スパルタ回の反響は「性事情」が一番人気?
コテンラジオの第12回は、新テーマ「人類のコミュニケーション史」の初回です。本題に入る前に、樋口さんが前回のスパルタ回の反響を深井さんと楊さんに尋ねるところから始まります。
深井さんによると、スパルタ回は前々回よりもさらに反響が大きかったといいます。中でも一番人気だったのは、スパルタの性事情の話でした。
(性事情の話は)やっぱ時代を超えますよね。人間の本質、突き詰めると性事情に行くっていう。
再生回数の伸び方も性事情の話が一番だったそうです。楊さんは、女性の視聴者が増えたのではないかと推測しています。
樋口さん個人への反響としては、「樋口さんとコテンの2人がつながっていたのか」と驚く声もあったといいます。福岡で会社を経営する樋口さんにとって、こうした声はありがたいものだったと話しています。
インターネットで変わったのは「誰が発信するか」
今回のテーマについて、樋口さんは、電気さえない時代から人類がどうコミュニケーションを取ってきたのかを掘り下げると紹介します。そのうえで、SNSの台頭をどう見ているかを2人に問いかけます。
深井さんは、コミュニケーションの歴史はテクノロジーの歴史でもあると答えます。新しい技術が出てコミュニケーションが変わり、それによって人間の考え方と社会が変わっていく点に注目して話したいといいます。
深井さんは、インターネットの登場は印刷やモールス信号 ── 電信で文字を短点と長点の組み合わせで送る符号。19世紀に考案され、遠く離れた場所へ瞬時に情報を伝える手段として普及しましたと同じか、それ以上のインパクトがあると見ています。一番の変化は、自分が発信者である人の数がめちゃくちゃ増えたことだと語ります。
(それまでは)圧倒的に受け取る側で、発信者っていうのは社会的にある程度の地位があるであるとか、その自分が喋っている領域に関する何らかのスペシャリストであるとか。
深井さんによれば、かつての発言は、発言者の地位や属性と結びついた状態でしか出てきませんでした。樋口さんはこれを、意見のすべてに「◯◯団」や「学者」といった肩書きがついていた状態だと言い換えています。
そこに初めて匿名性が現れ、匿名の情報に価値が生まれたのは現代が初めてだと、深井さんは指摘します。樋口さんが匿名掲示板と、その開設者のひろゆきさんの名前を挙げると、深井さんは「歴史としてはでかい」と応じています。
発信者は地位のある人や専門家、何かの代表者に限られ、発言は肩書きと結びついていた
発信者の数が急増し、誰が言ったかわからない匿名の発言にも価値がつくようになった
ただし深井さんは、インターネットには最初から匿名性があったわけではないと補足します。もともとは軍事目的で生まれた技術で、楊さんは、大学間で研究データを共有するために開発されたものでもあったと説明しています。
深井さんは、匿名性という概念が出てきてから、インターネットが人間に与える影響は大きく変わったと見ています。最近はnote ── 文章や画像、音声などを投稿・販売できる日本のメディアプラットフォーム。2014年にサービスが始まり、個人の発信の場として広く使われていますのようなサービスも流行り、「第2次ブログブーム」のような状況になっている気がするとも話しています。
mixiの衝撃と、失われた「コンテクスト」
樋口さんがインターネットに出会ったのは、バンド活動をしていた頃です。ライブの告知には、iモード ── NTTドコモが1999年に始めた携帯電話向けのインターネットサービス。携帯からメールやウェブサイトを使えるようにしましたのサイトや掲示板を使っていたといいます。
当時の樋口さんは、ホームページを作るにはHTMLやプログラム、デザインを自分で勉強する必要がありました。そうした環境の中で、mixi ── 2004年に始まった日本のSNS。招待制で、趣味や関心ごとのコミュニティ機能が人気を集めましたの登場は相当な衝撃だったと振り返っています。
深井さんはmixiを、インターネット特有の新しいコミュニティ形成の形だと捉えます。それ以前の時代には、土地や年齢を超えて同じ趣味や考え方の人が集まることは、基本的にできなかったといいます。
