4chanとはどんな掲示板なのか?
ひろゆき編の最終回は、2ちゃんねるやニコニコ動画、YouTuberの話に続き、海外サイトの4chanが題材です。尾原さんは、4chanを知っている人は意外と少なく、自分もよくわからないので興味があると話します。
けんすうさんによると、4chanはクリストファー・プールさんが2003年に15歳で創設した匿名画像掲示板です。プールさんはオンラインでは「ムート」という通称で活動しています。
けんすうさんは、4chanに近いのは2ちゃんねるよりもふたば☆ちゃんねる ── 2ちゃんねるの影響を受けて生まれた日本の匿名画像掲示板。テキストより画像の投稿を中心に、独自の文化が育ちましただと説明します。双葉チャンネルは画像を投稿する形の巨大掲示板で、4chanはそれを参考にして作られたといいます。
彼の言い方を言うと(2ちゃんねるが)おじいちゃん。で、そのお父さんが双葉チャンネルで、フォーチャン(4chan)はその子供みたいな感覚らしいです。
ムートさん自身も、ひろゆきさんがいなかったら4chanを作ることはなかっただろうと語っているそうです。尾原さんは、アメリカにはミームと呼ばれる画像で遊ぶ文化が強く、日本の掲示板とは毛色が違うという認識だったと話します。
4chanの規模も大きく、2015年にひろゆきさんが買収した時点の数字を、けんすうさんは次のように紹介しています。
けんすうさんは、この規模を2ちゃんねると同規模か、それより多いくらいかもしれないと見ています。尾原さんも、アメリカ国内でトップ10に入るビュー数だと付け加えました。
酒の席から始まった引き継ぎ、買収額はいくらだったのか
ひろゆきさんが4chanの運営に関わったきっかけは、2014年ごろにムートさんが東京に来たときの飲みの席だったと語られています。将来の話をする中で、ムートさんが「もう辞めたい」と漏らしたところ、ひろゆきさんが引き継ぐと申し出たそうです。
これ(4chan)、世界でもこういう自由な言論空間ってあんまりないから貴重だよねみたいなのが二人の中であったっぽくて。
けんすうさんによると、ひろゆきさんはお金を借りるなどして、それなりの金額で4chanを買ったようです。尾原さんは「10億円ぐらい」という噂を聞いた記憶があるといいます。
けんすうさんは、噂レベルでは7億〜10億円とされていると補足します。ある会社が約240万ドル、3億円ほどを投じて株式の30%ほどを持っているらしい、という情報がとあるサイトで公表され、そこから逆算された数字だそうです。ただし非公開なので、実際の金額はわからないとしています。
譲渡時点のムートさんの年齢について、尾原さんは27〜28歳ごろではなかったかと振り返り、けんすうさんも非常に若い方だったと応じています。
名前だけのオーナーではなかった?4chanの運営と悩み
ひろゆきさんは買収後の2015年、4chanでQ&Aセッションを開きました。けんすうさんによると、日本と同じノリで答えたため、ユーザーから「なぜ質問に質問で返すのか」と言われるなど、ひろゆきスタイルに戸惑う人もいたそうです。
その後もXでボランティア募集を告知するなど、4chanの発信はひろゆきさん自身が書いているようです。サーバーのスクリプトをいじったという書き込みもあったといいます。
てっきり名前だけ移して、俺がそのね、譲渡で受けて守ってやるよみたいな、オーナーみたいな感じなんだって勝手に思ってたんですけど、結構(運営を)やられてたんだ。
一方で4chanは財政難を抱えています。尾原さんは、何が書かれるかわからない掲示板への広告掲載は、実は日本よりアメリカのほうが厳しいと指摘します。
けんすうさんによると、2016年ごろには運営資金がひっ迫していて存続の危機だとユーザーに伝えていました。それでも4chanは今も続いており、有料パスの導入や広告主集めにも取り組んでいるようです。
4chanは、2ちゃんねる以上に社会問題化している面もあります。尾原さんは、トランプ周辺の話やQアノン ── アメリカで広まった陰謀論の運動。匿名掲示板への「Q」と名乗る人物の投稿をきっかけに拡散しましたのような陰謀論、ヘイト的な投稿があることに触れました。
ひろゆきさんは、これらの問題について具体的な発言をしているわけではなさそうだと、けんすうさんは言います。Q&Aでは、扱いは利用者同士で話し合ってほしいと答えていました。適切なガイドラインを作り、あとはユーザーの自治に任せる2ちゃんねる的なスタンスだと、けんすうさんは見ています。
日本人が持つ最大級のサイトとミーム文化の根っこ
