なぜ「ダメな人」ほど習慣化がうまいのか
この回のテーマは習慣化です。きっかけは、岡島さんが玉置さんに伝えた種明かしでした。ポッドキャストで話して喜ばれる内容は、Amazonのビジネス書ランキング上位に出ているテーマだ、という話です。
玉置さんが実際にランキングを見てみると、一番上に習慣化の本がありました。真面目に購入して読んでみたところ、思わぬ感想を抱いたそうです。
見てみると「あ、これ私ほとんどやってる」みたいな内容だったので、話せるかなと思ったんですよね。
ただし玉置さんは、自分の習慣化は『7つの習慣』のような立派なものではないと言います。むしろ出発点は、自分自身への低い評価でした。
そもそもで言うと、私がすごくダメな人間なんですよ。習慣化をしないと、とことん何もできないんですね。
玉置さんによれば、イレギュラーにとても弱く、この歳で水道が止まるタイプだと言います。引っ越しで水道代の支払いがイレギュラーになると一発でつまずき、そのまま立て直せなくなるのだそうです。
だからこそ、子供の頃から当たり前にできることをこなすために、なんとかするしかなかったと振り返ります。岡島さんも「意識低い人の方がむしろ得意な印象がある」と応じ、2人は同じ側に立っていることを確認します。
行動の40%は習慣。意志の力に頼らない理由
玉置さんの習慣化の根本には、一貫した信念があります。それは、自分を信じないという考え方です。
意志の力は弱く、誘惑にも弱い。では意志の力はどれくらい頼れるのか。玉置さんが調べたところ、人間の行動の40%は習慣によるものだというデータがあったそうです。
つまり意志の力がほとんどなくても、40%はやっていけるという発想です。玉置さんは、コンディションが悪いと意志はすぐくじけると指摘します。
睡眠不足だったり、お腹が減ってたり、ストレスが溜まってると、もうなんかすぐ意志ってくじけちゃいません?
岡島さんもこの点に強く共感します。自身も習慣化によって改善した結果、周りから「ちゃんとしている人」だと思われるようになったと話します。
「ちゃんとしてるよね」って言われた時の、自分の認識とのギャップがすごいみたいなのがありますね。
玉置さんも同じで、「玉置さんはできるかもしれないですが」と言われるたびに、私の元々の姿知らないでしょと思うと語ります。意志の力を使わずにどう生きるか、そのサバイバル術 ── 意志の力に頼らず、無意識の行動である習慣に頼って生活を回していく発想。玉置さんはこれを生きるための術と位置づけているが習慣だという結論です。
習慣は本当に3週間で変わるのか
習慣化と聞くと、「既にある習慣があるから変えられない」と言う人も多いと玉置さんは言います。しかし実際はそうでもないそうです。
巷では「21日、3週間続ければ習慣化する」という説がよく知られています。ただし玉置さんが実際の文献を読むと、数字にはかなり幅がありました。
やり方やコンディションによっては、本当に3週間ほどで習慣が変わることもあり得るということです。玉置さんの実感でも、早ければ2週間ほどで習慣が変わることがあるといいます。
玉置さんは3ヶ月に1回ほど、自分の行動ログを取って見直し、習慣を組み替えているそうです。その積み重ねの中で、1、2週間で習慣は変えられるものだと感じています。
最強の技は「習慣スタッキング」
岡島さんが「慣れれば1、2週間でできるのか」と尋ねると、玉置さんの答えは意外なものでした。
いや、仕組みですね。
玉置さんが一番強力だと考えるのが、習慣スタッキングです。既に定着している習慣に、新しく身につけたい習慣をくっつけるやり方です。
玉置さんの実例はわかりやすいものです。朝水を飲む習慣があるので、ウォーターサーバーの近くに朝飲むサプリを置いておく。歯磨きをする場所にステッパーを置いておけば、歯磨きしながら自然に乗れます。
必ずやることにもくっつけていくと一番早いっていうか、もうその場面に用意されていて、努力をする必要がない。
岡島さんは、目に入ったらやるというフローを仕組みとして組んでいるのだと理解します。生活動線やタイムスケジュールの中に自然に組み込み、苦労せず目に入って忘れない状態にすることがポイントです。
