習慣化の「次の壁」は、無思考に続けてしまうこと
冒頭は、岡島さんが食事管理とジム通いを2週間ほど続けられている、という近況から始まります。
「行かないと気持ち悪いぐらいになってきた」と話す岡島さんに、玉置さんは「そうなると勝ちですね」と応じます。
なんか行かないと気持ち悪いぐらいになってきますね、こうなってくると。
ただ玉置さんは、習慣化の先にはさらに難しい壁があると指摘します。それは、自動運転のように無思考で続けてしまうことです。
今度の壁は、(習慣を)無思考に続けちゃってるので、自分とか環境とか状況が変わっても続けちゃうことなんですよね。
習慣を見直すアンラーニングのほうがずっと難しい、と玉置さんは考えています。
だからこそ、「この習慣は続けるべきだっけ?」と時折自分に問い直すとよい、と勧めます。これは過去の回で扱った「振り返り」とセットになる考え方だと2人は確認します。
アドラーの「人は目的に向かって動く」とは
ここから本題のアドラー心理学へ。玉置さんは自身をプロではないと前置きしつつ、過去に大きなパラダイムシフトを起こした考え方の一つだと話します。
人は何か原因があって動くのではなくって、目的に向かって動いている、っていう考え方なんですよ。
普段、私たちは何かが起きたとき「なぜそうなったのか」と原因や過去から考えがちです。しかしアドラーは、視点をまるごと逆にします。
たとえば目の前の人が怒っているとき、普通は「どうして彼を怒らせたんだろう」と考えます。
それを「彼は何を得ようとして怒っているんだろう」って見るのがアドラーなんですよ。
ここで言う「目的」は、本人が自覚した前向きで立派なものとは限りません。無自覚な場合もあり、合理的でない場合もあります。
人はその目的に対してすごく純粋にエネルギーを使って進んでいる、っていう捉え方をするんですよ。
疲れている・忙しい・やる気が出ないから勉強しない、と過去や状態から説明する
勉強しないという行動で何を達成しているのか、と本人が向かう先から捉える
英語を「やらない」ことで守っているもの
玉置さんは、身近な例として「英語を勉強したいのに、だるくてやりたくない」場面を挙げます。
疲れている、忙しい、やる気が出ない、というのは全部「原因」です。では目的で考えるとどうなるか。岡島さんは「楽をすること」と答えますが、玉置さんはもう一歩踏み込みます。
やらなかったら、できない自分を証明せずに済むんですよね。
勉強しなければ、自分が期待値以下だと知らずに済み、失敗して傷つくリスクも避けられます。さらに「勉強してないからね」という言い訳も確保できます。
一見、目的には見えません。しかし自尊心を守るという目的をしっかり持っている、と玉置さんは指摘します。
やる気やだるさという「原因」で考えていたときには見えなかったものが、目的で考えると見えてくる、というわけです。
遅刻する部下は「何を得ている」のか
次に玉置さんは、職場の例に話を広げます。何度言っても遅刻する部下や、報告をしない部下です。
こうした相手には、能力や性格、経験不足といった本人に起因する「原因」を探しがちです。しかし目的で見ると、遅れることで何を得ているのかを問うことになります。
岡島さんは、ネガティブな報告で怒られ自尊心が傷つくことから逃げているのでは、と推測します。玉置さんもうなずきつつ、AIとの対話で出てきた別の見方を紹介します。
遅れることで、主導権を自分に持った状態にできるっていう考え方なんですよね。
つまり「自分は自分の行動を決める決定権を持っている、会社に奪われていない」という感覚を、遅刻という形で確保しているという解釈です。
最終的には報告するのだからバレる、という意味では、この行動はまったく合理的ではありません。それでも強い推進力を持つ、と玉置さんは言います。
おかしなところで、損しかしないっていう主張になってますね。
ルールを破る行動が目立つ人は、仕事全般で主導権を持てている感覚が得られず、別の場所でそれを発揮しているのかもしれない、という見立てです。
無自覚に立ち上がる「7つの目的」
玉置さんは、こうした無自覚な目的にどんな種類があるのかをAIに尋ね、7つのパターンに整理したと話します。いずれも本人が意識しにくいものです。
1つ目は、主導権やコントロールを持っていたいという目的です。人は自分をコントロールできる状態が最も快適で、動かないことで実質的に支配権を握ろうとします。
2つ目は、「本気を出せばできる人」でいたいというポジションを守ること。頑張って結果が出てしまうと評価が確定するため、未来への希望を残しておきたい心理です。
ダイエット本気でやったら痩せるって思っといた方が、自分は幸せなんですよね。
3つ目は、被害者ポジションでいたいという目的です。プレイヤーとして土俵に上がってしまうと文句が言えなくなるため、環境や他人のせいにできる立場に留まろうとします。
口では本当に何とかしたいとか変わってほしいって言ってるんですよね。
4つ目は、自己像やアイデンティティを変えたくないという動機。急に意識高いキャラになりたくない、という抵抗が働くことがあります。
5つ目は、一度やると「やり続ける人」にならねばならないプレッシャーの回避です。始めたら一生続けなければ、という重さから、いっそサボることを選んでしまいます。
