なぜ「考えないロボット」が最強なのか
岡島さんはまず、自分の働き方の変化から話し始めます。油断すると朝5時まで仕事をしてしまい、スケジュールが崩れることが多かったといいます。
その対策として、毎日決まった時刻に「就業」の予定を入れ、時間が来たら何も考えずに閉じるというルールを徹底するようになりました。
これが今までがやっぱり考えちゃってたんですよね。「今日はちょっとやっていいんじゃないか」みたいな
なんか自分でうまーく言い訳作りますよね
玉置さんも自分でタイマーをかけ、鳴ったら従うようにしていると話します。二人は「言い訳を作らず、ロボットになる」ことの効きめで一致します。
ただし玉置さんは、ロボット化はあくまで手段だと補足します。やらなければいけないことを効率化して進めれば、その分「人間時間」が増えるという発想です。
自販機のない村から、流されて関西へ
ここから話題は、玉置さんの提案で岡島さんの半生に移ります。二人の出会いは、岡島さんが前職の社長であるけんすうさんから紹介されたことでした。
岡島さんは福井県の村の出身で、同級生の男子が一人しかいない小学校に通っていたといいます。自販機もない村で、祖父は警察官、実家は農家という環境で育ちました。
中学の頃から漫画家になりたいと思っていたものの、田舎すぎて方法を教えてくれる人が誰もいませんでした。当時流行していたニコニコ動画からネット発で漫画家になる道もありましたが、その使い方すらわからなかったといいます。
結局、進学先は東京より家賃が安く帰省しやすい関西を選びます。漫画に関わるなら東京が有利だとわかっていながら、何もわからず流されて兵庫県の大学に進みました。
じゃあそこまで「俺は絶対漫画家になる」みたいな感じではなかったんですか?
玉置真理 さんからの質問
思ってはいたものの、行動力がなさすぎて流された、と岡島さんは振り返ります。美大を目指す気持ちもありましたが、田舎には予備校がなく「詰んでいる」と感じたそうです。
和歌山出身の玉置さんも、田舎で美大を志すことの難しさに共感します。岡島さんは、浪人してまで挑む行動力がなく、選択を補強するロジックを寄せ集めていたと分析します。
大学4年間と、就活をほぼしなかった選択
大学の4年間を、岡島さんは自嘲気味に振り返ります。先輩との飲み会、床に落ちていた漫画を読むこと、スプラトゥーンで過ごし、典型的なモラトリアムだったと語ります。
漫画とか描きたいんだがみたいな。俺は本当はやれるんだがみたいな、ずっと思ってて
気持ちに対して行動力が伴わなかった理由を、岡島さんはハードルの多さに求めます。絵も漫画も複雑すぎてわからず、機材を買っても止まってしまったといいます。
一方で、学校の美術の授業では描いた絵がほぼ賞を取っていたそうです。この「やればできる」という自己認識が、かえって行動を遅らせたと本人は分析します。
就活の時期になっても、岡島さんはやりたいことを曲げませんでした。好きなエンタメ以外は受ける気になれず、大手出版社や東宝など5社ほどだけを受け、すべて落ちます。
出版社の面接は大学4年の夏と遅く、落ちた頃には他の就活はほぼ終わっていました。夜行バスでの往復のしんどさもあり、岡島さんは就職浪人を選びます。単位だけ取り、卒業論文を出さずに大学に籍を残す形でした。
東京でライターに拾われ、けんすうさんと出会う
就職浪人を決めた岡島さんは、大学を卒業しなかった友人二人と東京でシェアハウスを始めます。UFJの内定を蹴った友人、そして自分と同じく「何もわからない」という友人でした。
次の出版社の面接まで時間があったため、少しでも編集に近い仕事をしておこうと考えます。そこで、スタートアップやITを取材するライターがTwitterで募集していたアシスタントに応募し、拾われました。
仕事は相当に忙しく、体がちぎれるほど働いたといいます。ものを作ることが得意だったこともあり、半年ほどで一人で書けるようになり、ビジネス書の仕事なども手がけるようになりました。
その仕事の中で、お客さんとして来たけんすうさんと出会います。漫画好きという共通点もあり、出版社の人へのインタビュー記事などで評価されたことがきっかけでした。
Facebook Messengerで「入れてください」って送ったら「いいよ」って返ってきたんで、なんか入れてもらいました
こうして岡島さんは、けんすうさんが手がける、漫画やクリエイティブに関わる会社アルに参加することになります。やりたいことに近いと感じたことが決め手でした。
二年前に再開した漫画とライフハック
玉置さんは、岡島さんがようやく今、漫画を描いていることに触れます。再開したのは2年前で、絵をまともに練習したこともなかったため、社会人向けの美大予備校に通うところから始めました。
学生の頃と違ったのは、けんすうさんから多くのライフハックを教わっていたことでした。もともと怠惰で、複雑な物事に取り組むための気力がなかった岡島さんは、それを補う工夫で机に向かえるようになったといいます。
下敷きになったのは、けんすうさんの著書『物語思考』です。なりたい姿を定め、そのキャラクターがやりそうな行動をとっていくと、自然にそうなっていくという考え方でした。
