
| 人物 | 強み | 合ったフォーマット・場 |
|---|---|---|
| カジサックさん | 主役になったときの動きやリアクション | 少人数で映るYouTubeの対談 |
| 中田敦彦さん | 説明の熱量 | 30分でも聞ける長い説明 |
| 佐久間宣行さん | 隠れた面白さを見つけ、輝く舞台を用意する力 | すぐ次の回を作れるYouTubeの回転力 |
| けんすうさん | どんな話題でも物語にするこじつけ力 | 模索中 |
けんすうさんが得意なのは、例えば西野さんの行動に「こういう意図があったからこうなんです」という「嘘」の戦略を書くことです。西野さんも毎回「そうだったんだ」と言い、それがひとネタになるといいます。
YouTubeでウケた例が、M-1で令和ロマンのくるまさんが格好を変えた理由の分析です。サンローランの肩が張ったスーツにオールバックという姿にラスボス感があり、前年と印象が違って見えたとけんすうさんは話します。
一方で、続いて登場したヤーレンズは前年と同じ印象でした。けんすうさんは、前回王者は新鮮味がないはずなのに、悪役っぽい見た目に変えたことで新鮮味が出た、それを狙っていたのではないかという戦略論を語り、「そうなんだ」と受け止められたものの「嘘なのにな」と思ったそうです。
後付けの物語は、なぜ人を応援しやすくするのか
尾原さんは、けんすうさんの「こじつけ力」を佐久間さんの話につなげます。人がその場で生き生きと活躍するとき、未来への予測性が上がったほうが周りは応援しやすくなるため、後知恵でも物語化することには意味があるという見方です。
尾原さんによると、佐久間さんは遊びしろで出演者の見えないキャラを引き出し、2周目、3周目でそれをフォーマットとしてエンタメに昇華しています。フォーマットを知ったうえで見に来る人がいるからこそ、100ボケ100ツッコミは2000万再生に届いたと考えられるといいます。
遊びしろ
出演者の見えないキャラが偶然見つかる
後付けの物語化
発見を物語として意味づける
2周目・3周目
フォーマットとして回し、強化する
安心できるエンタメ
フォーマットを知って見に来る人が増え、数字になる
もっとも尾原さん自身、「今けんすうに言われたから」適当に言ったと笑い、けんすうさんも「何言ってんのかちょっとわかんなかった」と返すなど、この部分はゆるい掛け合いのなかで出てきた仮説です。
けんすうさんは、人の良さを発見することと、同じフォーマットで多くの人が活躍できることが佐久間さんのYouTubeの魅力だと改めて整理しました。100ボケ100ツッコミでは令和ロマンやラ・ラ・ランドの回も面白かったと二人は振り返ります。
けんすうさんは、みんな「最初からこの人たちは計算していた」という話が好きなのだろうと話します。尾原さんは、後付けでもストーリーとして強化すればみんなが安心して乗っかれる物語というプラットフォームになると応じ、それをスティーブ・ジョブズ ── アップルの共同創業者。2005年のスタンフォード大学卒業式スピーチで、過去の点と点は後から振り返って初めてつながると語りましたは「コネクティング・ドッツ」と呼んでいたと付け加えました。
けんすうさんは最近スターリンの研究本を読んでいるそうです。スターリンについては、レーニンと親しくなった理由などが後から物語としてこじつけられているものの、よく研究すると実際はそうでもなかった例が多いといいます。
リクルートにも通じる「人材を生かすフォーマット」
けんすうさんは、起業に役立つ点として話を整理し直します。人材を生かすことに加えて、アドリブだけでは続かないので、人材が生かしやすくなるフォーマットを作ることが大事だという結論です。
リクルートとかは結構これができていて、優秀な人材を取ってきて生かすようにするけれども、例えば営業でこういうプロセスを踏むと生きる人が多いっていうフォーマットに掛け合わせてる。
あまりに滑らかなまとめに、尾原さんは「最初からAIでオチを考えていただろ」とツッコみ、けんすうさんは「考えてない」「こじつけてますね」と返しました。
尾原さんは、リクルートや海外のGoogleを例に、最初にヒーローが生まれるのは偶然かもしれないが、スポットライトの当て方をフォーマット化すれば活躍の出番が増えると同意し、「ナイスこじつけ」と締めました。
番組の最後には、次回からけんすうさんが担当する「起業家としてのひろゆき」編の予告がありました。3年ほど前にネットで「誰か総括したほうがいい」と盛り上がったものの、誰もやらなかったので自分でやろうと考えたといいます。
まとめ
NOBROCK TVの面白さを入り口に、二人は尖った人材を生かすプロデュースのあり方を語りました。遊びしろで才能を発見し、それをフォーマットとして回し、物語として意味づけることで、出演者も視聴者も安心して乗れるエンタメになるという見立ては、組織づくりや起業にも通じる話として締めくくられています。
- 佐久間宣行さんは企画を出したら裏方に回り、出演者が輝く遊びしろを設計する「経営側」のYouTuberだと、けんすうさんは見ている
- 試しながら次を決める進め方は、エフェクチュエーションに近いと二人は指摘した
- カジサックさんや中田敦彦さんのように、キャラの強みとフォーマットの相性がブレイクを左右する
- 後付けでも物語化することで、人は安心して応援しやすくなると尾原さんは仮説を語った
- リクルートのように、人材が生かしやすくなるフォーマットを作ることが起業や組織づくりに役立つという結論に着地した



