NVIDIAを買って寝ておけば正解の時代は終わった
皆さんこんにちは。米国株投資の耳よりな話へようこそ。
よろしくお願いします。
もし私がですね、OpenAIやGoogleが何千億円もかけて買い占めたあのNVIDIAの半導体が、ギリギリの予算で戦う中国のスタートアップにあっさりと出し抜かれたかもしれないと言ったら信じますか?
いや、普通は信じられないですよね。でも、それが今の現実になりつつあります。
そうなんですよ。なので、今日の徹底解説のテーマはズバリ、AIモデル米中戦争が投資家に与える影響。今この番組を聞いているあなたが、もしNVIDIAや大手テック株を持っているなら、絶対に知っておくべき内容になっています。
これまでのように、とりあえずNVIDIAを買って寝ておけば正解だったAI投資のフェーズって、もう完全に変わりつつあるんです。なので、今回は次に資金が向かうセクターは具体的にどこなのか、プロの目線でポートフォリオの戦略を立てられるようにがっつり深掘りしていきたいと思います。
シリコンバレーを揺るがす中国発AIの四天王
ちょっと状況を整理しましょうか。少し前までAIといえばOpenAIのChatGPTとかAnthropicのClaude、GoogleのGeminiといった米国製の独壇場でしたよね。
完全にアメリカ一強っていうイメージでした。
ところが最近、そのブームの顔ぶれがものすごいスピードで書き換えられているんです。今、シリコンバレーをパニックに陥れている、いわば中国発AIの四天王とでも呼ぶべきモデルたちが台頭してきています。
四天王ですか。なんかワクワクする響きですね。誰なんですか?そのプレイヤーたちは。
まず筆頭は世界に最も大きな衝撃を与えたDeepSeekですね。
ああ、最近すごく名前を聞きます。何がそんなに衝撃だったんでしょうか。
一言で言うと、圧倒的な費用対効果ですね。あのOpenAIの最先端モデルO1シリーズとかClaude3.5に匹敵するような高度な論理推論能力を、なんとアメリカの数十分の一という信じられないほどの低コストで実現してしまったんです。
数十分の一ですか。それはもうコスト破壊ですね。
そして二つ目がアリババが手がけるQwenというモデルです。このQwenは現在世界最高峰のオープンソースとして市場を席巻しています。つまり、設計図が無料で公開されているんですよ。
しかも、スマホで動くような軽いサイズから、画像とか音声も理解できる巨大なモデルまで幅広く展開されていて、世界中の企業がこぞって採用している状態です。
なるほど。DeepSeek、Qwen、そして三つ目は。
三つ目は中国のスタートアップMoonshot AIが開発したKimiです。これは分厚い専門書とか膨大な資料を一瞬で読み込んで分析する超長文理解に特化していて、リサーチ用途で爆発的に人気が出ています。
へー、用途に特化して刺さってるわけですね。最後の四つ目はどうですか。
最後の四つ目は、TikTokでおなじみのByteDanceが展開するDoubaoです。彼らの強みは、自社のTikTokとかCapCutといった巨大なアプリの裏側に、このAIをシームレスに組み込んでいることです。
ああ、もうすでにユーザー基盤があるんだ。
はい。その上で、外部の企業にも圧倒的な低価格でAI機能を提供しているので、利用ユーザー数という点では桁違いの規模を誇っているんですよ。
なぜ中国勢は少ない予算でアメリカに追いつけたのか
四天王の凄さは分かりました。でもここでちょっと素朴な疑問があるんですけど、いいですか?いくら中国企業がすごいと言っても、あのOpenAIやGoogleって、文字通り湯水のように資金を注ぎ込んでるじゃないですか。NVIDIAの最新半導体とかも買い占めて、力技でAIを開発しているわけですよね。なんで中国企業はそんなお金をかけずに、ひっくり返すものをポンと出せるんですか?
ああ、そこは非常に興味深いポイントなんです。結論から言うと、彼らはハンデを背負っていたからこそ、独自の進化を遂げたと言えます。
ハンデですか。あ、もしかしてアメリカの半導体輸出規制のことですか。
その通りです。アメリカは中国に対してNVIDIAの最新GPUみたいな最先端AI半導体の輸出を厳しく規制していますよね。つまり、中国勢は開発のための巨大で最新のエンジンを買えなかったんです。
なるほど、アメリカが最新エンジンで力押しするのに対して、中国はどうしたんですか?
