AIの「いい言いなり」と「怪しい言いなり」
冒頭は、岡島さんがGeminiを使い始めた話から始まります。食事のメニューやスーパーでの買い物、ジムのメニューを、すべてAIに任せるようになったと打ち明けます。
言いなりですね。食べるものとか全部。
玉置さんは、それは問題ないと返します。むしろ気になるのは、判断そのものをAIに明け渡してしまう場面だと言います。
今日もあったんですけど、「その数字の根拠は?」って聞いたら、「ChatGPTが言いました」っていう事件があったんですよ。
玉置さんは、この状態を「どっちが主かわからなくなる」と表現します。人がAIの考えを現実に伝えるだけの存在になりかねない、という危うさです。
ChatGPTの考えたものをミーティングの時に言う人みたいな。もうインターフェースに成り下がりすぎていて。
一方で岡島さんは、AIに任せてよかった点も挙げます。献立や運動メニューを考える負担が減ったことです。
岡島さんは、体を動かすこと自体ではなく、慣れない分野で意思決定する消耗を嫌がっていたと気づきます。
小さな決断も積み重なれば大きな負担になります。二人は、そうした「ちりつも」の負担を減らすAIの使い方は良い使い方だと整理します。
献立や運動メニューなど、可逆で軽い意思決定。任せると消耗が減る
不可逆で精査が必要な判断。人が主導権を手放すと危うい
そもそも「教養」とは何か
本題はインプットシリーズの締めくくりです。前回までは、目的に応じて効率よく吸収する方法を扱ってきました。今回は、それとは別物の「教養としてのインプット」を取り上げます。
玉置さんは、教養を単なる知識とは区別します。世界を理解し、世界と自分を結びつける背景的な知識、インフラに近いものだと説明します。
単にデータとか情報を仕入れるだけじゃなくて、仕入れたデータとか情報をつないでいくものだと思うんですよね。ベースにある教養っていうのが。
教養があると、いろいろな情報を自分なりに結びつけ、点と点をつなぐように独自のアイデアや問いを出せると言います。
話は「リベラルアーツ」の語源に及びます。玉置さんが調べたところ、古代ギリシャの自由七科 ── 古代ギリシャに由来する教養科目の体系。文法・修辞・論理・算術・幾何・天文・音楽の7分野を指すとされるが発祥で、「自由」とは偏見や常識から解放されることを意味するといいます。
何から自由になるかっていうと、偏見とか常識とか、自分を縛っているものから解放されるためのものみたいな意味合いらしいんですよね。
玉置さんはこれが腑に落ちたと言います。教養がないと、過去の経験から作られた偏見の枠が固まってしまうからです。
そのため教養は、今すぐ何かに使えるものではない、とも話します。何年も持ち続け、ベースとして効き続けるものだという理解です。
AI時代に人間が担う「文脈を作る」役割
玉置さんは、教養がこれからのAI時代にこそ重要になると考えています。情報や知識の扱いは、AIのほうが得意だからです。
では人間は何をするのか。玉置さんは、身につけた教養をベースに、答えを出し、問いを立て、文脈を作ることだと言います。
独自の文脈を作るっていう行為って、やっぱり今まで身につけてきた教養をベースにしないと出てこないと思うんですよね。
AIは文脈を読むことはできても、構造上、独自の文脈を作ることはしません。だからこそ、そこは人間が主にならなければならない、というのが二人の見立てです。
岡島さんも、教養はこれからより大事になるポイントの一つだと受け止めます。抽象的で難しそうに感じつつ、情報処理はAIに任せ、文脈づくりを人が担うという役割分担が見えてきます。
距離のある知識をインプット
自分から遠いテーマや歴史などを取り込む
点と点をつなぐ
蓄えた教養をベースに情報を結びつける
独自の文脈を作る
AIには作れない問いやアイデアを人間が出す
「かっこいい」で選ばず、距離のあるものを面白がる
では、教養として何を選べばいいのか。玉置さんの答えは、今すぐ役立ちそうなものではなく、自分から距離のあるものを選ぶことです。
具体例として、知らない場所の話や、時間的に遠い歴史の話、自分とは立場や環境が違う人の言葉を挙げます。
あえて馴染みのないというか、距離があるところのものを、自分で探しに行くようにしますね。
理由は、好きや身近さといった感性だけで選ぶと、視野が狭くなってしまうからです。岡島さんも、油断すると狭まると同意します。
ただし、選び方には条件があります。「読んでいたら格好いい」で選ばないことです。
ワインがわかるようになりたいからワインの勉強するっていうのも、なかなかしんどいですよね。
大切なのは、遠いテーマであっても「読んでみたい」「面白そう」という純粋な気持ちが湧くかどうかだと玉置さんは言います。
岡島さんは、歴史に惹かれる理由を言葉にします。戦略などのビジネス用語は戦争に由来するものが多く、歴史を見る中で自分の関心と重なる点を見つけられるからです。