深井さんは匿名性の話をさらに掘り下げ、それまでの発言には「コンテクスト(文脈)」があったと説明します。ある意見を言う人は、ずっとそのテーマに関わり、しかるべき団体や組織にも属したうえで話していました。
今はいきなり誰かもわからない人がバンって喋って、その言葉だけが先行して走っていって、まとめサイトにまとめられて、世論みたいになっていくみたいな。
深井さんによれば、昔は誰が言ったかが何より大事でした。今は言ったことが先にあり、それを誰が言ったかがあとからついてくるという、逆の順番になってきているといいます。
肩書きから離れた発言は良いことか、悪いことか
樋口さんは、会社なら社長の意見が一番強く、尊敬する人の言葉は心に響くものだと話します。説得力の源になる肩書きを外せば本質が見えるという意味では良い時代だとしつつ、デメリットはあるのかと深井さんに尋ねます。
深井さんは、地位や立場に関係なく誰もが言いたいことを言え、発言の中身そのものを見てもらえるようになった点は良いことだと答えます。一方で、文脈を持たないまま発言する人も出てきたと指摘します。
そういう基礎的情報を持ってもないのに、感想で何かバンって言っちゃう。で、言っちゃったことがめちゃくちゃ広がって世論になっていくみたいな。
深井さんは、発言に名前や署名がついていれば、こうした広がり方はしなかったはずだと見ています。
樋口さんは、誰が言ったかではなく、言葉のテクニックがうまい人が強くなるのではないかと考えます。SNSでキャラクターになりきって発言するアカウントや、一時期流行したサザエさんボット、スナフキンのなりきりを例に挙げると、深井さんもそれも特徴だろうと同意しています。
楊さんは、意見の多様さと引き換えに、深みが薄れた面があるかもしれないと話します。昔の学者や宗教家は、社会的な立場を持ち、リスクを背負って発言していました。
今は別に責任取らなくてもいいし、たとえ自分が投げた言葉が炎上しても、自分は匿名性によってやっぱり守られてるから罰則されないんですよ。
楊さんは、今は特定されることもあるとしつつ、良い悪いは別として、意見が検証される機会が失われていったと述べています。
人類最大のインパクトは文字の出現だった
深井さんは、コミュニケーションは人の思考回路に大きな影響を与えるものだと話します。そのうえで、人類にとって最も大きなインパクトは、インターネットではなく実は文字の出現だったと指摘します。
深井さんによれば、文字の出現で人間の考え方は大きく変わりました。印刷、モールス信号、飛脚 ── 手紙や荷物を人の足で運んだ日本の通信・輸送の担い手。江戸時代に制度が整い、各地を結ぶ情報網になりましたといったその後の技術は、すべて文字による変革の延長線上にあったといいます。
深井さんは、文字が現れてから何千年も経っているのに、文字による思考の変遷はつい最近まで続いていて、近代になってようやく完成したと語ります。そして今、マスメディアの登場あたりからインターネットへと、まったく次のステージに入りつつあると見ています。
深井さんの見立てでは、コミュニケーション技術の流れは次のように整理できます。
文字の出現
人類にとって最大のインパクト。人間の考え方が大きく変わる
印刷・飛脚・モールス信号など
いずれも文字による変革の延長線上にある技術
近代
文字による思考の変遷がようやく完成していく
マスメディア・インターネット
いきなり次のステージへ移りつつある
樋口さんは、冒頭から興味をそそられる話だとして、次回以降は項目を立てて一つずつ掘り下げていくと締めくくっています。
まとめ
人類のコミュニケーション史シリーズの初回では、インターネットが発信者の数を一気に増やし、匿名の発言に価値を与えた点に注目しました。その変化には功罪があり、さらに大きな視点では、文字の出現から続く流れの次のステージとして位置づけられています。
- インターネット最大の変化は、自分が発信者である人の数が急増したことだと深井さんは語る
- かつて発言は地位や肩書きと結びついていたが、今は「何を言ったか」が先に立つようになった
- 誰でも中身で評価される一方、文脈のない感想が世論になり、意見が検証されにくくなった
- 深井さんは、人類最大のインパクトは文字の出現であり、インターネットはその先の新しい段階だと見ている