尾原さんは、ひろゆきさんがYouTubeでの個人活動や切り抜き動画の仕組みづくりと並行して、今も4chanの管理人を務めていることに注目し、かなりマルチだと評しました。
けんすうさんは、4chanが日本人の作った、または所有しているサイトとして、ユーザー数で一番なのではないかと言われていると紹介します。今は3000万人ほどが使っていると推測され、メルカリやスマートニュースより大きい可能性もあるといいます。
少なくともそのグローバルのコンテンツではダントツトップだし、確かメルカリとかでもまあまだ月間で2500万を切ったぐらいだったと思うんだよね。
ひろゆきさんがこの話をあまり語らないのは、隠しているからではないとけんすうさんは言います。日本のユーザーにはピンとこず、YouTubeなどでも話題にならないからだそうです。
ミーム文化についても話は広がりました。けんすうさんは、掲示板ごとの擬人化イラスト「ボードたん」という文化が2ちゃんねるの流れをくみ、アメリカでも盛り上がってミーム化していると話します。アメリカのミーム文化の根底には、2ちゃんねるっぽさが入り込んでいるのではないかという見立てです。
特にアメリカの方がバックグラウンド多様な分、共通なものをね、非言語的なもので遊ぶっていうのがすごく色濃いので。
けんすうさんもこれを受けて、掲示板の文化や画像のミームのほうが、多様な人の共通言語になりやすいのかもしれないと応じました。
なぜ「何もしない」ことが最強の戦略になるのか
尾原さんは、ひろゆきさんがアメリカの大学に通っていたことにも触れ、国際的な活動も問題なくこなす多彩さに驚きます。けんすうさんによると、ムートさんとの対談は今も記事や動画で見られ、英語で普通に議論しているそうです。
そのうえで尾原さんは、シリーズ4回を通して見えたのは、自分でゲームのルールを作る稀代の起業家としての姿だとまとめます。
けんすうさんは、仕組みをうまく使って自分に負担をかけないことを特徴に挙げます。サボりたいという意味合いもあるにせよ、重要なのはコストが膨らまないことです。売上が右肩上がりでないと続けられない事業ではないからこそ、長く続けて影響力を持てるといいます。
尾原さんは、ネット事業の多くが集客にお金をかけ、新機能を出し続けないとライバルにユーザーを奪われる「永遠のジャンプインフレルール」から逃れられないと話します。ひろゆきさんは最初から持続可能なルールで始めるため、ユーザーが集まり、ライバルも覚悟を決めて同じことができず、ネットワーク効果が回り続けるという見方です。
やっぱね、何もしないって結構重要なんですけど、みんなそれはできないので。
けんすうさんによると、資金調達したスタートアップは、仕事がなくなる不安や、伸びていないと何かしなければという焦りから、つい機能を作ってしまいます。一方で、1〜2年機能が増えないことは実はユーザーにとってメリットが大きいといいます。
伸びていないと不安で新機能を作る。サービスが太って分かりづらくなり、ユーザーが使いこなせなくなる
最初に設計しきり、機能はあまり増やさない。ログが残り、表示が速いなど、使い心地の良さが保たれる
けんすうさんは、最初に設計しきって、あとは何もしないというひろゆきさん流のやり方のほうが、結果的にユーザーにとって良い場合があるとしています。
ネットに意外と落ちていない「ビジネスとしてのひろゆき」
ひろゆき編の本編を終え、二人はシリーズ全体の感想に入ります。尾原さんは「めちゃめちゃ面白かった」と振り返り、その理由として、ビジネスとしてのひろゆきさんの情報がネット上にほとんどないことを挙げました。
尾原さんによると、一般的な起業家は自分で語るため情報が多く、前回扱ったFacebook(メタ)編は外部とのトラブルも多く、上場企業の報告義務もあるのでまとめやすかったそうです。しかし今回ネットで探しても、ビジネスとしてのひろゆきさんの情報はほとんど見つからなかったといいます。
けんすうさんも、ユーザー目線の記事はITmediaなどにたくさんあるものの、ビジネスとしての分析は、ニコニコ動画以外ではあまりないと感じたそうです。
尾原さんは感想を3点にまとめています。1つ目は、情報をネット空間に置いておけばAIがまとめ直してくれる時代に、きちんと一度まとめたことが有用だったという点です。2つ目は、コンテンツや文化の話ではなく、サイトがなぜ持続できるかというアーキテクチャの構造だけを語りきった珍しさです。
3つ目は、収録の合間に樋口さんが話していた、ひろゆきさんのゲーム好きという視点です。できるだけ楽をしながらユーザーが楽しめるシンプルな構造を作り、運用を極端に振ることで矛盾や手間を生まない思想から学べることが多いと、尾原さんは語ります。
