習慣を続ける鍵は「考えない」こと
冒頭は、岡島さんが続けている筋トレとスーパー通いの話から始まります。曜日を固定し、何も考えずに行くようにしたことで、習慣が楽に続くようになったと話します。
玉置さんは、意志の力を使うと逆効果になると指摘します。
なぜか、意志の力を発動すると謎の摩擦が発生するんですよね。「やらなきゃ」と思った瞬間に「やりたくない」みたいなのが発生しません?
だからこそ、意志の力に頼らないほうがいいというのが玉置さんの考えです。「火曜日だから筋トレに行く」というように、判断を挟まず反応で動く形にしてしまう。この「考えない」という感覚が、この日の起業論にもつながっていきます。
起業家マインドは、起業しない人にも役立つ
話題は起業へ移ります。岡島さんは、聴いている人がどれくらい起業に関心があるかを気にしつつ、玉置さんの話は起業しない人にも役立つはずだと前置きします。
玉置さんも、実際に事業を起こさなくても起業家マインドを持つことの意味を語ります。
起業家マインドを持って仕事をするっていうだけで、随分その自分の幸福度と仕事のクオリティが変わってくるので、どなたにも当てはまる話かなと思いますね。
岡島さんは「自分株式会社」という考え方を例に挙げます。会社員として働く自分を、一つの会社を運営しているように捉える見方です。ここから、玉置さんが考える起業の核心へと入っていきます。
リソースが尽きるまでに、何回挑戦できるか
玉置さんが起業で一番大事だと考えるのは、考え方の部分だと言います。会社を作るとき、資金も人も、いわゆるリソースは限られている。そのリソースが尽きるまでしか挑戦はできません。
玉置さんは具体的な数字で説明します。仮に1億円を調達しても、1回の挑戦に1000万かかれば10回しか試せません。一方、100万で試せれば100回挑戦できます。
確率論で言えば、1回の成功率を10倍にするより、100回試せるようにするほうが成功確率は上がるという考え方です。だからこそ、いかに小さく早く仮説検証を回せるかにフォーカスすべきだと話します。
試せるのは10回。1回の重みが大きく、修正の余地が少ない
試せるのは100回。小さく早く回すぶん、当たる確率が上がる
最初のアイデアがそのまま形になることは、ほとんどない
玉置さんは経営者歴30数年で、四半世紀にわたり自分以外の起業も数多く見てきたと言います。その経験から、最初に思いついたアイデアがそのまま形になることはほとんどない、と語ります。
最初のビジネスプランがそのままうまくいくのは稀で、よほどの天才でない限りは、試して修正し、ときにピボットしながらプロダクトを磨いていく。やがて市場に受け入れられ、そこから拡大するフェーズに入ると説明します。
そして、市場にフィットする前にリソースが尽きて事業が終わってしまうケースが、玉置さんの見てきた範囲ではほとんどだといいます。
関連して、エンジェル投資の話にも触れます。岡島さんが補足を挟みます。
横文字で綺麗なエンジェル投資じゃないと言ったのは、全然回収できてないので。投資ではなくて、もうお布施みたいになっちゃってるので。
玉置さんが初めて起業したころは、スタートアップという言葉も、資金調達の段階をアルファベットで表す言い方もなかったと振り返ります。
今のスタートアップはきれい。でも本質は「泥臭さ」
玉置さんは、今のスタートアップがおしゃれで、起業がキラキラして尊敬されるカルチャーになったことは良いことだと言います。その一方で、伝えるべきことがあるとも話します。
もうちょっと泥臭く、早く小さくチャレンジをたくさんすることなんだよっていうことは伝えていかなきゃなって思うんですね。
陥りがちなのは、自分の事業アイデアを磨き込むあまり、時間をかけて完璧に形にしたくなることだといいます。その気持ちは大事だとしつつ、玉置さんは一つの割り切りが必要だと語ります。
ここで言う仮説とは、「こういう機能があれば喜ばれるのでは」「こういうサービスを求める人が多いのでは」といった見立てのことです。岡島さんは、求められていても経済合理性が成り立たず運営できない場合もある、と補足します。
だからこそ、自分のプロダクトやサービスに愛情を持つことは大事でも、執着してはいけないと玉置さんは言います。違ったらすぐ改め、変更し、切り捨てながら、早く市場に問いかけていく。そうしないとリソースがなくなってしまうからです。
生活コストも固定費も下げて、一日でも長く挑戦する
玉置さんは、お金をかけていないつもりでも、専業で動いていれば生活費は減っていくと指摘します。人を雇い、家賃などの固定費が発生していれば、何もしていなくてもキャッシュは減り続け、終わりの日は近づいてきます。