中国勢は手に入る古いエンジンや限られた計算資源を使って、どうやって同じスピードを出すかに知恵を絞りました。例えるなら、極限まで燃費の良い軽量なスポーツカーを作り上げることに心血を注いだわけです。
制約が逆に技術革新を生んだってことですね。具体的にはどうやってその燃費を良くしてるんですか?
代表的なのがMoEという技術の高度な活用です。Mixture of Expertsの略ですね。わかりやすく例えるなら、十階建ての巨大なデパートを想像してみてください。
例えば、靴下が欲しいというお客さんが一人だけ来店したとします。この時、アメリカの従来のアプローチは、十階建てのビル全てのフロアの電気と空調をフルパワーでつけるようなやり方だったんです。
うわ、それは電気代がとんでもないことになりますね。無駄が多すぎる。
そうなんですよ。一方で、中国勢が極めたMoE技術は靴下売り場の照明だけをピンポイントで点灯させる仕組みなんです。
あーなるほど。質問に答えるために必要な部分だけを動かすわけですね。
まさにそれです。AIへの質問に対して脳全体を動かすんじゃなくて、その質問に答えるのが得意な専門家の領域だけを稼働させる。これによって計算コストを劇的に下げているんです。
すごくわかりやすい例えです。でも、安く動かせるのはわかったんですが、なんでアメリカに追いつけるんですか?
そこには蒸留と呼ばれる技術が使われています。ディスティレーションですね。
蒸留。お酒みたいな名前ですが。
はい、これはですね、アメリカの最先端AIが莫大なコストをかけて導き出した完璧な模範解答を教師にして、自社のAIに効率よく学習させる技術なんです。
えっと、つまりカンニングというか、答えを教えてもらってるってことですか?
カンニングというとあれですが、要するにゼロから何万冊も本を読ませる代わりに、超優秀な先生がまとめたノートの要点だけを丸暗記させるようなイメージです。これで短期間で一気に賢くさせているんですよ。
それに加えて、アメリカのトップ企業で経験を積んだ優秀なAI人材がどんどん中国に帰国していることも大きいです。
頭脳流出の逆バージョンが起きてるんですね。
ええ。さらに、中国特有の「996」と呼ばれる労働環境、つまり「朝九時から夜九時まで週六日働く」という猛烈な開発スピードがこの進化を支えています。
996か。限られたハードの資源を圧倒的なアルゴリズムの工夫と人間のマンパワーでカバーしてるってことですね。
中国リスクは?グローバル企業が実際に使っている理由
これを聞いている皆さんも今絶対こう思ってるはずなんですよ。いくら安くて優秀だって言ってもさ、データ流出とか検閲のリスクがある中国製のAIなんて、グローバル企業とか金融機関は怖くて実務に使えないんじゃないの?って。いわゆる中国リスクですね。
ああ、それは非常によくある疑問ですね。でも、実はここからが本当に面白いところなんですよ。実はですね、グローバル企業はすでに中国発のAIモデルを実務でめちゃくちゃ使っているんです。
え、マジですか?ちょっと待ってください。AWSとかのアメリカのサーバーで動かすにしても、大本のコードを書いたのは中国企業ですよね。アメリカの銀行のコンプライアンス担当とかが、裏口からデータを盗まれるバックドアなんかを警戒して、そんなものに判子を押すわけがないと思うんですが。
もちろんその警戒はもっともです。しかし、彼らは中国企業のサーバー経由でAIを使っているわけではないんですよ。先ほど中国勢のQwenなどがオープンソースだというお話をしましたよね。企業はそのAIの設計図、専門用語でオープンウェイトと言うんですが、それだけをポンとダウンロードしてくるんです。
ダウンロードするだけ。
ええ。そして、自分たちのエンジニアで中身のコードを徹底的に監査します。バックドアがないか、変な通信をしないか、すべて確認した上で、自社の完全に閉ざされたネットワーク環境に入れたり、アメリカの安全なクラウド上で動かしたりするんです。
なるほど。中国のサービスをブラックボックスのまま使うんじゃなくて、中身の技術だけを自分たちの安全な箱の中で動かすから、そもそもデータが外に漏れる仕組みが存在しないんですね。
まさにその通りです。技術の恩恵だけをちゃっかり受け取って、セキュリティの担保はアメリカ企業に任せるという非常に現実的なハイブリッド戦略ですね。コストに厳しいテック企業や金融機関はもうこぞってこの方法で中国発のAIモデルを採用してコスト削減を実現しているのが今の現実なんです。
AIがタダ同然になったら、ビッグテックのビジネスは崩壊するのか
そこで一つ大きな疑問にぶつかるんですが。もし今、中国の無料の設計図のおかげで、最高峰のAIがタダ同然の日用品になってしまったとしたらですよ。マイクロソフトとかOpenAIがこれまでやろうとしていた、ものすごく賢くて高額なAIソフトウェアを企業に売るっていうビジネスモデル、これ完全に崩壊しちゃいませんか?
