仏教の一大テーマとしての「苦」
仏教は「苦」の克服を一大テーマとしていると、横山さんは話します。過言ではないと言い切るほど、中心的な問いだそうです。
その代表が「生老病死」の四つの苦です。これに四つを加えたものが、よく知られる「四苦八苦」だと説明されます。
では、これらの何が「苦しみ」なのか。横山さんは一言で「思うようにならないこと」だと表現します。
一言で言うとですね、思うようにならないこと、これを苦しみというふうに捉えます。辛いとか不幸せということも含まれますが、もっと根源的に、自分の思うようにならない、願望通りにならないということが苦しみなんです。
生老病死はなぜ「苦」なのか
生まれることは思い通りになりません。いつ、どこで、誰の子として生まれるかは選べないからだと横山さんは言います。
選んで生まれてきたという方がいらっしゃったら、ぜひ教えてもらいたいんですけども、まあ、ないというようなことなんですね。
老いも同じです。ずっと若く健康でいたいのに、一瞬一瞬老いていくのは避けられません。
病気も、したくないという思いと裏腹に訪れます。そして最後に死があります。
しかも死は、いつ訪れるかわからないと横山さんは強調します。平均寿命まで生きる保証はどこにもない、というのです。
それでも人は「自分はまだ死なない」と思って毎日を過ごしてしまう。ここに落差が生まれると指摘されます。
命の灯っていうのは儚くて、いつどこで終わってしまうかわからない。そのくせに、永遠かのように、ずっと続くかのように感じてしまっている。この落差で私たちは苦しみに遭うということですね。
理想と現実の「差」が苦しみを生む
横山さんは、理想の状態と実際の状態には差があると説明します。この差の分だけ、思い通りにならず苦しむというのです。
なぜ差が生まれるのか。それは諸行無常と無我のためだと語られます。
自分の心すら思うようにならない。だから理想と現実の差が生まれると横山さんは言います。
この差が大きいほど苦しみは大きくなります。逆に、理想と現実がぴったり合えば苦しみはなくなるそうです。
物事が上手くいっている時は苦しみを感じません。差を見る必要がないからです。
しかし老・病・死が突きつけられた時、急に現実へ引き戻されます。その差の分だけ苦しむ、という構図です。
諸行無常・無我
すべては変わり、自分の心すら思い通りにならない
理想と現実の差
願望と実際の状態がずれる
差に直面
老・病・死などで現実を突きつけられる
苦しみ
差の分だけ苦しむ
一切皆苦、この世は「ガチャ」である
横山さんは「ガチャ」という言葉を使って苦を説明します。親を選べない「親ガチャ」も、苦しみの一つの表現だと言います。
仏教には「一切皆苦」という言葉があります。この世の一切は思うようにならない、つまりガチャだ、という捉え方です。
認められたい、こうなりたいと思っても、そう簡単には叶いません。生まれた立場や運の要素も関わってきます。
思うようにならないものに囲まれている私たちは、望む望まないに関わらず、大小いろんなガチャを引きながら生きていて、選べない、思い通りにならないものと折り合いをつけながら、時には無視をしながら生きているということなんですね。
苦しみを減らす二つの方向
では、この苦しみを克服する道はあるのか。横山さんは、理想と現実の「差」を縮めることだと答えます。
差をゼロにするのは難しいので、ゼロか百かではなく、なるべく近づけることを考えるといいそうです。
近づけ方には二つの方向があります。一つは執着や欲望、煩悩を下げること。もう一つは自分自身を高めることです。
必要以上に欲張っている願望を減らし、理想の位置を下げる
目標に向かって努力し、実際の状態を理想へ近づける
ただし生老病死は避けられません。そこは「そういうものだ」とありのままに見ることが大切だと横山さんは言います。
苦しみを完全に取り除くのは、仏陀になることに等しいそうです。百パーセント無理とは言わないものの、簡単ではないと語られます。
仏陀への道も一歩目からということですので、自分の努力をしながら、この差を少しでも縮めることをしてみる。やり始めると途方もないと思うんですけど、それでも最初の一歩がないことには縮まっていかないんです。
限られた命を大切に生きる
横山さんは、自分が欲張っていないか、物事に執着しすぎていないかを振り返ってみることを勧めます。
それは自分だけでなく他人にも当てはまります。他人に求めすぎていないか、という問いです。
自分の生老病死も、大切な人の生老病死も思い通りにはなりません。それを知るのは苦しく悲しいことだと横山さんは認めます。
けれど、それを知ることは、限られた命を生きていると自覚し、大切に使うことにつながると語られます。
ちょうど年度初めの時期でもあり、そんなことを考えるタイミングにしてほしいと締めくくられました。
まとめ
仏教でいう「苦」とは、辛さや不幸だけを指すのではなく、「思うようにならないこと」を意味します。理想と現実の差を、欲望を下げることと自分を高めることで縮めていく。それが苦しみと折り合いをつけ、限られた命を大切に生きる第一歩だと横山さんは話しています。
- 仏教は「苦」の克服を一大テーマとし、その代表が生老病死である
- 「苦」とは思うようにならないこと、願望通りにならないことを指す
- 理想と現実の差が大きいほど苦しみは大きくなる
- 欲望・執着を下げ、自分を高めることで、その差を縮められる
- 思い通りにならないと知ることは、限られた命を大切に生きることにつながる
