なぜ審査を「ぶっつけ本番」で公開するのか?
今回の厚利少売ラジオは、すがけんさんと川原卓巳さんが主催する「厚利少売プロデュースオーディション」の二次選考審査会を、そのまま収録して届ける回です。2人とも、応募動画をまだ一度も見ていない状態で収録に臨んでいます。
川原さんはプロデューサーとしてピッチコンテストにも関わってきた立場から、収録しながら審査の様子を出すのは「常軌を逸してる」と笑います。すがけんさんも、練習せずに本番を迎えたような感覚だと話しています。
一番最初に考えるのって、やっぱりこのオーディションに参加した人ももちろん大事だけど、リスナーさんがこれ楽しいんだっけ?じゃないですか。
すがけんさんが不安を感じたのは、この形式で応募者とリスナーの両方に面白く届けられるかという点でした。番組の聴き手には、オーディションに応募しなかったものの、自分の人生で厚利少売を実践したい人も多くいます。そのリスナーの変化量を最も大事にしているからこそ出たアイデアだといいます。
川原さんは、番組がこれまで本作りの過程も「垂れ流して」きたことを振り返ります。視聴者の反応を気にせず本気でいいものを作ろうとする現場が見えたことが面白さだったと考えており、今回の審査もそれに近い場になると話しています。
僕らがどのぐらい真剣に受け取って、どう見てて、で、どう価値を感じるのかを触れてもらえる機会になるんじゃないかなと。
155名から8名へ。この番組の「治安のよさ」はどこから来るのか
厚利少売プロデュースオーディションには、総数155名のエントリーがありました。その中から10名が一次選考を通過しています。
ただし、通過者のうち1名は二次選考の動画が締め切りに間に合わず、もう1名は事情により辞退しました。川原さんは、締め切りは厳守し、手を加えずリアリティを保ったまま進めていると説明しています。
辞退者の話から、すがけんさんは話題を広げます。普通のオーディションであれば、辞退した人を炎上させようとする人が出てくるところですが、この番組のリスナーにはそうした気配がないといいます。
僕やっぱ仕事柄リスクを一瞬1秒だけ考えるんですけど、今パッと思い浮かんだんですよ。やばい、その人になんかあったらまずいなと思って。
ここは治安がいいなと思って。
すがけんさんは、インプレッションを稼がなければならない薄利多売の世界では過激なふるまいが必要になる一方、限られたお客さんと商売をする厚利少売の世界ではその必要がないと話します。川原さんも、リスナーとの信頼感があるからこそ、このオーディションのモデルが成り立っていると応じました。
すがけんさんはリスナーに対し、参加者へリスペクトを持ち、「私だったら勇気を持ってできなかった」という気持ちで応援してほしいと呼びかけています。
出張料理の価値は「品数」から「変化量」へ
オーディションの二次選考課題は、今ある商品やサービスを2倍から10倍の価格に設定し、その価値を90秒以内のショート動画で伝えるというものです。川原さんによれば、厚利少売で重要な「需要を増やす」フェーズの発信力を見るための課題だといいます。
一人目は、エントリーナンバー32番、お台所研究室福の上野京子さんです。家庭を訪問して料理を作る出張料理人で、動画は自らの価値観が変わった経緯を語る構成でした。
私はずっと量で価値を証明してきました。
上野さんは、お客様に「お値段以上」と感じてもらうため品数を増やし、自分の時間を削り続けてきたといいます。転機は、仕事に復帰するお客様から、せめてご飯の不安だけは取り除きたかったと言われたことでした。
本当に届けるべき価値は品数の多さなんだろうかって。
価値は相手の変化量。
お客様に合わせた仕組み作りを提案し始めたところ、予約待ちのお客様が出るほどになったと上野さんは語っています。
品数を増やし、量でお値段以上を証明しようとして自分の時間を削っていた
相手の変化量に価値を置き、お客様に合わせた仕組み作りを提案するようになった
動画を見た2人の反応は、川原さんが「鳥肌立ってる」、すがけんさんが「泣きそうになった」というものでした。川原さんは、品数を増やすのは薄利多売型の思考であり、相手の求める変化量に焦点を移す気づきに共感したと話します。
だってグラムの量り売りみたいになってっちゃうから。
すがけんさんは、量で勝負すると1グラムあたりの価値しか考えなくなり、満足感や美味しさを求めるお客さんには好まれにくくなると指摘しました。さらに、他人の家庭で料理をしてもらうには強い信頼関係が必要で、本来は食欲をそそりにくいジャンルなのに、この動画は「めちゃくちゃシズってた」と評価しています。
一方で、すがけんさんは、お客さんの視点では値段がわからない点も挙げ、感情に訴える「エモ寄り」の動画だったとまとめました。川原さんの推しポイントは、「価値は相手の変化量」という言葉と揚げ物の「ジュー」という音が重なる場面です。2人は、映像が見えないリスナーにもぜひリスナー投票のページで動画を見てほしいと勧めています。
100円の団子を1万円にする「価値の再定義」とは?
