眼鏡がスマホになる未来と、六兆円の投資
皆さんこんにちは。米国株投資の耳寄りな話へようこそ。
よろしくお願いします。
リスナーの皆さんにちょっと聞いてみたいんですけど、最近ポケットからスマートフォンを取り出すのすらなんかめんどくさいなって思うことありませんか?
あーありますね。特に荷物持ってる時とか。
ですよね。で、もし仮にですよ、普段かけてる普通の眼鏡がそのスマホの代わりになって、しかもそこに世界最強クラスのAIが搭載されていたらって、ちょっと想像してみてほしいんです。
それはもう完全にSF映画の世界というか、日常がひっくり返りますよ。
実は今日取り上げる企業は、その未来を作るために、なんとこの年で(設備投資が)六兆円以上の資金をドカンと注ぎ込んでるんです。
六兆円ってちょっともう桁がおかしくて想像もつかない数字ですよね。
本当にとんでもない規模です。ということで、今回の深掘りテーマは、SNSの絶対王者でありながら、すでにポストスマートフォン時代の覇権を本気で狙っているMetaの第二四半期決算です。
今回の私たちのミッションは、単に売上とか利益の数字を読み上げるだけじゃありません。その巨額投資の裏側にあるマーク・ザッカーバーグの本当の狙いですよね。彼らが私たちの日常を根底からどう変えようとしているのかを、リスナーのあなたと一緒に解き明かしていきたいと思います。
痛みを伴う事業構造の改革
数字の話に入る前に、解説者はMetaが進める事業構造の改革を整理していきます。
数字の話に入る前に、今のMetaがテクノロジー業界の激変の中で、どれほど痛みを伴う事業構造の改革をやっているのか、そこを整理しておく必要があります。
確かに、最近のMetaって、なんかかなり極端に舵を切ってるような印象があります。
ええ、特にAI開発の分野ですよね。オープンソースのAIモデルであるLlamaでかなり奮闘はしているんですが、一方で、自律的に動くAIエージェントの分野では、OpenAIとかGoogleにちょっと遅れを取っているという焦りがあるんです。
なるほど。つまり、陸上競技でずっとトップだと思って走ってたら、いつの間にか全然違う新しい種目が始まっていて、慌てて最新のシューズを爆買いしてるみたいな状態ですかね。
まさにそんな感じです。その最新のシューズというのが巨大なデータセンターやGPUなわけですが、実はその前にちょっとしたドラマがあったんですよ。
遅れを一気に取り戻すために、年末にシンガポールを拠点とするManusというAIエージェントの企業を約三千億円で買収しようとしたんです。
三千億円。さすがシリコンバレーというか、お金で時間を買うショートカット戦略ですね。
ええ、でもなんと今年、中国政府の国家発展改革委員会から国家安全保障を理由に異例の撤回命令が出ちゃったんですよ。
えっ、中国政府に止められちゃったんですか。
そうなんです。それで買収の目論見が完全に頓挫してしまって、つまり外部から一気に完成した技術を手に入れるっていう選択肢が消滅したわけです。
うわぁ、それは痛いですね。じゃあもう自社でゼロから開発するしかなくなったと。
それが今の信じられないような巨額投資につながっている大きな要因の一つなんですよね。
メタバースを縮小し、AIスマートグラスへ
なるほど、そういう因果関係があったんですね。でも、いくらMetaとはいえ、そんな何兆円ものお金をいきなりどこから引っ張ってきたんですか。
そこでメスが入ったのが、あの社名変更の理由にもなったメタバース部門Reality Labsなんです。
あー、ずっと巨額の赤字を垂れ流してたあの部門ですね。
はい。ついにその予算を最大三十パーセントもカットして、VRゲームの開発などを大幅に縮小しました。その代わりに、今のハードウェア戦略の主役に躍り出たのがウェアラブルAIスマートグラスなんです。
