採用側は「すごい才能」を探していない?
この回のテーマは採用です。玉置さんがXで「私は採用する時ここを見ています」という趣旨の投稿をしたところ、思いのほか反応が大きかったことがきっかけになっています。
玉置さんは、これは社員雇用に限った話ではないと言います。業務委託など、一緒に仕事をする人を選ぶ場面でも見る目線は同じだと話します。
まず、転職する側が抱きがちな勘違いから話は始まります。多くの人は「スキルや能力が高い人」「やる気がある人」「コミュ力が高い人」が採用されると考えがちだ、というのです。
企業ってどういう人を採用したいと思ってますかっていうと、大体こう、「いい人が採用したいと思ってます」っていう話になるじゃないですか。でもこの「いい人」の定義が結構違うんですよね。
玉置さんによれば、採用側が見ているのは、すごい才能をハンティングすることではありません。組織の中で、期待しているパフォーマンスを発揮できる人かどうかだと言います。
採用のゴールは「不確実性の最小化」
玉置さんが強調するのは、期待した役割を「どれだけ確実にやってくれるか」という視点です。この「確実に」がこの回の核心になります。
応募する側は、採用を「自分の可能性を最大化してくれるアクション」と捉えがちです。しかし玉置さんは、採用側のゴールはむしろ逆だと言います。
実は不確実なものを最小化することをゴールとしてるんですよね。
だからこそ、ポテンシャル採用という言葉があっても、ポテンシャルは不確実性がむちゃくちゃ高いことになります。経験や実績があると採用されやすいのは、確実性が上がるからだと説明されます。
この視点に立つと、スキル自慢や能力自慢が必ずしも確実性につながらない理由が見えてきます。玉置さんはここから、自身が見ている4つのポイントを順に語っていきます。
応募側の思い込み
スキルや実績が高ければ採用される
採用側の実際
期待する役割を確実に果たせるかを見ている
結論
採用のゴールは「不確実性の最小化」
1つ目「自己評価は正しいか」
1つ目のポイントは、期待値コントロールができている人かどうかです。面接では、綺麗にパッケージングされた自己アピールをしがちだと玉置さんは指摘します。
しかし、話を盛ることはプラスに働きません。見られているのは、自分をどれだけ客観的に見積もれているかだと言います。
私たちはパーフェクトヒューマンを採用したいわけではないので、存在するとも思っていません。自分が何ができて何ができていないかをちゃんとフラットに把握できている人を採用したいんですね。
問題になるのは、自己評価が高すぎる人です。採用側の評価と本人の自己評価の間にギャップが生まれると、「どうして会社は認めてくれないんだ」という不満につながっていきます。
上司や同僚が「できていない」と感じているのに、本人が「できている」と思い込んでいる状態が続くと、正しく評価されていないという不満が溜まっていく、と玉置さんは言います。
2つ目「その成功は再現できるか」
2つ目は再現性です。過去の実績を語るとき、成功談は必ず入ってきます。しかし玉置さんは、一回だけの成功では意味がないと言います。まぐれの可能性があるからです。
採用の現場には、その時々で旬のサービスを立ち上げたという人が数多く来るそうです。有名なサービスは一人では作れないため、「立ち上げました」という人はいくらでも現れます。
それを語るとすごく能力があると思われると勘違いされているんですけど、そういうのってあんまり実は評価してないんですね。
玉置さんが評価するのは、名前のない仕事でもいいから、成功に導いたやり方や考え方を別の場でも再現できるかどうかです。
そのため面接では、「一番成功した仕事は何ですか」という質問の後に、本命の質問を用意していると言います。それは「なぜそれを選びましたか」です。
何をもってうまくいったのかを理解している人なのか、たまたまうまくいった場にいただけの人なのかは、選定理由を聞けば見えてくると玉置さんは言います。
さらに、「同じ条件でもう一度やるならどこを変えますか」という質問もよく使うそうです。これに答えられる人は、成功を因数分解できている人だと考えられます。
3つ目「失敗から学べる人か」
3つ目は、学習する人かどうかです。ここでいう学習は、週末に勉強しているという意味ではありません。仕事の中で失敗から学び、次に活かせるかどうかを指します。
どんな仕事でも最初は失敗するものです。問題は、失敗から学べるかどうかです。学ばない人は同じ失敗を繰り返し、マネジメントする側が毎回指摘して修正させることになります。
学ばない人って何回も同じ失敗を繰り返して、マネジメントする側としては毎回その失敗を指摘して修正させなきゃいけないんですよ。これってすごいコストがかかりますよね。
玉置さんは、ライターに毎回「体言止めが多いので減らしてください」と言い続けなければならないなら、いっそ自分でやるとなってしまう、という例を挙げます。
さらに厄介なのは、指摘され続ける人が腐っていくことだと言います。最初は自分のミスだと思っていても、罪悪感が募ると人は自分を守るために相手を責め始めるというのです。
罪悪感が募ってくると相手を責め始めるんですよ。一生懸命毎回丁寧に修正していた上司を恨み始め、会社を恨み始めるんですよ。
だからこそ玉置さんは、失敗に関する質問を多くすると言います。特に第二新卒や未経験者など、伸びしろを見込む採用ほど、失敗の話を丁寧に聞くそうです。