部屋そのものをベルトコンベアにする
玉置さんの部屋は、こうした設計で整えられています。ベッドの横にはストレッチポールやウェイトが置いてあり、転がり落ちてもとりあえずストレッチをする状態になっているそうです。
何をどこでどの順番で使うかを考え、置き場所も目に入る場所もすべて組んでしまう。すると、意志の力を一切使わずに物事が進んでいくといいます。
ベッドから起きてリビングに行くまでの間に、健康的な生活が自動的に完成している。そんな状態を、環境の設計によって作り出すという考え方です。
この日、玉置さんは早速ひとつ改善をしていました。目の前にタイマーを置いたのです。これまでは喋っていて何分経ったかわからず、収録後に尺を気にすることが続いていました。
いつもこう、「あれ、もっと喋んなきゃ。あれもっと喋った方がいいのかな」みたいな感じになってたじゃないですか。
必要性には気づいていたものの、タイマーを置くのはこの日で5、6回目の収録。玉置さんは「やらなきゃと思っても5回できない人間」だと笑いながら、ようやく実行できたと話します。
覚えていられると思わない。持ち物に住所を決める
環境設計の前提にあるのは、やはり自分を信じないという姿勢です。
覚えているとかできるとか絶対思っちゃダメだと思ってるんですよね。
だからこそ、できない自分を責めたり、意志の力だけで全部をやりきろうとしない方がいい、と玉置さんは言います。岡島さんもこの考えに深く共感します。
岡島さんの実例は、玄関の扉にフックをつけて鍵をかけておくことです。定位置を決めておけば、出かける時に「鍵がない」と探して戻る一連の動作がなくなります。
持ち物の住所を決めるって、私みたいなADHD傾向のある人間には必須なので。
岡島さんも、出かける時の財布、スマホ、AirPodsの位置を全部決めているそうです。玉置さんも同じで、引っ越し直後は部屋の中でスマホをなくし、一日中探していると打ち明けます。
玉置さんが強調するのは、一気に完璧を目指さない姿勢です。6回目の収録でようやくタイマーを置くくらいでいい。できない自分を絶対に責めず、1つずつやったら自分を褒める。そうやってコツコツ習慣をデザインしていくのがいいと語ります。
1しか減らないものに鈍感になるな
小さな工夫は、積み重ねると大きな効果を生みます。岡島さんは、ちりも積もればHPやMPを節約でき、ミスも減ると表現します。
私たちってHPとかMPが1しか減らないものに対して鈍感なんですよね。
玉置さんの感覚では、1を何かにしていると、気づけばその20倍ほどになっているといいます。千円くらいならいいと使っていると、2、3万円はすぐなくなるのと同じ感覚です。
もっとも、1をセーブするのに大きなカロリーを使ってしまうと本末転倒です。自動プログラムにすることでセーブできるなら、意志の力や決定する力、考える力を温存できるという発想です。
玉置さんは、意志の力でやっていると緊急なことしかやらなくなりがちだとも指摘します。締め切りや怒られることばかりに目がいってしまうからです。
その重要なことを習慣に組み込んでおくと、黙って推進されていくというか、薄く実行されていくので、すごくいいと思うんですよね。
ジムが続かない人へ。曜日と時間を決める理由
緊急度は低いが重要度は高いことの例として、岡島さんはジムをサボっている現状を挙げます。以前は家から徒歩3分のジムを契約し、消費される労力が少ないことでうまく通えていました。
ところが引っ越して徒歩6、7分になり、仕事も忙しくなったことで途切れてしまった。一度途切れると再開が大変だと言います。
岡島さんは、曜日と時間を決めると飲み会などで崩れてしまうから決められない、と話します。しかし玉置さんの助言は逆でした。
決めた方が、一回ミスった後にリカバリーしやすいんですよ。
一度飛んでも、次の曜日が来ればまた戻れる。一回飛んだ後のリカバリーが一番難しいからこそ、曜日と時間を決めておく意味があるという指摘です。岡島さんも決めようという気持ちになっていきます。
玉置さんはさらに、行かない自分を責めないことを強調します。「生きてるだけで百点満点」であり、少しでもプラスができれば加点だという考え方です。岡島さんも、できないと自分を責めて自信を失う悪循環を防ぎたいと応じます。