あのRay-Banとコラボしてるやつですよね。最近だとアスリート向けのOAKLEYのモデルも出たりして。
ええ、そうです。ハンズフリーでカメラ撮影ができたり、AIと対話できたり、音楽も聴けるという。
でも、ちょっと意地悪な見方をすると、誰もあのゴツいVRゴーグルをかぶりたがらなかったから、普通のサングラスに妥協しただけなんじゃないですか。最初からこれが狙いだったとはちょっと信じがたいというか。
あー、一見するとそう見えますよね。ただ、これは妥協ではなくて、日常生活にAIを溶け込ませるための極めて現実的で高度な進化なんです。
AIを本当に役立てるには、人間の視界とか音声のデータを絶えずAIに学習させる必要がありますよね。でも、ごついゴーグルじゃ日常使いは無理です。だから、すでにみんなが身に着けているメガネの形にすることで、違和感なくAIを浸透させるという戦略なんですよ。
なるほど。妥協じゃなくて、データを取るための最強のステルス作戦ってことですね。
増収減益、アクセルとブレーキを同時に踏む決算
続いて、事業転換の真っただ中で発表された2025年第2四半期決算の中身に入っていきます。
そういう大きな事業転換の真っただ中で発表されたのが、今回の第2四半期決算なわけですが。この決算、一言で言うとどんな決算だったと言えますか。
一言で言うなら、広告事業は絶好調でめちゃくちゃ増収だったのに、巨額のAI投資と費用増が利益をガッツリ圧迫した増収減益、AI先行投資型の決算ですね。
増収減益ですか。なんだかアクセルとブレーキを同時に思い切り踏み込んでいるような印象を受けますね。まずはその絶好調だったというポジティブな側面から見ていきましょうか。
はい。売上高は六百八億ドルで、前年同期比28パーセント増と市場予想をしっかり超えてきました。
六百八億ドル、すごいですね。その大半はやっぱり広告ですか。
その通りです。広告事業だけで五百九十四億ドルを稼ぎ出しています。ここで注目してほしいのが、AIのアルゴリズムが広告配信を劇的に最適化している点なんですよ。
単に広告の表示回数(インプレッション)が14パーセント増えただけじゃなくて、広告の単価自体も12パーセント上昇しているんです。
えっと、単価も上がってるんですか?それって、AIが私たちが一番クリックしちゃいそうなタイミングを見計らって、ピンポイントで広告を出してきてるってことですかね。
まさにそれです。精度が上がりすぎていて、広告主からすれば高いお金を払ってでもMetaに出稿したいという状態になっているわけです。圧倒的な稼ぐ力ですよね。
恐ろしいくらい優秀なビジネスですね。でも、その一方でネガティブな側面、つまり爆発的なコストの問題があるわけですよね。
はい。EPS、一株当たり利益は六点一八ドルで、市場予想の七点一七ドルをなんと約十四パーセントも下回ってしまいました。
それは結構なミスですね。何がそんなに利益を食いつぶしたんですか。
総費用が前年同期比55パーセント増の四百二十億ドルに膨れ上がったんです。特にすごいのが設備投資額、いわゆるCAPEXですね。データセンターとかGPUの購入だけで単体で三百十一億ドルが消えています。
三百十一億ドルって。
さらにそこに訴訟や法的な管理費用で二十四億ドル、人員削減の特別費用で十二億ドルが重なって、結果として営業利益率は前年の38パーセントから31パーセントにドスンと落ちてしまったんです。
いやー、本業の広告でめちゃくちゃ過去最高レベルに稼いでるのに、それを全部AIのスーパーコンピューターとかデータセンターの建設に突っ込んじゃってるんですね。
まるで毎月のお給料が過去最高になったのに、その全額を家の増改築費用に毎月使ってしまって、手元に全然現金が残ってない状態みたいですね。
ああ、すごく分かりやすい例えですね。しかもその増改築、いつ終わるか大工さんもわかってないみたいな状態ですからね。
株価10%下落、投資家が嫌気したもの
