新卒なのに役員会議に呼ばれる男と、1日3食上司と食べる男の共通点
田中渓投資家、起業家。ゴールドマン・サックス出身の経歴を持ち、現在は多様な事業に携わる。さんとけんすう古川健介。アル株式会社代表。ハウツーサイト「nanapi」創業や「ロケットニュース24」立ち上げなど、ネット文化の第一人者。さんの二人が、常識外れのライフハックを語り合う「限界突破ライフハック」。
今回のテーマは「新しいコミュニティに馴染む方法」だ。新社会人や転職、引越しなど、新しい環境に飛び込む機会が増える時期に、どのように最速で自分の居場所を作るのか。そこには「便利くん」に徹する泥臭い戦略と、巧妙なキャラクター設計があった。その内容をまとめます。
認知をジャックする「ウイルス的」処世術
新しい組織に入った際、まず直面するのが「誰にも名前を覚えられていない」という壁だ。ここでけんすうさんがかつてリクルート「SUUMO」や「リクナビ」などを運営する大手企業。独特の社内文化や強い営業力で知られる。時代に仕掛けたのが、社内システムの裏をかく認知ハックだったという。
社内の電話帳システムに備考欄があって、文字数制限がないことに気づいたんですよ。そこに、あらゆる偉い人の名前を入れたんです。
ウイルスじゃないですか、それ(笑)。
誰を検索しても自分の名前がヒットするように仕込むという、半ば強引な手法だが、結果として「この古川って誰だ?」という強烈な認知を獲得した。一方、田中さんは同期全員の誕生日を収集し、毎月誕生会を企画。誰もがやりたがらない「幹事宴会やイベントの進行・管理を行う役割。情報のハブになりやすく、人間関係の構築に有利。」を自ら引き受けることで、同期コミュニティのハブ(中心点)に収まったのだという。
「炎上に詳しい新卒」という唯一無二のポジション
新人が実力で価値を出すのは難しい。そこでけんすうさんが提唱するのが「社内で誰もカバーしていない専門領域」を見つけることだ。当時、まだ言葉すら定着していなかった「炎上インターネット上で批判が殺到する現象。当時は対策ノウハウを持つ人が社内に皆無だった。」の専門家として振る舞った結果、新卒1年目にして役員会議に呼ばれるポジションを確立した。
一方で、田中さんは「でっち丁稚。職人のもとに住み込みで修行する少年。ここでは何でも引き受ける下働き精神を指す。」のように何でも引き受ける戦略を採った。象徴的なのが「1日3食のランチ」だ。自分で食べた後に上司に誘われれば「まだです」と即答し、イタリアンの後に中華へ行く。胃袋が限界を突破してでも、上司と1時間対話できるチャンスを優先したという。
5分で駆けつける「西麻布ダッシュ」と朝の設計
信頼とは「ちっちゃな加点」の積み重ねであると二人は語る。例えば、港区の西麻布東京の港区にある繁華街。六本木に近く、企業の役員やクリエイターが夜な夜な集まる場所。から呼び出しがあれば、タクシーの渋滞を読んで時には走り、必ず5分以内に到着する。この「即座に駆けつける」という行動が、やがて大きなチャンスを引き寄せる磁石になる。
→ 次回から声がかからなくなる
→ 信頼のストックが溜まり、情報のハブになる
また、田中さんは「朝早く行く」ことの効能を強調する。夜遅くまで残るよりも、上司がまだリラックスしている早朝のオフィスにいる方が、雑談から「ちょっと商談に付いてくるか?」といった予想外のチャンスに繋がりやすいのだという。
自己紹介は「人生最多のプレゼン」である
元Yahooの社長・小澤隆生シリアルアントレプレナー。楽天やヤフーの要職を歴任。現在はブーストキャピタル代表。氏が子供に教えているという「自己紹介」の重要性についても触れられた。自己紹介は人生で最も回数をこなすプレゼンであり、いかに相手に強烈なラベル(印象)を残すかが勝負だ。
小澤さんは韓国に行く際、当時流行っていたドラマの主人公と同じ髪型にして、『あのドラマが大好きです』と自己紹介したそうです。一発で好感度が爆上がりしますよね。
相手の関心に合わせて「出すラベルの濃度」を変えることも技術だ。田中さんの場合、投資家が集まる場所では「元ゴールドマンの人」、スポーツの場では「限界アスリート田中渓氏の別の顔。過酷な環境でスポーツに挑む活動を指す。」と、相手が食いつくポイントに最適化して自分を提示している。
「丁寧の暴力」を避け、短文でジャブを打つ
コミュニケーションの流儀として興味深いのが「長文は丁寧の暴力良かれと思って書いた長文が、相手に同じ熱量の返信を強要し、心理的な負担をかけてしまう現象。になりうる」という視点だ。特に上司や多忙な相手に対しては、相手の分量の7割程度で返すのがちょうどいいという。
- 短文のジャブ ── 重たいボールを投げず、クイックレスポンスで距離を詰める。
- 10対1の法則 ── 10回ギブして初めて1回お願いする。お願いは基本的にしない。
- 本の紹介ハック ── 勧められた本は即読み、SNSで紹介する。著者に直接届くこともある最強の技。
けんすうさんに至っては、知り合いの紹介で会ったこともない人に「選挙資金として150万円必要だ」と言われ、即座に貸したエピソードを披露。結果的にその話は立ち消え、金は戻ってきたが、「あの時貸してくれた人」という圧倒的なギブの実績だけが残った。これは極端な例だが、「面白いものが見たい」という好奇心をエンタメチケット見返りを求めず、その状況や推移を楽しむためにコストを払うという考え方。代として払う感覚が、結果的に強固な人脈を生むのかもしれない。
というわけで
新しい環境で馴染むための本質は、単なる社交性ではなく「相手にとっての便利さ」や「唯一無二のキャラ」をいかに早く、戦略的に提示できるかにある。泥臭いランチのハシゴも、姑息な社内システムの利用も、すべては「この人に声をかけたい」と思わせるための石積みだったのだ。
一見すると「そこまでやるか?」という限界突破なエピソードばかりだが、その根底にあるのは、徹底した相手への敬意と、自分を面白がってもらうための自己演出なのかもしれません。