玉置さんは時間を短くすることも勧めます。1、2時間と思うと大変でも、30分だけと決めれば気が楽になる。さらに、ランニングマシンで好きなドラマを見るというご褒美を設定し、モチベーションにしているそうです。
悪い習慣は「見るのを大変にする」
習慣化は、良い行動を促すだけでなく、悪い行動をしないための環境づくりでもあります。手の届くところに、悪いことをしそうなものを置かないという工夫です。
岡島さんの実例はショート動画です。あまり見ないのが密かな自慢だったのに、疲れきってベッドでYouTubeを開いたら飲み込まれてしまったと言います。
ショート動画あんま見ないですっていうのが僕なんかドヤ要素の一個だったんですけど、3時間流されちゃって。「終わったわ」みたいな。
認知力が弱っている時にハマってしまう。だから岡島さんは、そもそも見る量が少なかったこともあり、YouTubeのアプリを消したそうです。玉置さんも、深い階層のフォルダに入れて簡単には見られないようにしていると明かします。
つまり、良い習慣は始めやすくし、悪い習慣は始めにくくする。玉置さんは、お酒やタバコをやめたいなら鍵付きの箱に入れると億劫になると言います。やめられない人はめんどくさがりが多いからこそ効果的だという発想です。
岡島さんは、悪い方に流れやすい人でも、良い方に流れるベルトコンベアに乗せればそちらに流れると気づきます。玉置さんも「割と素直に乗りますよ」と応じます。
AIに自分のログを読ませて習慣を組み替える
玉置さんは習慣を作るだけでなく、定期的に見直しています。習慣は崩れていくし、本末転倒になることもあるからです。
見直しには、今はAIを使っているといいます。自分の行動ログを読ませ、質問して整理してもらう方法です。
具体的には、3ヶ月に1回ほど、1週間だけ頑張って行動を記録します。何時から何を何をして、その時どう思ったかを、音声録音で入れていくそうです。
何時何分、今何をします。ちょっとだるいですみたいな感じで入れていって、それを読んでもらって、今のスケジュール表と合わせて見てもらってますね。
そのログを、健康でいたい、仕事の効率を上げたい、家族との時間を増やしたいといったテーマで組み替え、新しい習慣にしていきます。玉置さんは、これによって自分を客観的に見られると言います。
岡島さんはこれをRPGのようだと表現します。玉置さんも「この時間MP減りがちだな、回復しとこうかみたいな感じ」だと応じ、自分を1人のキャラクターとして俯瞰する感覚を共有します。
ちゃんとして見られる人ほど、実は必死
岡島さんは、最初の話に立ち返ります。自己認知としては「ダメすぎる過去」を抱えているのに、良い方に流せているから、変にちゃんとして見られるのかもしれない、と気づきます。
玉置さんによれば、この感覚はきっちりできる人より、だらしない人の方が身につけやすいのかもしれないと言います。なまじちゃんとできる人ほど、かえって難しい面があるのです。
岡島さんは、自分を信用していないからこそ財布をなくしたことがないと話します。普段ちゃんとしている人の方が、油断して財布をなくすのではないかという感覚です。
こっちは必死ですからね。
自分を信じないからこそ必死になり、案外なんとかできる。そんな逆説で、2人の習慣化談義は締めくくられます。玉置さんはこの回、導入したタイマーで時間を意識しながら、無事に着地を迎えられたと笑いました。
まとめ
この回は、意志の力を信じない2人が、環境設計によって生活を回すための具体的な工夫を語り合いました。習慣化は立派な自己管理術ではなく、ダメな自分でも生きていくためのサバイバル術として位置づけられています。
- 人間の行動の40%は習慣によるもので、意志の力が弱くてもやっていける
- 既に定着した習慣に新しい習慣をくっつける習慣スタッキングが最も強力
- 置き場所や動線を設計し、努力せず目に入る「ベルトコンベア」状態を作る
- 良い習慣は始めやすく、悪い習慣は箱に入れるなどして始めにくくする
- できない自分を責めず、1つできたら褒める。加点方式で積み重ねる