そこで玉置さんは、事業コストだけでなく、起業する人自身の生活コストもミニマムに整えておくことを勧めます。事業も自分も固定費を下げ、一日でも長く挑戦できる状態にしておくことが大事だといいます。
時間もリソースだと玉置さんは言います。資金調達に躍起になったり、自社プロダクトの資金を賄うために受託の仕事を増やしたりすると、本来サービス開発に使えるはずの自分の時間が削られ、いたずらに時間を延ばしてしまうこともある、と話します。
「崖から飛び降りて、落ちる前に飛行機を組み立てる」
資金がたくさん集まると期限が延びる一方で、ガバい使い方をしてしまうのでは、と岡島さんが問いかけます。玉置さんは、どこまで意識できているかの問題だと答えます。ゴールがいつ来るかは分からなくても、タイマーはすでにスタートしている状態だと言います。
ここで玉置さんは、LinkedIn創業者リード・ホフマンの言葉を引きます。
起業とは崖から飛び降りて、落ちるまでに飛行機を組み立てるようなものだ。
自分は今、崖から飛び降りたのだという認識を持って日々を使えているか。玉置さんは、そう問いかけます。本当に落ちているなら、死ぬ気で全力で飛行機を組み立てる。寝ても覚めても事業のことを考え、ワークライフバランスとも言っていられなくなる、と話します。
玉置さんは、余裕や綺麗事を言っていられないメンタリティが日常になるのが起業だと語ります。ただし、これはあくまで社会に新しい価値を作ることを目的とした起業の話だと、後半で明確にしていきます。
信用も健康もリソース。だから守り、増やす
玉置さんは、リソースは資金だけではないと言います。人に助けてもらう、協力してもらうこともリソースです。以前、岡島さんが「借りになるからやらない」と話していたことを取り上げ、崖から落ちている状況ではそうは言っていられないと語ります。
岡島さんは、借りを作るとテイカーだと思われて嫌われるのが怖く、できるだけギブしようとしている、と自分の考えを打ち明けます。
玉置さんは、それは正しいとしつつ、崖から落ちているからと自分さえ良ければいいとなれば、大事なリソースである信用を削ってしまうと指摘します。落ちていても、背伸びせずできる範囲でギブは続けるべきだといいます。
一方で、根っこの本音では借りたいはずなので、借りは作ればいいというのが玉置さんの考えです。ただし、必ず返す覚悟を持って借りること。そもそも信用がなければ「貸して」と言っても貸してはもらえません。
玉置さんは、健康もリソースだと付け加えます。ブラックな働き方だけど気持ちはキラキラしている、いわば「キラキラブラック」がスタートアップのマインドのようだとしつつ、自分とチームの健康を失えば元も子もないと話します。
岡島さんは、生活どころではなくなって睡眠がおろそかになりやすいこと、自分が本気なぶんメンバーにも求めすぎてしまいそうなことを挙げます。玉置さんは、メンバーが抜ければ新しい人を連れてくるコストがかかると応じます。
起業は短距離走とは限らない。着地することがない
玉置さんは、崖から落ちているといっても短距離走とは限らないと言います。立ち上げ時が大変なのはイメージしやすいものの、事業が続く限り、課題を見つけ、仮説を立てて検証するプロセスを高速で回し続けることになるからです。
一度うまくいっても市場は変わります。顧客の状況を観察し、データを見ながら変え続けなければならず、着地することがないのが起業だと玉置さんは語ります。
岡島さんは、AI市場をめぐって大手テック企業が全てを投じて戦っている状況を思い浮かべた、と話します。玉置さんは、大きな勝負どきはより大変でも、そうでなくても事業を続ける限り本質は同じだと応じます。
なかなか地面に足をつけることがない。ずっと空中で不安定なまま、落ち続ける、みたいなところはありますよね。
「起業」の定義はバラバラ。向き不向きもある
近年は「起業はいいものだからみんな起業しよう」という風潮もあります。しかし玉置さんは、起業という言葉の定義がバラバラだと指摘します。
既存の市場に参入してシェアを取る会社も起業と呼ばれますが、玉置さんが話しているのは、社会に新しい価値を作り出すことを目的とした事業を起こす場合です。これはかなり特殊な状態かもしれない、と言います。
なぜなら、まだ世の中にないものがうまくいくと信じて進む必要があるからです。玉置さんは、それを「見えない橋を渡る」ことにたとえます。崖と崖に架かっているはずの透明な橋を信じて渡るようなもので、精神衛生上よくないこともたくさんあると語ります。
向き不向きの話として、岡島さんは、シャキッとした人より少し変わった人がうまくいくイメージがある、と切り出します。玉置さんは、頼るものがないぶん自分軸がしっかりしていることが重要で、その結果、社会性がないように見えたり、わがままに見えたりする人もいると応じます。
