📝 エピソード概要
本エピソードは、Facebookが世界的なプラットフォームとしての影響力を用いて打ち出した、国境を超えた共通デジタル通貨「リブラ(Libra)」構想の全貌とその挫折に迫ります。リブラは、銀行口座を持たない人々への金融アクセス提供や高額な国際送金手数料の削減を目指しましたが、その巨大な潜在力ゆえに世界中の政府から猛烈な反発を受けました。
この事例を通じて、国家の経済コントロールの根幹である「シニョレッジ」(通貨発行益)の重要性と、巨大テック企業と国家権力との間で繰り広げられる、デジタル時代の新しい地政学的な対立構造が深く解説されます。最終的にプロジェクトは中止に追い込まれますが、その理念は分散型として現代に受け継がれています。
🎯 主要なトピック
- SNSの巨大な影響力の再確認: ケンブリッジ・アナリティカ事件を経て、Facebookが世界の人口の大部分にリーチする巨大インフラとなり、その影響力が人々の思考操作にまで及びかねない規模に達していることが確認されました。
- 世界共通通貨「リブラ」構想の発表と背景: 2019年、Facebookは金融システムにアクセスできない世界の17億人に対し、SNSのリーチ力を活かして国境を超えた共通仮想通貨リブラを提供しようと発表しました。
- 国際送金の課題解決と出稼ぎ労働者への貢献: リブラの目的の一つは、フィリピンなどの出稼ぎ労働者にとって高コストであった国際送金の手数料を削減し、効率的な送金を可能にすることでした。
- 各国政府からの強い反発とパートナー離脱: Visa、Mastercard、PayPalなど大手企業を初期メンバーに迎え入れたものの、発表直後からEUなどが強力に警戒。シニョレッジや経済統制を恐れ、提携企業も次々と離脱しました。
- 国家が恐れたシニョレッジと基軸通貨の支配権: 通貨発行権が国家にもたらす利益(シニョレッジ)や、基軸通貨としての国際的な優位性が巨大企業に奪われることに対し、各国政府が強い危機感を抱いたことが挫折の核心でした。
- プロジェクトの中止と分散型への移行: Facebookはドルペッグや管理拠点を米国に移すなどの妥協案を出しましたが受け入れられず、リブラ(後にDiemに改名)プロジェクトは中止。しかし、その技術はオープンソースとしてWeb3プロジェクトに継承され、ステーブルコインを利用した決済システムとして分散的な形で実現しつつあります。
💡 キーポイント
- Facebookが中国やインドの人口を超える「世界最大の国」となり、その巨大プラットフォーム上で経済圏を築く可能性が国家の警戒心を高めた。
- 企業が中央集権的に革新を急ぐと、既存の国家権益(既得権益)との間でアレルギー反応が起き、大規模な反発を招くという教訓が示された。
- リブラの目指した「Power to the People」(小さな人々に力を提供する)という理念は、現在は一社独占ではなく、複数の企業やオープンソース技術による分散型のアプローチで静かに進展している。
- 現代の経済は国際送金の手間や手数料の高さ、為替の不安定さといった課題を抱えており、国際的なデジタル通貨の必要性は依然として高まっている。
- リブラプロジェクトの失敗は、開発ライブラリーがオープンソース化されWeb3プロジェクトに貢献するなど、技術的な遺産を残した。