岡島さんは、かつて受験のために世界史を詰め込んだものの、今はほとんど残っていないと振り返ります。今なら面白がって定着させられそうだ、と話します。
玉置さんは、知らない分野を「面白い」と感じる感覚を大事にすべきだと言います。なぜ面白いと感じたかを言語化すると、新しいアンテナができ、インプットの幅が広がるからです。
なぜAI時代こそ「本屋」なのか
岡島さんは動画やコテンラジオのような集中を要する媒体が苦手だと打ち明けます。一方で漫画は問題なく読めるため、歴史漫画や漫画でわかる歴史の本から入るのが合いそうだ、という話になります。
玉置さんが遠いテーマを探すときに向かうのが、リアルの本屋です。理由は、SNSなどネットの情報にはフィルターバブル ── アルゴリズムが好みに合う情報ばかりを表示し、似た情報に囲まれてしまう状態があるからです。
本屋さんに行って端から端まで見るんですよ。全部のコーナー。
普段なら検索しないコーナーにも足を運び、宗教書などを手に取ってみると言います。岡島さんも、アルゴリズムから逃れるには本屋のような物理空間が有効だと同意します。
玉置さんは、SNSのタイムラインには水泳の練習法のような情報は絶対に出てこないと例を挙げます。だからこそ本屋で偶然出会える価値があるといいます。
たとえ水泳の練習法でも、抽象化すれば学びやインプットの方法につながる、というのが玉置さんの考えです。
おすすめの過ごし方は、たっぷり時間を取って大きな本屋に行き、端から端まで見ることです。気になった本は著者や目次、最初の数ページを確認し、言葉の密度や面白さを吟味して買うといいます。
玉置さんは、目的が明確なときはKindleで検索して買う一方、偶然の出会いや言葉の密度の確認を求めるなら本屋だと使い分けます。図書館も好きだけれど、規模が大きすぎて全コーナーは見きれないといいます。
岡島さんはこの話を受け、自分もほとんど本を読まなくなっていたが、本屋に行きたくなったと語ります。目的なき読書や情報収集を織り交ぜることで、中長期的に効いてくる教養の変数を伸ばせる、という整理に落ち着きます。
教養が「他者理解」の材料になる
玉置さんは、教養が世界や他者を理解するときに役立つ場面が多いと続けます。表面的な共通話題づくりではなく、もっと深いところで効いてくると言います。
例として、一度面白いと思って読んだ水泳の練習法が、水泳好きの人との深い会話につながる場面を挙げます。相手がなぜそう考えるようになったのか、背景を理解する材料にもなります。
さらに、その知識を自分のテーマに抽象化すれば応用もできると言います。今すぐ使えるスキルではないものの、蓄積すれば世の中をもっと楽しめるようになるものだ、というのが玉置さんの結論です。
岡島さんは、学びたいと思いつつ行動に移せない自分を振り返り、週に何時間かをあらかじめブロックする方法が有効そうだと話します。玉置さんは、本を読む時間がなければ本屋で最初のほうを読むだけでも有意義だと補足します。
アウトプット前提で「引用投稿」を使う
インプットの締めとして、二人はアウトプットの話に移ります。アウトプットの目的があるほうがインプットは捗る、というのが出発点です。
玉置さんは最近、Xに急に力を入れていると明かします。きっかけは、ある起業家からのアドバイスでした。
「仕事の合間にXするんじゃなくて、Xの合間に仕事をしなさい」というアドバイスをいただいて。
もともとSNSを眺める習慣がなく、Xを見るのが苦手だったという玉置さん。転機になったのが「引用投稿」でした。
自分の思考が動き出した時を捉えて、自分の考えをまとめてアウトプットするっていうのが引用投稿だと思うんですよ。
引用しようとすると、タイムラインを「自分の思考を動かすものをサーチするモード」で見るようになると言います。すると、それ以外はノイズになります。
いいねは条件反射でできても、自分の見解を出すには一度消化する必要があります。だからこそ、引用投稿はインプットを深める訓練になるという理屈です。
玉置さんは、この視点を持てばタイムラインを眺めても時間を無駄にした感覚がなくなると話します。自分の心が動いた投稿を、自分の言葉でアウトプットするという一点が、インプットとアウトプットをつなぐ核になります。
まとめ
AI時代に人間が担うのは、情報処理ではなく独自の文脈を作ることです。そのための土台となる教養は、距離のあるテーマを面白がり、偶然の出会いを取り込みながら、アウトプットを前提に育てていくものだと二人は語ります。
- AIには可逆で軽い判断を任せ、不可逆で精査が必要な判断は人が主導権を持つ
- 教養は情報をつなぐ土台であり、独自の文脈づくりはAIではなく人間の役割
- テーマは「格好いい」ではなく、距離があっても純粋に面白いと感じるもので選ぶ
- フィルターバブルを抜けるには、大きな本屋で全コーナーを見て偶然の本と出会う
- 引用投稿はアウトプット前提でインプットを深める、手軽な思考の訓練になる