そこですよ。まさにそこが今後の株式市場を占う最大のポイントになります。アメリカのビッグテックももちろんその強烈な危機感を持っています。だからこそ今彼らは単なる文章を作ったり要約するようなAIの価格競争から意図的に脱落して、ある新しい領域へと主戦場を移しているんです。
新しい領域。
はい。推論モデルと呼ばれる領域です。OpenAIのO1とかAnthropicのClaude3.7などがその代表格ですね。これらはパッと瞬時に文章を作るんじゃなくて、AIに長く深く思考する時間を与えるんです。
そして、未知の科学研究とか、めちゃくちゃ複雑なプログラミング、高度な論理的課題をじっくり解かせる。中国の格安モデルでは絶対に解けないような超高度な頭脳労働の領域にフォーカスしているんです。
つまり、スーパーマーケットでの勝負はさっさと捨てて、完全予約制の超高級コンサルタントになる道を選んだわけですね。
完璧な例えですね。そして、これをより大きな視点で捉えると、なぜ彼らがそこまで焦って戦略を転換しているのかが見えてきます。OpenAIやAnthropicには将来的にIPO、つまり新規株式公開が控えているからです。
ああ、なるほど。上場する時に投資家に対して我々は数兆円の価値がある企業だっていうストーリーを見せなきゃいけないからか。
その通りです。上場する時に、私たちは安くて便利なAIの卸売業者ですなんて言ったら、何兆円という企業価値は絶対に正当化できませんよね。だから彼らは我々は単なるツールではなく、世界中の企業のシステムに入り込んで、あらゆる業務をまるごと自動化する次世代のOSになるんですというストーリーが必要なんです。
AIを単体で売るのをやめて、企業のシステム全体に組み込んで、もうそのAIなしでは業務が回らないような、いわゆるロックイン戦略を急ピッチで進めているわけです。
個人投資家はどこに注目すべきか
いや、めちゃくちゃ面白いですね。ここまでの壮大な米中AI戦争の背景を踏まえて、いよいよ個人投資家であるあなたのための戦略に落とし込んでいきましょう。これまでってAIのインフラを作っているNVIDIAみたいな、いわゆるツルハシ銘柄を買えば儲かるフェーズだったじゃないですか。それが終わった今、私たちは具体的にどこに目を向けるべきなんでしょうか。
ズバリ言いますと、AIを作る側から安くなったAIを使い倒して爆発的に利益率を上げる企業へのシフトです。ただ同然になったAIを使って既存のビジネスを劇的に効率化できる会社ですね。
もっと具体的にイメージしたいんですが、どんな企業が儲かるようになるんですか?