それは奥さん、つまり投資家は怒りますよね。実際、ウォール街はこの増収減益に対してどう反応したんでしょうか。
これがもうかなり強烈な反応でして、決算発表後の時間外取引で一時7パーセントから10パーセント前後も株価が急落したんです。五百八十五ドル台から一気に五百三十ドル前後まで売り込まれました。
売上は予想を超えてるのに、そこまで売られるって、市場は相当パニックになってますね。
投資家は本業は確かに強いけど、AIへの先行投資が削りすぎていると警戒したんです。
キャッシュが手元に残らない企業は評価されないのがウォール街ですもんね。
さらに火に油を注いだのが、会社側が発表した今後のガイダンスでした。通期の設備投資額の見通しを千三百億ドルから千四百五十億ドルへと下限をポンと引き上げたんです。しかも、二千二十六年から二千二十七年にかけても、この投資の手を一切緩めないという姿勢を明確にしました。
うわぁ、それは売りが加速しますね。いつ回収できるかわからない何兆円もの投資をこれからもやり続けるぞって宣言したわけですから。
そうなんです。株式市場って基本的にいつリターンが来るかわからない巨額投資を極端に嫌う生き物なんですよね。
確かに、四半期ごとの利益を気にする投資家からすればたまったもんじゃないですね。
でも、ここが面白いところなんですが、Metaの経営陣、特にマーク・ザッカーバーグは株価が一時的に下がることなんて気にしていないんです。彼らにとっては、株価下落よりも、今ここでAI開発競争に負けることの方が企業として致命的だと考えているんですよ。
なるほど。つまり、株価急落を覚悟してまで無制限に投資できる、ある種の勝利の方程式が見えているってことですよね。
ザッカーバーグが描く四つの生存戦略
解説者は、ザッカーバーグが描く中長期のグランドデザインを四つの軸で整理していきます。
ザッカーバーグCEOが描いている中長期のグランドデザイン、いわば生存戦略ですね。これには大きく四つの軸があると考えています。
おお、ぜひその四つの軸、詳しく教えてください。
まず戦略の一つ目。これが一番重要なんですが、スマホからの脱却、つまり次世代プラットフォームの覇権を握ることです。
スマホからの脱却。さっきのオープニングの話ですね。
ええ。現在、MetaのビジネスはAppleのiOSやGoogleのAndroidの上で成り立っていますよね。これって彼らにとって最大のコンプレックスでありリスクなんです。
まあ、機嫌次第でいつでも店を追い出されるかもしれない状態ですからね。
その通りです。だからこそ、世界に約二十億人いるメガネ着用者をターゲットにして、メガネを次のスマホにしようとしているんです。視界と音声をAIと共有して、スマホを取り出さずにAIと生活する。自分たちがその基盤、プラットフォームになろうとしているんです。
そして戦略の二つ目がオープン化によるAIエコシステムの支配です。
オープン化。あのLlamaとかを無料で公開してるやつですね。でもそれってなんで無料にするんですか?OpenAIみたいにクローズドにして稼いだ方がいい気もするんですけど。
そこがMetaの賢いところで、彼らはAIモデルそのもので稼ごうとはしていないんです。無料でオープンに提供することで、世界中の開発者に使ってもらい、AIの標準規格を握ろうとしているんです。
みんながMetaの基準でAIを作るようになるってことですか。
そうです。結果的にそれが自社の広告精度のさらなる向上や、ビジネス向けWhatsAppの収益最大化に跳ね返ってくるという仕組みですね。
なるほど。本業の広告ビジネスが強すぎるからこそできる王者ならではの戦略ですね。
そして戦略の三つ目が、勝つまで金を積み上げるという無制限投資を可能にするガバナンス構造です。
でも普通の上場企業なら、こんなに赤字を出してたら株主に社長がクビにされちゃいませんか?