電車男はなぜ「2ちゃんねるを知らない編集者」に任されたのか
けんすうさんは今回の準備で、雑誌「2ちゃんねるプラス」の別冊『電車男副読本』を読み直したといいます。電車男は2004年ごろに出版されて大ヒットし、ネットの歴史の中でもひとつのエポックメイキングな出来事でした。
そのインタビューで、ひろゆきさんは電車男の出版先を新潮社に決めた理由を語っていました。担当者の自宅にパソコンがない、担当編集が女性である、2ちゃんねるを知らない、という3点が決め手だったそうです。
課題
2ちゃんねるのファンだけが買う本では、読者がとても少ない
選定基準
パソコンを持たず、2ちゃんねるを知らない女性編集者に任せる
狙い
ネットに馴染みのない人が読んで面白いように編集してもらう
結果
ひろゆきさんは、だから売れたのではないかと語っている
尾原さんは、ネットに馴染みのない読者にとっては海外旅行のような異文化体験だったのかもしれないと例えます。
(ひろゆきさんは)すごく普通の人の視点みたいなことを大事にしてるっていうのがやっぱり一番ベースにあるので、アーキテクチャとかの設計がうまいが、結局内容が面白いから読むよねみたいな。
尾原さんは、作り手の多くは思い込みを原動力にしているが、ひろゆきさんはいい意味で冷めていて、主観から距離を置けているのだろうと見ます。けんすうさんも、ネットにどっぷりなのに普通の人の目線で考えられる点が特徴だとしています。
尾原さんが「もっと語ればいいのに」と言うと、けんすうさんは、ひろゆきさんはインタビューで聞かれれば答えていると返します。ただ身も蓋もなく話すため、電車男がなぜ売れたのかという問いへの答えも「話が面白いからじゃないですか」だけだったそうです。
尾原さんは、一歩目の答えがシンプルすぎるために、聞き手が受け止めきれず深掘りが止まってしまうのではないかと指摘します。煙に巻かれたように感じても、本人は一番シンプルに答えているだけなのだろうという見方です。
電車男とPayPayに共通する「シンプルな強さ」とは
尾原さんは、シンプルに答えるひろゆきさんの姿勢を、起業家が気をつけるべき点に結びつけます。過去のゲスト回で川辺さん川辺さんが「後知恵」と言っていたように、後から語るとつい色々考えていたかのように話してしまいがちだといいます。
けんすうさんは、番組に出演した小澤さんの例を挙げます。小澤さんはPayPayを作るとき、全ての店で使えて、たくさんのユーザーが使っていて、還元率が良ければ使うだろうという、身も蓋もない考え方で進めたそうです。
シンプルにやっぱり使える店をSuicaよりも多くすれば使うじゃんみたいなところでやってるのってすごいなと思いますね。
UIが大事だ、Suicaは画面を開かなくていいからPayPayは使われない、といった議論がある中で、小澤さんは単純な軸に絞り込みました。尾原さんは、シンプルな強さに絞るからこそ規模と再現性と持続性が生まれると、並べてみて改めて理解できたと話します。
ここで尾原さんは、ハイパー起業ラジオ自体が解説しすぎなのではないかと自虐します。冒頭15秒で「電車男、面白いからです。以上」と終わるくらいの強さを持つ勇気が必要かもしれないという冗談です。
やっぱ特別なものって思いたいからね。やっぱね、人はね、世の中で。
けんすうさんは、電車男のインタビューで、2ちゃんねるの面白さはどこかと聞かれたひろゆきさんが「知識じゃないですかね」と答えて終わっていたことも紹介します。
尾原さんも、次から解説するときは、そのシンプルな強さを解説の軸に据えたいと話し、ひろゆき編は締めくくられました。
まとめ
ひろゆき編の最終回では、ひろゆきさんが運営する4chanの成り立ちと課題を確認したうえで、シリーズを通じて見えた「ルールを最初に設計しきり、シンプルな本質を突き詰める」起業家像が語られました。
- 4chanは2003年にムートさんが15歳で創設した匿名画像掲示板で、2015年にひろゆきさんが引き継ぎ、今も運営に関わっている
- 広告が付きにくく財政難を抱える一方、運営はガイドラインとユーザーの自治に任せる2ちゃんねる的なスタンスが取られている
- コストを膨らませず機能を増やしすぎない設計が、長期の継続とネットワーク効果を生んでいる
- 電車男の出版先選びのように、ひろゆきさんはネットにどっぷりでありながら普通の人の目線を重視している
- 「面白いから」「使える店が多いから」といった身も蓋もない本質を突き詰めることが、規模と持続性につながる