このとき聞いているのは失敗の中身ではなく、失敗をどう捉えているかです。他責思考が強いか、責任感のちょうどよさはどうか、といった価値観が見えてくると言います。
そして「失敗の後に何を変えましたか」と尋ねます。精神論ではなく、具体的にどんな行動を取ったか、どんな仕組みを整えたかを聞くことで、修正できる人かどうかを見ています。
4つ目「マネジメントコストは低いか」
4つ目は、マネジメントコストがかかるかどうかです。チームで働く以上、その人が上司やチーム全体の生産性を下げないかが問われます。玉置さんは「上げるか以前に下げないか」だと言います。
上司や会社を恨み始めた人は、自分の正当性を確保しようと周りを引っ張り込むこともあると指摘します。「私は間違ってない、あの人がおかしい」と言い始める人は厄介だと言います。
もう一つ大きいのが、感情の手当てが必要かどうかです。感情を持つことは自由だけれど、それを仕事のパフォーマンスに反映させてしまう人は、チームの誰かがケアやカバーをする必要が出てきます。
感情を仕事に反映させちゃう人だと、誰かがそれをカバーしなきゃいけなくなったり、ケアしなきゃいけなくなったりするじゃないですか。そこもマネジメントのコストがかかってしまうんですよね。
ここで玉置さんが重視するのが、事実か解釈かを仕分けできるかどうかです。事実は共通言語になりますが、解釈は属人的で、他人と共有して是正するのが難しいと言います。
だからこそ、経験値が非常に高くても感情の手当てが多く必要な人と、まったく未経験でもマネジメントコストが低そうな人がいたら、玉置さんは後者を採用すると言います。
一人の天才がチームのパフォーマンスをマイナスにすることもあると玉置さんは言います。ただ、そうした人はたいてい自称の天才で、そもそも天才としての結果を出せていないとも指摘します。
どんな天才でも一人で結果出せないんですよ。天才を自認していてチームをワークさせられない人っていうのは、天才としての結果を出せていないので、避けますね。
面接で取り繕っても「つるん」と見抜かれる
玉置さんは、ここまでの話は「面接でそう答えなさい」という意味ではないと念を押します。取り繕って話しても、まあまあ透けて見えるからです。
角度を変えて同じ話題を質問すると、答えが立体的になってくるかどうかがわかると岡島さんは言います。わかっていない人は、その凸凹が出てこないのだそうです。
面接用に取り繕った話ってつるんとしていて、人間ってそんなにつるんとしてないよね、もっと凸凹だよねっていうところが欠けてるんですよ。だからすべての話にリアリティがなくなっちゃう。
玉置さんはこれを「AIが考えた答えかな」と感じるほど加工された印象だと表現します。人となりがまったく見えてこなくなる、というわけです。
岡島さんは、自身が漫画好きで大手出版社だけ受けたり、前職も知人にSNSで連絡して入社したりと、まともに面接を受けた経験が少ないと明かしつつ、その感覚には共感できると話します。
採用は面接テクニックではなく日々の仕事の仕方
玉置さんは、就職はゴールではなくスタートラインだと言います。取り繕って入社しても、会社側に正しい期待値を持たせられなければ、あとでがっかりされるだけで損だと指摘します。
だからこの話は、面接を頑張るための話ではなく、いつか転職や就職をするときのために、普段からどう仕事をするかという話だと玉置さんはまとめます。
普段からそういう仕事をしておけば、大して取り繕わなくても採用したい人になるというのが玉置さんの結論です。すると、採用したいかどうかの土俵に乗れると言います。
- 今できること・できないことを常に自分で把握する
- うまくいった仕事は理由を考え、再現方法を用意する
- 失敗は原因を考え、繰り返さない仕組みを作る
- 感情と仕事のパフォーマンスを切り離す
- 事実と解釈を分けて考える
未経験の業種や職種に挑戦したい人には、不確実性が上がって不利になりがちです。そこで玉置さんが勧めるのが、日々の判断のログを取ることです。
なぜその行動を取ったのか、なぜその基準で判断したのかを言語化しておけば、その判断力は職種や業種が違っても評価できると言います。
玉置さんは、店舗スタッフの経験しかなかった人を、マーケティング企画職として採用した実例を挙げます。
取り置きできますかと言われた商品がどれだけ売れていて、この先どれぐらい売れるのかをちゃんと考えて、商品によっては取り置きできます、商品によってはできませんっていう対応をしていましたと。
この判断の仕方が、未経験の業務でも即戦力として生かせると判断できたと言います。その人はその後さらにステップアップし、誰もが名前を知る企業で働いているそうです。
まとめ
採用側が本当に見ているのは、スキルや実績そのものではなく、期待した役割を「どれだけ確実に果たしてくれるか」という不確実性の低さです。自己評価の正確さ、再現性、学習力、マネジメントコストの4つを普段の仕事で磨くことが、結果的に採用したい人につながる、という回でした。
- 採用のゴールは可能性の最大化ではなく、不確実性の最小化にある
- 見られているのは、自己評価の正確さ・成功の再現性・失敗からの学習・マネジメントコストの低さの4つ
- 面接では成功や失敗の「中身」より「なぜそれを選んだか」が本命の質問になる
- 感情と仕事を切り離し、事実と解釈を仕分けできる人はマネジメントコストが低い
- 未経験でも、判断のログを言語化しておけば職種を越えて評価される