例えばですね、巨大なトラック輸送網を持ってる物流企業を想像してみてください。これまでは毎日何万台というトラックの最適な配送ルートをリアルタイムで計算させるために、OpenAIの高い利用料を払うのはコスト的に全く割に合いませんでした。
確かに毎回何十円もAPI料金を取られていたら荷物を運ぶ利益が飛んじゃいますよね。
ところが、中国勢の価格破壊のおかげで優秀なAIがただ同然になった。すると、物流企業はそのオープンソースのAIを自社システムに組み込んで、天候、渋滞、さらにはドライバーの休憩時間までをすべて考慮した完璧なルーティングをコストを気にせず全車両に実行させることができるようになります。
うわぁ、それはすごい。ガソリン代も人件費も劇的に下がりますね。
結果として利益率が跳ね上がる。つまり、物流、医療、IT、金融といった非ITの伝統的企業こそがAI価格破壊の最大の恩恵を受けるんです。
なるほど。AIっていう超優秀な新入社員をただ同然の給料で大量雇用できる企業が熱いわけですね。ってことは、アメリカのビッグテック株はもう投資先として見切りをつけるべきなんですか?
いえ、そういうわけではありません。ただ、ビッグテックの中でも明確に選別が進むでしょうね。汎用的なAIをただ売っているだけの会社は間違いなく苦戦します。逆に強いのは、すでに顧客が抜け出せない独自の業務システムを握っているMicrosoftや、ユーザーの端末そのものを完全に支配しているAppleなんかです。
Appleは強いですよね。AIがどれだけ安くなっても、結局それを動かすiPhoneっていう最強の場所を持ってるのはAppleですからね。
ええ、そしてもう一つ、絶対に忘れてはいけないのがAWSやAzureなどのクラウドインフラ企業です。先ほど企業は中国のAIを使うとき、結局セキュリティのためにアメリカのクラウド上で動かすと言いましたよね。つまり、アメリカ製AIが勝とうが、中国製AIが勝とうが、AIが使われれば使われるほど、場所代として手数料を確実に徴収できるクラウド事業者は依然として鉄壁の防御力を持っているんです。
結局最後に勝つのはインフラの地主ってことですね。めちゃくちゃ納得しました。
AIがコモディティ化した世界で、最後に残る堀とは
では、今日の結論として、AIの知能そのものが電気や水道のように誰でも安く使えるインフラになった世界で、最後に最大の価値を生み出す究極の堀、いわゆるモートとは一体何なのでしょうか。
それはですね、誰にも真似できない独自のデータです。例えるならAIは高性能なエンジンなんですよ。どんなにエンジンが安くて高性能になっても、燃料がなければ車は一ミリも進みません。例えば病院なら、どの患者にどの治療が実際に効いたかというリアルな生データ。これが燃料です。
ははぁ。エンジンはオープンソースで世界中どこでもタダで手に入るけど、燃料はその会社にしか掘り出せないと。
その通りです。だから投資家の皆さんは、AIのエンジンを作っている会社を血眼になって探すよりも、最強の燃料を持っている会社が無料の高性能エンジンを手に入れたらどう化けるかという視点で市場を見るべきなんです。
いや、素晴らしいインサイトです。AIそのものはコモディティ化して、本当に価値があるのは独自のデータとそれを活用できる現場の力。これ、投資の世界だけじゃなくて、私たち自身のキャリアとか仕事そのものにも直結する強烈なメッセージですよね。
本当にそう思いますね。個人レベルでも同じことが言えますから。
ですよね。これを聞いている皆さんも、ご自身の仕事において、AIという無料のエンジンに注ぎ込める自分だけの独自の燃料とは一体何でしょうか。ぜひご自身のポートフォリオを見直すついでに、この壮大なテーマについても考えてみてください。
まとめ
この回では、DeepSeekやQwenなど中国発AIモデルの台頭が、AI投資のフェーズを大きく変えつつあることが語られました。半導体規制というハンデがMoEや蒸留といった効率化技術を生み、優秀なAIがオープンソースでほぼ無料になりつつあります。その結果、注目すべきは「AIを作る側」から「安くなったAIを使い倒して利益率を上げる企業」へと移り、最後に価値を生むのは独自のデータだという結論に至りました。
- NVIDIAを買って寝ておけば正解というAI投資のフェーズは終わりつつある
- 中国勢は半導体規制のハンデをMoEや蒸留などの効率化技術と人的マンパワーで補った
- 企業はオープンウェイトを自社の安全な環境で動かすことで、中国リスクを回避して採用している
- 物流や医療など、安いAIを使い倒して利益率を上げる非IT企業に恩恵が向かう
- AIがコモディティ化した世界で最後に残る堀は、その会社にしかない独自のデータ