二人目は、エントリーナンバー47番の岩間貴志さんです。宮城県仙台市で、兄・姉とともに「一福」という団子屋を営んでいます。岩間さん自身はもともとPO師で、兄はバーテンダー、姉はパン職人という経歴です。
一福の始まりは、寿司職人だった父親が、シャリに使っていたササニシキで団子を作ったことでした。お米から作る団子は「もちもちつるしこ」で、素材の味が出ると岩間さんは紹介しています。
岩間さんは現在、YouTubeで全国のお米を使って団子を作り、その土地の食材や文化と掛け合わせる取り組みをしています。団子を売るのではなく、その土地の体験ごと届けるという考え方です。
100円
今の一福の団子の価格帯
200円〜1000円
文脈を変えることで上がる価値
1万円
体験になったときの価値
文脈を変えることで200円から1000円へ、そして体験になれば1万円の価値になる。
川原さんの第一声は、寿司職人の父親が団子を作り始めたという成り立ちへの驚きでした。米つながりで寿司と団子が一緒だったことに、新しい結合を感じたといいます。
すがけんさんは、この動画を「できます」という話ではなく、100円ではなく200円や1000円で売りたいという意思表明の動画だと受け止めました。そのうえで、動画から味より香りを感じたと話し、具体的なヒントを出しています。
なんか団子って多分ね、目つぶって食べるもんじゃないと思うんですよね。
だから目を閉じて風景を感じるようなお団子だったら、僕は1,000円でもありがたがって食べそうな気がしたから。
すがけんさんの提案は、米の香りや、みたらし・ずんだといったソースを、目を閉じて風景のように感じられる団子にすれば、ご当地団子が成り立つというものです。川原さんはこの講評を「ヒントだらけ」と評し、団子に「つるしこ」という擬音を使う新しさにも触れました。
熱量は十分、でも「何の商品か」は伝わったか?
三人目は、エントリーナンバー107番の松井日奈子さんです。動画は、毎日頑張って自己否定してしまう人に向けて、すでに起きている自分の変化を見つけて受け止めることの大切さを語る内容でした。松井さんは、かつて悩みを1ヶ月引きずっていた自分が、今はすぐ行動できるようになったと話し、その変化を回収する時間として「パフェに甘えて」を紹介しています。
2人はまず、松井さんのエネルギッシュさを評価しました。そのうえで、すがけんさんが「これ商品は何なんですかね」と疑問を口にします。川原さんによれば、商品は体験型のスイーツブランドで、パフェを味わうサービスです。
人間ってやっぱり記憶するのが苦手だから。
すがけんさんは、情報量が多い動画の中で、視聴者は何を受け取ればいいか判断しながら聞いていると指摘しました。パフェが出てくるのは最後の一瞬で、なぜパフェなのかもつながっていないため、初見の人には記憶されにくいといいます。
でもじゃあそれで何をどうやってやってるのかのところがすごく欠けてたから、僕ら何を受け取ったらいいの?ってなったっていう感じ。
川原さんは想像だと断ったうえで、自己否定していた自分がパフェを作って食べてホッとできた、友達に作ったら喜ばれた、といった変化の原体験が欲しかったと話しています。すがけんさんも、パフェが映像的にもっと美味しく見えれば食べたくなる動機になると加えました。
それでも2人の評価は前向きです。川原さんは、プロセスエコノミー的な動画の要素はわかっているので、2秒ごとに視聴者の思考をつなぐスクリプトの強さが身につけば大きく変わると見ています。すがけんさんは、松井さんは限界を持たず「やってみます」と言えるタイプに見え、プロデュースする側としてポジティブだと話しました。
すがけんさんは松井さんに限らず、応募者全員に向けて、たとえ選ばれなくても、頑張った分の変化は自分で得られるとエールを送っています。
声のプロなのに、SNSで声を出していないのはなぜ?