そこで効いてくるのが、ザッカーバーグが過半数の議決権を持つクラスB株式という特殊な構造なんです。
ああ、なるほど。彼が絶対的な権力を持っているから。
だから短期的な利益を求める株主の反対を押し切って、広告ビジネスの現金を力技で長期投資に全振りできるんです。このトップダウンの強さは他の企業にはなかなか真似できません。
独裁体制だからこそできるブレない長期投資なんですね。そして最後の四つ目は何でしょうか。
戦略の四つ目は、段階的リアル主義へのシフトです。以前のメタバース構想みたいに、いきなり極端なフルVRをみんなに被せようとするんじゃなくて、着実なロードマップを描き直したんです。
ステップ一として、まずはカメラとマイク付きの便利なAIグラスから始める。ステップ二で腕の筋肉の信号で操作するリストバンドを導入する。そして何年もかけてステップスリーの完全なARホログラムへと移行していくという計画ですね。
眼鏡がスマホになる世界は受け入れられるか
じわじわと私たちの日常を侵食していく感じですね。でも、ちょっとリスナーの視点を代弁して聞きたいんですけど。眼鏡がスマホの代わりになるって、技術的には可能だとしても、本当にみんな受け入れるんですかね?だってカメラがずっとオンになってる眼鏡をみんながかけてる世界ってプライバシー的にかなり気持ち悪くないですか?
ああ、心理的な壁ですね。
周りの人がどう感じるかとか、そのハードルって高くないんでしょうか。
もちろんその壁は非常に高いです。だからこそ、いきなりARグラスじゃなくて、徐々に日常に溶け込ませるステップを踏んでいるわけです。
歴史を振り返ると、人間って圧倒的な利便性の前では最終的にプライバシーの懸念を妥協してきたんですよね。スマホのGPSで常に位置情報を共有している今の状況も、昔の人から見たら異常ですから。
ああ、確かに。便利すぎると少しくらいデータ取られてもいいかと思っちゃうかもしれません。
Metaはまさにそこに賭けているんだと思います。
いやー、すごい話ですね。ここまでお話してきて見えたのは、Metaは単にSNSにAIのチャット機能を追加して満足しているような会社じゃないってことですね。
全く違いますね。
自社の最強AIと自社製スマートグラスを掛け合わせることで、ついにAppleやGoogleを追い抜いて、ポストスマートフォン時代のインフラそのものになろうとしている。それが今回の巨額投資の正体だったわけですね。
まさにその通りです。壮大な覇権争いですね。
さて、リスナーのあなたに、最後にもう一つだけ、ちょっと刺激的な問いかけをしてみたいと思います。もし五年後、私たちが本当にスマホを捨てて、AIグラスをかけ、自分が見ているもの全てをAIがリアルタイムで解析する世界になったとしたら、私たちの現実の定義は一体誰がコントロールすることになるのでしょうか。
なかなか深い問いですね。
目に映る情報にAIがどんなフィルターをかけるのか、ぜひ皆さんもこの先の未来を想像してみてください。
まとめ
Metaの2025年第2四半期決算は、AIによる広告最適化で売上が前年比28%増と絶好調だった一方、巨額のAI設備投資が利益を圧迫し、増収減益となりました。止まらない設備投資の増額とガイダンスを投資家が嫌気し、株価は時間外で10%前後下落しました。しかしザッカーバーグは、株価下落よりもAI競争に負けることを致命的だと考え、クラスB株式による強いガバナンスを背景に無制限投資を続けています。その先には、AIスマートグラスでポストスマホ時代のインフラを握るという壮大な生存戦略が描かれています。
- 広告事業はAIの最適化で売上前年比28%増、単価も12%上昇と絶好調だった
- 設備投資が膨らみ営業利益率は38%から31%へ低下し、増収減益となった
- 止まらない設備投資額の増額を投資家が嫌気し、株価は時間外で約10%下落した
- ザッカーバーグは過半数の議決権を背景に、短期の株価より長期のAI投資を優先している
- AIグラスでスマホからの脱却を狙う、段階的なポストスマホ戦略が投資の正体である
