インプットが「時間泥棒」になってしまう理由
この回は、ポッドキャストや本、SNSで学ぼうとしている人ほど、インプットに多くの時間を取られてしまうという問題意識から始まります。
玉置さんは、成長したい人ほどインプットを頑張るものの、忙しくてできなくなると焦りや「ダメだ」という気持ちにつながりやすいと指摘します。
でもインプットってすごい時間を食っちゃいますよね。
そこでこのシリーズが目指すのは、同じ時間でより質の高いインプットができるように、効率を上げることです。
そして玉置さんは、そのために大事なのがインプットの前の段階の準備だと言います。ただ、この準備をしている人はとても少ないと話します。
なぜ「アウトプット前提」だけでは続かないのか
岡島さんが実践していることとして挙げたのは、アウトプットを意識することでした。やってみないと頭に入らない、という感覚です。
ただ玉置さんは、アウトプットの機会がそもそも多くない人も少なくないと補足します。
SNS発信を決めてインプットする方法もありますが、勉強のために後付けでセットした行動は続けるのがしんどいと言います。
アウトプットするためのアウトプットって、結構難しいところありますよね。
玉置さんは、日常や仕事の営みにフックがないと、人はどうしても面倒になってやめてしまうと話します。だからこそ、無理な仕組みではない前提づくりが必要になります。
なお玉置さんは、この話をAIと一緒に整理した原稿を持参しており、話した時間は10分にも満たないと明かしています。話が長くなるため、シリーズとして何回かに分けて扱うことになりました。
脳は「使う予定のない情報」を覚えない
玉置さんはまず、インプットの成果が乏しくなる仕組みを説明します。10を吸収して10活用できる人はごく稀で、ほとんどは忘れてしまうのが普通だと言います。
その状態を、玉置さんは穴が開いたバケツに水を入れている状態にたとえます。まずはこの穴をなるべく埋める準備をしましょう、というのがこの回の主題です。
その前提として玉置さんが挙げるのが、脳は使う予定のない情報を長期記憶しない、という仕組みです。
玉置さんによれば、これは認知心理学の研究ではっきりしていることで、脳は生存に最適化しているため、いつか使えるかもしれない情報を効率悪く保存することはしないそうです。
いつか使えるかもしれないものを長期記憶に保存するっていう、効率の悪いことって人間しないんですよね。
岡島さんは、脳にも限界があり、この年になって記憶が消えていて怖いと感じる、と反応します。玉置さんは、狭い家にいつか使うかもしれない物を貯め込まないのと同じだと重ねます。
「ゴールに関係ある」と脳に伝えるということ
脳は価値が高いと思った情報だけを選んで記憶していきます。さらに最近の研究では、自分のゴールややりたいことに関係のある情報だけを深く処理することもわかっているといいます。
逆に言えば、自分のゴールと関係がなく価値の見えない情報は捨てられてしまいます。だからこそ、脳に「これは使う予定がある」「自分のゴールに関係がある」と認識させる必要があると玉置さんは言います。
その認識があれば、脳は自動的に長期記憶してくれます。それがないと、時間をかけたインプットも全部が忘れ去られてしまいます。
なんか「いい話だったな」っていう印象だけ残ってる。
その時はね、ちょっといい気分になるんですよね。勉強した感するじゃないですか。でも全然使えないんで。
だからまず、自分にとって価値のある情報とは何かを言語化し、自分の脳にインプットすること。何のためにインプットするのかをクリアにすることが出発点になります。
なぜ「ふわっとしたゴール」では情報を拾えないのか
玉置さんは、脳がゴールに役立つかどうかを瞬時に判断していると説明します。じっくり考えるのではなく、一瞬で振り分けるからこそ、判断できるくらいわかりやすいゴールでなければいけないと言います。
わかりにくいのは、ゴールが漠然としていたり範囲が広すぎたりする場合です。たとえば「いろんな引き出しのある人になりたい」というゴールでは、目にした情報が役立つかどうかを脳が判断できません。
素通り。パッとわかんないですよね、引き出しになるかどうか。
「ビジネスインフルエンサーのようになりたい」といった願望も同じで、何を拾えばいいのか脳にはわからないと玉置さんは言います。ぼんやりでも道筋が見えていないと、インプットすべき情報が定まらないからです。
経済ニュースにコメントできる人になりたい、を例に
玉置さんは、より具体的な例として「経済ニュースに対して自分なりの見解を出せる人になりたい」というゴールを挙げます。
ただし、経済のことはふんわりとしかわからない、という現状の人が最初にすべきことは、最新ニュースを読むことではないと言います。土台がないままでは、そもそもニュースの意味がつかめないからです。
玉置さんは例として、日銀総裁の「賃金上昇を伴いつつ、物価の安定目標である2%に向けて緩やかに上昇しています」という談話を挙げ、これに即座にコメントできるかと問いかけます。
なんか「それっぽいコメント」できなさそうですよね。
玉置さんは、この段階で最新ニュースをキャッチアップしても、そのまま繰り返すオウムのようになるだけで意味がないと言います。
同じように、鋭いコメントをする人をフォローしても、そのコメントを読むだけでは自分がコメントできる人になるわけではありません。
玉置さんはこの状態を、家を建てる前にインテリアを選んでいるようなものだとたとえます。壁紙や家具の情報は集まっても、土台や骨組みがなければ家は建たない、というわけです。