四人目は、エントリーナンバー5番の守屋まゆみさんです。すがけんさんが冗談めかして「問題児」と呼び、川原さんがたしなめるところから紹介が始まりました。
守屋さんの動画は、同じ自己紹介を2通りの声で聞かせ、どちらと一緒にいたいかを問いかける構成です。人は0.5秒で人間性を判断すると語り、かつてあがり症だった自身の経験から、思考・心・体を統一して信頼される声に変える「ブランドボイスメソッド」を紹介しています。
すがけんさんは、一次選考では公平さを保つため、エントリーシート以外のSNSなどをあえて見なかったと説明します。合格後、守屋さんがインスタグラムでメンションしてくれたので見に行くと、声に関わる仕事の人なのに、声が一切アップされていなかったといいます。
だってさ、声の人なのに声をSNSで一切出してないんですよ。
川原さんも同じ印象を持っており、守屋さんは自分の武器の使い方をまだわかっていないだけで、伸びしろしかないと見ています。すがけんさんも、封印しているのではなく、わからずに使っていないのだろうと応じました。
ボクサーが後ろで手結んで戦ってるみたいな。
今回の動画でも結局何の声の仕事をしているのかはわからず、2人はナレーションの契約で縛られているのかもしれないと想像を膨らませます。シートで守屋さん自身が挙げた課題が「選ばれ愛され続ける個人ブランディング」だったことに、すがけんさんは「声出しなさいよ、じゃあ」とツッコミを入れました。
川原さんは、その道のプロであるほど普段から当たり前にやっているため、自分の価値に気づいていないケースはよくあると話しています。
傍観者で終わらず、一票を投じてほしい理由
前編の審査はここまでで、後半にも個性の強い応募者が登場すると川原さんは予告しました。今回のオーディションは2人の審査だけでなくリスナー投票もあり、応募者がリスナー投票を呼びかけてファンを集めた場合も加点されます。
これ、ただ見てるだけで参加してくれないと、本当にただの傍観者になっちゃうんで。
すがけんさんは、選ばれた人を番組でずっとプロデュースし伴走していくため、誰の物語を見たいかを自分の一票で選んでほしいと呼びかけました。投票したことをSNSで発信してほしいとも話しています。
川原さんは、二次審査を音声だけにする案もあったものの、映像にしてよかったと振り返ります。また、ハッシュタグで「勝手に厚利少売オーディション」をする動きがSNSで起きていることにも触れ、すがけんさんは「勝手に審査しようかな」と乗り気を見せました。
投票はエピソード概要欄の特設ページから行え、動画の再生数やいいね数も評価の一部になります。投票の期限は5月24日(日)23時59分までです。すがけんさんは最後に、リスナーと同じ立場で一票を投じたいと締めくくりました。
まとめ
前編では、4名の動画への講評を通して、高い値段で選ばれるには品数や量ではなく、相手の変化や体験、そして伝わる構成が欠かせないことが浮かび上がりました。最終的な判断はリスナー投票も含めて決まります。
- 出張料理の上野京子さんは、価値を品数から相手の変化量へ置き直した経緯を、音と映像で伝えた
- 団子屋一福の岩間貴志さんは、文脈と体験で100円の団子を1万円にする価値の再定義を掲げた
- パフェに甘えての松井日奈子さんは熱量を評価される一方、何の商品かを早く示す構成が課題とされた
- 守屋まゆみさんは、声のプロなのにSNSで声を出していない点に大きな伸びしろがあると見られた
- リスナー投票は5月24日23時59分まで受け付けており、2人は傍観者ではなく当事者として参加してほしいと呼びかけた