岡島さんは、この考え方を漫画に応用します。短期間で成功する人は、教えてくれる上手い人が周りに集まっている環境にいるはずだと考えたのです。
今では毎月のように新しい漫画関連の知り合いが増えているといいます。玉置さんから教わったことも活かしていると岡島さんは付け加えます。
キャリアアップを分ける「意識」と偶然の理論
話題は玉置さんが最近聞いたキャリア論に移ります。人材紹介の世界で長く活躍する人によれば、キャリアアップできる人とできない人の最大の違いは「キャリア形成意識」の有無だといいます。
自分はこういうキャリアを形成するっていう、明確な意識があるかどうかが、結局そのキャリアアップできるかどうかに大きく影響している
多くの人はイメージを持っているつもりでも、それが浅く、ぼんやりしていて短期間だと玉置さんは続けます。岡島さんも「なんとなく漫画みたいな、ぐらいだった」と自分を重ねます。
さらに玉置さんは、AIとのやりとりで知ったという「計画された偶発性理論」を紹介します。スタンフォード大学のジョン・クランボルツさんが提唱したものです。
この理論では、キャリア形成の8割以上は偶然の出来事によって起こるとされます。問題は、その偶然をチャンスに変えられるかどうかだと玉置さんは説明します。
偶然をチャンスに変える人には、4つの共通点があるといいます。
内発的動機がキャリアを引き寄せる
玉置さんは、この4つが仕事選びと結びつくと指摘します。待遇や給料の高さで選ぶと、外発的な動機になり、4つの姿勢が発動しづらいというのです。
内発的な動機が発動しやすい、要はそのやりたい仕事。この四つが持続できる環境とか仕事を選んでおくと
岡島さんは、これが以前話した「才能と運」の話にも近いと反応します。二人は、異なる研究が同じ結論に向かっている感覚を共有します。
岡島さんは、自分にもこの4つはあったかもしれないと振り返ります。足りなかったのは、複雑なことに取り組むための気力だけで、ライフハックでその消費が下がったことで進められるようになった実感があると語ります。
玉置さんは、進まないのは「大きすぎて口に入らない時」だと表現します。一口大にしてあげるだけで全然違う、という考え方です。
漫画やるぞってなった時に、まず原稿用紙あるんですけど、その枠線みたいなのが外から三つぐらい引いてあるんですよ
岡島さんは、原稿用紙の枠線の意味がわからず止まっていた経験を挙げます。印刷時の裁断のずれを見込んだ線だという説明は、Discordの作家仲間に口頭で3〜4人に聞いてやっとわかったといいます。
じゃあ子供の時に、公募とかに応募したり、編集部に送ったりはしてなかったんですね
玉置真理 さんからの質問
一切していなかったと岡島さんは答えます。原稿用紙を無駄にしたくないと思うと進まず、すべてがうまくいかないアンチパターンだったと自嘲します。漫画を描きたいと思ってから、実際に動くまで27歳までかかったといいます。
行動と、変化し続けるコミュニティの価値
二人は、行動の重要性で一致します。玉置さんは「考えるより描いちゃう」タイプで、岡島さんは損をしたくなくて動けないタイプだと、互いの違いを確認します。
玉置さんは、これをスティーブ・ジョブズの「Connecting the dots」になぞらえます。関係なさそうなことでも、とりあえず動いておけば後でつながるという発想です。
岡島さんは、業界の狭さと人のつながりにも話を広げます。前職でジャンプ+と仕事をしていた縁が、漫画家として出会った人との会話で思いがけずつながる経験を語ります。
玉置さんは、業界が狭いと認識した瞬間に息苦しさを感じ、外に出て新しい風を入れたくなると打ち明けます。どのコミュニティにも属していないのは、固定された感じが苦手だからだといいます。
変化がないっていう状態って、すなわち死じゃないですか
岡島さんも、自分が主宰する作家コミュニティを開かれたものにしたいと考えていると応じます。入りと出があって動いていないと、コミュニティは沼になり、健全ではなくなるという点で二人は一致します。
終盤、玉置さんは岡島さんを「つじつまが合っていないと嫌なタイプ」「物語が破綻していると気持ち悪いタイプ」と評します。岡島さんも、最近は「なんでこれを自分がやるのか」をよく考えると認めます。
玉置さんは、まだ寄り道をしてもいい年齢だと励まします。面白い、やりたいと思ってやったことは、損得や繋がりを感じずに始めても、いずれキャリアにつながるという、この回の理論とも重なる着地でした。
まとめ
行動力のなさを自認する岡島さんの半生と、玉置さんが持ち込んだキャリア理論が重なり合う雑談回でした。やりたいという内発的な動機を軸に、環境とライフハックで少しずつ動き出す姿が語られました。
- 決めたルールに従い「考えないロボット」になることで、崩れやすい生活と行動のハードルを下げられる
- キャリアアップを分けるのは、浅いイメージではなく明確なキャリア形成意識だと語られた
- 好奇心・挑戦心・継続性・柔軟性が偶然をチャンスに変え、内発的動機のある仕事ほどそれが発動しやすい
- 大きすぎる課題は一口大にし、思いついたらすぐ動いて切り替えることが結局は早い
- 入りと出があり変化し続けるコミュニティこそ健全で、沼にならないという点で二人は一致した