情報の収納先「引き出し」をつくる
次のステップは、自分の課題と現在地が明確になったうえで、何を吸収すべきかを考えることです。玉置さんはこれを、頭の中に空の引き出しを作るプロセスだと表現します。
その根拠として玉置さんが挙げるのが、認知心理学でいう「スキーマ」です。情報は、頭の中に収納先があってはじめて収納されるといいます。
収納する引き出しがないと情報の入れ場所がなく、「後でなんとかする」という無限地獄に入り、結局は使えない情報になってしまいます。
逆に枠組みがあれば、そこに元からある自分の経験値と新しい情報が紐づき、使える情報になっていくと玉置さんは言います。
AIを「詳しくなりたい」から「仕事でどう使うか」へ
岡島さんは、この引き出しの話を自身のAI活用の経験と重ねます。会社を始める前は「詳しくならないと」と漠然と思うだけで、ほとんど使えていなかったといいます。
ところが会社を立ててからは、ここをAIで効率化できれば時間ができる、という必要に駆られ、情報の入ってき方や集め方が大きく変わったと振り返ります。
まさにそれですね。課題意識持った瞬間に、引き出しができたんですよ、そこに。
玉置さんは、「AIの最新をキャッチアップしたい」というふわっとした状態と、「自分の仕事でAIを使うと何ができるか知りたい」という状態では、集められる情報がまったく違ってくると整理します。
経済がわかる「5つの引き出し」を用意する
経済ニュースにコメントできるようになりたい場合の屋台骨として、玉置さんは自分も得意ではないと前置きしつつ、浅くてもよいので押さえるべき5つのポイントを挙げます。
玉置さんによれば、この5つを浅くでも勉強すると頭の中にフレームができ、今が何の話なのかがわかるようになるといいます。
たとえばインフレと物価、賃金がどうつながっているかがわかると、ニュースというインプットを自分の棚に整理して入れられるようになります。
すると、自分の解釈と入ってきた情報の違いや、別の見方があることにも気づけるようになります。冒頭の2%の談話に対しても、「円安の長期化を助長してインフレが加速するのでは」といったコメントが自分でできるようになる、というわけです。
引き出しを持つっていうのはそういうことです。何を言ってるのかがわかるようになって、その情報の価値とか重さとかがわかるようになってくるってことなんですよね。
同じタイムラインでも「拾える情報」が変わる
AIの例でも同じで、「仕事でどう使えばいいか」という課題を持つ人と、バイブコーディングでプロトタイプがうまくいかない課題を持つ人では、拾うべき情報がまったく違うと玉置さんは言います。
課題がはっきりしていれば、同じタイムラインを眺めていても、これは必要、これはいらない、と情報を選べるようになります。さらに、興味を持って見た情報は好みとして学習されるため、必要な情報が集まるタイムラインへと整えていけると言います。
これは本選びでも同じです。課題感を持って読めば、必要な情報が引き上げられ、1冊のすべては使えなくても、自分のゴールに直結する部分は知識として身についていきます。
右から左に流れていくのと、引き出しがある状態で見るのとで、1万倍ぐらい差ができそうですね。
ニュースは「調理された素材」で仕入れる
岡島さんは、経済学部だったのに今は何もわからないと打ち明けます。玉置さんも自分が得意なわけではないとしつつ、5つのポイントについてAIに教えてもらった情報だけでもニュースがわかるようになると言います。
玉置さんは、過去の回で触れたように、ニュースも主語と述語だけ拾えば意味がつかめると補足します。岡島さんは、5W1Hがタイトルに入っている回を挙げ、あわせて聴いてほしいと案内します。
玉置さんは、構造的に理解できるかどうかの差を、生の素材を仕入れるのか、料理された素材を仕入れるのかという違いにたとえます。栄養の吸収率がまるで違う、というわけです。
そもそも、そのインプットは本当に必要か
岡島さんはこの回を、目的のない情報は脳に保存されないので、ちゃんと使う予定を作ろう、という一言でまとめます。玉置さんはさらに踏み込み、課題感がないならインプットはいらないと言い切ります。
極論言っちゃうと、課題感がないんだったら、インプットいらないですからね。
玉置さんは、私たちが人類史上経験のないほど大量の情報にさらされ、それに順応しないまま焦りだけを抱えていると指摘します。
その状態を、玉置さんはお腹が減っていないのに食べ放題に行き、食べないと損だと感じているようなものだとたとえます。この十数年、数十年で生まれた謎の強迫観念だと言います。
岡島さんは、何のために情報を取り入れるのかを定義したうえで得る情報を絞る、という方針に同意します。玉置さんは、それによって幸福指数が上がるとまとめます。
次回は、自分の課題に対してどういう本を選べばいいのか、情報をどこから取るのか、というテーマから続けていく予定です。
まとめ
この回は、インプットが身につかない理由を脳の仕組みからとらえ直し、情報を集める前に「使う予定」と「収納先」を用意することの大切さを整理した内容でした。
- 脳は使う予定のない情報を長期記憶せず、ゴールに関係する情報だけを深く処理する
- ふわっとしたゴールでは、脳が情報を拾えず、いい話だったという印象だけが残る
- 課題を明確にして頭の中に空の引き出しを作ると、情報が経験と紐づいて定着する
- 経済のように苦手な分野でも、基礎の5つの枠組みを浅く押さえるだけでニュースが読めるようになる
- そもそも課題感がなければインプットは不要で、問い直すことで時間と幸福度に余裕が生まれる