6つ目は、人間関係の距離感や付き合い方を変えたくないという欲求。自分が動くと周りとの距離や圧が変わることを、無自覚に避けようとします。
7つ目は、短期的な快・不快による即時最適化です。面倒だから先送りする、考える負荷を下げる、といった目先の楽が強い目的になってしまうケースです。
玉置さんは、これらはあくまで無自覚な傾向であり、思い当たるときも当たらないときもある、と補足します。
早起きも快・不快の話?布団を「不快」にする作戦
7つ目の快・不快に関連して、話題は岡島さんの「冬に起きられない」という悩みへ移ります。
岡島さんは、けんすうさんと田中圭さんが始めたポッドキャストで聞いた話を紹介します。早起きは仕組みで解決しづらい、なぜなら起きた瞬間、暖かい布団に包まれているから、という内容です。
これに対し玉置さんは、逆に布団を「不快」にすればいいと提案します。
起きる時間にすごい高温で(暖房を)かけちゃうんですよ。そうすると熱ってなってきて、布団の中にいることが不快になってくるんですよ。
岡島さんはさらに、田中圭さんや勝間和代さんが勧めていたというスマートウォッチの振動で起きる方法も紹介し、実際に購入したと話します。快に留まる「目的」を、環境の工夫で崩そうとする具体例です。
目的が強いなら、その力を別の方向へ使う
ここで玉置さんは「良いお知らせ」を切り出します。動かない目的を達成しているということは、人は目的意識がとても強い、という証明でもある、というのです。
だって達成してるんですもの、その目的をいつも。
だとすれば、意志の力や気合でモチベーションを上げるのではなく、引っ張っている「反対側の目的」をどうにかしてあげるほうが有効になります。
玉置さんはこれを綱引きにたとえます。「英語ができるようになりたい」という欲求が、そうではない欲求群との綱引きに負けている状態だ、というわけです。
具体的な工夫として、まず「失敗が定義上発生しない設計」にすることを挙げます。合格や点数などの結果ではなく、スモールステップにするのです。
英語のアプリを立ち上げたらOK、ってすると、なかなか失敗しづらいんですよね。
さらに、継続をゴールにせず「やった回数」を成功と定義することを勧めます。回数は増えていくしかないため、失敗する自分を守る必要がなくなります。
「遊びでやってみた」の軽さで自尊心を守らせない
玉置さんは、成果物が最初は目に見えないほうがよい、とも言います。絵を描けるようになりたいなら、まずは描き方のYouTubeを見るだけでいい、という具合です。
もう一つの鍵は、取り組み方の軽さです。多くの人は真面目すぎる、と玉置さんは指摘します。
ダンサーになるんじゃなくて、踊ってみた動画をTikTok用に撮りました、ぐらいの感覚でやるんですよ。
「遊びで」「試しに」という枕詞を自分につけると、守らなければならない自尊心が減り、うまくいったらラッキー、という状態になります。守らなきゃいけないものが減ると、強固な目的群が立ち上がりづらくなる、というのが玉置さんの考えです。
世間でよく言われる方法とは逆になる部分もあります。玉置さんは「人に宣言したほうが続く」という定説には否定的です。
あれ絶対やめた方がいいと思ってます。誰にも言わない方がいい。
宣言すると「できないと格好悪い」という自尊心を守る目的が立ち上がり、変にこじれてしまうからです。全員に言っている、と焦る岡島さんに、玉置さんは体力が充実しているときは強い手段も取れるので問題ない、とフォローします。
「なぜ」より「何を得ているか」で世界を見る
話は締めくくりへ向かいます。玉置さんは、視点の切り替え方をあらためて示します。
玉置さんがアドラーをきちんと学んだのは、実は子育ての時だったと明かします。子供が原因ではなく目的があってぐずっていると考えることが役立った、という経験です。
それを周囲の人や出来事にも当てはめていくと、確かに皆が目的を持って行動していると見えてきた、と話します。目的を理解できれば、良い関係で交渉したり協力したりしやすくなる、というのです。
岡島さんは、布団を出られないときも7つもの目的を達成しているのかもしれない、としみじみ受け止めます。
人は内発的なその目的を持つと、すごく達成しようために一生懸命動くんだな、っていうことを知ったことですね。
原因を探して落ち込むのではなく、行動の裏にある目的を見つけ、その強い力を別の方向へ活かす。それがこの回を貫くメッセージです。
まとめ
この回は、アドラー心理学の「人は原因ではなく目的に向かって動く」という視点から、続かない習慣や非合理な行動の正体を解きほぐす内容でした。動かない目的を持てるほど人の目的意識は強く、その力を別の方向へ向け直すことが鍵だと語られています。
- 「なぜできないか」ではなく「これで何を得ているか」で行動を見ると、隠れた目的が見えてくる
- 動かないことで、自尊心・主導権・被害者ポジションなど無自覚な目的を守っている場合がある
- 目的を達成する力は強いので、意志や気合ではなく「反対側の目的」を崩す工夫が有効
- 失敗が起きない設計、やった回数の加算、スモールステップで自尊心を守る必要をなくす
- 「遊びで試しにやってみた」の軽さで取り組み、あえて人に宣言しないほうが続きやすい場合がある