玉置さんは、崖から落ちながら飛行機を組み立てることを楽しいと思えるメンタリティがないと、ただ辛く不安で怖い体験になると言います。それを楽しめるかどうかが分かれ目だといいます。
辛かったらやめていい。景色はずっと「課題山積み」
岡島さんは、自分もポッドキャストのために会社を作り、次の商品を毎日準備していて、長時間働いても楽しいと感じている、と話します。玉置さんが以前「失敗はそんな大したことない」と言ってくれたこともあり、メンタルは健康だといいます。
玉置さんは、それは良いことだとしつつ、辛かったらやめたほうがいいと率直に言います。起業は楽にならず、ずっと続くものだからです。
成功しているように見える起業家や経営者でも、見えている景色は創業時と同じで、まだ解決すべき課題があるとしか見えていない、と玉置さんは語ります。むしろ全て問題がなくなったように見えたら危ない、と付け加えます。
所詮仮説。早くやれ、小さくやれ
玉置さんは、皆が皆起業すべきだとは思っていないと繰り返します。ただ、起業しなくても、人は必ず担当する業務や事業を持ち、課題に対して仮説を立てて検証する仕事をしている。それをいかに小さく早くやるかは、誰にとっても共通だと語ります。
そして、そこにフォーカスしきれている人は多くないと言います。削ぎ落とす、切り落とす、捨てることが得意な人はそう多くない。そこを突き詰めれば仕事の結果の出方が変わり、自分の中に確かな軸ができていくと話します。
あれもこれも必要だと大事そうなものを切れずにいると、本当の自分の軸は見えてこない。玉置さんは、自分のスタッフにも日々そう伝えているといいます。ただし、抽象的に「軸を見つけろ」とは言わないそうです。
所詮仮説だよと。早くやれよ、小さくやれよっていうだけです。早くやれ、小さくやれって言うと、捨てるしかないので。
捨てざるを得ない状況に自分を置くうちに、やがて軸が見えてくる。だから起業家にならなくても、この考え方は仕事に役立つ、というのが玉置さんの結論です。
岡島さんは、自分の軸に沿った行動なら辛さが軽減され、長く挑戦できると受け止めます。玉置さんも、ある程度の制約があるほうが人は考えるとし、起業は制約の中で最善を尽くすプレーの積み重ねだから、自然と力や自信がついていくと語ります。
死なないことが一番大事。続けていれば勝てる
岡島さんは、この起業や経営の話を何回かに分けて続けたいと提案します。新しい価値を作るスタートアップの話は聴く人が限られるかもしれないが、社会に新しいサービスが生まれる過程として面白く、いろんな仕事をする人の役に立つはずだと話します。
玉置さんは、志を持って起業した人になんとかなってほしいという気持ちがあると言います。自分もそうだったからこそ、必ず伝える言葉があるといいます。
岡島さんは、起業と聞くと「賢いね」「頭いいね」と言われがちだが、実際は法務局で手続きをすれば会社は作れると話します。そのうえで、社長には天才タイプもいるが、多くは頑張っている人だという印象を語ります。
玉置さんも、成功している人の共通項は少ないとしつつ、諦めないことだけは共通項かもしれないと言います。天才のような人もたくさん見てきたが、残っているのは天才ではない人ばかりだと振り返ります。
どちらかというと、「よくそこまで努力できるね」とか、「執念だね」っていう人の方がやっぱり大きく成功されてる気はしますね。
岡島さんは、現場を知る玉置さんがこう語るからこそ音源として残す価値があると話します。玉置さんは、当たり前すぎてなかなか伝わらないと言いつつ、届くといいと締めくくります。番組は毎週水曜更新で、アプリでのフォローと高評価が呼びかけられました。
まとめ
玉置さんが起業で最も大事だと語ったのは、リソースが尽きる前にいかに小さく早く挑戦を重ねられるかという一点でした。資金・時間・信用・健康をリソースとして守りながら生き延び、仮説として試し続ける。この考え方は、起業しない人の仕事にも通じます。
- 起業の勝負は、集めたリソースが尽きるまでに何回挑戦できるか。1回を小さく早くするほど成功確率は上がる
- どんな素敵なサービスも所詮仮説。愛情は持っても執着せず、違えばすぐ改め、早く市場に問いかける
- 資金・時間・信用・健康はすべてリソース。固定費を下げ、ギブを重ね、健康を守って一日でも長く挑戦する
- 起業は着地のない挑戦で、向き不向きがある。辛ければやめていいし、楽しめるかどうかが分かれ目
- 一番大事なのは死なないこと。最初のプランが良かった人ではなく、諦めず続けた人が生き残って成功する


